「爪痕(を残す)」の「新用法」に関する覚書 : 国語辞典の語釈の変遷の詳細と，岡田祥平(2021)以降の動向

現代日本語において、「爪痕」という語がどのような意味を持つのかについての理解が進んでいます。この語は元々「爪でかいた傷跡」を指すものですが、近年では「大きな事件や災害が残した被害や影響」という比喩的用法が広まっています。しかし、さらに新しい用法として「自分や自分のグループが強い印象を残す」という意味でも使われるようになってきました。この新用法が何時頃から見出せるのか、そしてなぜ生まれたのかを解明するために、本研究では各種国語辞典における「爪痕」の語釈の変遷を調査し、岡田が行った研究を補完する形で、最新の動向を分析しました。

主要な発見として、現在の日本語社会において「爪痕を残す」という新用法が徐々に広まりつつあることが確認されました。特に、若年層においてこの用法が広く受け入れられている一方で、年配層は違和感を覚えることが多いことがわかりました。また、『デジタル大辞泉』や『明鏡国語辞典』第3版などがこの新用法に言及し、特に『明鏡国語辞典』第3版では「誤用」と明記するなど、辞書の記述にも変化が見られました。これにより、新用法が顕在化しつつある現象が示されました。

本研究では、2000年以降に改訂版が出版された大型・中型・小型国語辞典を対象に、「爪痕」という語の語釈の変遷を調査しました。具体的には、合計16種類の国語辞典（計99冊）の各版を遡って調査し、辞書ごとに「爪痕」の各用法（意味A〜D）への言及の有無を確認しました。また、NHK放送文化研究所と毎日新聞校閲センターによる意識調査の結果も参照し、年代別の新用法に対する受け止め方を分析しました。

「爪痕を残す」の新用法は、従来の比喩的な意味から逸脱した表現として広まりつつあります。しかし、辞書や調査結果からは、依然としてこれに対して違和感を持つ人々が存在し、特に年配層ではその傾向が顕著です。これにより、「爪痕を残す」の新用法は、日本語における規範意識の変遷を示す一例として重要な意味を持ちます。また、辞書の記述が新用法に言及し始めたことは、言語使用の変化が辞書編纂に反映される過程を示す具体例ともなります。

今後、「爪痕を残す」の新用法が定着するか否かについては、さらなる調査と監視が必要です。特に、若年層における使用の広がりと、年配層の違和感の持続がどのように変化していくかが鍵となります。また、辞書の記述が新用法をどのように取り扱うかが、この用法の社会的受容を左右する可能性があります。筆者は今後もこの動向を注視し続け、規範から逸脱した表現が定着する要因をさらに明らかにしたいと考えています。

現代日本語では、「爪痕」という言葉の意味が変わってきています。元々は「爪でつけた傷跡」を指していましたが、最近では「大きな事件や災害の影響」という意味や、「自分やグループが強い印象を残す」という新しい意味でも使われるようになってきました。この新しい使い方がいつから始まり、なぜ生まれたのかを調べるために、辞書の説明を分析しました。

現在、「爪痕を残す」という新しい使い方が広まりつつあり、特に若者に受け入れられていることがわかりました。しかし、年配の人たちには違和感を持つ人が多いです。また、いくつかの辞書がこの新しい使い方に言及しており、特に『明鏡国語辞典』第3版では「誤用」として記載されています。これは新しい使い方が広まりつつあることを示しています。

2000年以降に出版された16種類の国語辞典（計99冊）を調査しました。それぞれの辞書で「爪痕」という言葉がどのように説明されているかを確認し、新しい使い方に対する反応を年代別に分析しました。

「爪痕を残す」という新しい使い方は、広がってきていますが、まだ違和感を持つ人も多いです。特に年配層ではその傾向が強いです。このことは、日本語の使い方が変わっていく過程を示しています。また、辞書が新しい使い方に対応し始めたことも、言葉の変化が辞書に反映される例として重要です。

今後、「爪痕を残す」の新しい使い方が定着するかどうかをさらに調査する必要があります。特に若者の間での使い方と、年配層の違和感がどう変わるかが鍵です。また、辞書がこの新しい使い方をどう取り扱うかも重要です。この動向を注視し、言葉の使い方がどう変わるかを見ていきたいと考えています。