論文詳細
医歯学系
大学院医歯学総合研究科(歯)
#紀要論文
歯根膜ルフィニ神経終末の再生過程におけるASIC3発現様式の変化
- AI解説:
- 酸感受性イオンチャネル(acid-sensing ion channels: ASICs)はENaC/DEGスーパーファミリーの一員で、哺乳類の中枢および末梢神経系に広く分布している。先行研究により、神経のASICs、特にASIC3は酸の感知や、侵害受容(nociception)や機械受容(mechanoreception)などの感覚機能と関連することが示されている。ASIC3は複数の機械感覚構造や、機械刺激および侵害刺激の信号を変換・調節に関わる三叉神経ニューロンで検出されている。歯根膜は、一定の咬合力にさらされ高度にリモデリングされる結合組織であり、機械受容性の特殊終末を含む豊富な感覚神経支配を有する。形態学的研究から、歯根膜Ruffini終末はこの組織における主要な機械受容器であることが示されており、複数の損傷モデル(下歯槽神経(inferior alveolar nerve: IAN)切断を含む)では、これらの終末が顕著な神経可塑性を示し、除神経後にも形態学的に回復し得ることが示唆されている。健常な歯根膜Ruffini終末でASIC3の免疫反応性は報告されていたが、末梢神経再生の過程でASIC3の局在がどのように変化するかは不明であった。そこで本研究は、ラットのIAN切断後の再生過程において、歯根膜および三叉神経節の双方でASIC3発現の経時的変化を追跡し、再生するRuffini終末においてASIC3が担う可能性のある役割を明らかにすることを目的とした。
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医歯学系
大学院医歯学総合研究科(歯)
#紀要論文
歯根膜ルフィニ神経終末の再生過程におけるASIC3発現様式の変化
AI解説
- 背景と目的:
-
酸感受性イオンチャネル(acid-sensing ion channels: ASICs)はENaC/DEGスーパーファミリーの一員で、哺乳類の中枢および末梢神経系に広く分布している。先行研究により、神経のASICs、特にASIC3は酸の感知や、侵害受容(nociception)や機械受容(mechanoreception)などの感覚機能と関連することが示されている。ASIC3は複数の機械感覚構造や、機械刺激および侵害刺激の信号を変換・調節に関わる三叉神経ニューロンで検出されている。歯根膜は、一定の咬合力にさらされ高度にリモデリングされる結合組織であり、機械受容性の特殊終末を含む豊富な感覚神経支配を有する。形態学的研究から、歯根膜Ruffini終末はこの組織における主要な機械受容器であることが示されており、複数の損傷モデル(下歯槽神経(inferior alveolar nerve: IAN)切断を含む)では、これらの終末が顕著な神経可塑性を示し、除神経後にも形態学的に回復し得ることが示唆されている。健常な歯根膜Ruffini終末でASIC3の免疫反応性は報告されていたが、末梢神経再生の過程でASIC3の局在がどのように変化するかは不明であった。そこで本研究は、ラットのIAN切断後の再生過程において、歯根膜および三叉神経節の双方でASIC3発現の経時的変化を追跡し、再生するRuffini終末においてASIC3が担う可能性のある役割を明らかにすることを目的とした。
- 主要な発見:
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健常ラットでは、歯根膜におけるASIC3免疫反応性は、血管帯(歯槽骨側の部位)に位置する樹状で分枝したプロファイルとして認められ、歯根膜Ruffini終末に一致する太い軸索性分枝においてPGP 9.5と共局在した。ASIC3はこれらの終末に関連する円形細胞にも存在した。これらの細胞はPGP 9.5陰性でS-100陽性であったため、著者らは終末Schwann細胞(terminal Schwann cells)と同定したが、一部の終末Schwann細胞はASIC3を欠いていた。