論文詳細
医歯学系
大学院医歯学総合研究科(医)
#学位論文
EGF/ニューレグリン受容体キナーゼのクロザピン依存的抑制
- AI解説:
- clozapineは非定型抗精神病薬であり、陰性症状への有効性、錐体外路性副作用の軽減、自殺予防、従来型抗精神病薬に反応しない患者での有用性など、特徴的な臨床プロファイルをもつ。こうした利点がある一方で、無顆粒球症や心筋炎といった重篤な有害事象のため、使用は厳格に規制されている。clozapineの非典型的な薬理作用を支える分子機序は、従来のドパミン受容体・セロトニン受容体拮抗作用だけでは十分に説明されていない。これと並行して、いくつかの抗精神病薬が、モノアミン作動性神経伝達に依存しない可能性のある形で細胞内キナーゼ経路に影響することが報告されているが、in vivoの状況によって結果が一致しない場合もある。こうした背景のもと著者らは、統合失調症関連の神経病理および動物モデルにおいてepidermal growth factor(EGF)とneuregulin/ErbBシグナル伝達が関与することを示した自身の先行研究、ならびにErbBキナーゼ阻害薬がこれらモデルで行動障害を改善し得るという証拠に基づき研究を進めた。本研究は、ErbB受容体チロシンキナーゼ(ErbB1/2/4)がclozapineの分子標的である、という仮説を検証する。神経伝達による交絡を減らすため、著者らはシナプス性モノアミン放出を伴わない非神経系のがん細胞株でのアッセイを重視しつつ、一次培養の皮質ニューロンおよびラット脳における急性in vivo効果も検討した。
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医歯学系
大学院医歯学総合研究科(医)
#学位論文
EGF/ニューレグリン受容体キナーゼのクロザピン依存的抑制
AI解説
- 背景と目的:
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clozapineは非定型抗精神病薬であり、陰性症状への有効性、錐体外路性副作用の軽減、自殺予防、従来型抗精神病薬に反応しない患者での有用性など、特徴的な臨床プロファイルをもつ。こうした利点がある一方で、無顆粒球症や心筋炎といった重篤な有害事象のため、使用は厳格に規制されている。clozapineの非典型的な薬理作用を支える分子機序は、従来のドパミン受容体・セロトニン受容体拮抗作用だけでは十分に説明されていない。これと並行して、いくつかの抗精神病薬が、モノアミン作動性神経伝達に依存しない可能性のある形で細胞内キナーゼ経路に影響することが報告されているが、in vivoの状況によって結果が一致しない場合もある。こうした背景のもと著者らは、統合失調症関連の神経病理および動物モデルにおいてepidermal growth factor(EGF)とneuregulin/ErbBシグナル伝達が関与することを示した自身の先行研究、ならびにErbBキナーゼ阻害薬がこれらモデルで行動障害を改善し得るという証拠に基づき研究を進めた。本研究は、ErbB受容体チロシンキナーゼ(ErbB1/2/4)がclozapineの分子標的である、という仮説を検証する。神経伝達による交絡を減らすため、著者らはシナプス性モノアミン放出を伴わない非神経系のがん細胞株でのアッセイを重視しつつ、一次培養の皮質ニューロンおよびラット脳における急性in vivo効果も検討した。
- 主要な発見:
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各種アッセイを通じて、検討した抗精神病薬(clozapine, olanzapine, haloperidol, risperidone)の中で、clozapineがErbBシグナル伝達に対して最も顕著な抑制的関係を示した。増殖/生存アッセイでは、clozapineとhaloperidol(30 μM)が、ErbBを発現するがん細胞株U87MGおよびA431の増殖/生存を有意に低下させ(全体効果:U87MG, F(4, 25)=24.86, P<0.001; A431, F(4, 25)=28.42, P<0.001)、clozapineでは用量依存性がみられた。リン酸化アッセイでは、clozapine(30 μM)がU87MG細胞(F(4, 10)=6.127, P=0.009)およびラット皮質ニューロン(F(4, 10)=7.480, P=0.005)において、EGFによって誘導されるErbB1のTyr1173リン酸化を抑制した。