論文詳細

人文社会科学系 経済科学部 #紀要論文

企業の立地選択と政府の課税競争に関する一考察 : 政策協調と輸入関税の分析

AI解説:
本論文の目的は、企業の立地選択と政府の課税および補助金競争について再評価することです。特に、輸出国政府が協調して政策を実施する場合の立地選択均衡と、輸入国政府が輸入関税を課す場合の立地選択均衡を探索します。既存の研究(Hamada et al., 2021)は、第三市場モデルを用いて企業の立地選択や政府の課税・補助金政策を分析しましたが、政府の課税・補助金政策にコミットできる場合とできない場合の違いに焦点を当てました。本論文は、この研究を基にしつつ、輸出国政府が政策協調を行う場合や輸入国が関税政策を実施するシナリオを追加で分析することを目的としています。
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著者名:
濱田 弘潤
掲載誌名:
新潟大学経済論集
巻:
113
ページ:
1 - 31
発行日:
2022-09
著者による要約:
本論文は,企業の立地選択と政府の立地課税・補助金競争を考察し,輸出国政府が政策協調を実現する時の立地選択均衡と,輸入国政府が輸入関税を課す時の立地選択均衡を導出する.Hamada et al.(2021)では,戦略的貿易理論の枠組みで第三市場モデルを用いて,生産拠点として立地する国を企業が選択した後,立地国政府が課税・補助金政策を決定する状況を考察し,政府の課税競争及び企業の立地選択について分析を行った.本論文では,先行研究の結論を簡潔に要約し,分析されず残された2つの課題を考察し,結論を述べることを目的とする.第一に,輸出国政府が政策協調するベンチマークを考え,企業の立地選択均衡についての分析結果を示す.輸出国の社会厚生合計を最大化するケースと,世界厚生を最大化するケースにおける均衡結果を導出する.第二に,既存研究のモデルを拡張し,輸入国政府が関税政策を実施する状況を考え,輸出国2国と輸入国の3つの政府が非協力的に課税率・関税率を決定する場合の,企業の立地選択均衡を導出する.結論は以下の通りである.第一のベンチマーク・ケースにおいて,2企業が同質的な場合には,企業がどこに立地するかは無差別になる.一方,企業の限界費用が異なる場合には,企業間の限界費用格差に依存して,複数の純粋戦略均衡が存在する場合または純粋戦略均衡が存在しない場合が生じる.第二の輸入関税を考慮した分析では,3政府の均衡課税・関税率を導出し,2企業が創業国に立地するのが支配戦略均衡になるという結論を示す.
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