論文詳細
自然科学系
農学部
#紀要論文
土のキャピラリーバリア機能を利用した試験的な盛土式廃棄物貯蔵施設のフィールド条件下での性能
- AI解説:
- 本研究は、砂層の上部に礫層を重ねた単純な土層地盤に見られる「キャピラリーバリア(CB)」機能を利用し、危険な廃棄物や低レベル放射性廃棄物の安全な管理方法を提案することを目的としています。特に、雨水と地下水の遮断および排水が必要な廃棄物の処理において、CBによる高度な浸潤水遮断・排水機能を活用し、盛土形式の廃棄物処理施設を設計します。この施設では、上部CB被覆層が降雨による浸潤水を遮断し、下部CB排水層が安全に集水・排水する二重の安全構造を持ち、地下水の流入や周囲地盤への二次拡散の懸念がないことを特徴としています。
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自然科学系
農学部
#紀要論文
土のキャピラリーバリア機能を利用した試験的な盛土式廃棄物貯蔵施設のフィールド条件下での性能
AI解説
- 背景と目的:
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本研究は、砂層の上部に礫層を重ねた単純な土層地盤に見られる「キャピラリーバリア(CB)」機能を利用し、危険な廃棄物や低レベル放射性廃棄物の安全な管理方法を提案することを目的としています。特に、雨水と地下水の遮断および排水が必要な廃棄物の処理において、CBによる高度な浸潤水遮断・排水機能を活用し、盛土形式の廃棄物処理施設を設計します。この施設では、上部CB被覆層が降雨による浸潤水を遮断し、下部CB排水層が安全に集水・排水する二重の安全構造を持ち、地下水の流入や周囲地盤への二次拡散の懸念がないことを特徴としています。
- 主要な発見:
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本研究では、フィールド条件下でのCB機能の長期供用性を検証し、砂礫層の境界面を適切に施工することで、CBが期待通りの遮水・排水機能を発揮することを確認しました。限界長の推定に関しては、実際の土層実験およびフィールドでの測定値と比較することで、高い精度で推定が可能であることが示されました。また、試験盛土の施工結果から、CB層の締固め密度の均一性が重要であり、通常の土木工事で使用される重機で施工が可能であることが確認されました。これにより、CB盛土の合理的な造成規模の決定が可能となり、廃棄物処理施設の実務的な設計に応用できることが示されました。
- 方法論:
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研究では、まずフィールド条件下でのCB機能を検証するために、実規模大のCB試験盛土を造成し、長期にわたり土中水分量をモニターしました。次に、室内傾斜地盤試験を行い、限界長の正確な推定を目指しました。フィールド試験では、新潟大学農学部の圃場において、人工降雨装置を用いた試験盛土を造成し、各区画における土中水分動態を計測しました。室内試験では、傾斜地盤に砂と礫を使い、降雨装置を設置して限界長の測定を行いました。これらの試験により、CB機能の実効性と限界長の推定精度を確認しました。
- 結論と意義:
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本研究の結果、CBシステムを導入した盛土式廃棄物貯蔵施設が、優れた浸潤水の遮断・排水機能を有し、廃棄物の安全な貯蔵管理に適用可能であることが示されました。施工においても、通常の重機で行えるため、特殊な機材を必要とせず、施工の汎用性が高いことが確認されました。また、フィールド条件下での長期供用性も検証され、CB機能の回復性が高いことが確認されました。これにより、廃棄物処理施設の設計と施工において、CBを合理的かつ効率的に活用できることが明らかとなりました。
- 今後の展望:
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今後の研究では、さらに大きな規模でのCB機能の検証を行い、限界長の正確な推定方法を確立することが必要です。また、異常気象時や長期的な環境変化に対するCBの耐久性と回復性についても、さらなる検証が求められます。さらに、異なる地質条件や気候条件下でのCB機能の適用性を調査し、汎用的な設計指針を確立することが重要です。これにより、より多くの廃棄物処理施設において、CBシステムを活用し、安全性と環境調和性を両立した廃棄物管理の実現が期待されます。
- 背景と目的:
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この研究は、砂と礫(れき)を使って作られた「
」という仕組みを利用して、危険な廃棄物や低レベル放射性廃棄物を安全に管理する方法を提案することを目的としています。特に、雨や地下水の影響を防ぐ必要がある廃棄物の処理において、CBが提供する優れた遮水と排水の機能を活用します。この方法では、廃棄物を安全に保管するために、二重の安全構造を持つ施設を設計します。キャピラリーバリア(CB) ( 砂と礫を使った、浸透してくる水を遮断し、特定の方向に排水する機能を持つ構造です。これは土粒子の大きさの違いによるものです。)
- 主要な発見:
