論文詳細
医歯学系
大学院医歯学総合研究科(歯)
#紀要論文
侵害刺激伝達メカニズムの解析に有用な新たな三叉神経スライス標本作製法の開発
- AI解説:
- 口腔顔面領域の痛覚や触覚などの侵害受容信号は三叉神経脊髄路核を経由して伝達される。その中でも特に尾側亜核(Vc)は、脊髄後角と同様な層状構造を持ち、痛覚の伝達において重要な役割を果たしていると考えられている。しかし、従来の研究では三叉神経の求心性入力が脳幹全体に分散しているため、Vcニューロンの反応をスライス標本で記録することは困難とされていた。この研究では、三叉神経入口部からVcまでの構造を含むスライス標本を作製し、光学的分析によりVcの応答を可視化することを目的とした。
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医歯学系
大学院医歯学総合研究科(歯)
#紀要論文
侵害刺激伝達メカニズムの解析に有用な新たな三叉神経スライス標本作製法の開発
AI解説
- 背景と目的:
-
口腔顔面領域の痛覚や触覚などの侵害受容信号は三叉神経脊髄路核を経由して伝達される。その中でも特に尾側亜核(Vc)は、脊髄後角と同様な層状構造を持ち、痛覚の伝達において重要な役割を果たしていると考えられている。しかし、従来の研究では三叉神経の求心性入力が脳幹全体に分散しているため、Vcニューロンの反応をスライス標本で記録することは困難とされていた。この研究では、三叉神経入口部からVcまでの構造を含むスライス標本を作製し、光学的分析によりVcの応答を可視化することを目的とした。
- 主要な発見:
-
研究の結果、三叉神経入口部を電気刺激することでVcの浅層に強いカルシウム反応が得られたが、中間亜核(Vi)や吻側亜核(Vo)には反応が観察されなかった。この違いは、求心性線維の脊髄路への投射方向が異なるためであると考えられた。また、Vcにおける反応はグルタミン酸受容体ブロッカーのCNQXの影響を受けることから、主にAMPA/kinate型グルタミン酸受容体を介したシナプス後の反応であると結論づけられた。これらの結果は、Vcが顎顔面領域の痛覚伝達に関与していることを示している。
- 方法論:
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実験には6~7週齢のC57/BL6J雄性マウスを使用し、深麻酔下で脳幹を摘出した後、三叉神経入口部、神経路、Vcを含む平面でスライスし、厚さ600μmの標本を作製した。スライス標本はカルシウム指示薬Rhod-2で染色し、三叉神経入口部の神経線維を電気刺激して細胞内カルシウム濃度の変化を記録した。また、グルタミン酸受容体ブロッカーを用いてシナプス経由の反応であることを確認し、Kluber-barrera染色によりスライス標本の組織構造も観察した。
- 結論と意義:
-
この研究により、作製されたスライス標本がVcにおける侵害受容信号の伝達メカニズムを詳細に解析するための有用なモデルとなることが示された。特に、Vcは顎顔面領域の痛覚伝達において中心的な役割を果たしていることが明らかになった。このようなスライス標本を用いることで、将来的には様々な薬理学的介入や遺伝子改変を通じて、より詳細なメカニズム解明が進むと期待される。
- 今後の展望:
-
今後の研究では、さらに詳細なVcの構造機能解析が期待される。特に、異なる層での神経活動や化学的特性を明らかにすることで、痛覚伝達の全体像を把握することが可能となる。また、このスライス標本を用いた薬理学的研究により、新しい疼痛管理の方法や薬剤の開発が進む可能性がある。さらに、遺伝子改変マウスモデルを用いることで、特定の遺伝子が痛覚伝達に与える影響を詳細に解析し、新しい治療ターゲットの発見にもつながると考えられる。
- 背景と目的:
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口の中や顔の痛みを感じる信号は、
という神経を通って脳に伝えられます。その中でも特に三叉神経 ( 顔や口の感覚を脳に伝える神経です。) は、痛みの信号を伝える重要な場所だと考えられています。しかし、これまでの研究では三叉神経の信号を正確に記録するのが難しかったため、研究が進んでいませんでした。そこで、この研究では三叉神経とVcを含む脳の一部をスライスして、その反応を詳しく観察することを目的としました。尾側亜核(Vc) ( 痛みの信号を伝える脳の一部です。)
- 主要な発見:
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研究の結果、