片側IAN切断後、下顎切歯の歯根膜ではPGP 9.5陽性の神経要素が術後(postoperative: PO)3日目までに消失し、PO 7日目に血管近傍で弱いビーズ状線維が出現、PO 14日目に樹状の細い線維分枝が現れ、PO 21日目に典型的なRuffini終末が認識可能となり、PO 28日目にはさらに増加した。これらの構造的再神経支配とは対照的に、歯根膜におけるASIC3免疫反応性は再生期間を通じて減弱し、ほぼ消失した(例外としてPO 21日目に血管に沿った細胞要素に弱い反応性がみられた)。対照の三叉神経節では、大小さまざまな多くのニューロンがASIC3陽性(PGP 9.5と共局在)であり、いくつかのサテライト細胞(satellite cells)では弱く、しばしば点状のASIC3免疫反応性が認められた。二重標識の結果、一部のASIC3陽性ニューロンはCGRPを欠き、一方でCGRP免疫反応性ニューロンのうち少数はASIC3も陽性であった。IAN切断後、三叉神経節ニューロンのASIC3免疫反応性には両側とも明らかな変化がみられなかったが、同側のサテライト細胞ではPO 7日目から明瞭な発現増強が始まり、PO 14日目に反応強度と見かけの厚みが最大となり、その後、歯根膜神経再生の進行に伴って正常へ向かい徐々に減弱した。
- 方法論:
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新潟大学学内動物実験委員会の承認(# 47-4)の下、8週齢の雄Wistarラット30匹(250–300 g)を使用した。腹腔内投与の4%抱水クロラール(400 mg/kg)麻酔下で下顎管を露出し、神経を微細剪刀で切断して切断端を管内へ戻す方法により、片側IAN切断を行った(実験群、n=25)。対側の三叉神経節はシャム参照(切断なし)とし、未処置ラット5匹を対照とした。実験動物は3、7、14、21、または28日生存させた(各時点n=5)。動物は0.1 Mリン酸緩衝液(pH 7.4)中の4%パラホルムアルデヒドで灌流固定した。下顎骨は10% EDTA-2Naで4℃・4週間脱灰後、切歯を含む25 μmのフリーフローティング切片を作製し、三叉神経節は8 μmで切片化した。免疫組織化学では、ASIC3、PGP 9.5、S-100 protein、CGRPを含む一次抗血清で一晩反応させ、その後ビオチン化二次抗体、アビジン-ペルオキシダーゼ複合体、DABで可視化し、メチレンブルーで対比染色した。二重免疫染色により、歯根膜および三叉神経節の双方で、ASIC3と神経・グリアマーカーの細胞同定および共局在パターンを評価した。
- 結論と意義:
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本研究は、ラットにおいてASIC3が健常な歯根膜Ruffini終末の軸索終末だけでなく、歯根膜の終末Schwann細胞や三叉神経節のサテライト細胞を含む関連グリア要素にも局在することを示した。IAN切断後の再生過程では、歯根膜はPGP 9.5陽性の再神経支配に基づきPO 28日目までにRuffini終末の明確な形態学的回復を示した一方で、歯根膜のASIC3免疫反応性は再生期間を通じて本質的に消失していた。著者らはこの乖離について、ASIC3は歯根膜Ruffini終末の形態学的再生過程に直接必要ではない可能性を示唆すると解釈しつつ、関連する歯の損傷モデルでは機能回復が形態回復に遅れることがあり、このことが観察期間内にASIC3消失が持続した理由となり得ると述べている。三叉神経節では、損傷関連の最も顕著な変化は、同側サテライト細胞におけるASIC3の一過性の発現増強(PO 14日目で最強)であり、三叉神経ニューロン自体には明確な変化がみられなかった。感覚神経節における損傷誘発性のグリア活性化およびニューロン–グリア相互作用に関する先行証拠を踏まえ、著者らは、サテライト細胞でのASIC3増強は末梢神経損傷後のニューロン–グリア相互作用に関連している可能性があり、神経活動を調節する細胞外イオン変化に結びつく機序を介する可能性があると主張している。総じて本研究は、IAN損傷後の再生過程において、歯根膜Ruffini終末および三叉神経節でASIC3発現パターンの変化を示した初めての報告として提示されている。
