歯学臨床教育の現状と課題

「診療参加型」という用語は近年の歯科臨床教育において重要なキーワードとなっていますが、その具体的な定義や共通認識は未だ明確ではありません。特に、過去においては学生や研修歯科医が直接治療に参加することが一般的でしたが、歯科治療技術の高度化や社会の変化に伴い、現在はそれが難しくなっています。このため、多くの大学ではマネキンやバーチャル環境を用いたシミュレーション実習に移行しています。本論文の目的は、歯科臨床教育を取り巻く現状を整理し、新潟大学歯学部で行われている臨床実習と臨床研修の実態を再確認することで、今後の課題を明らかにすることです。

新潟大学歯学部では、伝統的に診療参加型臨床実習を継続しており、学生が担当医として治療を行う体制を維持しています。しかし、多くの大学でのシミュレーション実習への移行や、患者の治療参加への困難さが指摘されています。また、歯科医師臨床研修の必修化が進められた一方で、その形骸化や実施の問題点が浮き彫りとなっています。特に、診療参加型臨床実習の定義については、全国的に共通理解が得られていないという問題点が明らかにされました。

新潟大学歯学部における臨床実習は、早期臨床実習Ⅰ、Ⅱと５年次から６年次にかけて行われる臨床予備実習、臨床実習Ⅰ、Ⅱ、Ⅲで構成されています。学生は担当医として診療現場に立ち、インストラクターの指導・監督の下で治療を行います。また、主治医インストラクター制度を導入することで、患者の治療計画の立案や治療の流れを管理し、治療の質を担保しています。さらに、臨床実習の評価は実習点の積算とミニマムリクワイヤメントの達成を基準として行われています。

歯学部教育においては、講義中心の知識詰め込み型から、課題発見・問題解決型の教育が求められています。新潟大学歯学部では診療参加型臨床実習を継続することで、学生に実践的な経験を積ませる体制を整えていますが、それでも患者の確保や治療の質を担保するための課題が残されています。特に、全国的な共通理解を得るためには、診療参加型臨床実習の定義を明確にすることが重要です。

今後の展望としては、卒前と卒後の教育目標の整合性を見直し、臨床実習と臨床研修の体制を有機的に結びつけることが求められます。また、患者確保については大学の自助努力だけではなく、社会に対する啓発や行政からのサポートが必要です。さらに、学生や研修歯科医の指導体制の整備や教員の質を高めることも重要な課題です。これにより、より質の高い歯科臨床教育を実現し、将来的には歯科医学界全体に貢献することが期待されます。