地域一般住民を対象とした摂食嚥下セミナーの紹介

摂食嚥下障害や口腔ケアに関する情報は徐々に普及しつつあるものの、具体的な訓練方法やケアの方法を地域一般住民に提供する場は依然として限られています。新潟大学大学院医歯学総合研究科では、地域住民への知識普及と啓発を目的として、2015年度から「摂食嚥下セミナー」を毎月２回開催しています。セミナーは無料で事前申込不要で、地域一般住民が参加できるように設計されています。本論文の目的は、このセミナーの概要とアンケート調査を通じて得られたデータを分析し、今後の運営の参考とすることです。

摂食嚥下セミナーの参加者からのアンケート調査によれば、セミナーは参加者にとって非常に有意義でわかりやすいと評価されています。特に摂食嚥下や口腔ケアに関する具体的な情報提供に対して高い満足度が示されました。参加者の特性を分析すると、50歳代の参加者が最も多く、職業では医療職が半数を占めていました。また、今後のセミナーで取り上げてほしいテーマや告知方法に関する具体的な要望が示されており、これらのフィードバックを基にセミナー内容の改善が期待されています。

セミナーは新潟大学医歯学総合病院の構内で開催され、テーマごとに分けて講義と実習を行う形式です。具体的には、「摂食嚥下の仕組みと食支援」「摂食嚥下の訓練と食支援」「介護食品と食器具の紹介」「口腔ケア」「口腔乾燥症と味覚障害」の５つのテーマで構成されています。各回のセミナーには地域一般住民が参加し、事前申し込みは不要で無料です。2015年度にセミナーに参加した75名を対象にアンケート調査を実施し、参加者の特性やセミナーに対する感想、今後の希望などを収集しました。アンケート回答率は97.3%で、詳細なデータ分析が行われました。

本論文の結論として、摂食嚥下セミナーは参加者にとって有益であり、今後も継続して開催する価値があるとされています。アンケート調査の結果、参加者はセミナーを通じて具体的な知識と技術を得ることができたと感じており、特に医療職を中心とした参加者にとって有用であったことが示されました。また、摂食嚥下や口腔ケアに関する情報提供の場が地域に少ない現状を考慮すると、このセミナーは地域住民の健康増進に寄与する重要な取り組みです。

今後の展望として、アンケート結果を基にセミナーの内容や告知方法の改善が計画されています。具体的には、とろみの分量や付け方、認知症や緩和ケアに関する講習、症例別の口腔ケアなどの要望が反映される予定です。また、告知方法についても、本院のホームページや特別支援学校への連絡などを通じて、より多くの地域住民に情報を届ける工夫がされています。このような取り組みを通じて、セミナーの認知度を向上させ、更なる参加者の増加と地域社会への貢献を目指しています。