- 今後の展望:
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著者らは未解決の課題と次のステップをいくつか挙げている。第一に、観察期間がPO 28日目で終了しているため、ASIC3が神経再生に関与しないという仮説を検証し、研究期間を超えた時点で再生した歯根膜Ruffini終末にASIC3発現が最終的に戻るかどうかを判断するには、より長期の追跡が必要だとしている。この必要性は、他モデルで生理学的回復が形態学的回復に遅れ得ることが示されている点に根拠づけられており、機械受容の機能的な変換(mechanotransduction)が再確立された後にのみASIC3が再出現する可能性を示唆する。第二に、本研究はグリア集団(終末Schwann細胞および三叉神経節サテライト細胞)におけるASIC3免疫反応性を報告し、非神経組織におけるASIC3の機能的役割が依然として不明であることを強調している。著者らはそのため、グリアにおけるASIC3所見は、とりわけ損傷後の三叉神経節におけるニューロン–グリア細胞相互作用に関して、ASIC3の「新たな役割」を示唆するものだと位置づけている。具体的な実験計画は定義していないものの、サテライト細胞を介して生じ得る損傷後の神経活動の変化にASIC3がどのように寄与するかを明らかにすることが、今後の重要な研究課題であるとしている。
- 背景と目的:
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(ASICs)は、体の中の神経に広くあり、とくに酸感受性イオンチャネル ( 酸性度の変化を感じ取りやすい性質をもつ、細胞膜上の通り道(イオンの出入り口)です。神経のはたらきに関わり、環境が酸性に傾いたときや刺激が加わったときに、神経の反応を変えるのに重要です。) は「酸(pHの変化)」や「痛み」「触れたり押されたりする感覚」に関わると考えられています。ASIC3は、顔の感覚を伝えるASIC3 ( 酸感受性イオンチャネルの一種です。痛みや触れた感じなどの感覚に関わるとされ、刺激を神経の電気信号に結びつける働きに関係する可能性があるため、神経損傷や回復の研究で注目されています。) の細胞などで見つかっており、刺激を電気信号に変える働きに関係している可能性があります。三叉神経 ( 顔や口の感覚を脳へ伝える大きな神経です。歯や歯ぐきの感覚にも深く関係します。)
は、かむ力をいつも受けていて作り替え(歯根膜 ( 歯の根と骨の間にある結合組織で、歯を支えながら、かむ力を感じ取る役割もあります。常に力がかかるため作り替えが活発です。) )が活発な組織で、感覚神経も多く入っています。歯根膜の中ではリモデリング ( 組織が古い部分を分解し、新しい部分を作って入れ替えることです。歯根膜ではかむ力に合わせてこの変化がよく起こります。) が主な「力の感覚(機械刺激)」を受け取る装置だと考えられています。また、Ruffini終末 ( 力のかかり方や持続的な圧などを感じ取りやすいタイプの感覚神経終末です。歯根膜では主な機械受容器と考えられています。) (IAN)を切るような損傷のあとでも、Ruffini終末が形の上では回復する可能性が報告されていました。下歯槽神経 ( 下あごの歯や周辺の感覚を伝える神経です。これを損傷すると歯根膜の感覚入力に大きな影響が出ます。)
ただし、神経が再生していく途中で、ASIC3がどこにどのように現れる(または消える)のかはよく分かっていませんでした。そこでこの研究では、ラットのIANを切断したあと、歯根膜と三叉神経節の両方でASIC3の変化を時間の流れに沿って調べ、再生中のRuffini終末でASIC3がどんな役割を持つのかを明らかにしようとしました。
- 主要な発見:
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健常なラットでは、
