自立高齢者における飲酒と歯周組織状態との関係

背景と目的：

歯周病は多要因疾患として知られ、細菌性因子だけでなく、喫煙や精神的ストレスなどの環境因子も関与しています。飲酒と歯周病の関係についても調査が行われているものの、未だ明確な結論には至っていません。本研究の目的は、自立高齢者を対象に飲酒と歯周組織状態との関係を検討することです。

主要な発見：

本研究では、73歳の自立高齢者を対象にアルコール摂取量が歯周組織状態、特にクリニカルアタッチメントレベル（CAL）に与える影響を調査しました。その結果、アルコール摂取量が多いほど平均CALが増大する傾向が認められました。特に多量飲酒者は非飲酒者に比べてCALが増大するリスクが高いことが明らかになりました（オッズ比2.43）。また、喫煙経験も平均CALの増大に関連がありました（オッズ比2.43）。

方法論：

調査対象は、2001年に新潟市高齢者コホート調査に参加した有歯顎者438名（73歳、男性236名、女性202名）です。対象者はアルコール摂取量に基づいて非飲酒者、小・中等量飲酒者、多量飲酒者の3群に分類されました。歯周組織の状態はクリニカルアタッチメントレベル（CAL）を用いて評価し、対象者を上位25％とそれ以外の2群に分けました。さらに、アルコール摂取量、喫煙経験、歯磨き回数、歯間ブラシの使用、歯科受診の有無などの生活習慣を分析し、平均CALとの関連をロジスティック回帰分析で明らかにしました。

結論と意義：

本研究は、73歳の自立高齢者における喫煙経験および多量のアルコール摂取が歯周組織状態に悪影響を与えることを示しました。特に多量飲酒者は非飲酒者に比べてCALが増大するリスクが高いとされています。この結果は、歯周病の予防と管理において飲酒習慣の見直しが重要であることを示唆しています。また、喫煙の影響についても再確認されており、喫煙と飲酒の両方を制限することが歯周組織の健康維持に寄与する可能性が示されました。

今後の展望：

今後の研究では、飲酒と歯周病の関係性をさらに詳細に解明するために、より広範な年齢層や異なる生活環境の個体を対象とした長期的なコホート研究が求められます。加えて、アルコールの種類や飲酒習慣の具体的なパターンが歯周病に及ぼす影響についても調査する必要があります。歯周病の予防策として、飲酒量を適切に管理するための公衆衛生政策の策定や、禁煙支援プログラムの強化が期待されます。これにより、高齢者の口腔健康を維持し、生活の質向上に寄与することが目指されます。

何のために？：

歯周(ししゅう)病(びょう)(歯の周(まわ)りの病気で、細菌(さいきん)やたばこなどが原因(げんいん)です。)は、細菌(さいきん)(とても小さい生き物で、歯周(ししゅう)病(びょう)の原因(げんいん)の一つです。)やたばこ、ストレスなどが原因(げんいん)で起こる病気です。お酒がどう影響(えいきょう)するかは、まだよくわかっていません。この研究は、おじいちゃんやおばあちゃんたちが、お酒を飲むことと歯の周(まわ)りの状態(じょうたい)の関係(かんけい)を調べるものです。

何が分かったの？：

73歳(さい)のおじいちゃんやおばあちゃんを調べました。お酒をたくさん飲むと、歯の周(まわ)りが悪くなることがわかりました。お酒を飲まない人よりも、たくさん飲む人は歯が悪くなるリスク(何かが起こる可能性(かのうせい)のことです。)が高いです。たばこを吸(す)ったことがある人も、歯の周(まわ)りが悪くなることがわかりました。

どうやったの？：

2001年に新潟市で行われた調査(ちょうさ)を使いました。73歳(さい)の歯があるおじいちゃんやおばあちゃん438人を調べました。お酒の量(りょう)で、飲まない人、少し飲む人、たくさん飲む人の3つに分けました。歯の状態(じょうたい)を「クリニカルアタッチメントレベル（CAL）(歯の周(まわ)りの状態(じょうたい)を測(はか)る方法(ほうほう)です。)」という方法(ほうほう)で調べました。お酒の量(りょう)やたばこの経験(けいけん)、歯磨(はみが)きの回数なども調べました。

研究のまとめ：

この研究でわかったことは、たくさんお酒を飲むことや、たばこを吸(す)うことが、歯の周(まわ)りを悪くするということです。特(とく)にたくさんお酒を飲む人は、歯が悪くなるリスク(何かが起こる可能性(かのうせい)のことです。)が高いです。歯周(ししゅう)病(びょう)(歯の周(まわ)りの病気で、細菌(さいきん)やたばこなどが原因(げんいん)です。)を防(ふせ)ぐためには、お酒を飲む量(りょう)を減(へ)らすことが大事だとわかりました。たばこも歯に悪いので、両方をやめることが大切です。

これからどうする？：

これからは、もっといろいろな年齢(ねんれい)の人や、生活環境(かんきょう)が違(ちが)う人を調べることが大事です。お酒の種類(しゅるい)や飲み方が歯にどう影響(えいきょう)するかも調べます。歯周(ししゅう)病(びょう)(歯の周(まわ)りの病気で、細菌(さいきん)やたばこなどが原因(げんいん)です。)を防(ふせ)ぐために、お酒を少なくする政策(せいさく)や、たばこをやめる手助けをすることが期待されます。それによって、高齢者(こうれいしゃ)の歯の健康(けんこう)を守り、生活を良(よ)くすることが目指されています。