論文詳細
法学部
#紀要論文
AI責任肯定論の動向
- AI解説:
- 本稿は、前作「ロボットの処罰可能性を巡る議論の現状について」を受けて、AIの責任を巡る議論の新たな展開を追跡調査することを目的としている。前作では、AIに責任を観念することが可能かという問いを巡る各種学説を紹介し、AIの責任を否定する論拠が少ないことを指摘した。その後、ディープラーニングの進展や2015年の国際的画像認識コンペティションでAIの能力が人間を超えたことを受けて、AIに責任を肯定する議論が増加した。これに伴い、本稿では2016年以降のAI責任肯定論の動向を紹介し、若干の検討を加える。
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法学部
#紀要論文
AI責任肯定論の動向
AI解説
- 背景と目的:
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本稿は、前作「ロボットの処罰可能性を巡る議論の現状について」を受けて、AIの責任を巡る議論の新たな展開を追跡調査することを目的としている。前作では、AIに責任を観念することが可能かという問いを巡る各種学説を紹介し、AIの責任を否定する論拠が少ないことを指摘した。その後、ディープラーニングの進展や2015年の国際的画像認識コンペティションでAIの能力が人間を超えたことを受けて、AIに責任を肯定する議論が増加した。これに伴い、本稿では2016年以降のAI責任肯定論の動向を紹介し、若干の検討を加える。
- 主要な発見:
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本稿では主に4つのAI責任肯定論を紹介し、それぞれの議論を検討している。Corneliusの見解では、法人の処罰可能性をAIに転用するアプローチが取られており、法人処罰の法制度実現がAI処罰の可能性を開くとされる。Gaedeの見解は、AIの自律性を肯定し、種差別としてAIの権利主体性を主張する。Quarckの見解は、刑罰目的からAIの責任主体性を論じ、特に再プログラミングという刑罰を提案する。Hallevyの見解は、犯罪論体系に沿ってAIの責任を分析し、AIも人間と同様に各要件を満たすとする。
- 方法論:
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本稿では、Cornelius、Gaede、Quarck、Hallevyの各論者の見解を引用し、AIの責任肯定論の動向を紹介する。Corneliusは法人処罰論からAIの処罰可能性を論じ、GaedeはAIの法主体性を種差別という視点から分析する。Quarckは刑罰目的論からAIの責任主体性を検討し、Hallevyは英米系の犯罪論体系に基づいてAIの責任を分析する。各論者の主張を要約し、適宜検討を加えることで、AIの責任肯定論の現状を明らかにする。
- 結論と意義:
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本稿では、AIの責任を巡る議論が急速に進展していることを示し、各論者の見解を通じてAIの責任肯定論が一定の理論的基盤を持つことを明らかにした。しかし、AI責任肯定論にはまだ理論的な課題が多く、またAIに責任を認めることがどのような法理論的影響をもたらすかについての議論が不足していることを指摘する。AI責任肯定論の論者には、これらの課題に取り組む必要があるとする。
- 今後の展望:
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AI責任肯定論の理論的実益を示すことが求められる今後の課題として、本稿ではAIに責任を認めることがいかなる法理論的影響をもたらすかを明確にする必要があると指摘する。具体的には、AIの行為主体性や責任能力、刑罰の正当化論などについて、さらに詳細な分析と議論が必要である。また、AI技術の進展に伴い、新たな法的課題や倫理的問題が出現する可能性があるため、継続的な研究と議論が求められる。今後もAI責任肯定論の議論の趨勢を追跡し、その理論的基盤を強化していく必要がある。
- 背景と目的:
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この論文は、「ロボットの処罰可能性を巡る議論の現状について」という前の論文をもとに、AI(人工知能)の責任についての新しい議論を追跡調査することを目的としています。前の論文では、AIに責任を負わせることができるかどうかについての学説を紹介し、AIの責任を否定する根拠が少ないことを指摘しました。その後、
技術の進展や2015年の国際的な画像認識コンペティションでAIが人間を超える性能を示したことから、AIに責任を肯定する議論が増えてきました。この論文では、2016年以降のAI責任肯定論の動向を紹介し、いくつかの検討を加えます。ディープラーニング ( 大量のデータを使ってAIが自動的に学習する技術。)
- 主要な発見:
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この論文では、4つの主なAI責任肯定論を紹介し、それぞれの議論を検討しています。
1. Corneliusの見解:法人(企業)を処罰する法制度をAIに適用できるとし、法人を処罰対象とすることでAIも処罰可能になると主張しています。
2. Gaedeの見解: を認め、AIにも権利を与えるべきだとし、AIの権利主体性を主張しています。AIの自律性 ( AIが自分で判断し行動する能力。)
3. Quarckの見解:AIの責任主体性を論じ、再プログラミングを刑罰として提案しています。
4. Hallevyの見解:犯罪論体系に基づいてAIの責任を分析し、AIも人間と同様に責任を負う要件を満たすとしています。
- 方法論:
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この論文では、Cornelius、Gaede、Quarck、Hallevyの各論者の見解を引用し、AIの責任肯定論の動向を紹介します。Corneliusは
を基にAIの処罰可能性を論じ、GaedeはAIの法人処罰論 ( 企業や組織も法律違反で処罰されるべきだとする考え方。) を法主体性 ( 法律上の権利や義務を持つことができる立場。) という視点から分析します。Quarckは刑罰目的論からAIの責任主体性を検討し、Hallevyは英米系の犯罪論体系に基づいてAIの責任を分析します。各論者の主張を要約し、適宜検討を加えることで、AIの責任肯定論の現状を明らかにします。種差別 ( 生物の種に基づく差別。ここでは人間とAIの違いに基づく差別を指す。)
- 結論と意義:
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この論文では、AIの責任を巡る議論が急速に進展していることを示し、各論者の見解を通じてAIの責任肯定論が一定の理論的基盤を持つことを明らかにしました。しかし、AI責任肯定論にはまだ理論的な課題が多く、またAIに責任を認めることがどのような法理論的影響をもたらすかについての議論が不足していることを指摘します。AI責任肯定論の論者には、これらの課題に取り組む必要があります。
- 今後の展望:
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AI責任肯定論の理論的実益を示すことが求められる今後の課題として、この論文ではAIに責任を認めることがいかなる法理論的影響をもたらすかを明確にする必要があると指摘します。具体的には、AIの行為主体性や責任能力、刑罰の正当化論などについて、さらに詳細な分析と議論が必要です。また、AI技術の進展に伴い、新たな法的課題や倫理的問題が出現する可能性があるため、継続的な研究と議論が求められます。今後もAI責任肯定論の議論の趨勢を追跡し、その理論的基盤を強化していく必要があります。
- 何のために?:
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この
論文 は、ロボットの についての責任 ( 何か悪いことが起きたときに、その原因 を作った人やものが受けるべき罰 や義務 のことです。) 議論 をもとに、新しいAIの責任 について調べています。前の論文 では、AIに責任 を負わせることができるかどうかを話していました。最近 、AIが人間よりも賢 くなることが増 えたため、AIに責任 を負わせる考え方が増 えてきました。この論文 では、2016年以降 の新しい考え方を紹介 します。
- 何が分かったの?:
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この
論文 では、AIに を持たせる4つの考え方を責任 ( 何か悪いことが起きたときに、その原因 を作った人やものが受けるべき罰 や義務 のことです。) 紹介 しています。
1. Corneliusの考え: と同じようにAIにも企業 ( ビジネスを行うための組織 や会社のことです。) 責任 を持たせることができるとしています。
2. Gaedeの考え:AIにも を権利 ( ものごとをする自由や、守られるべきことを指します。) 与 えるべきだとしています。
3. Quarckの考え:AIが悪いことをしたら、 をプログラム ( コンピュータが動くための指示 を書いたものです。) 変 えるべきだとしています。
4. Hallevyの考え:AIも人間と同じ責任 を持たせるべきだとしています。
- どうやったの?:
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この
論文 では、4人の考え方を使ってAIの について責任 ( 何か悪いことが起きたときに、その原因 を作った人やものが受けるべき罰 や義務 のことです。) 紹介 します。Corneliusは の企業 ( ビジネスを行うための組織 や会社のことです。) 責任 をAIに使えると考えています。GaedeはAIにも があると考えています。QuarckはAIが悪いことをしたら権利 ( ものごとをする自由や、守られるべきことを指します。) を罰 ( 悪いことをしたときに受ける処罰 やペナルティのことです。) 与 えるべきだと考えています。HallevyはAIにも人間と同じ責任 を持たせるべきだと考えています。
- 研究のまとめ:
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この
論文 では、AIの についての責任 ( 何か悪いことが起きたときに、その原因 を作った人やものが受けるべき罰 や義務 のことです。) 議論 が進んでいることを示 しています。でも、まだ解決 しなければならない問題がたくさんあります。AIに責任 を持たせることがどのような影響 を与 えるか、もっと話し合う必要 があります。
- これからどうする?:
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今後の
課題 として、AIに を持たせることがどのような責任 ( 何か悪いことが起きたときに、その原因 を作った人やものが受けるべき罰 や義務 のことです。) 影響 を与 えるかをもっと詳 しく調べる必要 があります。AI技術 が進むにつれて、新しい問題も出てくるかもしれません。そのため、継続的 な研究と議論 が必要 です。
- 著者名:
- 根津 洸希
- 掲載誌名:
- 法政理論
- 巻:
- 55
- 号:
- 2
- ページ:
- 28 - 61
- 発行日:
- 2022-10
- 新潟大学学術リポジトリリンク:
- http://hdl.handle.net/10191/0002000737
