顎矯正手術が顎変形症患者のQOLに及ぼす影響

顎変形症は、顎顔面の形態異常や咬合異常を含む疾患であり、患者の心理面に影響を及ぼすことが知られています。外科的矯正治療は顎変形症患者の心理面に陽性の影響を与えるとされていますが、全ての患者が治療結果に満足しているわけではありません。QOL（Quality of life）は医療評価研究において重要なアウトカムとされていますが、日本では顎変形症患者のQOL調査の報告が少なく、患者の心理を複雑な視点から詳しく分析する研究も不足しています。本研究は、顎矯正手術が顎変形症患者の口腔関連QOLに及ぼす影響を量的手法で明らかにし、さらに質的手法を用いて外科的矯正治療による患者の心理・社会的変化の過程を解析することを目的としています。

顎矯正手術前後の口腔関連QOLを比較した結果、手術前の患者は対照群と比較してQOLが低い傾向が見られました。手術後では、機能の制限や精神的不快感を除いて、患者のQOLが有意に向上しました。また、年齢や骨格性分類、術後の顎関節症状や開口障害の有無がQOLに影響を与えることが示されました。質的手法による解析では、患者が治療を決断し、治療が終了するまでの心理・社会的変化の過程において、友人や家族、同病者の影響が大きいことが明らかになりました。治療終了後には達成感や喜び、自信が芽生え、社会生活における積極性が向上することがわかりました。

研究は二つの部分に分かれています。第一の研究では、2013年12月から2015年6月に顎矯正手術を受けた65名の顎変形症患者を対象とし、対照群として歯科的知識を持たない14名の女性を設定しました。口腔関連QOLの評価にはOHIP-J54を用い、手術前と術後6か月時に評価を行い、統計解析にはWilcoxonの符号付順位和検定、Mann-WhitneyのU検定、Kruskal-Wallis検定を使用しました。第二の研究では、手術後1年6か月以上経過し、臨床的に術後経過が良好な女性患者6名を対象とし、半構造化面接による聞き取り調査を行い、グラウンデッド・セオリー・アプローチ（GTA）を用いて解析しました。

本研究は、量的手法と質的手法を組み合わせることにより、顎変形症患者の口腔関連QOLとその心理・社会的変化のプロセスを詳細に解析することができました。量的手法では、顎矯正手術がQOLに及ぼす影響を明らかにし、質的手法では、治療過程における患者の心理・社会的な変化を具体的に理解することができました。これにより、顎変形症患者に対する治療の総合的な評価が可能となり、患者のQOL向上に寄与する治療計画の策定に役立てることが期待されます。

本研究では対象者を術後1年半以上経過した患者に限定し、データを回顧的に収集したため、初診時から治療が終了するまでの各時点における詳細な変化は明らかにできませんでした。今後は、初診時から治療終了までの各時点での調査を行うことで、治療の進行に伴う新たな一面を明らかにすることが期待されます。また、より多くの患者を対象にした研究を行い、顎変形症患者の心理・社会的変化の詳細なプロセスを解明することで、より効果的な治療法やサポート体制を構築することが可能となるでしょう。

顎(がく)変形(へんけい)症(しょう)(あごの形やかみ合わせに問題がある病気)は、あごの形やかみ合わせに問題がある病気です。この病気は、心の元気も少なくします。手術(しゅじゅつ)(病気やけがを治(なお)すために体を切ったりする医療(いりょう)行為(こうい))で治(なお)すと、心も元気になります。でも、みんなが満足(まんぞく)するわけではありません。QOL（生活の質(しつ)）(生活がどれだけ良(よ)いかを表すもの)は、医療(いりょう)の効果(こうか)を見るための大事なものです。日本では、顎(がく)変形(へんけい)症(しょう)のQOLについてあまり研究がありません。だから、この研究では、手術(しゅじゅつ)がQOLにどう影響(えいきょう)するかを調べます。また、手術(しゅじゅつ)が心や社会生活にどんな変化(へんか)をもたらすかも見ます。

手術(しゅじゅつ)(病気やけがを治(なお)すために体を切ったりする医療(いりょう)行為(こうい))の前後でQOLを比(くら)べました。手術(しゅじゅつ)前は、一般(いっぱん)の人よりQOLが低(ひく)かったです。でも、手術(しゅじゅつ)後は、QOLがとても良(よ)くなりました。年齢(ねんれい)や骨(ほね)の状態(じょうたい)、手術(しゅじゅつ)後の症状(しょうじょう)(病気やけがのときに体に現(あらわ)れる変化(へんか)や感じること)がQOLに影響(えいきょう)することもわかりました。手術(しゅじゅつ)を決めるとき、友だちや家族のサポートが大事です。手術(しゅじゅつ)が終わると、嬉(うれ)しくなり、自信(じしん)がわいてきます。そして、元気に社会で活動できるようになります。

研究は2つに分けました。1つ目は、2013年12月から2015年6月に手術(しゅじゅつ)(病気やけがを治(なお)すために体を切ったりする医療(いりょう)行為(こうい))を受けた65人の患者(かんじゃ)さんを対象(たいしょう)にしました。対照(たいしょう)群(ぐん)(比(くら)べるために選(えら)ばれたグループ)（比(くら)べるためのグループ）として、歯科の知識(ちしき)がない14人の女性(じょせい)を選(えら)びました。OHIP-J54という方法(ほうほう)で、手術(しゅじゅつ)前と手術(しゅじゅつ)6か月後にQOLを調べました。統計(とうけい)解析(かいせき)(データを詳(くわ)しく調べる方法(ほうほう))（データを詳(くわ)しく調べること）には、Wilcoxon、Mann-Whitney、Kruskal-Wallis検定(けんてい)を使いました。2つ目は、手術(しゅじゅつ)後1年半経(た)った女性(じょせい)患者(かんじゃ)6人にインタビューしました。解析(かいせき)にはグラウンデッド・セオリー・アプローチ（GTA）(インタビューで集めた情報(じょうほう)を分析(ぶんせき)する方法(ほうほう))を使いました。

この研究では、いろいろな方法(ほうほう)で、顎(がく)変形(へんけい)症(しょう)(あごの形やかみ合わせに問題がある病気)のQOLと心や社会の変化(へんか)を詳(くわ)しく調べました。手術(しゅじゅつ)(病気やけがを治(なお)すために体を切ったりする医療(いりょう)行為(こうい))がQOLにどう影響(えいきょう)するかがわかりました。また、手術(しゅじゅつ)中の心や社会の変化(へんか)もわかりました。これで、患者(かんじゃ)さんのQOLを良(よ)くするための治療(ちりょう)計画が立てられるでしょう。

今回の研究は、手術(しゅじゅつ)(病気やけがを治(なお)すために体を切ったりする医療(いりょう)行為(こうい))後1年半経(た)った患者(かんじゃ)さんに限(かぎ)られました。治療(ちりょう)の途中(とちゅう)の変化(へんか)はわかりませんでした。今後は、最初(さいしょ)の診察(しんさつ)から治療(ちりょう)が終わるまでの変化(へんか)を調べます。また、もっとたくさんの患者(かんじゃ)さんを調べて、心や社会の変化(へんか)を詳(くわ)しく知りたいです。これで、もっと良(よ)い治療(ちりょう)方法(ほうほう)やサポートができるようになるでしょう。