皮質ニューロンにおけるneuregulin-1誘発のErbB4 Tyr1284リン酸化については、clozapineとhaloperidolがシグナルを減弱させた一方(F(4,10)=20.99, P<0.001)、olanzapineとrisperidoneでは減弱はみられなかった。clozapineはニューロンにおいて、100 μMまで基礎的なErbB1 Tyr1173リン酸化を有意には変化させなかったが、基礎的なErbB4 Tyr1284リン酸化は低下させており、標的および状況(コンテキスト)依存の効果を示した。用量反応解析では、有意な抑制が始まる閾値と力価の違いが示され、ErbB1 Tyr1173リン酸化では30 μMから有意抑制が始まりIC50は約47 μM、ErbB4 Tyr1284リン酸化では10 μMから有意抑制が始まりIC50は約16 μMであった。clozapineはリガンド依存性の下流シグナルも低下させ、U87MG細胞でEGF刺激により誘導されるErk1/2およびAktリン酸化を用量依存的に減弱させた(対応するANOVA統計量が報告されている)。重要な点として、切断型の組換えキナーゼを用いたin vitro酵素アッセイにより直接阻害が示唆され、ErbB1とErbB4のキナーゼ活性は30 μMのclozapineで低下し(ErbB1: F(5,24)=7.91, P=0.001; ErbB4: F(5,24)=16.47, P<0.001)、ErbB2活性は3 μMですでに有意に低下した(F(5,24)=10.405, P<0.001)。in vivoでは、急性clozapine(20 mg/kg, i.p.)が海馬および前頭皮質で基礎的なErbB4リン酸化を低下させた一方、この条件下では基礎的なErbB1リン酸化への影響は検出されなかった。
- 方法論:
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本研究は、細胞の増殖/生存アッセイ、受容体およびシグナルのリン酸化測定、セルフリーのキナーゼ活性アッセイ、ならびにラットへの急性投与実験を組み合わせている。神経伝達物質放出による交絡を最小化するため、ErbB高発現が報告されているヒトがん細胞株としてU87MG(astroglioma)とA431(epidermoid carcinoma)を使用し、方法の記載ではMDA-MB-453にも言及している。細胞は96ウェルプレートに1ウェル当たり10^3で播種し、抗精神病薬曝露後48 hの増殖/生存をCell Counting Kit-8で定量した(スクリーニングでは主に30 μM、clozapineでは用量依存性も検討)。急性シグナルアッセイでは、細胞を10–12 h血清飢餓とし、抗精神病薬(0–100 μM)で20–30 min前処理したのち、EGFまたはneuregulin-1(30 ng/mL;neuregulin-1のスプライスバリアント間で共有されるEGFドメインペプチド)で5 min刺激した。一次培養ラット皮質ニューロンは胎生18–19日の新皮質から調製し、1.5 × 10^6 cells/dishで播種、無血清条件で5日間維持したのち、リン酸化アッセイでは同様の手順で処理した。Western blottingによりErbB受容体(部位特異的抗体を複数使用)および下流のErk1/2、Aktのリン酸化を定量し、標準化したロード量(通常20 μg/lane)と、背景に対するデンシトメトリー正規化を用いた。直接的な酵素阻害を検証するため、96ウェルのin vitroチロシンキナーゼアッセイで切断型組換えErbB1、ErbB2、またはErbB4キナーゼと、チロシン–グルタミン酸ヘテロポリマー基質を用いた。反応は4 mM ATP存在下で37 °C、30 min行い、450 nmで抗ホスホチロシン免疫検出により測定した。抗精神病薬との化学的干渉が推定されることを避けるため、dithiothreitolは添加しなかった。in vivo試験では、成体雄Sprague–Dawleyラットにclozapine 20 mg/kg(i.p.)を投与し、1 h後に安楽死させ、海馬と前頭皮質についてWestern blotで基礎的ErbBリン酸化を解析した。著者らは、動物実験およびサンプルロードにおいて無作為化とブラインド化は適用しなかったと報告している。統計解析では、小さなn(3–6)で大きな効果(d > 0.8およびη2 > 0.14)を重視し、正規性と分散の均一性を評価(Kolmogorov–Smirnov;Brown–Forsythe)したうえで、群間比較にはANOVAとTukeyの事後検定、または(Welch/Studentの)t検定に加え、必要に応じてBonferroni補正を用いた;有意水準はP < 0.05/Nとした。
