論文詳細
医歯学系
大学院医歯学総合研究科(医)
#学位論文
ミトコンドリア型Far複合体とAtg32の結合と解離によるマイトファジー制御
- AI解説:
- オートファジーは、進化的に保存された分解経路であり、非選択的(バルクオートファジー)にも、特定の細胞内標的に対する選択的な形でも働きます。ミトファジーは、ミトコンドリアを選択的にオートファジーで入れ替える仕組みで、ミトコンドリアの品質と量の制御が多様な病態の予防に関わることから、特に重要です。*Saccharomyces cerevisiae*(出芽酵母)では、ミトファジーにミトコンドリア外膜受容体Atg32が必要です。ミトファジーが誘導されると(例:窒素飢餓、または非発酵性培地での定常期)、Atg32はcasein kinase 2(CK2)によりSer114とSer119がリン酸化され、これがアダプターAtg11との相互作用を促進して、ミトコンドリアの周囲でのオートファゴソーム形成を開始します。著者らの先行研究では、PP2A様ホスファターゼPpg1がFar complex(Far3、Far7、Far8、Far9、Far10、Far11)とともにAtg32を脱リン酸化し、その結果ミトファジーを阻害することが示されていました。しかし、ER(小胞体)関連のFar complexがどのようにミトコンドリアの基質に作用できるのか、Ppg1がFar complexの構造にどのように組み込まれているのか、そしてミトファジー誘導条件下でこの阻害がどのように解除されるのかは不明でした。本研究は、Far complexの局在、組み立て要件、Atg32との制御された相互作用を解析することで、これらの機構上の空白を解消することを目的としました。
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医歯学系
大学院医歯学総合研究科(医)
#学位論文
ミトコンドリア型Far複合体とAtg32の結合と解離によるマイトファジー制御
AI解説
- 背景と目的:
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オートファジーは、進化的に保存された分解経路であり、非選択的(バルクオートファジー)にも、特定の細胞内標的に対する選択的な形でも働きます。ミトファジーは、ミトコンドリアを選択的にオートファジーで入れ替える仕組みで、ミトコンドリアの品質と量の制御が多様な病態の予防に関わることから、特に重要です。*Saccharomyces cerevisiae*(出芽酵母)では、ミトファジーにミトコンドリア外膜受容体Atg32が必要です。ミトファジーが誘導されると(例:窒素飢餓、または非発酵性培地での定常期)、Atg32はcasein kinase 2(CK2)によりSer114とSer119がリン酸化され、これがアダプターAtg11との相互作用を促進して、ミトコンドリアの周囲でのオートファゴソーム形成を開始します。著者らの先行研究では、PP2A様ホスファターゼPpg1がFar complex(Far3、Far7、Far8、Far9、Far10、Far11)とともにAtg32を脱リン酸化し、その結果ミトファジーを阻害することが示されていました。しかし、ER(小胞体)関連のFar complexがどのようにミトコンドリアの基質に作用できるのか、Ppg1がFar complexの構造にどのように組み込まれているのか、そしてミトファジー誘導条件下でこの阻害がどのように解除されるのかは不明でした。本研究は、Far complexの局在、組み立て要件、Atg32との制御された相互作用を解析することで、これらの機構上の空白を解消することを目的としました。
- 主要な発見:
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著者らは、Far complexの構成要素がERだけでなくミトコンドリアにも顕著に局在すること(例:GFPタグ付きFarタンパク質のいくつかで、93%~96%の細胞でミトコンドリアシグナル)を報告しています。強制局在によって機能を切り分けると、Atg32の脱リン酸化を担うのはERではなくミトコンドリアのFar complexであることが示されました。具体的には、Far9のtail-anchorをTom5TA(ミトコンドリア特異的)に置換するとAtg32は脱リン酸化状態のまま維持された一方、Cyb5TA(ER特異的)に置換するとAtg32は高度にリン酸化されました。こうした局在差は機能出力の違いにも対応しており、ER局在のFar9はTORC2関連表現型におけるFar complexの役割を支えたのに対し、ミトコンドリアに固定したFar9はTORC2シグナル伝達アッセイで完全には機能しませんでした。