論文詳細
医歯学系
大学院医歯学総合研究科(歯)
#紀要論文
ケイ酸カルシウム系覆髄材のラット皮下への移植による生体活性とバイオミネラリゼーション能力の評価
- AI解説:
- 近年、ケイ酸カルシウム系歯内療法用材料(例えばMineral Trioxide Aggregate, MTA)は、硬化体から放出されるCa2+やOH-のイオンが生体機能性を示すことが知られています。このため、従来の水酸化カルシウム製剤と比較して、直接覆髄法において同等以上の臨床成績が報告されています。しかし、これら材料の生体内での挙動に関する知見は未だ不十分です。本研究の目的は、異なるケイ酸カルシウム系覆髄材をラットの背部皮下組織に埋入し、結合組織と接する材料表面における析出物の微細構造と組成を観察・分析することです。さらに、結合組織と材料界面におけるカルシウムとリンの分布を分析し、これら材料の生体活性とバイオミネラリゼーション能力を検討します。
AI解説を見る
医歯学系
大学院医歯学総合研究科(歯)
#紀要論文
ケイ酸カルシウム系覆髄材のラット皮下への移植による生体活性とバイオミネラリゼーション能力の評価
AI解説
- 背景と目的:
-
近年、ケイ酸カルシウム系歯内療法用材料(例えばMineral Trioxide Aggregate, MTA)は、硬化体から放出されるCa2+やOH-のイオンが生体機能性を示すことが知られています。このため、従来の水酸化カルシウム製剤と比較して、直接覆髄法において同等以上の臨床成績が報告されています。しかし、これら材料の生体内での挙動に関する知見は未だ不十分です。本研究の目的は、異なるケイ酸カルシウム系覆髄材をラットの背部皮下組織に埋入し、結合組織と接する材料表面における析出物の微細構造と組成を観察・分析することです。さらに、結合組織と材料界面におけるカルシウムとリンの分布を分析し、これら材料の生体活性とバイオミネラリゼーション能力を検討します。
- 主要な発見:
-
各種ケイ酸カルシウム系覆髄材の表面には、類球形の析出物が生成されました。析出物の径は経時的に増大する傾向を示し、特にWhite ProRoot MTA群では約10µmに達しましたが、試作覆髄材群では約5µm、TheraCal LC群では約3µmと異なる結果が見られました。これにより、各材料のカルシウムとリンの含有量や放出量の違いが析出物の径に影響を与えていることが示唆されました。EPMA分析によって、これら析出物がカルシウムおよびリンを主成分とすることが確認され、結合組織と材料の界面においてもカルシウムとリンの高濃度領域が一致して観察されました。
- 方法論:
-
本研究では、White ProRoot MTA、TheraCal LC(光硬化型ケイ酸カルシウム系覆髄材)および日本歯科薬品の試作覆髄材を使用しました。これらの材料を滅菌PTFEチューブに練和し、4週齢のWistar系雄性ラットの背部皮下組織内に埋入しました。移植後1、2、4週で移植体を摘出し、カコジル酸緩衝2.5%グルタルアルデヒド固定液で固定しました。走査電子顕微鏡(SEM)で材料表面の析出物の微細構造を観察し、波長分散型マイクロアナライザー(EPMA)で組成分析を行いました。さらに、結合組織と材料の界面におけるカルシウムとリンの分布についてもEPMAによるマッピング分析を実施しました。
- 結論と意義:
-
ケイ酸カルシウム系覆髄材をラットの皮下組織に移植した結果、結合組織と接した材料表面にリン酸カルシウム結晶様構造物が析出することが示されました。この結果は、ケイ酸カルシウム系材料が生体内でカルシウムイオンを放出し、生体機能性を発揮することを示しています。各材料の析出物の形状の違いは、材料の組成やカルシウム放出量の違いに起因していると考えられます。これにより、材料の選択や改良において重要な情報を提供することができると考えられます。
- 今後の展望:
-
今後の研究では、より詳細な生体内での動態解析を行うことが重要です。特に、長期間の観察や他の動物モデルを用いた研究を通じて、ケイ酸カルシウム系材料の長期的な生体活性やバイオミネラリゼーション能力を評価することが求められます。また、臨床応用を視野に入れた研究を進め、材料の改良や新たなケイ酸カルシウム系材料の開発を目指すことが必要です。これにより、歯内療法の治療成績を向上させ、患者のQOL向上に寄与することが期待されます。
- 背景と目的:
-
最近、ケイ酸カルシウム系の歯の治療用材料(例えばMineral Trioxide Aggregate, MTA)は、治療後に体に良い影響を与えることが知られています。これらの材料は、従来の水酸化カルシウム製剤と比べて、
で同じかそれ以上の効果があると報告されています。しかし、これらの材料が体の中でどのように動くのかについてはまだよくわかっていません。そこで、この研究では、異なる種類の直接覆髄法 ( 歯の内部を直接覆う治療法で、歯髄(歯の神経など)を保護します。) をラットの背中の皮膚の下に埋め込み、その表面にできる物質の構造や成分を観察・分析し、材料の生体活性とケイ酸カルシウム系材料 ( ケイ酸カルシウムという化合物を主成分とする材料で、歯の治療に使われます。) 能力を調べることを目的としています。バイオミネラリゼーション ( 生体内で鉱物が作られる現象のことです。)
- 主要な発見:
-
異なる