を刺激するとVcに強い反応が見られました。しかし、他の部分(中間亜核や吻側亜核)には反応はありませんでした。この反応は、三叉神経 ( 顔や口の感覚を脳に伝える神経です。) という物質の影響を受けることから、特定の受容体を介した反応であることがわかりました。これにより、Vcが顔や顎の痛みを伝える重要な役割を果たしていることが示されました。グルタミン酸受容体ブロッカー ( 神経の反応を抑える物質です。)
- 方法論:
-
実験では、6〜7週齢のオスのマウスを使いました。深い麻酔をかけてから脳を取り出し、
とVcを含む部分をスライスしました。このスライスを特別な染料で染め、三叉神経を電気で刺激して反応を記録しました。また、特定の物質を使って三叉神経 ( 顔や口の感覚を脳に伝える神経です。) (神経細胞同士の接続点)を介した反応であることを確認しました。シナプス ( 神経細胞同士が情報をやり取りする接続点です。)
- 結論と意義:
-
この研究により、作製したスライスがVcの痛み伝達メカニズムを詳しく調べるのに役立つことがわかりました。特に、Vcが顔や顎の痛み伝達において中心的な役割を果たしていることが明らかになりました。このスライスを使うことで、将来的には新しい薬や治療法の開発が進むと期待されます。
- 今後の展望:
-
今後の研究では、さらに詳しいVcの構造や機能を解析することが期待されます。特に、痛み伝達の全体像を明らかにすることで、新しい疼痛管理の方法や薬剤の開発が進む可能性があります。また、
を使うことで、特定の遺伝子が痛みの伝達にどのような影響を与えるかを詳しく調べることができます。遺伝子改変マウス ( 遺伝子を操作して特定の機能を持たせたマウスです。)
- 何のために?:
-
顔や口が
痛 いとき、その信号 は という三叉 神経 ( 顔や口の痛 みを脳 に伝 える神経 。) 神経 を通って脳 に伝 わります。 という場所が、そのVc ( 痛 みの信号 を受け取り、処理 する脳 の部分。) 痛 みの信号 を伝 えるのに大事です。でも、三叉神経 の信号 をうまく調べるのは難 しかったです。この研究では、三叉神経 とVcを細かく見て、その反応 を詳 しく調べました。
- 何が分かったの?:
-
研究でわかったことは、
を三叉 神経 ( 顔や口の痛 みを脳 に伝 える神経 。) 刺激 すると が強くVc ( 痛 みの信号 を受け取り、処理 する脳 の部分。) 反応 しました。でも、他の場所( や中間 亜 核 ( 脳 の一部で、今回の実験 では反応 しなかった部分。) )は吻 側 亜 核 ( 脳 の一部で、今回の実験 では反応 しなかった部分。) 反応 しませんでした。Vcの反応 は、 というグルタミン 酸 受容体 ブロッカー( 神経細胞の反応 を抑 えるために使われる物質 。) 物質 に影響 を受けました。これで、Vcが顔や顎 の痛 みを伝 えるのに大事な役割 をしているとわかりました。
- どうやったの?:
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実験 では、6〜7週齢 のオスのマウスを使いました。深く眠 らせてから脳 を取り出し、 と三叉 神経 ( 顔や口の痛 みを脳 に伝 える神経 。) をVc ( 痛 みの信号 を受け取り、処理 する脳 の部分。) 含 む部分をスライスしました。特別 な で染料 ( 特定 の構造 や細胞 を見やすくするために使う色素 。) 染 め、三叉神経 を電気で刺激 して反応 を記録 しました。特定 の物質 を使って、神経細胞 ( 信号 を伝 えるための脳 の細胞 。) 同士 が繋 がる場所での反応 を確認 しました。
- 研究のまとめ:
-
この研究でわかったことは、作ったスライスは
のVc ( 痛 みの信号 を受け取り、処理 する脳 の部分。) 痛 み伝達 を詳 しく調べるのに役立つことです。特 に、Vcが顔や顎 の痛 みを伝 えるのに中心的 な役割 をしているとわかりました。このスライスを使うことで、新しい薬や治療 法 の開発が進むことが期待されます。
- これからどうする?:
-
これからの研究では、
のVc ( 痛 みの信号 を受け取り、処理 する脳 の部分。) 構造 や機能 をもっと詳 しく調べることが期待されます。痛 みを伝 える全体の仕組みがわかると、新しい痛 みの治療 法 や薬が作られる可能性 があります。また、特定 の が遺伝子 ( 生物の特性 や機能 を決める情報 を持つ分子。) 痛 みにどう影響 するかを詳 しく調べることもできます。
- 著者名:
- 平原 三貴子
- 掲載誌名:
- 新潟歯学会雑誌
- 巻:
- 47
- 号:
- 1
- ページ:
- 49 - 50
- 発行日:
- 2017-07
- 新潟大学学術リポジトリリンク:
- http://hdl.handle.net/10191/0002000723
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