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この研究では、実際のフィールド条件でCBの機能を長期間にわたり検証しました。その結果、砂と礫の境界を適切に作ることで、CBが期待どおりの遮水と排水機能を発揮することが確認されました。また、CB層を均一に締め固めることが重要であり、通常の建設機械で施工が可能であることがわかりました。
- 方法論:
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まず、実際の規模でCBの試験施設を作り、長期間にわたり土中の水分量を監視しました。次に、室内で傾斜地盤試験を行い、
の正確な予測を目指しました。これにより、CBの機能とその限界長の予測精度を確認しました。限界長 ( CBが効果を持つ最大の水平距離のことです。これは、砂と礫の間で水がどれだけ遠くまで遮断できるかを示します。)
- 結論と意義:
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研究の結果、CBシステムを利用した廃棄物処理施設が、優れた遮水と排水機能を持ち、廃棄物の安全な管理に適用できることが示されました。施工も通常の建設機械で行えるため、特別な機材は必要ありません。さらに、長期にわたりCB機能が維持されることも確認されました。
- 今後の展望:
-
今後の研究では、さらに大規模なCB機能の検証を行い、
の正確な予測方法を確立することが必要です。また、異常気象や長期的な環境変化に対するCBの耐久性も検証する必要があります。さらに、異なる地質や気候条件でのCB機能の適用性も調査し、汎用的な設計指針を確立することが重要です。限界長 ( CBが効果を持つ最大の水平距離のことです。これは、砂と礫の間で水がどれだけ遠くまで遮断できるかを示します。)
- 何のために?:
-
この研究は、
砂 と小石を使って「 」というものを作ります。これで、キャピラリーバリア(CB) ( 砂 と小石を使って作る、水を防 ぐ機能 と水を流す機能 を持つバリア。ごみを安全に管理 するために使われる。) 危 ないごみや、弱い のごみを安全に放射能 ( 物質 が放射線 を放出する現象 。弱い放射能 のごみとは、少量 の放射線 を出すごみのこと。) 管理 する方法 を考えます。特 に、雨や がごみに地下水 ( 地面の下にある水のこと。雨水や雪解 け水が地面に染 み込 み、地下に蓄 えられる。) 触 らないようにするためです。CBは、水を防 ぐ機能 と、水を流す機能 があります。これを使って、ごみを入れる安全な施設 を作ります。
- 何が分かったの?:
-
この研究で、CBが長い間しっかりと
機能 することがわかりました。砂 と小石の境目 をしっかり作ると、水を防 ぐ機能 と、水を流す機能 が期待通りに働 きました。また、CBを均一 に固 めることが大事です。普通 の で作ることができます。建設機械 ( 建物 や構造物 を作るために使う機械 。普通 の建設機械とは、特別 な機械 を使わず一般的 に使われる機械 のこと。)
- どうやったの?:
-
まず、
実際 のサイズでCBの試験 施設 を作りました。長い間、 を見ました。次に、室内で土の中の水分 ( 地面の中に含 まれる水のこと。土壌 水分ともいう。) 傾 いた地面の試験 をしました。これで、CBの機能 と限界 の長さを確認 しました。
- 研究のまとめ:
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研究の
結果 、CBを使ったごみ処理 施設 が、水を防 ぐ機能 と、水を流す機能 を持つことがわかりました。ごみを安全に管理 できます。普通 の で作れるので、建設機械 ( 建物 や構造物 を作るために使う機械 。普通 の建設機械とは、特別 な機械 を使わず一般的 に使われる機械 のこと。) 特別 な機械 はいりません。CBの機能 が長い間続 くことも確認 しました。
- これからどうする?:
-
これからの研究では、もっと大きなCBの
機能 を確認 します。限界 の長さをもっと正確 に予測 します。 や長い間の異常気象 ( 普通 ではない天気や気候 のこと。例 えば、大雨や猛暑 など。) 環境変化 に対するCBの強さも確認 します。さらに、いろいろな地質 や気候 でCBが使えるかも調べます。これで、みんなが使える設計 の指針 を作ります。
- 著者名:
- 阪 絵梨子, 森井 俊広, 小林 薫, 松元 和伸
- 掲載誌名:
- 新潟大学農学部研究報告
- 巻:
- 66
- 号:
- 2
- ページ:
- 155 - 161
- 発行日:
- 2014-03
- 著者による要約:
- 礫層の上部に砂層を重ねた単純な土層地盤では、土粒子の大きさに起因する砂層と礫層の保水性(毛管力)の違いにより、地表面から浸潤してきた水は境界面の上部で捕捉され、集積する。砂礫層の境界面に傾斜を設けると、集積した水は砂層内を傾斜方向に流下し排水される。その結果、境界面以深の領域は一定の範囲にわたって水の浸入から保護される。この砂層と礫層を重ねた単純な土層地盤にみられる浸潤水の遮断・排水機能を、土のキャピラリーバリア(Capillary barrier of soil: CB)と呼ぶ。 本研究では、高度な浸潤水の遮断・排水機能を有する土層地盤を導入して、危険な廃棄物あるいは低レベルの放射性廃棄物を安全に管理するための盛土形式の廃棄物処理方法を提案する。廃棄物の処理においては、拡散防止の観点から、雨水と地下水の遮断・排水が必須となることから、CB によるすぐれた浸潤水の遮断・排水機能を利用し、廃棄物等の貯蔵管理に適用しようとするものである。盛土形式の廃棄物処理施設は、表層部に敷設した上部CB 被覆層により降雨による浸潤水を遮断するとともに、万が一に浸潤が生じた場合、底部CB 排水層により貯蔵廃棄物中を通過してくる土中水を安全に集水し、排水できる二重の安全構造になっている。盛土形式であるため、地下水の流入はなく、周囲地盤への2次拡散の懸念がない。