の表面には、丸いケイ酸カルシウム系材料 ( ケイ酸カルシウムという化合物を主成分とする材料で、歯の治療に使われます。) (せきしゅつぶつ)ができました。これらの析出物は時間とともに大きくなり、特にWhite ProRoot MTAでは約10µmに達しましたが、試作材料では約5µm、TheraCal LCでは約3µmでした。これにより、各材料のカルシウムとリンの含有量や放出量の違いが析出物の大きさに影響していることがわかりました。EPMA分析によって、これらの析出物がカルシウムとリンを主成分としていることが確認されました。また、結合組織と材料の境目にもカルシウムとリンが多く含まれていることがわかりました。析出物 ( 材料の表面にできる固体の物質のことです。)
- 方法論:
-
この研究では、White ProRoot MTA、TheraCal LC、そして日本歯科薬品の試作材料を使用しました。これらの材料を滅菌したPTFEチューブに入れ、4週齢のオスのWistarラットの背中の皮膚の下に埋め込みました。埋め込み後1週間、2週間、4週間で材料を取り出し、グルタルアルデヒドという液で固定しました。その後、走査電子顕微鏡(SEM)で材料表面の
の構造を観察し、EPMAで成分分析を行いました。また、結合組織と材料の境目におけるカルシウムとリンの分布についてもEPMAで分析しました。析出物 ( 材料の表面にできる固体の物質のことです。)
- 結論と意義:
-
ケイ酸カルシウム系の材料をラットの皮下組織に移植すると、材料の表面にリン酸カルシウムの結晶ができることがわかりました。この結果から、
が体内でカルシウムイオンを放出し、生体に良い影響を与えることが示されました。材料によってできるケイ酸カルシウム系材料 ( ケイ酸カルシウムという化合物を主成分とする材料で、歯の治療に使われます。) の形状が異なるのは、材料の成分やカルシウムの放出量の違いによるものと考えられます。これにより、材料の選択や改良において重要な情報が得られると考えられます。析出物 ( 材料の表面にできる固体の物質のことです。)
- 今後の展望:
-
今後の研究では、さらに詳しい体内での動きを解析することが重要です。特に、長期間の観察や他の動物を使った研究を通じて、
の長期的な効果を評価する必要があります。また、臨床応用を見据えた研究を進め、材料の改良や新しいケイ酸カルシウム系材料の開発を目指すことが求められます。これにより、歯の治療成績を向上させ、患者の生活の質を向上させることが期待されます。ケイ酸カルシウム系材料 ( ケイ酸カルシウムという化合物を主成分とする材料で、歯の治療に使われます。)
- 何のために?:
-
最近 、歯の治療 に使う が体に材料 ( 歯の治療 に使う特別 なもの) 良 い影響 を与 えることがわかりました。これらの材料 は、昔からある治療 用の材料 よりも効果 があると言われています。でも、どうやって体に良 い影響 を与 えるのかは、よくわかっていません。そこで、どんなふうに体の中で動くのか調べることにしました。
- 何が分かったの?:
-
違 う の表面に、小さな丸いものができました。この丸いものは時間がたつと大きくなります。材料 ( 歯の治療 に使う特別 なもの) 特 にWhite ProRoot MTAという材料 では大きくなり、他の材料 よりも大きいです。これは材料 に含 まれている やカルシウム ( 骨 や歯を強くするためにとても大事な成分 ) のリン ( 歯や骨 を作るために必要 な成分 ) 量 が影響 しています。これらの が丸いものを作ることがわかりました。成分 ( 材料 の中に入っている特別 なもの)
- どうやったの?:
-
この研究では、3
種類 の を使いました。それぞれの材料 ( 歯の治療 に使う特別 なもの) 材料 を小さなチューブに入れて、ラットの背中 の皮膚 の下に埋 めました。そして、1週間、2週間、4週間後に材料 を取り出し、特別 な液 で しました。その後、固定 ( 材料 をある場所にしっかりと留 めること) で電子 顕微鏡 ( とても小さなものを詳 しく見るための特別 な顕微鏡 ) 観察 し、 を成分 ( 材料 の中に入っている特別 なもの) 分析 しました。
- 研究のまとめ:
-
研究の
結果 、 が体の中で材料 ( 歯の治療 に使う特別 なもの) とカルシウム ( 骨 や歯を強くするためにとても大事な成分 ) を放出し、小さな丸いものを作ることがわかりました。リン ( 歯や骨 を作るために必要 な成分 ) 材料 によって丸いものの形や大きさが違 うのは、 やカルシウムの放出成分 ( 材料 の中に入っている特別 なもの) 量 が違 うからです。この結果 は、どの材料 を使うか選 ぶときに役立ちます。
- これからどうする?:
-
これからの研究では、もっと長い期間の
観察 や、他の動物を使った研究が必要 です。これにより、 がどのように体に材料 ( 歯の治療 に使う特別 なもの) 良 い影響 を与 えるか、もっと詳 しくわかります。そして、新しい材料 を作ることができるかもしれません。そうすれば、歯の治療 がもっと良 くなり、患者 さんの生活も良 くなるでしょう。
- 著者名:
- 日向 剛
- 掲載誌名:
- 新潟歯学会雑誌
- 巻:
- 46
- 号:
- 1
- ページ:
- 43 - 44
- 発行日:
- 2016-07
- 新潟大学学術リポジトリリンク:
- http://hdl.handle.net/10191/0002000550
一覧へ戻る
検索ページトップへ戻る