の特定の領域(血管が多い側)に、歯根膜 ( 歯の根と骨の間にある結合組織で、歯を支えながら、かむ力を感じ取る役割もあります。常に力がかかるため作り替えが活発です。) に一致する形でRuffini終末 ( 力のかかり方や持続的な圧などを感じ取りやすいタイプの感覚神経終末です。歯根膜では主な機械受容器と考えられています。) が見られ、神経を示す目印(ASIC3 ( 酸感受性イオンチャネルの一種です。痛みや触れた感じなどの感覚に関わるとされ、刺激を神経の電気信号に結びつける働きに関係する可能性があるため、神経損傷や回復の研究で注目されています。) )と同じ場所にありました。さらに、Ruffini終末の近くにある丸い細胞にもASIC3が見られ、この細胞は神経ではなく(PGP 9.5陰性)、S-100陽性だったことから、PGP 9.5 ( 神経細胞や神経線維がある場所を示すためによく使われる目印のタンパク質です。神経の分布や再生の様子を確認するのに役立ちます。) だと判断されました。ただし、終末Schwann細胞の中にはASIC3がないものもありました。終末Schwann細胞 ( 感覚神経の終末付近にいて、神経終末を支えるSchwann細胞です。感覚の働きや損傷後の変化に関わる可能性があります。)
IANを片側で切断すると、歯根膜では神経の目印(PGP 9.5)が術後3日までに消えました。その後、術後7日で血管の近くに弱い神経線維が現れ、14日で細い枝分かれが増え、21日で典型的なRuffini終末が分かるようになり、28日でさらに増えました。つまり、形としては神経が戻っていきました。
しかしそれとは反対に、歯根膜のASIC3は再生期間を通して弱くなり、ほとんど消えました(例外として、術後21日に血管に沿う細胞成分で弱い反応が少し見られました)。
一方、 節では、ふだんから多くの神経細胞がASIC3陽性でした。また一部の三叉神経 ( 顔や口の感覚を脳へ伝える大きな神経です。歯や歯ぐきの感覚にも深く関係します。) でも弱いASIC3が見られました。IAN切断後、三叉神経節の「神経細胞そのもの」のASIC3は大きく変化しませんでしたが、損傷した側のサテライト細胞では術後7日からASIC3がはっきり増え、14日で最も強くなり、その後は歯根膜の神経再生が進むにつれて弱まっていきました。サテライト細胞 ( 神経節の中で神経細胞の周りを取り囲むグリア細胞です。神経細胞の環境を整え、損傷時には反応が変化することがあります。)
- 方法論:
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8週齢の雄Wistarラットを用い、片側の
(IAN)を麻酔下で切断するモデルを作りました。対照として未処置のラットも用意しました。術後3日、7日、14日、21日、28日の各時点で組織を固定し、下歯槽神経 ( 下あごの歯や周辺の感覚を伝える神経です。これを損傷すると歯根膜の感覚入力に大きな影響が出ます。) (下顎切歯部)と歯根膜 ( 歯の根と骨の間にある結合組織で、歯を支えながら、かむ力を感じ取る役割もあります。常に力がかかるため作り替えが活発です。) 節の切片を作りました。三叉神経 ( 顔や口の感覚を脳へ伝える大きな神経です。歯や歯ぐきの感覚にも深く関係します。)
という方法で免疫組織化学 ( 抗体を使って組織内の特定のタンパク質を染め分け、どこにあるかを顕微鏡で調べる方法です。神経の分布や変化の観察に広く使われます。) のほか、神経やグリア(神経を支える細胞)を示す目印(ASIC3 ( 酸感受性イオンチャネルの一種です。痛みや触れた感じなどの感覚に関わるとされ、刺激を神経の電気信号に結びつける働きに関係する可能性があるため、神経損傷や回復の研究で注目されています。) 、S-100、PGP 9.5 ( 神経細胞や神経線維がある場所を示すためによく使われる目印のタンパク質です。神経の分布や再生の様子を確認するのに役立ちます。) )を染色し、どの細胞・どの構造にASIC3があるか、そして時間とともにどう変わるかを調べました。ASIC3と他の目印を同時に染めるCGRP ( 痛みの伝達に関係する神経細胞でよく見られる目印の分子です。どの種類の感覚神経が関わっているかを調べるのに使われます。) も行い、同じ場所に存在するかどうかも確認しました。二重免疫染色 ( 2種類のタンパク質を同じ組織で同時に染めて、同じ細胞や同じ場所にあるかどうかを確認する方法です。)
