聴覚障害と知的障害を併せ持つ子どものタブレット活用 : コミュニケーション能力と文字習得の向上を目指して

この研究の背景には、聴覚障害や知的障害を併せ持つ子どものコミュニケーションや言語習得における困難性があります。著者たちは、音声言語の聞き取りの困難さが単なる「情報入力の制限」にとどまらず、音声情報の制限や話し言葉の知覚に必須なフィードバックの欠如が言語学習に大きな影響を与える点に着目しています。さらに、知的障害が加わることで、コミュニケーションの阻害要因が増加し、支援がより困難になる現状があります。著者たちは、タブレットなどのデジタルデバイスを活用することで、音声言語が困難な子どもたちのコミュニケーション能力と文字習得の向上を目指すことを目的としています。

研究の主要な発見としては、タブレットを用いたメール機能の習得が子どものコミュニケーション能力の向上に寄与した点が挙げられます。具体的には、対象児Aがタブレットを用いたメールの送受信を通じて自発的な表出が増加し、対面指導期と遠隔指導期の両方において質的な変化が確認されました。遠隔指導期には、設定されたクイズの応答に加え、自身に関する情報や相手に対するリアクションなど、コミュニケーションの幅が広がり、自発的な意識の変化が見られました。

研究方法として、対象児Aが所持するiPadのショートメール機能を用いた2段階の実践が行われました。第1段階は対面指導期で、週1回30分程度のセッションを行い、メールの仕組みや操作を習得させることを目指しました。続く第2段階の遠隔指導期では、Aが在宅しながら週1回30分程度のメールやり取りを行い、対面指導期での進捗を基にさらにコミュニケーション能力を高めました。分析方法としては、量的側面では送信されたメール文の意味単位数を計測し、質的側面では発信記録を詳細に分類し、その変化を比較しました。

本研究は、タブレットを活用した支援が聴覚障害と知的障害を併せ持つ子どものコミュニケーション能力向上に有効であることを示しました。特に、対面指導期から遠隔指導期にかけての自発表出の増加は、本人のコミュニケーション意欲の向上を示すものであり、音声言語に代わる手段として有効でした。また、タブレットを用いた文字指導も、文字形の修正や綴りの確認に効果があり、視覚的フィードバックが聴覚障害児に対して有効であることが確認されました。

今後の展望として、タブレットを用いた支援のさらなる発展と、メタ認知への働きかけを強化する必要があります。本研究で示された課題として、短期間でのメタ認知の意識付けが難しい点が挙げられ、これを改善するための長期的な支援方法の開発が求められます。また、タブレットを用いた支援が子どもの自立的な学習を支えるツールとなるためには、より効果的な動機付けの工夫と、個別に対応した緻密な指導が不可欠です。これに加え、デジタルツールの機能を最大限に活用し、子どもの成長を促進するための新しいアプローチが期待されます。

この研究は、耳が聞こえにくく、知的障害(ちてきしょうがい)のある子どもたちがいます。彼(かれ)らが、コミュニケーションや言葉を学ぶのが難(むずか)しいことがわかりました。音を聞くのが難(むずか)しいことが、言葉を学ぶのに影響(えいきょう)します。自分が出した音を聞いて確認(かくにん)できないからです。さらに、知的障害(ちてきしょうがい)があって、もっと難(むずか)しくなります。著者(ちょしゃ)たちは、タブレットなどを使って、これらの子どもたちのコミュニケーション能力(のうりょく)を上げたいと考えました。

研究の結果(けっか)、タブレットを使うことで、子どものコミュニケーション能力(のうりょく)が上がりました。特(とく)に、メールを送ることを学ぶと、自分から話すことが増(ふ)えました。対面でも、遠くからの指導(しどう)でも、コミュニケーションの質(しつ)が良(よ)くなりました。これにより、子どもは自分のことを話したり、相手に反応(はんのう)したりするようになりました。

研究では、子どもたちがiPadのメール機能(きのう)を使いました。まず、対面の指導(しどう)で週1回30分、メールの使い方を教えました。次に、家で週1回30分程度(ていど)、メールをやり取りしました。これで、コミュニケーション能力(のうりょく)をさらに高めました。そして、送られたメールの内容(ないよう)を細かく分析(ぶんせき)しました。

この研究で、タブレットを使った支援(しえん)が効果的(こうかてき)だとわかりました。特(とく)に、対面指導(しどう)から遠隔(えんかく)指導(しどう)にかけて、子どもが自分から発言する機会(きかい)が増(ふ)えました。これは、子どものコミュニケーション意欲(いよく)が高まったことを示(しめ)しています。また、タブレットを使った文字の学びも効果的(こうかてき)でした。耳が聞こえにくい子どもにとって、文字の形や綴(つづ)りの確認(かくにん)がやりやすくなりました。

今後は、タブレットを使った支援(しえん)をもっと発展(はってん)させる必要(ひつよう)があります。メタ(めた)認知(にんち)（自分の学びや行動を客観的(きゃっかんてき)に見ること）を意識(いしき)させるのは短期間では難(むずか)しいです。これを改善(かいぜん)するために、長期的(ちょうきてき)な支援(しえん)方法(ほうほう)を開発する必要(ひつよう)があります。また、子どもが自立して学ぶためには、もっと効果的(こうかてき)な動機付(どうきづ)けや個別(こべつ)の指導(しどう)が必要(ひつよう)です。デジタルツールを最大限(さいだいげん)に活用して、子どもの成長(せいちょう)を促(うなが)す新しい方法(ほうほう)が期待されます。