西洋人と言語の関係(言述における意識と無意識的形式)〔四〕

背景と目的：

本論文の背景は、二〇世紀初頭における「了解心理学」の方法論にあります。了解心理学は、観察者が他人の体験を追体験することでその体験の意味を理解するというプロセスを採ります。しかし、ローマンはこの方法論が西洋近代以来のものであり、「言語から思考を完全に引き剥がす」という前提が必要だと指摘します。本論文の目的は、言語と思考の乖離がどのようにして成立したのかを膨大な言語資料から明らかにすることです。

主要な発見：

ローマンによると、言語と思考の乖離が起こるのは、思考する自我が自立し、自分自身で判断を行うようになったからです。これにより、言語は「思想に対する単なる表現」に成り下がりました。また、古代ギリシアにおいては言語と思考と存在が統一されていたことがわかります。具体的には、アリストテレスの哲学に見られるように、現実の存在と私たちの思考とを言語が調停していました。

方法論：

本論文では、ギリシア語、ラテン語、ドイツ語の聖書の一節を比較し、それぞれの言語における「信仰」の定義がどのように異なるかを分析しています。また、古代ギリシア語における「πρόφασις」と「αἰτία」の使用例を通じて、言語の多様な意味を探っています。さらに、アリストテレスの哲学を引用し、形式と質料の関係から言語の本質を考察しています。

結論と意義：

本論文の結論は、言語と思考と存在の統一が古代ギリシアにおいて成されていたが、それが時代とともに乖離し、特に近代においては完全に崩れ去ったというものです。ラテン語の時代においても、思考と言語は密接に結びついていましたが、存在は乖離していきました。この研究は、言語の歴史的変遷を通じて、現代の言語のあり方を再考する重要性を示しています。

今後の展望：

本論文が示した言語と思考の乖離の過程は、今後の研究においてさらに詳細に探求されるべきです。特に、近代以降の各国語における変遷や、カントを中心とした哲学史における言語の役割についてのさらなる分析が期待されます。また、現代におけるデジタルコミュニケーションの発展が言語と思考の関係にどのような影響を与えるのかについても、研究の余地があります。

何のために？：

このお話のもとには、昔の「了解(りょうかい)心理学(他の人の気持ちを感じて、その意味を理解(りかい)する方法(ほうほう))」という考え方があります。了解(りょうかい)心理学は、ほかの人の気持ちを感じて、その意味を理解(りかい)する方法(ほうほう)です。ローマン(このお話の中で名前が出てくる人)さんは、この方法(ほうほう)が西洋の近代から始まったといいます。言葉と思いが分けて考えられることが大事だそうです。このお話の目標(もくひょう)は、どうして言葉と思いを分けるようになったかを調べることです。

何が分かったの？：

ローマン(このお話の中で名前が出てくる人)さんによると、自分で考える力ができたから、言葉と思いが分かれるようになりました。昔のギリシアでは、言葉と思いと存在(そんざい)（ものがあること）がひとつでした。例(たと)えば、アリストテレス(古代ギリシアの有名な哲学者(てつがくしゃ))さんの考えでは、言葉が現実(げんじつ)のものと私(わたし)たちの考えをつなげていました。

どうやったの？：

このお話では、ギリシア語(古代ギリシアで使われていた言葉)、ラテン語(古代ローマで使われていた言葉)、ドイツ語(ドイツで使われている言葉)で書かれた聖書(せいしょ)の一部を比(くら)べています。それぞれの言葉で「信仰(しんこう)(宗教的(しゅうきょうてき)な信(しん)じること)」の意味がどう違(ちが)うかを見ています。また、古代ギリシア語で「πρόφασις(古代ギリシア語)」と「αἰτία」という言葉がどう使われたかも調べています。さらに、アリストテレス(古代ギリシアの有名な哲学者(てつがくしゃ))さんの考えを使って、言葉の本当の意味を考えています。

研究のまとめ：

このお話の結論(けつろん)は、昔のギリシアでは、言葉と思いと存在(そんざい)がひとつでした。でも、時がたつにつれて分かれていきました。ラテン語(古代ローマで使われていた言葉)の時代でも、思いと言葉は近かったけど、存在(そんざい)は遠くなっていきました。この研究は、言葉の歴史(れきし)を通して、今の言葉の使い方をもう一度考える大切さを示(しめ)しています。

これからどうする？：

このお話でわかった言葉と思いが分かれていく過程(かてい)は、これからもっと詳(くわ)しく調べられるべきです。特(とく)に、近代以降(いこう)のいろんな国の言葉の変化(へんか)や、カントさんなどの哲学者(てつがくしゃ)が言葉についてどう考えたかをもっと調べることが必要(ひつよう)です。また、今のデジタル時代で、言葉と思いの関係(かんけい)がどう変(か)わるかも研究する価値(かち)があります。