- 結論と意義:
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著者らは、clozapineがErbBファミリー受容体チロシンキナーゼ、とりわけErbB1およびErbB4に対して「新規の生物学的反応性(novel biological reactivity)」を示すと結論づけている。その根拠として、細胞におけるリガンド誘導性受容体リン酸化と下流のErk/Akt活性化の抑制、in vitroでの組換えErbBキナーゼ活性の直接抑制、ならびに急性投与後のラット脳で基礎的ErbB4リン酸化が低下したことを挙げている。主要なアッセイが神経伝達を欠くがん細胞で行われ、さらにin vitroキナーゼアッセイでは酵素が単離されていることから、これらの効果は抗モノアミン作用に容易には帰せられないと主張する。本研究は、ErbB阻害がclozapineの独自の抗精神病薬プロファイルに寄与し得るという位置づけを提示し、ErbB阻害薬が統合失調症関連の行動障害を改善し得るという先行の動物モデル証拠とも整合するとする一方で、統合失調症でErbBシグナル伝達が上方制御か下方制御かについては論争が続いている点も指摘している。さらに著者らは、clozapineに関連する重篤な有害事象である心筋炎と無顆粒球症について、ErbB標的の抗がん薬でも類似の毒性が報告されていることから、ErbBキナーゼ阻害が関係し得ると提案するが、他のキナーゼや経路の関与もあり得ることを明示的に認めている。薬理学的には、培養系で観察された有効なμM濃度が脳内で到達し得る可能性を強調し、先行研究として、ラットで20 mg/kgのclozapineが血中約2.2 μM、脳内約47 μMをもたらすとの報告を引用し、慢性投与により脳内蓄積がさらに増える可能性を示唆している。同時に、複雑性と状況依存性も強調し、clozapineはニューロンまたはin vivoで基礎的ErbB1リン酸化に測定可能な影響を与えず、また一部のアッセイ(例:A431)では逆説的な挙動も示されたことから、基礎的シグナルとリガンド駆動性シグナルの効果解釈には慎重さが必要だとしている。
- 今後の展望:
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本論文は、将来研究に向けたいくつかの未解決課題を挙げている。第一に、clozapineがErbBシグナル伝達に及ぼす双方向性、または状況依存的な効果の分子機序は依然不明である。著者らは、ErbB1とErbB4でリガンド依存性が異なるように見える点——clozapineはリガンド誘導性ErbB1リン酸化は阻害したが、基礎的ErbB1リン酸化は阻害しなかった——を指摘し、基礎的ErbB1リン酸化はErbB1の自己キナーゼ活性だけでなく、clozapine非感受性の他のチロシンキナーゼ(例:ヘテロマー相互作用を介する)によって維持されている可能性を示唆している。第二に、より広い文献ではclozapineがin vivoでErk/Aktシグナルを増強すると関連づけられているという矛盾した所見があり、これは間接的な生理学的機序(例:Aktに対するインスリン関連作用、またはErbB1 transactivation経路)による可能性があるため、今後の研究では脳内での直接的キナーゼ阻害と、ネットワークレベルおよび神経伝達媒介性の間接効果を切り分ける必要があるとする。第三に、ErbBキナーゼ阻害が治療効果と重篤な副作用(心筋炎、無顆粒球症)の双方にどのように、またどの程度寄与するかを明確化するには追加の機序研究が必要であり、現時点のデータは他のシグナル分子の寄与を排除しないと述べる。最後に、clozapineに報告されている独自の化学反応性に着目し、この薬剤がErbBキナーゼとどのように相互作用するかについて、より決定的な機序理解を目指した分子レベルの研究が今後必要だと提案している。
- 背景と目的:
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は、統合失調症の治療に使われる「clozapine ( 統合失調症の治療に使われる非定型抗精神病薬です。従来の薬が効きにくい人にも効果が出ることがあり、自殺予防効果も報告されています。一方で重い副作用があり、使うには厳しい管理が必要です。) 」です。ほかの薬よりも、意欲の低下などの非定型抗精神病薬 ( 統合失調症などに使う薬のうち、古いタイプの薬より体のこわばりなどの副作用が少ない傾向がある薬のグループです。薬によって特徴が違い、clozapineのように独自の強みを持つものもあります。) に効きやすい、体がこわばるような副作用が少ない、自殺を防ぐ効果が期待できる、従来の薬が効きにくい人にも使える、などの特徴があります。陰性症状 ( 統合失調症で見られる症状のうち、意欲が出ない、感情表現が乏しい、人付き合いを避けるなど「本来あるはずの力が弱くなる」タイプの症状です。生活への影響が大きく、治療が難しいことがあります。)