機能的には、ミトコンドリア固定Far9(FAR9-TOM5TA)はミトファジーとAtg32リン酸化を強く阻害したのに対し、ER固定Far9(FAR9-CYB5TA)と*far9Δ*は野生型に比べてミトファジーを増加させました。ミトコンドリア固定Far9の阻害効果はPpg1を必要とし、Ppg1の過剰発現でさらに強まることはありませんでした。このことから著者らは、ミトコンドリア局在のFar complexがPpg1依存的ミトファジー阻害における律速要因であると論じています。機構面では、Far11がPpg1に結合する主要なFar構成要素として浮かび上がり、Ppg1のホスファターゼ活性(Ppg1-H111Nで検証)が、Ppg1–Far11サブ複合体をFar complexコアへ安定に組み込むのに必要であることが示されました(特にFar8–Far11相互作用とFar11局在が阻害されることが注目点です)。基質認識については、Far complexはリン酸化Atg32と優先的に会合し、その結合はin vivoでAtg32の残基151–200に依存し、さらにコアFar構成要素(Far3/Far7/Far8/Far9)を必要としました。重要な点として、Far8はin vitroでAtg32に直接結合し、この結合にはAtg32の残基201–250が必要であることから、相互作用領域は151–250にまたがることが示されました。ミトファジー誘導条件(飢餓またはrapamycin)下では、Far complexの完全性と局在は変化しませんでしたが、Far8–Atg32相互作用は弱まり、制御された解離と整合的でした。最後に、Far8–Atg32キメラによる人工的なtethering(係留)では、Atg32部分がPpg1およびFar依存的に非リン酸化状態に保たれ、ミトファジーが著しく損なわれました。一方で*ppg1Δ*はリン酸化とミトファジーの両方を回復させ、Far complexがAtg32と物理的に会合すること自体が阻害的であるという主張を支持しました。
- 方法論:
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本研究では、出芽酵母を用いて遺伝学的、細胞生物学的、生化学的手法を用いました。Far complexの局在は、GFPタグ付きFarタンパク質を発現する株で蛍光顕微鏡により調べました(N末端またはC末端タグは、Atg32脱リン酸化を指標に機能性を検証)。ミトコンドリアはMitoTracker Red CMXRosで染色し、各実験で100細胞超を独立反復を伴って定量しました。ERとミトコンドリアの機能を分離するため、著者らはFar9のtail-anchor置換を設計し、Far9(および結果として多くの他のFarタンパク質)をミトコンドリア(Tom5TA)またはER(Cyb5TA)へ強制局在させました。また、膜アンカーの必要性を調べるためにtail-anchor欠失変異体(Far9ΔTA、Far10ΔTA)も作製しました。ミトファジーは、乳酸培地での増殖および定常期移行中にIdh1-GFP processing assayでモニターし、遊離GFPの産生を免疫ブロットで半定量的に評価しました(陰性対照は*atg1Δ*)。TORC2関連機能は、温度感受性TORC2構成要素変異体(tsc11-1/avo3-1)を用い、37°Cでの増殖により、Far9局在バリアントがその経路文脈で機能的なFar complex構成要素として振る舞うかを検定しました。タンパク質間相互作用と複合体組み立ては、酵母ライセートからの免疫沈降(FLAG-His6-Ppg1に対するanti-FLAG、Far8または3HA-Atg32に対するanti-Far8またはanti-HA)で解析し、依存関係を同定するために系統的なFAR遺伝子欠失も行いました。組み立てにおけるPpg1触媒活性の役割は、触媒不活性なPpg1-H111N変異体で検証しました。基質リン酸化依存性は、Atg32変異体(2SA:S114A/S119A、2SD:S114D/S119D)およびAtg32Δ151–200欠失で評価しました。直接結合は、組換えHis6-Far8と、細菌で発現させたGST-Atg32トランケーション(N250、N200、N150)を用いたGST pull-down assayで調べ、相互作用に必要な最小領域をマッピングしました。最後に、Far8–Atg32キメラタンパク質を発現させてtetheringを強制し、Atg32のリン酸化状態とミトファジーへの影響を評価するとともに、Far11-GFPの局在を併せて解析して、このキメラがFar complexの挙動に機能的に組み込まれうるかを検討しました。
- 結論と意義:
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本論文は、酵母におけるFar/STRIPAKの機能が空間的に分割されており、その分割がミトファジー制御の中核であると結論づけています。具体的には、ER局在プールではなくミトコンドリア局在のFar complex集団が、ミトファジー受容体Atg32をPpg1依存的に脱リン酸化し、非誘導条件下でミトファジーを抑制します。一方、ER局在のFar complex集団はTORC2経路の制御に寄与し、同一複合体内でも局在依存的に役割が異なることが示されました。さらに本研究は、Ppg1が単なる随伴ホスファターゼではなく、そのホスファターゼ活性を通じてPpg1–Far11サブ複合体のFar complexコアへの適切な取り込みに必要であると論じ、酵素活性と複合体組み立てを結びつける機構的連関を提示しています。基質レベルでは、Far complexがAtg32と会合することがAtg32のリン酸化とミトファジーを阻害し、ミトファジー誘導によりFar complex自体を解体・再局在化させることなく、Far complex–Atg32相互作用が弱まる/解離するという制御モデルが提案されています。Far8–Atg32の直接相互作用と、強制tetheringによる強い阻害効果は、会合/解離の制御が決定的な制御段階であるという考えを強く支持します。より広い観点では、これらの知見はSTRIPAK複合体の局在、組み立て、基質関与を理解するための機構的枠組みとして位置づけられています。
- 今後の展望:
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著者らは、結果から直接導かれる未解決の問いをいくつか挙げています。第一に、Ppg1のホスファターゼ活性がFar complexの組み立てを促進する機構は不明のままであり、データはFar11および/または他のFarタンパク質がリン酸化で制御される可能性を示唆するものの、関連する修飾部位や因果関係は特定されていません。第二に、ミトファジー誘導でFar complexのAtg32結合が弱まる一方、その解離を引き起こすシグナルや分子イベントは同定されていません。重要な点として本研究は、Far complexの大規模な解体や移動(translocation)が説明にならないことを示しており、今後の研究対象を制御的修飾やパートナー相互作用に絞り込んでいます。第三に、リン酸化や他の翻訳後修飾が、(i) Far complexの組み立てと (ii) Far complex–Atg32結合ダイナミクスの両方を制御するのかどうかは不確かであり、*ppg1Δ*細胞やミトファジー誘導条件下でFarタンパク質修飾を調べる必要があると提案しています。さらに、野生型条件で細胞がミトコンドリア局在とER局在のFar complex集団をどのようにバランスさせているのか(生理状態に応じて分布がどう変化するかの定量を含む)も未解決の問題として指摘されています。最後に、TORC2シグナル伝達とミトファジー関連機能に対して、(Tpd3および/または他のPP2Aファミリー触媒サブユニットが関わる可能性を含む)異なるFar含有サブ集団がどのように寄与するのかを明確化する必要があると述べています。
- 背景と目的:
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は、細胞の中のいらなくなったものを分解して再利用する仕組みです。これには、まとめて分解するタイプと、特定のものだけを狙って分解するタイプがあります。オートファジー ( 細胞の中の不要な成分を膜で包んで分解し、材料として再利用する仕組みです。栄養不足などのストレス時に働きやすく、細胞の健康維持に重要です。)
はその中でも、ミトファジー ( オートファジーのうち、ミトコンドリアを選んで分解する仕組みです。傷んだミトコンドリアを減らして、細胞のエネルギー産生や安全性を保つのに重要です。) だけを選んで分解し、新しい状態に保つ仕組みです。ミトコンドリアの量や質を適切に保つことは、いろいろな病気を防ぐことにつながるため重要です。ミトコンドリア ( 細胞のエネルギーを作る中心的な小器官です。傷むと細胞に悪影響が出るため、数や質の管理が大切です。)
出芽酵母では、ミトファジーに というタンパク質が必要です。ミトファジーが始まる条件になると、Atg32の決まった場所がAtg32 ( 出芽酵母でミトファジーを進めるための受容体となるミトコンドリア外膜タンパク質です。リン酸化状態によって働きが切り替わります。) という酵素でCK2 ( タンパク質をリン酸化する酵素の一種です。Atg32の特定の部位をリン酸化して、ミトファジー開始に必要な結合を起こしやすくします。) され、その結果リン酸化 ( タンパク質にリン酸が付く化学的な変化です。スイッチのようにタンパク質の働きや結合相手を変えるため、細胞の制御でよく使われます。) というタンパク質と結びつきやすくなり、ミトコンドリアの周りでオートファジーの膜が作られ始めます。Atg11 ( 選択的オートファジーで標的を集めるためのアダプタータンパク質です。Atg32などと結合して、オートファジー装置を呼び込む役割があります。)
