外国人あるいは外国出身者の子どもの「教育を受ける権利」に関する序論的考察 : 日本語教育を受ける権利と母語教育を受ける権利の憲法的保障について

背景と目的：

本稿の目的は、外国人や外国にルーツを持つ子どもの日本社会への受容に関する問題を憲法論の観点から検討することです。特に、日本語が不得意な場合の追加的な日本語教育と、「母語」教育を受ける権利を取り上げています。この問題は新たな外国人の受け入れとは直接関係がないが、日本在住外国人にも憲法第3章の規定が保障されることから、その権利保障を通じた社会受容が国家の義務とされています。近藤敦の「人権条約」アプローチとは異なるリベラリズムの現代的展開を踏まえた視点を提供することが本稿の主目的です。

主要な発見：

本稿では、マクリーン事件最大判が外国人の人権享有主体性を原則的に認めたと解釈し、外国人等の子どもの教育を受ける権利が憲法14条と26条から保障されると結論付けています。具体的には、日本語が不得意な者に対する追加的な日本語教育の権利は憲法上保障され、母語教育を受ける権利は憲法13条と26条の要請から導かれます。この立場は、学校に宗教的マイノリティに対する合理的配慮措置を義務付ける判例とも類似しています。

方法論：

本稿では、まず外国人等の子どもの教育に関する現状を把握し、次に憲法学の教科書を分析して外国人等の子どもの教育を受ける権利に関する記述を分類しました。具体的には、教科書記述を肯定的、黙示的、否定的なものに分類し、それぞれがどのような教育施策を支持または要請するかを検討しました。また、マクリーン事件最大判の判例についての教科書記述を2種類に大別し、それぞれの解釈が外国人等の子どもの教育を受ける権利にどのように関与しているかを分析しました。

結論と意義：

本稿の結論として、外国人等の子どもの教育を受ける権利は、憲法14条と26条から日本国民と同様に保障され、追加的な日本語教育や母語教育も憲法上の権利として認められるべきだと主張しています。この立場は、外国人等の子どもを日本社会に受容するために必要な教育施策を憲法論の観点から正当化するものであり、日本社会の多文化共生に向けた重要な一歩となります。特に、憲法13条が個人の民族文化的アイデンティティの尊重を要請する点が強調されています。

今後の展望：

今後の展望として、外国人等の子どもの教育を受ける権利に関する具体的な施策を推進するための法的および政策的な枠組みの整備が求められます。特に、日本語教育の充実や母語教育の実施に向けた具体的な支援策が重要となります。また、マイノリティの権利保障を強化するための教育施策の拡充が必要です。今後は、リベラリズムの現代的展開を踏まえた憲法論の深化が期待され、これにより多文化共生社会の実現に向けた具体的な一歩が踏み出されるでしょう。