一方で、 や無顆粒球症 ( 白血球の一種である好中球などが極端に減って、感染症にかかりやすくなる危険な副作用です。clozapineでは特に注意が必要で、定期的な血液検査が行われます。) のような命に関わる副作用があるため、使用は厳しく管理されています。心筋炎 ( 心臓の筋肉に炎症が起きる病気です。重症化すると命に関わるため、clozapine使用中は初期症状に注意が必要です。)
ただし、clozapineの働き方は、これまでよく知られている「ドパミン受容体やセロトニン受容体をブロックする作用」だけでは説明しきれません。そこで研究者たちは、clozapineが細胞内の別の仕組み、特に やEGF ( 細胞の増殖や生存を促すタンパク質で、細胞にある受容体に結合して信号を送ります。脳や体のさまざまな細胞で働き、研究ではErbB1を刺激する物質として使われます。) が関わるErbBという信号の通り道に影響するのではないかと考えました。neuregulin ( 細胞間の情報伝達に関わるタンパク質で、特に神経の発達や働きに関係します。研究ではErbB4などを刺激してシグナルを起こす物質として使われます。)
本研究の目的は、clozapineがErbB1やErbB2やErbB4といったErbB受容体の を標的として抑えるのかどうかを確かめることです。キナーゼ ( タンパク質などにリン酸を付ける酵素です。細胞内の信号伝達を進める中心的役割を持ち、がんや脳の病気の研究でも重要です。) の影響をできるだけ避けるため、神経細胞だけでなく、神経伝達が起きないがん細胞も使って調べました。神経伝達物質 ( 神経細胞どうしが情報をやり取りするために使う化学物質です。ドパミンやセロトニンなどが代表で、気分や意欲、運動などに関係します。)
- 主要な発見:
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複数の実験の結果、調べた抗精神病薬の中で、
がErbBのシグナル伝達を最も強く抑える傾向がありました。clozapine ( 統合失調症の治療に使われる非定型抗精神病薬です。従来の薬が効きにくい人にも効果が出ることがあり、自殺予防効果も報告されています。一方で重い副作用があり、使うには厳しい管理が必要です。)
がん細胞を使った実験では、clozapine(特に高い濃度)で細胞の増殖や生存が下がり、量が増えるほど効果が大きくなる傾向も見られました。
細胞内の反応を調べると、clozapineは によって起こるErbB1のEGF ( 細胞の増殖や生存を促すタンパク質で、細胞にある受容体に結合して信号を送ります。脳や体のさまざまな細胞で働き、研究ではErbB1を刺激する物質として使われます。) を抑えました。また、リン酸化 ( タンパク質にリン酸が付くことで働きが変わる反応です。スイッチのオンオフのように、細胞内の信号を動かす重要な仕組みとしてよく利用されます。) -1によって起こるErbB4のリン酸化も弱めました。ErbB4については、刺激がない状態でもclozapineでリン酸化が下がる場合があり、標的や状況によって効き方が変わることも示されました。neuregulin ( 細胞間の情報伝達に関わるタンパク質で、特に神経の発達や働きに関係します。研究ではErbB4などを刺激してシグナルを起こす物質として使われます。)
さらに、ErbBの下流にある やErk ( 細胞内の信号伝達に関わる分子で、細胞の増殖や分化などに関係します。ErbBの下流で活性化することがあり、リン酸化の増減で働きを評価します。) のシグナルも、clozapineによって弱くなりました。Akt ( 細胞の生存や代謝に関わる信号分子です。脳の働きや薬の作用とも関係があり、ErbBなどの刺激で活性化することがあります。)
重要な点として、細胞を使わず酵素だけを取り出した実験でも、clozapineがErbB1やErbB4、さらにErbB2の 活性を下げることが示され、直接的に抑えている可能性が高まりました。キナーゼ ( タンパク質などにリン酸を付ける酵素です。細胞内の信号伝達を進める中心的役割を持ち、がんや脳の病気の研究でも重要です。)
