論文詳細
医歯学系
大学院医歯学総合研究科(医)
#学位論文
エンパグリフロジンは血管形成を維持することで左室圧負荷による左室収縮機能障害を改善する
- AI解説:
- 大規模な心血管アウトカム試験(EMPA-REG、CANVAS、DECLARE-TIMI 58、DAPA-HF、EMPEROR-Reduced など)により、sodium–glucose transporter 2(SGLT2)阻害薬が心不全(HF)による入院および死亡を減らし、その有益性は2型糖尿病のない患者でも認められることが確立されている。この「クラス効果」がある一方で、心臓保護(cardioprotection)をもたらす生物学的機序は十分に解明されておらず、複数の候補経路(例:血行動態の変化、ケトン産生、sodium–hydrogen exchange の阻害、交感神経緊張の変化)が提案されている。別の観点として、マウスの左室(LV)圧負荷モデルに関する先行研究では、血管新生(angiogenic)シグナルの低下が毛細血管の減少(capillary rarefaction)、心筋低酸素、収縮機能の悪化につながり得ることが示唆されている。こうした背景のもと、本論文は、圧負荷下で empagliflozin(EMPA)が心臓の毛細血管化(capillarization)と機能を保持するかどうかを検証し、さらに metabolomic・transcriptomic・機序解明実験を通じて、EMPA と内皮保護および心機能改善を因果的に結び付け得る分子経路を同定することで、EMPA が不全心に利益をもたらす仕組みを明らかにすることを目的とした。
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医歯学系
大学院医歯学総合研究科(医)
#学位論文
エンパグリフロジンは血管形成を維持することで左室圧負荷による左室収縮機能障害を改善する
AI解説
- 背景と目的:
-
大規模な心血管アウトカム試験(EMPA-REG、CANVAS、DECLARE-TIMI 58、DAPA-HF、EMPEROR-Reduced など)により、sodium–glucose transporter 2(SGLT2)阻害薬が心不全(HF)による入院および死亡を減らし、その有益性は2型糖尿病のない患者でも認められることが確立されている。この「クラス効果」がある一方で、心臓保護(cardioprotection)をもたらす生物学的機序は十分に解明されておらず、複数の候補経路(例:血行動態の変化、ケトン産生、sodium–hydrogen exchange の阻害、交感神経緊張の変化)が提案されている。別の観点として、マウスの左室(LV)圧負荷モデルに関する先行研究では、血管新生(angiogenic)シグナルの低下が毛細血管の減少(capillary rarefaction)、心筋低酸素、収縮機能の悪化につながり得ることが示唆されている。こうした背景のもと、本論文は、圧負荷下で empagliflozin(EMPA)が心臓の毛細血管化(capillarization)と機能を保持するかどうかを検証し、さらに metabolomic・transcriptomic・機序解明実験を通じて、EMPA と内皮保護および心機能改善を因果的に結び付け得る分子経路を同定することで、EMPA が不全心に利益をもたらす仕組みを明らかにすることを目的とした。
- 主要な発見:
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C57BL/6NCrSlc マウスに transverse aortic constriction(TAC)を施したところ、EMPA 治療は圧負荷により生じる収縮機能障害を改善し、心筋線維化を減少させた。一方で、TAC 対照群と比べて体重、心重量、心筋細胞横断面積、全身血圧に大きな差はなかった。Metabolomic 解析では hydroxybutyrates の増加と、arginine–citrulline 代謝物の特異的なシフトが認められ、心臓と血漿で citrulline が増加し、心組織では arginine が減少した。これは、arginine から citrulline および nitric oxide(NO)への変換が亢進していることと整合的である。しかし、citrulline を直接投与しても、TAC による収縮機能障害や左室拡大(LV dilatation)は改善せず、citrulline 自体が機能的利益の主要な媒介因子ではないことが示唆された。Transcriptomic 解析(RNA-seq)では、insulin signaling(PI3K-Akt signaling を含む)に関連する KEGG 経路のエンリッチメントが示された。