- 結論と意義:
-
この研究は、
が健常なASIC3 ( 酸感受性イオンチャネルの一種です。痛みや触れた感じなどの感覚に関わるとされ、刺激を神経の電気信号に結びつける働きに関係する可能性があるため、神経損傷や回復の研究で注目されています。) 歯根膜 ( 歯の根と骨の間にある結合組織で、歯を支えながら、かむ力を感じ取る役割もあります。常に力がかかるため作り替えが活発です。) の神経末端だけでなく、Ruffini終末 ( 力のかかり方や持続的な圧などを感じ取りやすいタイプの感覚神経終末です。歯根膜では主な機械受容器と考えられています。) や終末Schwann細胞 ( 感覚神経の終末付近にいて、神経終末を支えるSchwann細胞です。感覚の働きや損傷後の変化に関わる可能性があります。) 節の三叉神経 ( 顔や口の感覚を脳へ伝える大きな神経です。歯や歯ぐきの感覚にも深く関係します。) といった「グリア細胞」にも存在することを示しました。サテライト細胞 ( 神経節の中で神経細胞の周りを取り囲むグリア細胞です。神経細胞の環境を整え、損傷時には反応が変化することがあります。)
IAN切断後、歯根膜では神経の形(Ruffini終末)は術後28日までに明確に回復しましたが、ASIC3は再生の期間中ほぼ消えたままでした。この結果から、ASIC3はRuffini終末の「形を作り直す」過程に必ずしも必要ではない可能性が示されました。ただし、別のモデルでは「見た目の回復」と「働きの回復」にずれが起きることがあるため、ASIC3が戻らなかったのは、まだ機能が十分に回復していない段階だったからかもしれないとも考えられます。
三叉神経節では、神経細胞のASIC3に大きな変化はない一方で、損傷側のサテライト細胞でASIC3が一時的に増えるという特徴的な変化が見られました。これは、末梢神経の損傷後に起きる「神経とグリアのやり取り」にASIC3が関わっている可能性を示すものです。
- 今後の展望:
-
この研究は観察が術後28日までだったため、もっと長い期間を追って、再生した
で最終的にRuffini終末 ( 力のかかり方や持続的な圧などを感じ取りやすいタイプの感覚神経終末です。歯根膜では主な機械受容器と考えられています。) が戻るのかどうかを調べる必要があります。特に、力の刺激を電気信号に変える働き(ASIC3 ( 酸感受性イオンチャネルの一種です。痛みや触れた感じなどの感覚に関わるとされ、刺激を神経の電気信号に結びつける働きに関係する可能性があるため、神経損傷や回復の研究で注目されています。) )が回復したあとにASIC3が再び現れる可能性も考えられます。機械刺激の信号化 ( 押す、引っ張るなどの力の刺激を、神経が扱える電気信号に変えるしくみです。触覚やかむ力の感覚の基本になります。)
また、 や終末Schwann細胞 ( 感覚神経の終末付近にいて、神経終末を支えるSchwann細胞です。感覚の働きや損傷後の変化に関わる可能性があります。) などのグリアでASIC3が何をしているかはまだ不明です。今後は、損傷後にサテライト細胞のASIC3が増えることが、神経の興奮しやすさの変化などにどうつながるのかを調べることが重要だと考えられます。サテライト細胞 ( 神経節の中で神経細胞の周りを取り囲むグリア細胞です。神経細胞の環境を整え、損傷時には反応が変化することがあります。)
- 何のために?:
-
体の
神経 には、 という部品があります。ASIC3 ( 神経 の細胞 にあるたんぱく質 の一つで、すっぱさの変化 や痛 み、押 された感じなどを電気信号 として感じるのに関係 します。どこにASIC3があるかを調べると、神経 がどんな刺激 を受け取りやすいかや、神経 がなおる途中 で何が起きているかを考える手がかりになります。)
ASIC3は、すっぱさの変化 や、痛 みに関係 します。
さわった感じや、押 された感じにも関係 します。