ラットへの投与実験では、 や海馬 ( 記憶や学習に関わる脳の部位です。精神疾患との関連も研究されています。) でErbB4のリン酸化が下がりましたが、ErbB1については明確な変化が見つかりませんでした。前頭皮質 ( 考える、判断する、感情を調整するなどに関係する脳の部位です。統合失調症の症状とも関係が深いと考えられています。)
- 方法論:
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この研究では、主に次の方法を組み合わせました。
がん細胞を培養して、薬を加えた後の増殖や生存を測る実験、受容体や下流シグナルの を調べる実験、酵素だけでリン酸化 ( タンパク質にリン酸が付くことで働きが変わる反応です。スイッチのオンオフのように、細胞内の信号を動かす重要な仕組みとしてよく利用されます。) 活性を測る実験、そしてラットにキナーゼ ( タンパク質などにリン酸を付ける酵素です。細胞内の信号伝達を進める中心的役割を持ち、がんや脳の病気の研究でも重要です。) を1回投与して脳内変化を調べる実験です。clozapine ( 統合失調症の治療に使われる非定型抗精神病薬です。従来の薬が効きにくい人にも効果が出ることがあり、自殺予防効果も報告されています。一方で重い副作用があり、使うには厳しい管理が必要です。)
リン酸化の測定は主に で行い、がん細胞としてU87MGやA431を用いました。ラットではclozapineを腹腔内に投与し、一定時間後に脳の特定部位を取り出して解析しました。Western blotting ( タンパク質の量やリン酸化の状態などを調べる実験方法です。目的のタンパク質に反応する抗体を使い、バンドとして検出します。)
- 結論と意義:
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研究者たちは、
がErbBファミリーの受容体チロシンclozapine ( 統合失調症の治療に使われる非定型抗精神病薬です。従来の薬が効きにくい人にも効果が出ることがあり、自殺予防効果も報告されています。一方で重い副作用があり、使うには厳しい管理が必要です。) 、特にErbB1とErbB4に対して、これまで注目されてこなかった新しい作用を示すと結論づけました。キナーゼ ( タンパク質などにリン酸を付ける酵素です。細胞内の信号伝達を進める中心的役割を持ち、がんや脳の病気の研究でも重要です。)
がん細胞のように神経伝達が関わらない系でも同じ傾向が見られ、さらに酵素単体でも活性が下がったことから、単にドパミンやセロトニンへの作用だけでは説明できない可能性があるとしています。
この結果は、clozapineの独特な治療効果にErbBの抑制が関わっているかもしれない、という考えを支持します。同時に、clozapineの重大な副作用( や心筋炎 ( 心臓の筋肉に炎症が起きる病気です。重症化すると命に関わるため、clozapine使用中は初期症状に注意が必要です。) )も、ErbBを標的にする抗がん薬で似た副作用が報告されていることから、ErbB抑制が一部関係する可能性があるとも述べています。ただし、他の分子や経路の影響も否定できないため、断定はしていません。無顆粒球症 ( 白血球の一種である好中球などが極端に減って、感染症にかかりやすくなる危険な副作用です。clozapineでは特に注意が必要で、定期的な血液検査が行われます。)
また、培養細胞で効いた濃度が、動物の脳内では到達しうるという報告も引用され、現実の体内でも起こりうる作用だと議論しています。
- 今後の展望:
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今後の課題として、次の点が挙げられます。
まず、 の作用が状況によって変わる理由(なぜErbB1では刺激がある時だけ効きやすいのかなど)の仕組みはまだ分かっていません。clozapine ( 統合失調症の治療に使われる非定型抗精神病薬です。従来の薬が効きにくい人にも効果が出ることがあり、自殺予防効果も報告されています。一方で重い副作用があり、使うには厳しい管理が必要です。)
次に、脳の中ではclozapineが やErk ( 細胞内の信号伝達に関わる分子で、細胞の増殖や分化などに関係します。ErbBの下流で活性化することがあり、リン酸化の増減で働きを評価します。) を逆に強めるという報告もあり、直接的な酵素阻害と、体内で起こる間接的な変化を分けて調べる必要があります。Akt ( 細胞の生存や代謝に関わる信号分子です。脳の働きや薬の作用とも関係があり、ErbBなどの刺激で活性化することがあります。)