一方で、 という酵素とPpg1 ( リン酸を外す酵素で、PP2Aに似たタイプです。Far complexと協力してAtg32を脱リン酸化し、ミトファジーを抑える方向に働きます。) というタンパク質の集まりは、Atg32のリン酸化を外してミトファジーを止めることが、これまでの研究で示されていました。しかし、Far complexは主にFar complex ( Far3やFar7など複数のタンパク質からなる複合体です。場所によって役割が変わり、ミトコンドリア側ではミトファジー抑制に関わります。) にあると考えられていたため、どうやってミトコンドリア上のAtg32に作用できるのか、Ppg1がFar complexの中でどう働くのか、そしてミトファジーが必要なときにこの「止める仕組み」がどう解除されるのかが分かっていませんでした。小胞体 ( 細胞内でタンパク質や脂質を作ったり運んだりする小器官です。いろいろなタンパク質複合体の働く場所にもなります。)
この研究は、Far complexが細胞のどこにあり、どう組み立てられ、Atg32とどう関わるのかを調べて、これらの疑問を解決することを目的としています。
- 主要な発見:
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の構成タンパク質は、Far complex ( Far3やFar7など複数のタンパク質からなる複合体です。場所によって役割が変わり、ミトコンドリア側ではミトファジー抑制に関わります。) だけでなく小胞体 ( 細胞内でタンパク質や脂質を作ったり運んだりする小器官です。いろいろなタンパク質複合体の働く場所にもなります。) にも多く存在することが分かりました。そして、ミトコンドリア ( 細胞のエネルギーを作る中心的な小器官です。傷むと細胞に悪影響が出るため、数や質の管理が大切です。) のAtg32 ( 出芽酵母でミトファジーを進めるための受容体となるミトコンドリア外膜タンパク質です。リン酸化状態によって働きが切り替わります。) を外してリン酸化 ( タンパク質にリン酸が付く化学的な変化です。スイッチのようにタンパク質の働きや結合相手を変えるため、細胞の制御でよく使われます。) を抑える働きは、小胞体側ではなく「ミトコンドリア側にあるFar complex」が担っていることが示されました。ミトファジー ( オートファジーのうち、ミトコンドリアを選んで分解する仕組みです。傷んだミトコンドリアを減らして、細胞のエネルギー産生や安全性を保つのに重要です。)
Far9というタンパク質の膜への付着部分を入れ替えて、Far complexをミトコンドリアに固定するとAtg32はリン酸化されにくいままで、逆に小胞体に固定するとAtg32は強くリン酸化されました。つまり、Far complexがどこにあるかで働きが変わることが分かりました。
さらに、ミトコンドリアに固定したFar complexはミトファジーを強く止めましたが、この効果には が必要でした。またPpg1を増やしても効果はあまり強くならなかったため、ミトコンドリアにあるFar complexの量や状態が「止める力」の上限を決めていると考えられました。Ppg1 ( リン酸を外す酵素で、PP2Aに似たタイプです。Far complexと協力してAtg32を脱リン酸化し、ミトファジーを抑える方向に働きます。)
仕組みの面では、Far11がPpg1と結びつく中心的な相手であることが分かりました。また、Ppg1の酵素としての働きが、Ppg1とFar11がFar complex全体に安定して組み込まれるために必要でした。
Atg32との関係では、Far complexはリン酸化されたAtg32と結びつきやすく、その結合にはAtg32の特定の領域が必要でした。さらにFar8はAtg32に直接結合できることも示されました。
ミトファジーが誘導される条件になると、Far complex自体が壊れたり移動したりするのではなく、Far8とAtg32の結びつきが弱まることが分かりました。加えて、Far8とAtg32を人工的につなぎっぱなしにすると、Atg32がリン酸化されにくくなり、ミトファジーが強く抑えられました。つまり、Far complexがAtg32と結びつくこと自体がミトファジーを止める方向に働き、必要なときには両者が離れることが重要だと示されました。
- 方法論:
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出芽酵母を使い、遺伝子を改変する実験、細胞の中での位置を観察する実験、タンパク質同士の結合を調べる実験が行われました。
が細胞のどこにあるかは、Farタンパク質にFar complex ( Far3やFar7など複数のタンパク質からなる複合体です。場所によって役割が変わり、ミトコンドリア側ではミトファジー抑制に関わります。) を付けて蛍光顕微鏡で観察し、GFP ( 光るタンパク質で、細胞内でタンパク質がどこにあるかを見えるようにする目印です。) は染色して区別しました。ミトコンドリア ( 細胞のエネルギーを作る中心的な小器官です。傷むと細胞に悪影響が出るため、数や質の管理が大切です。)
Far9の膜への付着部分を入れ替えることで、Far complexをミトコンドリアまたは に強制的に配置し、小胞体 ( 細胞内でタンパク質や脂質を作ったり運んだりする小器官です。いろいろなタンパク質複合体の働く場所にもなります。) のAtg32 ( 出芽酵母でミトファジーを進めるための受容体となるミトコンドリア外膜タンパク質です。リン酸化状態によって働きが切り替わります。) 状態やリン酸化 ( タンパク質にリン酸が付く化学的な変化です。スイッチのようにタンパク質の働きや結合相手を変えるため、細胞の制御でよく使われます。) への影響を比べました。ミトファジー ( オートファジーのうち、ミトコンドリアを選んで分解する仕組みです。傷んだミトコンドリアを減らして、細胞のエネルギー産生や安全性を保つのに重要です。)
ミトファジーは、ミトコンドリア内部のIdh1-GFPが分解されたときに出てくるGFPを測る方法で評価しました。
また、 という方法でタンパク質同士が細胞内で結合しているかを調べ、さらに試験管内の実験でFar8とAtg32の直接結合も確認しました。免疫沈降 ( 抗体を使って特定のタンパク質を取り出し、一緒に結合している相手も調べる方法です。細胞内でのタンパク質同士のつながりを確かめるのに使います。)
- 結論と意義:
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この研究は、
がFar complex ( Far3やFar7など複数のタンパク質からなる複合体です。場所によって役割が変わり、ミトコンドリア側ではミトファジー抑制に関わります。) と小胞体 ( 細胞内でタンパク質や脂質を作ったり運んだりする小器官です。いろいろなタンパク質複合体の働く場所にもなります。) の両方に存在し、場所によって役割が分かれていることを示しました。ミトコンドリアにあるFar complexは、ミトコンドリア ( 細胞のエネルギーを作る中心的な小器官です。傷むと細胞に悪影響が出るため、数や質の管理が大切です。) と協力してPpg1 ( リン酸を外す酵素で、PP2Aに似たタイプです。Far complexと協力してAtg32を脱リン酸化し、ミトファジーを抑える方向に働きます。) のAtg32 ( 出芽酵母でミトファジーを進めるための受容体となるミトコンドリア外膜タンパク質です。リン酸化状態によって働きが切り替わります。) を外し、ふだんはリン酸化 ( タンパク質にリン酸が付く化学的な変化です。スイッチのようにタンパク質の働きや結合相手を変えるため、細胞の制御でよく使われます。) を抑えます。一方、小胞体にあるFar complexは別の経路であるミトファジー ( オートファジーのうち、ミトコンドリアを選んで分解する仕組みです。傷んだミトコンドリアを減らして、細胞のエネルギー産生や安全性を保つのに重要です。) の制御に関わります。TORC2 ( 細胞の成長や膜の状態などを調整するシグナル伝達の仕組みの一つです。この研究では、小胞体側のFar complexがTORC2の制御に関わることが示されました。)
さらに、ミトファジーが必要になると、Far complexが壊れたり場所を変えたりするのではなく、Far complexとAtg32の結合が弱まって離れることが、ミトファジー開始の重要な切り替え点だというモデルが提案されました。これは、STRIPAKという広く保存された複合体の働きを理解するうえでも役立つ考え方です。
- 今後の展望:
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今後の課題として、次の点が挙げられます。
の酵素活性が、なぜPpg1 ( リン酸を外す酵素で、PP2Aに似たタイプです。Far complexと協力してAtg32を脱リン酸化し、ミトファジーを抑える方向に働きます。) の組み立てを助けるのかという仕組みはまだ分かっていません。Farタンパク質のどこが修飾され、どう影響するのかを調べる必要があります。Far complex ( Far3やFar7など複数のタンパク質からなる複合体です。場所によって役割が変わり、ミトコンドリア側ではミトファジー抑制に関わります。)