歯のまわりの には、歯根膜 ( 歯の根っことあごの骨 のあいだにある薄 い組織 で、歯をささえ、かむ力を受け止めます。いつも力がかかる場所なので、作りかえが起こりやすく、力を感じるしくみを調べるうえで重要 です。) 神経 がたくさんあります。
歯根膜 は、かむ力をいつも受けています。
そのため、歯根膜 は作りかえがさかんです。
歯根膜 には、力を感じるしくみがあります。
それを、 といいます。Ruffini 終末 ( 力や押 される感じを受け取る神経 の先っぽの形の一つで、歯根膜 の中でかむ力などを感じるしくみとして出てきます。神経 が切れたあとにこの形が戻 るかどうかを見ると、感覚 のしくみが回復 しているかを考えられます。)
でも、神経 がなおる途中 のASIC3は不明 でした。
そこで、ラットの神経 を切って調べました。
歯根膜 と、神経 の集まりを見ました。
時間とともに、ASIC3がどう変 わるか見ました。
- 何が分かったの?:
-
元気なラットでは、
に歯根膜 ( 歯の根っことあごの骨 のあいだにある薄 い組織 で、歯をささえ、かむ力を受け止めます。いつも力がかかる場所なので、作りかえが起こりやすく、力を感じるしくみを調べるうえで重要 です。) がありました。ASIC3 ( 神経 の細胞 にあるたんぱく質 の一つで、すっぱさの変化 や痛 み、押 された感じなどを電気信号 として感じるのに関係 します。どこにASIC3があるかを調べると、神経 がどんな刺激 を受け取りやすいかや、神経 がなおる途中 で何が起きているかを考える手がかりになります。)
ASIC3は、 のあたりにありました。Ruffini 終末 ( 力や押 される感じを受け取る神経 の先っぽの形の一つで、歯根膜 の中でかむ力などを感じるしくみとして出てきます。神経 が切れたあとにこの形が戻 るかどうかを見ると、感覚 のしくみが回復 しているかを考えられます。)
神経 の と、同じ場所でした。目印 ( 特定 の細胞 やたんぱく質 がある場所を見つけるために使う染 め方や指標 のことです。どの細胞 にASIC3があるのかを区別 するために必要 になります。)
Ruffini終末 の近くの丸い細胞 にもありました。
その細胞 は、神経 を支 える細胞 でした。
ただし、その細胞 でも無 いものがありました。
神経 を片方 で切ると、歯根膜 の神経 が消えました。
3日ごろまでに、神経 の目印 が消えました。
7日で、血の管 の近くに弱い神経 が出ました。
14日で、細い枝 がふえました。
21日で、Ruffini終末 が分かる形になりました。
28日で、さらにふえていきました。
でも、歯根膜 のASIC3は弱くなりました。
の間、ほとんど見えなくなりました。再生 ( 切れたり傷 ついたりした神経 が、時間をかけてまたのびたり形を取り戻 したりすることです。形の回復 と、ASIC3のような部品の回復 が同じとは限 らないため、回復 の中身を考えるうえで大切です。)
一方、別 の場所ではASIC3が多くありました。
それは、 という三叉 神経節 ( 顔や口の感覚 を脳 へ送る神経 の細胞 が集まった場所です。歯の感覚 に関 わる神経 もここを通るため、歯のまわりの変化 が神経 の細胞 側 にどう影響 するかを調べるのに重要 です。) 神経 の集まりです。
そこでは、神経 の細胞 にASIC3がありました。
神経 を切っても、神経細胞のASIC3は変化 小でした。
でも、支 える細胞 ではASIC3がふえました。
7日からふえて、14日でいちばん強くなりました。
そのあと、だんだん弱くなりました。
- どうやったの?:
-
8週のオスのラットを使いました。
をして、麻酔 ( 痛 みを感じにくくしたり意識 をねむらせたりするために使う方法 です。動物に強い負担 をかけずに手術 や観察 を行うために必要 です。) を下 歯槽 神経 ( 下あごの歯やその周 りの感覚 を伝 える神経 です。これを切ると歯根膜 の神経 がどう消えたり戻 ったりするかを調べられるので、神経 の再生 の実験 で使われます。) 片方 切りました。
何もしないラットも用意しました。
3日、7日、14日、21日、28日で調べました。