さらに、ErbBの抑制が治療効果と重大な副作用の両方にどの程度関係するのかを、よりはっきりさせる追加研究が必要です。最後に、clozapineがErbB とどう結びつくのかを分子レベルで詳しく調べることが求められます。キナーゼ ( タンパク質などにリン酸を付ける酵素です。細胞内の信号伝達を進める中心的役割を持ち、がんや脳の病気の研究でも重要です。)
- 何のために?:
-
は、心の病気の薬です。クロザピン ( 統合失調症 などに使う薬の名前です。ほかの薬でよくならないときに使うことがありますが、命にかかわる強い副作用 が出ることがあるので、使うときは特 に注意して見守る必要 があります。)
の統合失調症 ( 考えや気持ちのまとまりがむずかしくなり、現実 とちがうことを強く信 じたり、声が聞こえるように感じたりすることがある心の病気です。治 りょうには薬や支 えが大切です。) 治 りょうに使います。
ほかの薬より、元気が出やすいです。
体がかたくなる が少なめです。副作用 ( 薬の目的 の働 きとは別 に、体に出てしまう望 ましくない反応 のことです。安全に使うために知っておく必要 があります。)
自分をきずつけるのをへらす力も。
でも、命にかかわる副作用 もあります。
だから、使うときは強く見はります。
この薬のしくみは、まだふしぎです。
よく知られた働 きだけでは足りません。
そこで、別 の体の合図に注目しました。
その合図は、 という道です。ErbB ( 細胞 の表面にある合図の受け取り口に関 わるしくみの名前です。細胞 の増 え方や生き方などに影響 し、病気の研究で大事になります。)
やEGF ( 細胞 に増 えるように合図を出すたんぱく質 の一つです。どの合図の道が動くかを調べるときに使われます。) がネウレグリン ( 細胞 にいろいろな合図を出すたんぱく質 の一つです。神経 などの働 きに関係 し、ErbBの合図を動かす材料 として研究に使われます。) 関 わります。
この研究は、薬がErbBを止めるかを見ます。
神経 の細胞 だけでなく、がん細胞 も使います。
がん細胞 は、神経 の会話が起きません。
- 何が分かったの?:
-
いくつかの薬をくらべて調べました。
その中で、 が一番強めでした。クロザピン ( 統合失調症 などに使う薬の名前です。ほかの薬でよくならないときに使うことがありますが、命にかかわる強い副作用 が出ることがあるので、使うときは特 に注意して見守る必要 があります。)
の合図を弱くすることが多かったです。ErbB ( 細胞 の表面にある合図の受け取り口に関 わるしくみの名前です。細胞 の増 え方や生き方などに影響 し、病気の研究で大事になります。)
がん細胞 では、細胞 がふえにくくなりました。
細胞 が生きにくくなることもありました。
薬の量 が多いほど、変化 が大きめでした。
細胞 の中の変化 も見ました。
で動くEGF ( 細胞 に増 えるように合図を出すたんぱく質 の一つです。どの合図の道が動くかを調べるときに使われます。) の合図が弱まりました。ErbB1 ( ErbBの中の一つの種類 で、細胞 が受け取る合図の入口の役目をします。どの入口が薬で弱まるかを見ることで、薬のしくみが分かります。)
で動くネウレグリン ( 細胞 にいろいろな合図を出すたんぱく質 の一つです。神経 などの働 きに関係 し、ErbBの合図を動かす材料 として研究に使われます。) も弱まりました。ErbB4 ( ErbBの中の一つの種類 で、特 に脳 や神経 の研究でよく出てきます。薬の効果 や副作用 と関係 する可能性 があるため重要 です。)
ときには、刺激 がなくても下がりました。
効 き方は、状況 で変 わるようです。
やErk ( 細胞 の中で合図を伝 える道の名前です。細胞 が増 えるかどうかなどに関係 し、合図が弱まったかを確 かめる目安になります。) という合図も弱まりました。Akt ( 細胞 が生きのこることなどに関 わる合図の道の名前です。薬が細胞 に与 える影響 を理解 するのに重要 です。)
だけを取り出した酵素 ( 体の中の化学反応を進めるたんぱく質 です。酵素 だけで調べると、薬が直接 はたらいているかを考えやすくなります。) 実験 もしました。
そこで、ErbB1の力が下がりました。
ErbB4の力も下がりました。
の力も下がりました。ErbB2 ( ErbBの中の一つの種類 です。ほかのErbBと組んで働 くことがあり、細胞 の増 え方などに関係 します。)
つまり、薬が直接 おさえるかもしれません。
