論文詳細
医歯学系
大学院医歯学総合研究科(歯)
#紀要論文
マウス上顎骨における即時埋入と遅延埋入チタンインプラント間の骨・インプラント界面の治癒パターンの相違
- AI解説:
- 歯科臨床における遅延埋入インプラントのプロトコールでは、抜歯窩の完全な骨化にはインプラント埋入前に6ヶ月以上の治癒期間を置くこととされています。一方、即時埋入インプラントにはいくつかの利点があるものの、術後合併症のリスクや軟組織退縮の頻度が高いといった欠点も存在します。これらの問題点を解決するために、即時埋入インプラント後の骨・インプラント界面の治癒過程についての詳細な理解が必要です。本研究は、マウスを用いた動物実験モデルを世界で初めて確立し、即時埋入と遅延埋入インプラントにおける治癒パターンを比較することを目的としました。
AI解説を見る
医歯学系
大学院医歯学総合研究科(歯)
#紀要論文
マウス上顎骨における即時埋入と遅延埋入チタンインプラント間の骨・インプラント界面の治癒パターンの相違
AI解説
- 背景と目的:
-
歯科臨床における遅延埋入インプラントのプロトコールでは、抜歯窩の完全な骨化にはインプラント埋入前に6ヶ月以上の治癒期間を置くこととされています。一方、即時埋入インプラントにはいくつかの利点があるものの、術後合併症のリスクや軟組織退縮の頻度が高いといった欠点も存在します。これらの問題点を解決するために、即時埋入インプラント後の骨・インプラント界面の治癒過程についての詳細な理解が必要です。本研究は、マウスを用いた動物実験モデルを世界で初めて確立し、即時埋入と遅延埋入インプラントにおける治癒パターンを比較することを目的としました。
- 主要な発見:
-
本研究では、即時埋入群と遅延埋入群共に28日までにオッセオインテグレーションが確立されることが確認されました。しかし、即時埋入群では遅延埋入群に比べて初期段階(5日)での肉芽形成と骨形成の進行が早いことが示されました。さらに、即時埋入群では、TRAP陽性細胞の出現が早く、OPNの免疫反応も5日後には見られ、14日以降もインプラント表面から直接骨形成が進行することが確認されました。これにより、OPNがインプラント表面の骨形成に重要な役割を果たしていることが示唆されました。
- 方法論:
-
研究は4週齢と2週齢のICRマウスを使用し、即時埋入群と遅延埋入群に分けて行いました。即時埋入群では、右側上顎第一臼歯を抜去し、その場でチタンインプラントを埋入しました。遅延埋入群では、抜歯後4週間の治癒期間を設け、その後インプラントを埋入しました。術後4週でμCT解析を行い、インプラント周囲の骨の形態学的変化を調べました。また、標本作成後、ヘマトキシリン・エオジン染色やアザン染色、TRAP染色、OPNおよびKi67免疫組織化学、TUNELアッセイなどを行い、各種統計処理も実施しました。
- 結論と意義:
-
本研究は、マウス上顎骨へのインプラント埋入動物実験モデルを確立し、初期のステージを除けば即時埋入と遅延埋入インプラント群の間で骨・インプラント界面の治癒過程に有意差がないことを明らかにしました。この結果は、即時埋入インプラントの臨床応用において有用な知見を提供するとともに、OPNがインプラント表面の骨形成の開始において重要な役割を果たしていることを示しています。これにより、将来的には即時埋入インプラントの成功率向上や新たな治療法の開発が期待されます。
- 今後の展望:
-
今後の研究では、即時埋入インプラントにおけるさらなる分子メカニズムの解明が求められます。特に、OPN以外の分子や細胞間の相互作用について詳細に調べることで、オッセオインテグレーションの過程をより深く理解することが可能となります。また、異なる動物モデルや臨床試験を通じて、即時埋入インプラントの適用範囲を広げるための具体的なガイドラインの策定も期待されます。将来的には、患者個々の状態に応じた最適なインプラント治療が提供されることを目指し、さらなる研究が進められることでしょう。
- 背景と目的:
-
歯医者さんで使うインプラント治療には、抜いた歯の跡がしっかり治るまで6ヶ月以上待ってからインプラントを入れる方法と、すぐにインプラントを入れる方法の2つがあります。すぐに入れる方法にはメリットもありますが、手術後に問題が起こりやすく、歯茎の状態が悪くなることがあります。これらの問題を解決するために、すぐにインプラントを入れたときの治り方を詳しく研究することが大切です。今回の研究では、マウスを使った実験で、すぐにインプラントを入れる方法と、治ってからインプラントを入れる方法の違いを比較しました。
- 主要な発見:
-
この研究でわかったことは、どちらの方法でも28日後にはインプラントが骨としっかり結びつくことが確認できました。でも、すぐにインプラントを入れた場合、治り始めの5日後には肉ができやすく、骨も早くできることがわかりました。また、すぐに入れた場合、特定の細胞が早く現れ、5日後には免疫反応が見られ、14日後にはインプラント表面から直接骨ができることも確認されました。この結果から、
