論文詳細

自然科学系 農学部 #紀要論文

日本農業における社会起業家育成の課題

AI解説:
本研究は、日本の農業が直面する環境問題、後継者不足、耕作放棄地問題などの深刻な社会問題を解決するために、社会起業家の役割に注目しています。従来の行政やNPOによる取り組みに加え、ビジネスを通じて社会問題の解決を目指す社会起業家の活動が注目されています。彼らのアプローチには「社会性」「事業性」「革新性」があり、持続的かつ高い効果が期待されます。本研究では、農業分野の社会起業家を対象に、起業までおよび起業後の過程における起業家精神の変化を分析し、社会起業家の育成や事業の成功を促進する方法を検討することを目的としています。
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著者名:
細木 千寛, 木南 莉莉
掲載誌名:
新潟大学農学部研究報告
巻:
73
ページ:
29 - 38
発行日:
2021-02
著者による要約:
本研究は、日本農業における社会起業家を対象にTEM分析を用いて、起業まで、また起業後の過程における彼らの起業家精神の変化を辿りながら、社会起業家の育成や事業の成功を促進する方法を検討した。分析結果からは以下のことが明らかになった。すなわち、社会起業家の生成は、企業家精神を育む動機と個人の志向が要因となっており、農業関連の社会的事業の成功には、社会起業家らのコンピテンシーと、企業家精神を損なわない各種の支援策や住民の理解が重要であり、その成功は社会的起業家精神を高める要因にもなっている。以上の分析結果を踏まえて、農業関連の社会起業家を育成し、その事業を成功させるためには、政府や教育機関が人々が起業や農業の社会問題に対して関心を持つ機会・経験を増やすとともに、オープンマインドを持つように働きかけることが必要であり、社会起業家も事業のコンピテンシー(多様性・柔軟性、連携・ネットワーク、顧客志向・真のニーズ)を強め、自身の活動や取り組む社会問題について発信する必要があると言える。さらに、ソーシャルキャピタルの蓄積を改善する政策を通じて社会的制度、社会起業家精神、社会的事業の間に好循環が生まれる機会を増やすことを提案する。
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