論文詳細
医歯学系
大学院医歯学総合研究科(歯)
#紀要論文
IFT関連タンパク質変異による異所性の骨形成は口蓋裂を誘発する
- AI解説:
- 口蓋裂は頻度の高い先天奇形のひとつであり、その発生は厳密な分子メカニズムによって制御されています。一次繊毛は脊椎動物のほとんどの体細胞に存在する細胞小器官であり、その機能異常は様々な疾病(繊毛病)を引き起こします。多くの繊毛病患者で口蓋裂が認められるため、一次繊毛の機能異常と口蓋裂発症には関連があると考えられていますが、その具体的な役割は明らかにされていません。本研究の目的は、一次繊毛を構成するIft88タンパクの欠損が口蓋発生にどのような影響を与えるかを明らかにすることです。
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医歯学系
大学院医歯学総合研究科(歯)
#紀要論文
IFT関連タンパク質変異による異所性の骨形成は口蓋裂を誘発する
AI解説
- 背景と目的:
-
口蓋裂は頻度の高い先天奇形のひとつであり、その発生は厳密な分子メカニズムによって制御されています。一次繊毛は脊椎動物のほとんどの体細胞に存在する細胞小器官であり、その機能異常は様々な疾病(繊毛病)を引き起こします。多くの繊毛病患者で口蓋裂が認められるため、一次繊毛の機能異常と口蓋裂発症には関連があると考えられていますが、その具体的な役割は明らかにされていません。本研究の目的は、一次繊毛を構成するIft88タンパクの欠損が口蓋発生にどのような影響を与えるかを明らかにすることです。
- 主要な発見:
-
Ift88fl/fl;K14Creマウスでは口蓋裂が観察されなかった一方、全てのIft88fl/fl;Wnt1Creマウスで口蓋裂が認められました。また、Ift88fl/fl;Wnt1Creマウスの口蓋突起は著しい低形成を示し、異所性の骨形成が観察されました。胎生12日目と13日目にRunx2という骨芽細胞のマーカー遺伝子の異所性発現が見られ、これが口蓋裂の原因であることが示唆されました。Runx2 siRNAを使ってこの遺伝子の機能を抑制すると、口蓋裂の一部が改善されることが確認されました。
- 方法論:
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本研究では、全ての細胞でIft88を欠損させたマウスが口蓋発生以前に致死となるため、上皮組織特異的Ift88欠損マウス(Ift88fl/fl;K14Cre)と神経堤由来間葉組織特異的Ift88欠損マウス(Ift88fl/fl;Wnt1Cre)を作成しました。これらのマウスの形態学的および分子生物学的な解析を行い、Ift88欠損が口蓋発生に与える影響を調べました。特に、胎生中期におけるマウスの口蓋突起の形態や特定遺伝子の発現を分析しました。
- 結論と意義:
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口腔上皮のIft88は口蓋形成に関与しない一方で、口蓋突起間葉のIft88は正常な口蓋発生に欠かせないことが確認されました。Ift88は口蓋突起間葉細胞の分化を制御し、Ift88欠損に伴う口蓋裂は間葉細胞が骨芽細胞に分化することで引き起こされることが示唆されました。また、Ift88の機能は口蓋の近心と遠心で異なることが示され、Ift88を介した一次繊毛の機能が間葉細胞の骨芽細胞への分化抑制により正常な口蓋形成を誘導することが明らかになりました。この知見は、口蓋裂の病態理解と治療法の開発に重要な意義を持ちます。
- 今後の展望:
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今後の研究では、Ift88と他の遺伝子や分子との相互作用をさらに詳しく調べることで、口蓋発生における一次繊毛の役割をより深く理解することが求められます。また、口蓋形成の異常を引き起こす他の因子や環境要因についても研究を進めることで、より包括的な治療法の開発が期待されます。さらに、今回の研究で得られた知見を基に、新しいバイオマーカーや治療ターゲットの発見につなげることで、口蓋裂の予防や治療の改善が期待されます。
- 背景と目的:
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(こうがいれつ)は生まれつき起こる病気の一つで、口の中の上部がしっかりと閉じない状態です。この病気の原因は細胞の働きに関係していることがわかっています。細胞には「口蓋裂 ( 生まれつき口の中の上部が閉じない状態のことです。) 」と呼ばれる小さな部品があり、これがうまく働かないと病気が起こることがあります。本研究の目的は、この一次繊毛の一部である一次繊毛 ( 細胞にある小さな部品で、細胞の働きを助ける役割を持っています。) というたんぱく質が欠けると、口蓋の発生にどんな影響があるかを調べることです。Ift88 ( 一次繊毛を構成するたんぱく質の一つで、これが欠けると細胞の機能がうまく働かなくなります。)
- 主要な発見:
-
fl/fl;K14CreというマウスではIft88 ( 一次繊毛を構成するたんぱく質の一つで、これが欠けると細胞の機能がうまく働かなくなります。) は見られませんでしたが、Ift88fl/fl;Wnt1Creというマウスでは全て口蓋裂が見られました。このマウスの口蓋は成長が不十分で、異常な骨の形成が見られました。さらに、口蓋の形成に関わる口蓋裂 ( 生まれつき口の中の上部が閉じない状態のことです。) という遺伝子が異常に働いていることがわかり、これが原因で口蓋裂が起こることが示唆されました。この遺伝子の働きを抑えると、口蓋裂が少し改善されることも確認されました。Runx2 ( 骨を作る細胞の働きに関わる遺伝子です。)