また、 誘導時にFar complexとミトファジー ( オートファジーのうち、ミトコンドリアを選んで分解する仕組みです。傷んだミトコンドリアを減らして、細胞のエネルギー産生や安全性を保つのに重要です。) が「どういう合図で」離れるのかも不明です。Far complexが大きく壊れたり移動したりしないことは示されたため、別の修飾や相互作用の変化が鍵だと考えられます。Atg32 ( 出芽酵母でミトファジーを進めるための受容体となるミトコンドリア外膜タンパク質です。リン酸化状態によって働きが切り替わります。)
さらに、細胞がふだん 側とミトコンドリア ( 細胞のエネルギーを作る中心的な小器官です。傷むと細胞に悪影響が出るため、数や質の管理が大切です。) 側のFar complexの割合をどう調整しているのか、条件によって分布がどう変わるのかも重要な未解決問題です。最後に、小胞体 ( 細胞内でタンパク質や脂質を作ったり運んだりする小器官です。いろいろなタンパク質複合体の働く場所にもなります。) の制御とミトファジー制御で、似た複合体の別タイプがどう働き分けているのかも明らかにする必要があります。TORC2 ( 細胞の成長や膜の状態などを調整するシグナル伝達の仕組みの一つです。この研究では、小胞体側のFar complexがTORC2の制御に関わることが示されました。)
- 何のために?:
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は、オートファジー ( 細胞 の中の古くなった物やいらない物を分解 して、材料 として作り直すしくみ。細胞 を元気に保 つ基本 のはたらきで、病気との関係 も調べられます。) のおそうじです。細胞 ( 生き物の体を作るとても小さな部品。体のはたらきは細胞 の中のしくみで決まります。)
いらないものをこわし、また使います。
まとめてこわすやり方もあります。
ねらった物だけこわすやり方もあります。
は、その一つです。ミトファジー ( オートファジーの中でも、ミトコンドリアだけを選 んで分解 するしくみ。ミトコンドリアの質 を保 つために重要 です。)
だけをこわします。ミトコンドリア ( 細胞 の中にある、エネルギーを作るはたらきが強い部分。こわれると体の調子に影響 するので、元気に保 つことが大事です。)
ミトコンドリアを元気に保 ちます。
これで、病気を防 ぐ助けになります。
パンづくりにも使う で調べます。酵母 ( パンづくりなどに使われる小さな生き物。実験 で人の細胞 に近いしくみを調べるモデルとしてよく使われます。)
酵母 の細胞 にもミトコンドリアがあります。
ミトファジーには がいります。Atg32 ( 酵母 でミトファジーを進めるために必要 なたんぱく質 。ミトコンドリアを分解 の流れに乗せる目印 のような役目をします。)
Atg32は、 の一つです。たんぱく 質 ( 体や細胞 の中で、動きや反応 を進める材料 や道具になる物質 。たくさんのしくみはたんぱく質 の働 きで動きます。)
ミトファジーが始まるとき、合図が出ます。
その合図で、Atg32が変化 します。
というCK2 ( たんぱく質 を変化 させるはたらきを持つ酵素 。Atg32の状態 を変 えて、次の反応 が起きやすいようにします。) が、その酵素 ( 体の中の反応 を速く進めるたんぱく質 。細胞 のしくみを動かす中心的 な存在 です。) 変化 をします。
すると とくっつきやすくなります。Atg11 ( Atg32などとくっついて、ミトファジーの進行を助けるたんぱく質 。必要 な相手と結 びつくことで工程 が進みます。)
そのあと、ミトコンドリアを包 む ができます。膜 ( 細胞 や細胞 の中の部分を包 むうすい壁 。ミトコンドリアを包 んで分解 へ運ぶなど、区切りや運びに重要 です。)
でも、止める仕組みもあります。
というPpg1 ( ミトファジーを止める側 で働 く酵素 。Atg32の変化 を戻 す方向に関 わり、止める調節 に必要 です。) 酵素 が関 わります。
というたんぱくFar complex ( いくつかのFarたんぱく質 が集まったまとまり。場所によってミトファジーを止めたり別 の調節 に関 わったりします。) 質 の集まりもです。
この集まりは、Atg32の変化 を外します。
それで、ミトファジーが止まると分かっていました。
ただ、分からないことがありました。
Far complexは にあると思われていました。小胞体 ( 細胞 の中にある、膜 でできた袋 状 のしくみ。たんぱく質 や脂質 に関 わる働 きがあり、他の部分との連絡 も重要 です。)