組織学的評価および灌流評価により、EMPA は TAC に伴う毛細血管減少を抑制し、心臓灌流を改善し、内皮細胞のアポトーシスも減少させた。EMPA は内皮の phospho-eNOS と内皮 NO レベルを回復させ、phospho-AKT を増加させ、内皮の reactive oxygen species(ROS)を低下させた。重要な点として、L-NAME による NOS 阻害は EMPA の利益を減弱させ、内皮生存、毛細血管密度、心機能を悪化させたことから、eNOS/NO 軸が因果的に関与することが支持された。In vitro では、norepinephrine が HUVECs にアポトーシスと ROS を誘導し、アポトーシスは AKT activator(SC79)、arginine、または NO donor により抑制された。さらに 3-hydroxybutyrate は ROS を低下させ、pAKT を維持し、アポトーシスを軽減した。これらは、提案された AKT/eNOS/NO を介した内皮保護と整合していた。
- 方法論:
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本研究では野生型の雄 C57BL/6NCrSlc マウスを用い、9週齢で transverse aortic constriction(TAC)により LV 圧負荷を誘導した。マウスには通常飼料を与え、EMPA(0.03% w/w)を含む群と含まない群を設定し、主に TAC 後4週で評価した。追加の時間解析として、より早期(1週を含む)の時点も検討した。機序解明の一部の群では、TAC 後2週から2週間、飲水に L-NAME(1 mg/ml)を添加して投与し、NOS を阻害した。観察された代謝変化の媒介因子として citrulline が関与し得るかを検証するため、別の TAC マウスに対し、TAC 後2週から2週間、飼料に 1.0% citrulline を添加し、さらに毎日腹腔内に citrulline(25 mg)を投与した。心機能とリモデリングは、心エコー(Vevo 2100)、tail-cuff 血圧測定、心臓カテーテル検査で評価し、腎機能および尿関連パラメータも測定した。心臓灌流は蛍光マイクロスフェアで評価した。血漿および心組織の metabolomics は capillary electrophoresis/mass spectrometry(CE/TOFMS)で行い、citrulline は ELISA でも追加測定した。Transcriptomic 解析は RNA sequencing(NextSeq500;TopHat2 によるマッピング;Cuffdiff による差次発現;KEGG エンリッチメント)で実施し、データは GSE157792 として登録した。組織学的評価として、HE 染色、picrosirius red による線維化定量、isolectin GS-IB4 による毛細血管密度評価、TUNEL による内皮アポトーシス(および FACS による Annexin V)、DAR-4 M 染色による NO 検出、DHE 染色およびフローを用いたアッセイによる ROS 検出、免疫染色と Western blot による phospho-eNOS/phospho-AKT 検出を行った。内皮細胞は MACS(CD45 除去、CD31 濃縮)で分離し、標的 RNA 解析に用いた。In vitro 実験では、HUVECs を norepinephrine(10 ng/ml、72 h)に曝露し、同時処置として arginine 5 mM、SC79 10 μM、3-hydroxybutyrate 10 mM、または DETA NONOate 100 μM を用い、アポトーシス、ROS、pAKT を評価した。分化させた C2C12 myocytes は、citrulline が酸素消費に及ぼす影響を検証するための extracellular flux アッセイに用いた。統計解析は Student’s t test、Tukey’s test を伴う two-way ANOVA、Kruskal–Wallis、または Dunnett’s test を用い、有意水準は P < 0.05 とした。
- 結論と意義:
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本論文は、empagliflozin が圧負荷心を保護する主因は、心筋細胞肥大や全身血圧の変化ではなく、心臓微小血管系の保持にあると結論づけている。この TAC モデルでは、EMPA は内皮アポトーシスを抑制し、毛細血管減少を軽減した。これらの変化は、内皮の AKT リン酸化増加、eNOS 活性化(phospho-eNOS)の増強、内皮 NO 産生の回復と機序的に結び付けられた。L-NAME により EMPA の利益が減弱したことは、この状況で主要な心臓保護効果に NOS 活性(ひいては eNOS/NO 経路)が必要であることを示す。Metabolomics では、NO 合成亢進と整合する心組織での citrulline 増加と arginine 低下が同定されたが、citrulline 補充は機能改善を再現できず、citrulline 上昇それ自体は表現型を駆動するのに十分ではないという解釈を支持した。In vitro の結果は、カテコールアミン負荷が内皮 ROS 蓄積、pAKT シグナル低下、アポトーシスにつながること、そして AKT 活性化や arginine/NO の供給がこれらを打ち消し得ることを示した。3-hydroxybutyrate も norepinephrine 曝露下で ROS を低下させ、AKT シグナルを保持した。総合すると、本研究は、EMPA が LV 圧負荷下で毛細血管化を維持し収縮機能を改善する中心的経路として、内皮 AKT/eNOS/NO シグナリングを位置づけ、HF における SGLT2 阻害薬の作用候補に微小血管機序を加えるものである。
- 今後の展望:
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著者らは、心臓の細胞種をまたぐ NO シグナルに未解決の問題があると指摘している。近年、empagliflozin が心筋細胞の nNOS を増加させ得ること、また心筋細胞特異的な nNOS 過剰発現が LV 圧負荷下で機能を改善し得ることを示す証拠があり、心筋細胞と内皮細胞の間で NO 関連のクロストークが起こる可能性が示唆される。著者らは、心筋細胞における nNOS/NO 経路と内皮細胞における eNOS/NO 経路の相互作用の可能性を検証する追加研究を明確に求めている。さらに広い観点では、本研究データは、hydroxybutyrate が内皮細胞でカテコールアミン関連 ROS を抑制し AKT シグナルを保持する役割を支持する一方、非糖尿病条件におけるケトン生成(ketogenesis)の優位性については不確実性があることも認めている。また、心不全に伴う全身性代謝変化(例:インスリン抵抗性)が、SGLT2 阻害による循環 hydroxybutyrate 応答に影響し得るとも示唆している。したがって、今後の研究課題は、細胞間 NO 機序の解明と、どの保護経路が異なる疾患条件下で優勢となるかを規定する文脈要因(心不全によって規定される代謝状態など)を明らかにすることとして位置づけられている。
- 背景と目的:
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という糖尿病の薬は、大きな臨床試験で、SGLT2阻害薬 ( 腎臓で糖を尿へ出す働きを強める薬で、血糖を下げる目的で使われますが、心不全の悪化や入院を減らす効果も報告されています。) による入院や死亡を減らすことがわかっており、2型糖尿病がない人にも効果があるとされています。ただ、なぜ心臓を守れるのかという仕組みは、まだはっきりしきれていません。心不全 ( 心臓のポンプ機能が弱り、全身に十分な血液を送れなくなる状態です。息切れやむくみなどが起こり、重い場合は入院が必要になります。)
一方、心臓に強い負担がかかる状態では、心臓の中の が減ることで心筋が酸素不足になり、心臓の動きが悪くなる可能性が指摘されていました。毛細血管 ( とても細い血管で、酸素や栄養を組織に届けます。心臓では毛細血管が減ると心筋が酸素不足になりやすくなります。)
そこでこの研究は、心臓に圧力の負担をかけたマウスで、 が毛細血管を保ち、心臓の働きを守るのかを調べました。さらに、代謝や遺伝子の変化も詳しく調べて、どの分子の仕組みが関係するのかを明らかにすることを目的としました。empagliflozin ( SGLT2阻害薬の一種で、糖尿病治療薬として使われます。研究では心臓保護にも関わる可能性が調べられています。)
- 主要な発見:
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マウスに
という手術で心臓に圧力の負担をかけると、心臓の収縮する力が低下しやすくなりましたが、TAC ( 大動脈をしばって血流を通りにくくし、左室に圧負荷をかけるマウスの手術モデルです。心不全に近い状態を作るために使います。) を投与するとこの低下が改善し、心臓のempagliflozin ( SGLT2阻害薬の一種で、糖尿病治療薬として使われます。研究では心臓保護にも関わる可能性が調べられています。) も減りました。ただし、体重や心臓の重さ、血圧などには大きな差がありませんでした。線維化 ( 細胞の代わりに硬い組織が増える変化で、心臓が硬くなったり動きにくくなったりします。)