- 方法論:
-
研究では、
というたんぱく質が正常に働かないマウスを作り出しました。具体的には、上皮組織特異的Ift88欠損マウス(Ift88fl/fl;K14Cre)と神経堤由来間葉組織特異的Ift88欠損マウス(Ift88fl/fl;Wnt1Cre)を使いました。そして、それぞれのマウスの口蓋の形や遺伝子の働きを詳しく調べました。Ift88 ( 一次繊毛を構成するたんぱく質の一つで、これが欠けると細胞の機能がうまく働かなくなります。)
- 結論と意義:
-
研究の結果、口の中の表面の細胞にある
は口蓋の形成に関係しないことがわかりました。一方で、口蓋の中の細胞にあるIft88は正常な口蓋の発生に必要であることが確認されました。Ift88が働かないと、口蓋の細胞が骨を作る細胞に変化し、これがIft88 ( 一次繊毛を構成するたんぱく質の一つで、これが欠けると細胞の機能がうまく働かなくなります。) の原因となることが示されました。これらの知見は、口蓋裂の原因を理解し、治療方法を開発するために重要です。口蓋裂 ( 生まれつき口の中の上部が閉じない状態のことです。)
- 今後の展望:
-
今後は、
と他の遺伝子や分子との関係をさらに詳しく調べる必要があります。また、口蓋の形成に影響を与える他の要因についても研究を進めていくことが求められます。このような研究により、Ift88 ( 一次繊毛を構成するたんぱく質の一つで、これが欠けると細胞の機能がうまく働かなくなります。) の予防や治療法の開発が期待されます。口蓋裂 ( 生まれつき口の中の上部が閉じない状態のことです。)
- 何のために?:
-
(こうがいれつ)は、赤ちゃんが生まれたときに、口の中の上の部分が口蓋 裂 ( 赤ちゃんが生まれたときに、口の中の上の部分が閉 じていない病気) 閉 じていない病気です。この病気は、細胞 の働 きに関係 しています。細胞 には「 」という小さな部品があります。これがうまく一次 繊毛 ( 細胞 の中にある小さな部品で、細胞 の働 きに関係 します) 働 かないと、口蓋 裂 が起こることがあります。この研究では、 というたんぱくIft88 ( 細胞 の中にあるたんぱく質 で、正常 な口蓋 の発生に必要 です) 質 が欠 けると、口蓋 にどんな影響 があるかを調べます。
- 何が分かったの?:
-
fl/fl;Ift88 ( 細胞 の中にあるたんぱく質 で、正常 な口蓋 の発生に必要 です) というマウスでは、K14Cre ( 特定 の細胞 で特定 の遺伝子 を操作 するために使うツール) は見られませんでした。でも、Ift88fl/fl;口蓋 裂 ( 赤ちゃんが生まれたときに、口の中の上の部分が閉 じていない病気) というマウスでは、すべてWnt1Cre ( 神経 や骨 の成長 に関係 する細胞 で特定 の遺伝子 を操作 するために使うツール) 口蓋 裂 が見られました。このマウスの口蓋 は、ちゃんと成長 していませんでした。さらに、口蓋 の形成 に関係 する というRunx2 ( 口蓋 の形成 に関係 する遺伝子 です) 遺伝子 が、うまく働 いていないことがわかりました。この遺伝子 の働 きを抑 えると、口蓋 裂 が少し改善 されました。
- どうやったの?:
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研究では、
というたんぱくIft88 ( 細胞 の中にあるたんぱく質 で、正常 な口蓋 の発生に必要 です) 質 が正常 に働 かないマウスを作りました。Ift88fl/fl; というマウスと、Ift88fl/fl;K14Cre ( 特定 の細胞 で特定 の遺伝子 を操作 するために使うツール) というマウスを使いました。そして、それぞれのマウスのWnt1Cre ( 神経 や骨 の成長 に関係 する細胞 で特定 の遺伝子 を操作 するために使うツール) 口蓋 の形や遺伝子 の働 きを詳 しく調べました。
- 研究のまとめ:
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研究の
結果 、口の中の表面の細胞 にある は、Ift88 ( 細胞 の中にあるたんぱく質 で、正常 な口蓋 の発生に必要 です) 口蓋 の形成 に関係 ないことがわかりました。でも、口蓋 の中の細胞 にあるIft88は、正常 な口蓋 の発生に必要 だとわかりました。Ift88が働 かないと、口蓋 の細胞 が骨 を作る細胞 に変 わり、これが の口蓋 裂 ( 赤ちゃんが生まれたときに、口の中の上の部分が閉 じていない病気) 原因 となります。このことは、口蓋 裂 の原因 を理解 し、治療 方法 を開発するために重要 です。
- これからどうする?:
-
これからは、
と他のIft88 ( 細胞 の中にあるたんぱく質 で、正常 な口蓋 の発生に必要 です) 遺伝子 や分子との関係 をもっと詳 しく調べる必要 があります。また、口蓋 の形成 に影響 を与 える他の要因 についても研究を進めることが大切です。この研究により、 の口蓋 裂 ( 赤ちゃんが生まれたときに、口の中の上の部分が閉 じていない病気) 予防 や治療 法 の開発が期待されます。
- 著者名:
- 渡部 桃子
- 掲載誌名:
- 新潟歯学会雑誌
- 巻:
- 47
- 号:
- 1
- ページ:
- 45 - 46
- 発行日:
- 2017-07
- 新潟大学学術リポジトリリンク:
- http://hdl.handle.net/10191/0002000721
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