小胞体 は、細胞 の中の袋 の場所です。
どうやってミトコンドリアに届 くのか不明 でした。
この研究は、そのなぞを調べます。
- 何が分かったの?:
-
はFar complex ( いくつかのFarたんぱく質 が集まったまとまり。場所によってミトファジーを止めたり別 の調節 に関 わったりします。) だけにいません。小胞体 ( 細胞 の中にある、膜 でできた袋 状 のしくみ。たんぱく質 や脂質 に関 わる働 きがあり、他の部分との連絡 も重要 です。)
にも、たくさんありました。ミトコンドリア ( 細胞 の中にある、エネルギーを作るはたらきが強い部分。こわれると体の調子に影響 するので、元気に保 つことが大事です。)
を止めるのは、ミトコンドリアミトファジー ( オートファジーの中でも、ミトコンドリアだけを選 んで分解 するしくみ。ミトコンドリアの質 を保 つために重要 です。) 側 でした。
Far complexの場所を、わざと変 えました。
ミトコンドリアに固定 すると、 はAtg32 ( 酵母 でミトファジーを進めるために必要 なたんぱく質 。ミトコンドリアを分解 の流れに乗せる目印 のような役目をします。) 変化 しにくいです。
小胞体 に固定 すると、Atg32は強く変化 しました。
つまり、場所で働 きが変 わりました。
ミトコンドリア側 のFar complexは強く止めます。
この止める力には がPpg1 ( ミトファジーを止める側 で働 く酵素 。Atg32の変化 を戻 す方向に関 わり、止める調節 に必要 です。) 必要 でした。
Ppg1を増 やしても、止める力はあまり上がりません。
だから、Far complexの量 や状態 が大事だと考えました。
は、Ppg1の大事な相手でした。Far11 ( Far complexの中のたんぱく質 の一つで、Ppg1と関係 が深い相手。集まりを安定させる点が重要 です。)
Ppg1の働 きは、集まりを安定させました。
Far complexは、変化 したAtg32と結 びつきやすいです。
結 びつくには、Atg32のある部分が必要 でした。
はAtg32にFar8 ( Far complexの中のたんぱく質 の一つで、Atg32に直接 くっつく役目があるとされた部分。くっつき具合が開始や停止 の切りかえに関 わります。) 直接 くっつけました。
ミトファジーが必要 になると、集まりはこわれません。
集まりも、大きく動きません。
かわりに、Far8とAtg32の結 びつきが弱くなりました。
2つを無理 につなぐと、Atg32は変化 しにくいです。
そして、ミトファジーは強く止まりました。
だから、ふだんはくっついて止めています。
必要 なときは、はなれるのが大事です。
- どうやったの?:
-
を使って出芽 酵母 ( 分かれ方に特徴 がある酵母 で、実験 によく使われる種類 。細胞 の基本 のしくみを調べやすい利点 があります。) 実験 しました。
を少し遺伝子 ( たんぱく質 の作り方などが書かれた情報 。少し変 えることで、どの部品がどんな役目かを確 かめられます。) 変 えて調べました。
の中の場所も見ました。細胞 ( 生き物の体を作るとても小さな部品。体のはたらきは細胞 の中のしくみで決まります。)
どうしの、くっつきも調べました。たんぱく 質 ( 体や細胞 の中で、動きや反応 を進める材料 や道具になる物質 。たくさんのしくみはたんぱく質 の働 きで動きます。)
Farたんぱく質 に をつけました。GFP ( 光るたんぱく質 で、目じるしとして目的 のたんぱく質 に付 けて場所や量 を見ます。細胞 の中での動きを調べるのに重要 です。)
GFPは光る目じるしです。
で光を見て、場所を調べました。けんび 鏡 ( とても小さい物を大きく見えるようにする道具。細胞 内の場所や光る目じるしを観察 します。)
は色でミトコンドリア ( 細胞 の中にある、エネルギーを作るはたらきが強い部分。こわれると体の調子に影響 するので、元気に保 つことが大事です。) 染 めて見分けました。
を、決まった場所にFar complex ( いくつかのFarたんぱく質 が集まったまとまり。場所によってミトファジーを止めたり別 の調節 に関 わったりします。) 置 きました。
ミトコンドリアか、 に小胞体 ( 細胞 の中にある、膜 でできた袋 状 のしくみ。たんぱく質 や脂質 に関 わる働 きがあり、他の部分との連絡 も重要 です。) 置 きます。
そして のAtg32 ( 酵母 でミトファジーを進めるために必要 なたんぱく質 。ミトコンドリアを分解 の流れに乗せる目印 のような役目をします。) 変化 を比 べました。