代謝の分析では、 などが増え、心臓と血液で3-hydroxybutyrate ( ケトン体の一種で、エネルギー源になったり、細胞のストレスを減らす働きが示されることがあります。) が増加し、心臓ではcitrulline ( アミノ酸の一つで、arginineやNOに関係する代謝の中で出てきます。増減はNO産生の変化を考える手がかりになります。) が減少しました。これは、arginine から nitric oxide(arginine ( 体内のアミノ酸の一つで、NOを作る材料になります。) )が作られる流れが強まっている可能性と合います。しかし citrulline を直接与えても、心臓機能の悪化は改善しなかったため、citrulline の増加だけが主な原因ではないと考えられました。NO ( 血管を広げるなど、血流を保つ働きをもつ気体の分子です。内皮の健康や毛細血管の維持に関わります。)
遺伝子の分析では、insulin signaling と関係する という経路が関わる可能性が示されました。さらに組織の観察から、empagliflozin はAKT ( 細胞の生存や代謝を調整する重要なタンパク質で、シグナル伝達に関わります。血管の内皮を守る方向に働くことがあります。) の減少を抑え、心臓への血流を改善し、毛細血管 ( とても細い血管で、酸素や栄養を組織に届けます。心臓では毛細血管が減ると心筋が酸素不足になりやすくなります。) の内皮細胞 ( 血管の内側をおおっている細胞です。血管を保ち、血流や炎症の調整にも関わります。) も減らしました。内皮では AKT とアポトーシス ( 細胞が自分で計画的に死ぬ仕組みです。必要な場面もありますが、過剰になると組織の機能低下につながります。) の働きが回復し、NOが増え、eNOS ( 内皮細胞で NO を作る酵素です。血管を広げたり、血流を保ったり、細胞死を抑えたりするのに重要です。) は減りました。ROS ( 反応性の高い酸素由来の物質で、増えすぎると細胞を傷つけます。ストレスや炎症で増えることがあります。)
また、NOS を止める薬 を使うと empagliflozin の良い効果が弱まり、毛細血管や心機能も悪化しました。つまり eNOS と NO の経路が、empagliflozin の心臓保護に重要だと考えられました。細胞実験でも、L-NAME ( NOSの働きを邪魔して NO 産生を減らす薬で、NO経路が本当に重要か確かめる実験に使われます。) が内皮細胞にダメージを与える一方、AKTを活性化したり、arginine や NO を補ったりすると細胞死が抑えられ、3-hydroxybutyrate も ROS を減らして保護に働くことが示されました。norepinephrine ( ストレス時に増えるホルモンで、心不全では高まりやすいとされます。血管や細胞に負担をかけることがあります。)
- 方法論:
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雄のマウスに
手術を行い、心臓に圧力の負担をかけました。TAC ( 大動脈をしばって血流を通りにくくし、左室に圧負荷をかけるマウスの手術モデルです。心不全に近い状態を作るために使います。) を混ぜた餌を与える群と、与えない群を比べ、主に4週間後の心臓機能を調べました。empagliflozin ( SGLT2阻害薬の一種で、糖尿病治療薬として使われます。研究では心臓保護にも関わる可能性が調べられています。)
仕組みを確かめるため、一部の群では を飲み水に入れてL-NAME ( NOSの働きを邪魔して NO 産生を減らす薬で、NO経路が本当に重要か確かめる実験に使われます。) S を働きにくくしました。さらに、NO ( 血管を広げるなど、血流を保つ働きをもつ気体の分子です。内皮の健康や毛細血管の維持に関わります。) が効果の中心かどうかを調べるため、別の群では citrulline を餌と注射で追加しました。citrulline ( アミノ酸の一つで、arginineやNOに関係する代謝の中で出てきます。増減はNO産生の変化を考える手がかりになります。)
