1950年代における中国とモンゴルの文化交流 : 1953年のモンゴル人民共和国芸術団の訪中公演を事例に

背景と目的：

近年、中国内モンゴル自治区のモンゴル族は、隣国モンゴル国の芸術文化を積極的に受容するようになっているが、同じ民族でありながらその文化交流は複雑な歴史と外交関係に左右されてきた。特に1950年代、中国とモンゴル人民共和国が友好関係を築いた後、両国間で進められた文化交流は、内モンゴルの人々に大きな影響を与えた。本稿の目的は、その文化交流の過程を明らかにし、特にモンゴル人民共和国の芸術団の訪中公演が内モンゴルの文化事業に与えた影響について考察することである。

主要な発見：

1953年にモンゴル人民共和国の芸術団が中国を訪れた際、内モンゴルでの公演は内モンゴルの人々に強い影響を与え、彼らの文化事業の発展に寄与したことが明らかになった。特に、内モンゴルの観衆や指導層がモンゴル芸術団のパフォーマンスに感銘を受け、その技術や芸術性を学ぶ姿勢が見られた。また、モンゴル人民共和国の芸術団が持つ伝統文化と西洋の芸術を融合させたパフォーマンスは、内モンゴルの人々にとって新鮮であり、文化的なインスピレーションを与えた。

方法論：

本論文では、1953年に行われたモンゴル人民共和国芸術団の訪中公演の実態を明らかにするために、当時の新聞記事や日記を主な資料として利用した。具体的には、『人民日報』『光明日報』『内蒙古日報』『上海新民報晩刊』『ウネン』などの新聞記事、さらには内モンゴルの詩人ナ・サインチョグトの日記を検討し、モンゴル芸術団の活動と内モンゴルの反応を詳細に分析した。

結論と意義：

モンゴル人民共和国芸術団の訪中公演は、中国とモンゴル両国の文化交流を促進し、内モンゴルの文化事業に大きな影響を与えた。特に、1950年代の内モンゴルにおいて、モンゴル芸術団が伝えた技術や文化が内モンゴルの文化事業に取り入れられ、発展していく過程が明らかになった。この研究は、同じ民族が異なる国に分かれて存在し、異なる政治体制や文化の影響を受けながらも、どのようにして文化交流が進展し、互いに影響を与え合うかを示す重要な事例となる。

今後の展望：

今後の研究では、モンゴル人民共和国から内モンゴルへの文化事業が具体的にどのように発展し、内モンゴルの文化事業にどのように影響を与えたのかをさらに詳細に検討する必要がある。また、1950年代以降の中国とモンゴル両国の文化交流がその後どのように進展し、現代に至るまでの影響を追跡することが求められる。さらに、この研究を通じて得られた知見を他の地域や国と比較することで、国境を越えた文化交流の普遍的なメカニズムを明らかにすることも重要である。