という物質がインプラント表面の骨ができるのに重要な役割を果たしていることがわかりました。OPN ( オステオポンチンという骨の治りに関わるたんぱく質のこと。)
- 方法論:
-
研究では、4週齢と2週齢のICRマウスを使いました。すぐにインプラントを入れるグループでは、マウスの右側の奥歯を抜いて、その場でチタン製のインプラントを入れました。遅れるグループでは、歯を抜いてから4週間待ってインプラントを入れました。手術後4週間でμCTという解析を使い、インプラントの周りの骨の変化を調べました。また、いろいろな染色法を使って、細胞の状態を詳しく調べました。
- 結論と意義:
-
この研究で、マウスの顎にインプラントを入れる動物実験モデルを作り、初期の段階を除けば、すぐに入れる方法と遅れて入れる方法の間で、骨とインプラントの結びつきに大きな違いがないことがわかりました。この結果は、すぐにインプラントを入れる治療法の成功率を高めるために役立ち、
が重要な役割を果たすことを示しています。これからは、新しい治療法の開発に期待が持てます。OPN ( オステオポンチンという骨の治りに関わるたんぱく質のこと。)
- 今後の展望:
-
今後の研究では、すぐにインプラントを入れたときのさらなる詳細なメカニズムを解明することが求められます。特に、
以外の物質や細胞の相互作用について詳しく調べることで、インプラントが骨と結びつく過程をもっとよく理解できるでしょう。また、他の動物モデルや臨床試験を通じて、すぐにインプラントを入れる方法の適用範囲を広げるための具体的なガイドラインを作ることも期待されます。将来的には、患者一人ひとりに最適なインプラント治療を提供できるよう、さらに研究が進められるでしょう。OPN ( オステオポンチンという骨の治りに関わるたんぱく質のこと。)
- 何のために?:
-
歯医者さんでは、歯を
抜 いたあとに2つの方法 で を入れます。1つは、6ヶ月インプラント ( 歯がなくなった部分に入れる人工の歯です。) 以上 待ってから入れる方法 です。もう1つは、すぐに入れる方法 です。すぐに入れる方法 は便利 ですが、問題もあります。今回の研究では、マウスを使って、2つの方法 の違 いを調べました。
- 何が分かったの?:
-
どちらの
方法 でも、28日後には がインプラント ( 歯がなくなった部分に入れる人工の歯です。) 骨 としっかりつながりました。でも、すぐに入れた場合、治 り始めの5日後には肉ができやすく、骨 も早くできました。また、すぐに入れたときに特定 の細胞 が早く現 れました。そして、5日後には が見られ、14日後にはインプラント表面から免疫 反応 ( 体が病気やばい菌 から守るために働 く仕組みです。) 直接 骨 ができました。 というOPN ( 骨 ができるのを助ける物質 です。) 物質 が、骨 ができるのに大切な役割 をしていることがわかりました。
- どうやったの?:
-
この研究では、
というネズミを使いました。すぐに入れるグループでは、ICRマウス ( 実験 に使われる特別 なネズミです。) 右側 の奥歯 を抜 いて、その場で を入れました。インプラント ( 歯がなくなった部分に入れる人工の歯です。) 遅 れるグループでは、歯を抜 いてから4週間待ってインプラントを入れました。手術 後4週間で というμCT ( とても小さい部分を詳 しく見るための機械 です。) 方法 を使い、インプラントの周 りの骨 の変化 を調べました。いろいろな を使って、染色 法 ( 細胞 や組織 を特定 の色に染 めて、詳 しく観察 する方法 です。) 細胞 の状態 も詳 しく調べました。
- 研究のまとめ:
-
この研究で、マウスの
顎 に を入れるインプラント ( 歯がなくなった部分に入れる人工の歯です。) 方法 を作りました。初期 の段階 を除 けば、すぐに入れる方法 と遅 れて入れる方法 で、骨 とインプラントの結 びつきに大きな違 いはありませんでした。この結果 は、すぐにインプラントを入れる治療 法 がうまくいくために役立ちます。 というOPN ( 骨 ができるのを助ける物質 です。) 物質 が重要 な役割 を果 たしていることもわかりました。これからは、新しい治療 法 の開発が楽しみです。
- これからどうする?:
-
これからの研究では、すぐに
を入れたときのもっとインプラント ( 歯がなくなった部分に入れる人工の歯です。) 詳 しい仕組みを調べます。特 に、OPN ( 骨 ができるのを助ける物質 です。) 以外 の物質 や細胞 の働 きを詳 しく調べます。これにより、インプラントが骨 とつながる過程 をもっとよく理解 できます。他の動物や人での試験 を通じて、すぐにインプラントを入れる方法 の使い方をさらに広げることも期待されます。将来的 には、一人ひとりに最適 なインプラント治療 ができるように研究が進められるでしょう。
- 著者名:
- 渡辺 泰典
- 掲載誌名:
- 新潟歯学会雑誌
- 巻:
- 45
- 号:
- 2
- ページ:
- 93 - 94
- 発行日:
- 2015-12
- 新潟大学学術リポジトリリンク:
- http://hdl.handle.net/10191/0002000541