心臓の働きは やカテーテル検査などで調べ、血流は蛍光の微小な粒を使って評価しました。代謝は質量分析で、遺伝子の変化は心エコー ( 超音波で心臓の動きや大きさ、収縮力を調べる検査です。) で調べました。RNA-seq ( RNAを大量に読み取って、遺伝子の働き方の違いを調べる方法です。) の数、毛細血管 ( とても細い血管で、酸素や栄養を組織に届けます。心臓では毛細血管が減ると心筋が酸素不足になりやすくなります。) 、細胞死、NOや線維化 ( 細胞の代わりに硬い組織が増える変化で、心臓が硬くなったり動きにくくなったりします。) の量、ROS ( 反応性の高い酸素由来の物質で、増えすぎると細胞を傷つけます。ストレスや炎症で増えることがあります。) やAKT ( 細胞の生存や代謝を調整する重要なタンパク質で、シグナル伝達に関わります。血管の内皮を守る方向に働くことがあります。) の活性化状態も、染色やタンパク質解析で確認しました。さらに培養したeNOS ( 内皮細胞で NO を作る酵素です。血管を広げたり、血流を保ったり、細胞死を抑えたりするのに重要です。) に内皮細胞 ( 血管の内側をおおっている細胞です。血管を保ち、血流や炎症の調整にも関わります。) を加え、薬剤や代謝物で変化が抑えられるかを調べました。norepinephrine ( ストレス時に増えるホルモンで、心不全では高まりやすいとされます。血管や細胞に負担をかけることがあります。)
- 結論と意義:
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この研究は、
が圧力の負担がかかった心臓を守る大きな理由は、血圧を下げたり心筋細胞を小さくしたりすることよりも、心臓のempagliflozin ( SGLT2阻害薬の一種で、糖尿病治療薬として使われます。研究では心臓保護にも関わる可能性が調べられています。) を保つことにあると結論づけています。毛細血管 ( とても細い血管で、酸素や栄養を組織に届けます。心臓では毛細血管が減ると心筋が酸素不足になりやすくなります。)
empagliflozin は の死を抑え、毛細血管の減少を防ぎ、心臓の収縮機能を改善しました。その中心には、内皮細胞 ( 血管の内側をおおっている細胞です。血管を保ち、血流や炎症の調整にも関わります。) がAKT ( 細胞の生存や代謝を調整する重要なタンパク質で、シグナル伝達に関わります。血管の内皮を守る方向に働くことがあります。) を活性化してeNOS ( 内皮細胞で NO を作る酵素です。血管を広げたり、血流を保ったり、細胞死を抑えたりするのに重要です。) を増やす経路があると考えられます。NOS を止めると効果が弱くなったことからも、この経路が重要だと支持されました。NO ( 血管を広げるなど、血流を保つ働きをもつ気体の分子です。内皮の健康や毛細血管の維持に関わります。)
また、 の増加は観察されましたが、citrulline を足しても改善しなかったため、citrulline の上昇そのものが主役ではない可能性が示されました。これらの結果は、citrulline ( アミノ酸の一つで、arginineやNOに関係する代謝の中で出てきます。増減はNO産生の変化を考える手がかりになります。) がSGLT2阻害薬 ( 腎臓で糖を尿へ出す働きを強める薬で、血糖を下げる目的で使われますが、心不全の悪化や入院を減らす効果も報告されています。) に効く仕組みとして、心臓の微小血管を守るという視点を強めるものです。心不全 ( 心臓のポンプ機能が弱り、全身に十分な血液を送れなくなる状態です。息切れやむくみなどが起こり、重い場合は入院が必要になります。)
- 今後の展望:
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著者らは、心筋細胞と
の間で内皮細胞 ( 血管の内側をおおっている細胞です。血管を保ち、血流や炎症の調整にも関わります。) に関するやりとりがあるかもしれない点を課題として挙げています。NO ( 血管を広げるなど、血流を保つ働きをもつ気体の分子です。内皮の健康や毛細血管の維持に関わります。) が心筋細胞のempagliflozin ( SGLT2阻害薬の一種で、糖尿病治療薬として使われます。研究では心臓保護にも関わる可能性が調べられています。) を増やすという報告もあり、内皮のnNOS ( 主に神経や心筋などで NO を作る酵素の一種です。心臓の働きの調整に関わる可能性があります。) と心筋の nNOS が協力して心臓を守る可能性があります。今後は、細胞同士の NO のつながりをさらに調べる必要があります。eNOS ( 内皮細胞で NO を作る酵素です。血管を広げたり、血流を保ったり、細胞死を抑えたりするのに重要です。)