Capillary barrier (CB) is a tilting soil layer system which is composed of a finer soil layer (sand) underlain by a coarser soil layer (gravel), and has an excellent feature of reducing and diverting infiltration water. A shallow land waste repository, in which a top CB and a bottom CB are placed to reduce infiltration due to rainfall and to divert percolating water through the protected waste material respectively, is proposed to isolate effectively a hazardous waste material or a very low level radioactive waste. As the shallow land waste repository is constructed on ground surface, there is no risk that groundwater enters the waste and diffuses pollutants into a surrounding environment. It should be also emphasized that the CB can maintain its function of water diversion for an extremely long duration because it consists of natural materials such as sand and gravel. Structural dimensions of the shallow land waste repository should be determined by an effective diversion length of water along an interface between soil layers of the CB. The diversion length is estimated based on the infiltration flux, saturated and unsaturated hydraulic properties of the CB soils, and the interface slope. Although the diversion length is theoretically as much as 50 m in a climate with an order of magnitude less infiltration, only 1 to 2 meters of the diversion length, far from practical employment of the CB into the shallow land waste repository, has been observed and published. In the paper, the diversion length of the CB which can be applied to structural design of the shallow land waste repository are provided based on the laboratory test and the field observation, and some feasible proposition is given for construction of the shallow land waste repository covered by a top CB layer and a bottom CB drainage layer. Observations of soil moisture content in the test land repository which started from July, 2013, will be discussed to show an effectiveness of the CB.
- 新潟大学学術リポジトリリンク:
- http://hdl.handle.net/10191/26809
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