と、歯根膜 ( 歯の根っことあごの骨 のあいだにある薄 い組織 で、歯をささえ、かむ力を受け止めます。いつも力がかかる場所なので、作りかえが起こりやすく、力を感じるしくみを調べるうえで重要 です。) を切って見ました。三叉 神経節 ( 顔や口の感覚 を脳 へ送る神経 の細胞 が集まった場所です。歯の感覚 に関 わる神経 もここを通るため、歯のまわりの変化 が神経 の細胞 側 にどう影響 するかを調べるのに重要 です。)
色をつけて、 の場所をさがしました。ASIC3 ( 神経 の細胞 にあるたんぱく質 の一つで、すっぱさの変化 や痛 み、押 された感じなどを電気信号 として感じるのに関係 します。どこにASIC3があるかを調べると、神経 がどんな刺激 を受け取りやすいかや、神経 がなおる途中 で何が起きているかを考える手がかりになります。)
神経 や、支 える細胞 の も使いました。目印 ( 特定 の細胞 やたんぱく質 がある場所を見つけるために使う染 め方や指標 のことです。どの細胞 にASIC3があるのかを区別 するために必要 になります。)
同じ場所にあるかも、あわせて調べました。
- 研究のまとめ:
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は、ASIC3 ( 神経 の細胞 にあるたんぱく質 の一つで、すっぱさの変化 や痛 み、押 された感じなどを電気信号 として感じるのに関係 します。どこにASIC3があるかを調べると、神経 がどんな刺激 を受け取りやすいかや、神経 がなおる途中 で何が起きているかを考える手がかりになります。) の歯根膜 ( 歯の根っことあごの骨 のあいだにある薄 い組織 で、歯をささえ、かむ力を受け止めます。いつも力がかかる場所なので、作りかえが起こりやすく、力を感じるしくみを調べるうえで重要 です。) 神経 の先にありました。
さらに、神経 を支 える細胞 にもありました。
の三叉 神経節 ( 顔や口の感覚 を脳 へ送る神経 の細胞 が集まった場所です。歯の感覚 に関 わる神経 もここを通るため、歯のまわりの変化 が神経 の細胞 側 にどう影響 するかを調べるのに重要 です。) 支 える細胞 にもありました。
神経 を切ったあと、形は28日で戻 りました。
の形は、はっきりRuffini 終末 ( 力や押 される感じを受け取る神経 の先っぽの形の一つで、歯根膜 の中でかむ力などを感じるしくみとして出てきます。神経 が切れたあとにこの形が戻 るかどうかを見ると、感覚 のしくみが回復 しているかを考えられます。) 回復 しました。
でも、歯根膜 のASIC3は戻 りませんでした。
つまり、形を作るのに必須 でないかもしれません。
ただ、見た目と働 きはずれることもあります。
ASIC3が無 いのは、まだ働 きが弱いのかもです。
三叉神経節 では、支 える細胞 で一時ふえました。
神経 と支 える細胞 のやり取りに関係 しそうです。
- これからどうする?:
-
今回は、28日までしか見ていません。
もっと長く見て、 がASIC3 ( 神経 の細胞 にあるたんぱく質 の一つで、すっぱさの変化 や痛 み、押 された感じなどを電気信号 として感じるのに関係 します。どこにASIC3があるかを調べると、神経 がどんな刺激 を受け取りやすいかや、神経 がなおる途中 で何が起きているかを考える手がかりになります。) 戻 るか調べます。
力を に電気信号 ( 体の中で情報 を伝 えるために神経 が使う電気の変化 です。力や痛 みなどの刺激 が電気信号 に変 わることで、脳 が感じ取れるようになります。) 変 える働 きも大事です。
働 きが戻 ったあと、ASIC3が出るかもしれません。
支 える細胞 のASIC3の役目は、まだ不明 です。
神経 が興奮 しやすくなるのかも調べます。
- 著者名:
- 井表 千馨, 齋藤 功
- 掲載誌名:
- 新潟歯学会雑誌
- 巻:
- 45
- 号:
- 1
- ページ:
- 7 - 17
- 発行日:
- 2015-06
- 新潟大学学術リポジトリリンク:
- http://hdl.handle.net/10191/0002000529