ラットにも薬を一回あげました。
脳 の で、ErbB4が下がりました。海馬 ( 脳 の中の場所の名前で、記おくなどに関係 します。脳 のどの場所で変化 が起きたかを示 すために重要 です。)
前の方の脳 でも、ErbB4が下がりました。
でも、ErbB1ははっきりしませんでした。
- どうやったの?:
-
この研究は、いくつかの
実験 をしました。
がん細胞 をそだてて、薬を入れました。
そのあと、細胞 がふえるかを見ました。
細胞 が生きているかも調べました。
また、合図が出る目じるしも調べました。
これは、たんぱく質 の形の変化 です。
というウエスタンブロット ( 細胞 の中のたんぱく質 を取り出して、どれくらいあるかや形の変化 を調べる実験 方法 です。研究で合図が出たかどうかを確 かめるのに使います。) 方法 を使います。
がん細胞 は、 やU87MG ( 研究で使われるがん細胞 の種類 の名前です。薬の影響 を細胞 で調べるための材料 になります。) を使いました。A431 ( 研究で使われるがん細胞 の種類 の名前です。合図のしくみを調べる実験 でよく使われます。)
さらに、 だけで力をはかりました。酵素 ( 体の中の化学反応を進めるたんぱく質 です。酵素 だけで調べると、薬が直接 はたらいているかを考えやすくなります。)
そして、ラットの脳 も調べました。
薬は、おなかの中に しました。注しゃ ( 薬を体の中に入れる方法 の一つです。動物実験 では薬を決まった量 で確実 に入れるために使われます。)
しばらくして、脳 の一部を取り出しました。
- 研究のまとめ:
-
研究者は、薬に新しい
働 きがあると言います。
は、クロザピン ( 統合失調症 などに使う薬の名前です。ほかの薬でよくならないときに使うことがありますが、命にかかわる強い副作用 が出ることがあるので、使うときは特 に注意して見守る必要 があります。) をおさえるかもしれません。ErbB ( 細胞 の表面にある合図の受け取り口に関 わるしくみの名前です。細胞 の増 え方や生き方などに影響 し、病気の研究で大事になります。)
とくに、 とErbB1 ( ErbBの中の一つの種類 で、細胞 が受け取る合図の入口の役目をします。どの入口が薬で弱まるかを見ることで、薬のしくみが分かります。) が大事です。ErbB4 ( ErbBの中の一つの種類 で、特 に脳 や神経 の研究でよく出てきます。薬の効果 や副作用 と関係 する可能性 があるため重要 です。)
がん細胞 でも同じように見えました。
だから、神経 の会話だけの話ではなさそうです。
だけでも力が下がりました。酵素 ( 体の中の化学反応を進めるたんぱく質 です。酵素 だけで調べると、薬が直接 はたらいているかを考えやすくなります。)
そのため、直接 おさえる可能性 が高いです。
この働 きが、薬の良 さにつながるかもしれません。
でも、こわい にも副作用 ( 薬の目的 の働 きとは別 に、体に出てしまう望 ましくない反応 のことです。安全に使うために知っておく必要 があります。) 関 わるかもしれません。
似 た副作用 が、別 の薬でもあります。
ただし、まだ言いきれないとしています。
ほかのしくみの影響 もあるかもしれません。
体の中でも起こりうる、と話しています。
- これからどうする?:
-
まず、なぜ
効 き方が変 わるのか知りたいです。
たとえば、 はErbB1 ( ErbBの中の一つの種類 で、細胞 が受け取る合図の入口の役目をします。どの入口が薬で弱まるかを見ることで、薬のしくみが分かります。) 刺激 の時だけかもしれません。
その理由は、まだ分かっていません。
つぎに、体の中での変化 も見分けたいです。
脳 では、 やErk ( 細胞 の中で合図を伝 える道の名前です。細胞 が増 えるかどうかなどに関係 し、合図が弱まったかを確 かめる目安になります。) が強まるAkt ( 細胞 が生きのこることなどに関 わる合図の道の名前です。薬が細胞 に与 える影響 を理解 するのに重要 です。) 報告 もあります。
直接 の力と、間接 の変化 を分けて調べます。
さらに、良 い効果 との関係 をはっきりさせます。
こわい との副作用 ( 薬の目的 の働 きとは別 に、体に出てしまう望 ましくない反応 のことです。安全に使うために知っておく必要 があります。) 関係 も調べます。
最後 に、薬がどうくっつくかも知りたいです。
とても小さなレベルで調べる必要 があります。
- 著者名:
- 小林 雄太朗
- 新潟大学学術リポジトリリンク:
- http://hdl.handle.net/10191/0002000285