の強さもミトファジー ( オートファジーの中でも、ミトコンドリアだけを選 んで分解 するしくみ。ミトコンドリアの質 を保 つために重要 です。) 比 べました。
ミトファジーはGFPの量 で見ました。
ミトコンドリアの中の を使います。Idh1-GFP ( ミトコンドリアの中のたんぱく質 にGFPを付 けた目じるし。ミトコンドリアが分解 されるとGFPが検出 されやすくなり、ミトファジーの強さの測定 に使います。)
こわれるとGFPが出てきます。
そのGFPを測 りました。
で、免疫 沈降 ( 目的 のたんぱく質 を抗体 で集めて、いっしょにくっつく相手がいるかを調べる方法 。たんぱく質 どうしの結合 の確認 に使います。) 細胞 の中の結合 も調べました。
さらに の中でも調べました。試験管 ( 体や細胞 の外で反応 を確 かめる実験 の入れ物。細胞 内の影響 を減 らして、直接 くっつくかなどを調べます。)
とAtg32がFar8 ( Far complexの中のたんぱく質 の一つで、Atg32に直接 くっつく役目があるとされた部分。くっつき具合が開始や停止 の切りかえに関 わります。) 直接 くっつくと確 かめました。
- 研究のまとめ:
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は、2つの場所にあります。Far complex ( いくつかのFarたんぱく質 が集まったまとまり。場所によってミトファジーを止めたり別 の調節 に関 わったりします。)
と小胞体 ( 細胞 の中にある、膜 でできた袋 状 のしくみ。たんぱく質 や脂質 に関 わる働 きがあり、他の部分との連絡 も重要 です。) です。ミトコンドリア ( 細胞 の中にある、エネルギーを作るはたらきが強い部分。こわれると体の調子に影響 するので、元気に保 つことが大事です。)
場所で役目が分かれていました。
ミトコンドリア側 は、 を止めます。ミトファジー ( オートファジーの中でも、ミトコンドリアだけを選 んで分解 するしくみ。ミトコンドリアの質 を保 つために重要 です。)
といっしょにPpg1 ( ミトファジーを止める側 で働 く酵素 。Atg32の変化 を戻 す方向に関 わり、止める調節 に必要 です。) 働 きます。
のAtg32 ( 酵母 でミトファジーを進めるために必要 なたんぱく質 。ミトコンドリアを分解 の流れに乗せる目印 のような役目をします。) 変化 を外して、ふだんは止めます。
小胞 体側 は、別 の仕組みに関 わります。
というTORC2 ( 細胞 の中の別 の調節 の道に関 わるたんぱく質 のまとまり。Far complexがミトファジー以外 にも働 く可能性 を示 します。) 別 の道の調節 です。
ミトファジーが必要 なときが大事です。
Far complexがこわれるのではありません。
場所を変 えるのでもありません。
Atg32との結 びつきが弱まり、はなれます。
それが、開始の切りかえだと考えました。
この考えは、 のSTRIPAK ( 複数 のたんぱく質 からなる調節 のまとまりの名前。今回の考え方が、似 た調節 の理解 にも役立つとされています。) 理解 にも役立ちます。
- これからどうする?:
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まだ分からない点があります。
が、なぜ組み立てを助けるかPpg1 ( ミトファジーを止める側 で働 く酵素 。Atg32の変化 を戻 す方向に関 わり、止める調節 に必要 です。) 不明 です。
Far の、どこがたんぱく 質 ( 体や細胞 の中で、動きや反応 を進める材料 や道具になる物質 。たくさんのしくみはたんぱく質 の働 きで動きます。) 変 わるか調べます。
その変化 が、何を起こすかも調べます。
のとき、合図もミトファジー ( オートファジーの中でも、ミトコンドリアだけを選 んで分解 するしくみ。ミトコンドリアの質 を保 つために重要 です。) 不明 です。
何の合図で、2つがはなれるのでしょう。
別 の変化 や、別 の結 びつきがカギかもしれません。
のFar complex ( いくつかのFarたんぱく質 が集まったまとまり。場所によってミトファジーを止めたり別 の調節 に関 わったりします。) 割合 の調節 もなぞです。
ふだん、2つの場所の数をどう決めるのでしょう。
条件 で分布 がどう変 わるかも見ます。
とミトファジーでのTORC2 ( 細胞 の中の別 の調節 の道に関 わるたんぱく質 のまとまり。Far complexがミトファジー以外 にも働 く可能性 を示 します。) 働 き分けも調べます。
- 著者名:
- インノケンチエフ アレクセイ
- 新潟大学学術リポジトリリンク:
- http://hdl.handle.net/10191/0002000296