また、 が内皮の3-hydroxybutyrate ( ケトン体の一種で、エネルギー源になったり、細胞のストレスを減らす働きが示されることがあります。) を抑える働きは支持されましたが、糖尿病ではない条件でケトン体がどれほど重要かはまだ不確実です。ROS ( 反応性の高い酸素由来の物質で、増えすぎると細胞を傷つけます。ストレスや炎症で増えることがあります。) にともなう全身の代謝状態の違いによって、どの保護経路が強く働くのかが変わる可能性もあり、そこを明らかにすることが今後の研究課題です。心不全 ( 心臓のポンプ機能が弱り、全身に十分な血液を送れなくなる状態です。息切れやむくみなどが起こり、重い場合は入院が必要になります。)
- 何のために?:
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は、とうにょうびょうの薬です。SGLT2そがいやく ( とうにょうびょうの薬の種類 で、体の中で「SGLT2」というしくみをじゃまして、血の中のさとうをおしっこに出しやすくします。血とうを下げるために使われ、心ぞうにもよいかもしれないので、なぜよいのかを調べることが大切です。)
この薬は、心ぞうの病気にもよいといわれます。
でも、どうして心ぞうを守るかは、まだ不明 です。
心ぞうに強い力がかかると、細い血かんがへります。
すると、心ぞうに空気が足りなくなります。
そのせいで、心ぞうがうごきにくくなります。
そこで、マウスで薬のはたらきを調べました。
薬が細い血かんを守るかを見ました。
そして、体の中の変化 もくわしく調べました。
- 何が分かったの?:
-
手じゅつで心ぞうに強い
負担 をかけました。
すると、心ぞうのちぢむ力がよわりました。
でも薬をあげると、力の低下 がへりました。
心ぞうがかたくなる変化 も、へりました。
体重や血あつは、あまり変 わりませんでした。
薬で、血の流れがよくなったと考えられます。
心ぞうの細い血かんが、へりにくくなりました。
血かんの内がわの細ぼうの死もへりました。
体の中では、 という物がふえました。NO ( 体の中で作られる物しつで、血かんをひろげたりして血の流れをよくするはたらきがあります。心ぞうに血が通いやすくなるのに関係 するので、薬のきき目の中心かもしれず重要 です。)
NOは、血の流れを助けるはたらきがあります。
NOを作るはたらきを止めると、薬の力がへりました。
だから、NOに関係 する道すじが大切だと考えます。
- どうやったの?:
-
おすのマウスを使いました。
という手じゅつで、心ぞうにTAC ( マウスの手じゅつの方法 の名前で、心ぞうに強い負担 がかかるようにして、心ぞうの病気ににた状態 を作ります。薬がその負担 から心ぞうを守れるかをたしかめるために使います。) 負担 をかけました。
薬入りのえさのグループと、ないグループを比 べました。
主に4しゅうかん後に、心ぞうのうごきを見ました。
べつのグループでは、 を作りにくくしました。NO ( 体の中で作られる物しつで、血かんをひろげたりして血の流れをよくするはたらきがあります。心ぞうに血が通いやすくなるのに関係 するので、薬のきき目の中心かもしれず重要 です。)
また、ある物を足して、きき目も確 かめました。
心ぞうのうごきは、 などで調べました。エコー ( 音を使って体の中のようすを見られる検査 で、心ぞうがどれくらいちぢんだり動いたりできているかを調べます。手じゅつや薬で心ぞうの動きがどう変 わるかを知るのに大切です。)
血の流れや、血かんの数も調べました。
細ぼうの死や、体の中の変化 も調べました。
- 研究のまとめ:
-
この薬は、心ぞうを守ることがわかりました。
大きなりゆうは、細い血かんを守ることです。
血あつを下げるだけが、りゆうではなさそうです。
血かんの細ぼうが死ににくくなりました。
そのため、心ぞうの力がよくなりました。
中心には、 をふやすはたらきがありそうです。NO ( 体の中で作られる物しつで、血かんをひろげたりして血の流れをよくするはたらきがあります。心ぞうに血が通いやすくなるのに関係 するので、薬のきき目の中心かもしれず重要 です。)
NOの道すじを止めると、よい効果 がへりました。
だから、この道すじはとても大切だと考えられます。
- これからどうする?:
-
心ぞうの細ぼうどうしで、
のやりとりがあるかもです。NO ( 体の中で作られる物しつで、血かんをひろげたりして血の流れをよくするはたらきがあります。心ぞうに血が通いやすくなるのに関係 するので、薬のきき目の中心かもしれず重要 です。)
どの細ぼうが、どんなふうに助けるかを調べます。
また、別 の物が体を守る力も、まだはっきりしません。
心ふぜんのときの体の中のようすで、きき目は変 わりそうです。
これから、どの道すじが一番大切かを調べます。
- 著者名:
- 仲尾 政晃
- 新潟大学学術リポジトリリンク:
- http://hdl.handle.net/10191/0002000841
