小学校理科授業における自由試行と描画法の効果を探る : 子どもの深い概念理解を促すために

背景と目的：

本研究の背景には、平成29年告示の小学校学習指導要領で推進されている「主体的・対話的で深い学び」の実現がある。特に小学校理科では、児童が自然の事物・現象に対して科学的に問題解決する力を育成することが求められている。しかし、現場では児童が根拠のある予想や仮説を立てることが難しいとされ、多くの教師が指導に困難を感じている。そこで、本研究は自由試行と描画法を用いて、児童が根拠を基に予想や仮説を立て、深い学びを実現するための効果的な指導方法を探ることを目的としている。

主要な発見：

本研究の結果、自由試行を取り入れた実験群の児童は、対照群に比べて問題解決能力が向上し、より深い学びを実現できることが示された。具体的には、実験群の児童が根拠に基づいた気づきや発想をより多く示し、学習内容を他の事象に適用する能力（A評価）が高かった。また、描画法を用いることで、児童の考えを視覚的に捉えることができ、自分の考えを明確に表現する手助けとなった。特に、実験群では自分を含めた描画が多く見られ、より主体的な活動が促進されていることが分かった。

方法論：

本研究は、小学校第3学年2クラス（N=65）を対象に実施された。1組を自由試行を取り入れる実験群、2組を対照群とし、全6時間の「音を伝えよう」の単元で自由試行を行った。授業中、児童は音が出る材料を観察し、ワークシートに描画とともに記録を行った。研究データとしては、児童のワークシート、班ごとのホワイトボード、及びビデオ録画を収集し、記述と描画の分析を行った。ワークシートの記述はA、B、Cの3段階で評価され、描画も特徴的な傾向を分析した。

結論と意義：

本研究の結果から、自由試行は児童が主体的に学びを深めるために有効であることが示された。特に、児童が自由に試行することで、根拠に基づいた気づきや発想が促され、学習内容が他の事象にも適用されやすくなった。また、描画法を用いることで、児童の考えを視覚的に捉えやすくなり、教師も児童の理解度を把握しやすくなった。このことから、自由試行と描画法を組み合わせることで、理科教育の質が向上し、児童の深い学びを支援する有力な手法となることが示された。

今後の展望：

今後の研究では、自由試行が児童の思考過程にどのように影響を与えるかをさらに探るため、インタビューなどの質的データを併用した研究が必要である。また、自由試行と描画法を他の学年や異なる単元でも適用し、その有効性を検証することが求められる。さらに、教師が現場で簡便に実施できる方法を具体的に提案し、教育現場での実践的な応用可能性を高めることが重要である。これにより、より多くの児童が科学的な問題解決能力を身につけ、深い学びを実現できる教育環境を構築することが期待される。