論文詳細
医歯学系
大学院医歯学総合研究科(医)
#学位論文
USP10はドーパミンが誘導する活性酸素依存性の神経細胞死をNrf2活性化によって抑制する
- AI解説:
- 活性酸素種(ROS)は、通常の細胞内シグナル伝達に寄与する一方で、過剰に産生されると病的な障害を引き起こす。酸化ストレスに対する神経細胞の脆弱性は、とくにドパミン作動性ニューロンが選択的に変性するパーキンソン病(PD)と関連して重要である。ドパミン自体がROS生成を促進し、ROS依存的なアポトーシスを神経細胞で誘導し得るため、ドパミン誘導性毒性は酸化ストレスに関連した神経細胞死の扱いやすいモデルとなる。抗酸化転写因子Nrf2は、HO-1やNQO1などの遺伝子を誘導して酸化損傷に対抗するが、Nrf2は阻害因子Keap1および活性化因子p62(SQSTM1)によって厳密に制御されている。この制御には、p62のセリン349におけるリン酸化(pp62-S349)や、ストレスによって生じるNrf2翻訳の変化などが含まれる。USP10はユビキチン特異的プロテアーゼであり、これまで非神経系の状況で抗酸化作用との関連が報告されている。本研究は、USP10がドパミン誘導性の酸化ストレスとアポトーシスから神経細胞を保護するかどうか、またUSP10がNrf2/Keap1/p62からなる抗酸化システムにどのような機序で影響するかを明らかにすることを目的とした。
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医歯学系
大学院医歯学総合研究科(医)
#学位論文
USP10はドーパミンが誘導する活性酸素依存性の神経細胞死をNrf2活性化によって抑制する
AI解説
- 背景と目的:
-
活性酸素種(ROS)は、通常の細胞内シグナル伝達に寄与する一方で、過剰に産生されると病的な障害を引き起こす。酸化ストレスに対する神経細胞の脆弱性は、とくにドパミン作動性ニューロンが選択的に変性するパーキンソン病(PD)と関連して重要である。ドパミン自体がROS生成を促進し、ROS依存的なアポトーシスを神経細胞で誘導し得るため、ドパミン誘導性毒性は酸化ストレスに関連した神経細胞死の扱いやすいモデルとなる。抗酸化転写因子Nrf2は、HO-1やNQO1などの遺伝子を誘導して酸化損傷に対抗するが、Nrf2は阻害因子Keap1および活性化因子p62(SQSTM1)によって厳密に制御されている。この制御には、p62のセリン349におけるリン酸化(pp62-S349)や、ストレスによって生じるNrf2翻訳の変化などが含まれる。USP10はユビキチン特異的プロテアーゼであり、これまで非神経系の状況で抗酸化作用との関連が報告されている。本研究は、USP10がドパミン誘導性の酸化ストレスとアポトーシスから神経細胞を保護するかどうか、またUSP10がNrf2/Keap1/p62からなる抗酸化システムにどのような機序で影響するかを明らかにすることを目的とした。
- 主要な発見:
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ドパミン作動性様の特徴をもつ神経芽腫細胞株SH-SY5YにおいてUSP10を枯渇させると、ドパミンによる生存率低下が増大し、切断型caspase-3陽性などのアポトーシスマーカーが上昇した。USP10ノックダウン(USP10-KD)は、CM-H2DCFDAで測定したドパミン誘導性ROS蓄積も増強し、この増大した細胞毒性はN-acetylcysteineによって軽減されたことから、ROS依存的機序が支持された。さらにUSP10-KDはH2O2に対する感受性も高め、酸化ストレス因子一般に対して広く関連する可能性が示された。機序として、対照細胞ではドパミンによりNrf2タンパク質とNrf2誘導性遺伝子HO-1が増加したのに対し、これらの増加はUSP10-KDにより低下し、ドパミン曝露後のNrf2の核内蓄積もUSP10-KDで減少した。機能的摂動では、Nrf2-KDまたはp62-KDによりドパミン毒性が増大した。一方、Keap1-KDはUSP10-KDが引き起こすドパミン毒性の増強を部分的に逆転させ、Nrf2/HO-1レベルも回復させたことから、USP10の下流でKeap1依存的なNrf2抑制が位置づけられた。USP10-KDはNrf2 mRNAを低下させなかったが、ドパミンに伴う全体的翻訳(global translation)を抑制し、ストレス顆粒の形成を増加させた。これは、ドパミンストレス下でのNrf2翻訳低下と整合的である。USP10はp62と相互作用し、pp62-S349およびp62–Keap1相互作用を促進した。USP10-KDはpp62-S349を低下させ、p62–Keap1結合を弱め、p62-body形成も減少させた。リン酸化模倣体のp62-S349E(ただしp62-WTやp62-S349Aではない)を発現させると、Nrf2シグナルが増強し、ドパミン処理したUSP10-KD細胞で生存率が大きく改善しアポトーシスが低下した。ただし保護はUSP10-WTレベルまで完全には回復せず、p62リン酸化以外にもUSP10依存的な保護作用が存在することが示唆された。
- 方法論:
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本研究は主に、定義培地条件下で培養したSH-SY5Yヒト神経芽腫細胞を、ドパミン誘導性酸化傷害の神経モデルとして用いた。USP10、Nrf2、p62、Keap1はそれぞれsiRNAトランスフェクションにより個別に枯渇させ、ノックダウンはWestern blottingで確認した。酸化ストレス誘導のためにドパミン(0.1–0.4 mM)を所定の時間(例:4–12 h)適用し、追加の酸化剤チャレンジとしてH2O2も用いた。細胞生存率は細胞デヒドロゲナーゼ活性に基づくCCK-8アッセイで定量し、アポトーシスは切断型caspase-3の免疫染色で評価した。細胞内ROSはCM-H2DCFDAの蛍光顕微鏡観察で測定し、平均蛍光強度解析で定量した;ROS依存性はN-acetylcysteineで検討した。Nrf2経路活性は、Nrf2およびHO-1、NQO1などの標的についてWestern blottingで評価し、さらにNQO1、GSTM1、p62、Nrf2のmRNAをβ-actinで正規化したreal-time RT-PCRで測定した。核内と細胞質のNrf2分布は、分画(NE-PER)と免疫ブロットで解析した。翻訳の変化はpuromycin取り込みアッセイ(10 μg/mlを10 min)で調べ、ストレス顆粒はG3BP1とTIA1マーカーを用いた免疫蛍光により定量した。共免疫沈降によりUSP10–p62相互作用およびp62–Keap1結合を評価し、pp62-S349の検出も行った(オートファジーによるターンオーバーのためpp62-S349検出を補助する目的でbafilomycin A1を使用)。凝縮体形成(p62-bodies、p62/Keap1-bodies、p62/pp62-bodies)は、サイズ閾値を用いて蛍光顕微鏡で定量した。レトロウイルス発現系により、p62-WT、p62-S349E、p62-S349Aを過剰発現する安定なSH-SY5Y株を作製した。統計解析は一元配置ANOVAと適切な多重比較手順を用い、分散の仮定が満たされない場合はWelch/Brown–Forsytheに基づく手法を適用した。
- 結論と意義:
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本研究は、USP10が神経細胞においてドパミン誘導性の酸化傷害に対する保護的調節因子として働き、Nrf2依存的な抗酸化防御を高めることでROS依存的アポトーシスを低減すると結論づけた。強調される機序は2点である。(i) USP10はドパミンに伴う全体的翻訳を支え、Nrf2翻訳も含めて維持する一方、USP10枯渇は翻訳抑制を促進し、ストレス顆粒形成の増加を伴う。(ii) USP10はpp62-S349増加を介してp62活性化を促し、p62–Keap1相互作用を強めることで、Keap1によるNrf2阻害からの解放を促進し、Nrf2の核内蓄積と抗酸化遺伝子誘導を支える。遺伝学的エピスタシス実験によりこの経路の論理は補強されており、Keap1を減らすとUSP10枯渇で生じる脆弱性が相殺され、Nrf2またはp62の喪失はドパミン毒性増大を再現(phenocopy)した。USP10-KD細胞でp62-S349Eが示す部分的なレスキューは、USP10の神経保護作用がp62リン酸化だけでは完全に説明できないことを示し、翻訳関連の追加機序とも整合する。総合すると、本研究はUSP10を、神経の酸化ストレス応答におけるNrf2/Keap1/p62軸の重要な調節因子として位置づけ、細胞モデルの範囲にとどまりつつも、PDを含む酸化ストレス関連疾患に対してUSP10活性化が治療的に重要となり得ることを論じている。
- 今後の展望:
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著者らは、さらなる研究が必要な未解決問題をいくつか挙げている。第一に、USP10枯渇で全体的翻訳抑制とストレス顆粒増強がみられること、さらにリボソームタンパク質(RPS2、RPS3、RPS10)のユビキチン化変化がリボソーム機能不全を示す可能性があることを踏まえ、酸化ストレス下でUSP10がどのようにNrf2翻訳を制御するのかを明確にする必要がある。第二に、USP10がpp62-S349を増加させる機序は未解明であり、議論ではp62キナーゼの活性化やp62ホスファターゼの阻害といった可能性が提案されているが、どれが当てはまるかは結論づけられていない。第三に、USP10の抗酸化/抗アポトーシス機能と、Lewy小体に類似するα-synuclein/USP10/p62陽性凝集体との報告上の関連との関係が、PD病態理解の重要領域として示されており、疾患進展の中でこれらの活動がどのように交差するかが課題である。最後に、PDの文脈でUSP10が神経細胞のNrf2活性をどのように調節するかを検討する重要性が強調されている。具体的には、PDにおける黒質ニューロンでの核内Nrf2局在の既存観察や、扁桃体でのUSP10タンパク質レベルのわずかな上昇が参照される一方、これらの観察だけではNrf2活性化が十分かどうか、また患者においてUSP10がこの応答をどう調節するかはまだ確立していないことが指摘されている。
- 背景と目的:
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は、ふだんは細胞のはたらきを調整する役目もありますが、増えすぎると細胞を傷つけます。特に神経細胞は活性酸素種 ( 細胞の中で生まれる反応性の高い酸素の仲間で、少量なら情報伝達に役立ちますが、多すぎるとタンパク質やDNAなどを傷つける原因になります) に弱く、ドパミンを使う神経細胞が減っていく酸化ストレス ( 活性酸素種などによる攻撃と、それを打ち消す抗酸化の力のバランスが崩れ、細胞が傷つきやすくなる状態です) とも深く関係しています。ドパミンは神経の情報伝達に必要な物質ですが、同時に活性酸素種を増やして細胞死を起こすことがあります。パーキンソン病 ( 主にドパミン作動性ニューロンが失われることで、ふるえや動きにくさなどが起こる神経の病気です)
体には酸化ストレスから守る仕組みがあり、その中心の1つが という因子です。Nrf2は抗酸化に関わる遺伝子を働かせますが、Nrf2 ( 酸化ストレスがかかったときに、抗酸化に関わる遺伝子のスイッチを入れて細胞を守る転写因子です) やKeap1 ( ふだんNrf2を抑えて分解されやすくする役割を持ち、Nrf2が働きすぎないように調整する因子です) というタンパク質により細かく調整されています。p62 ( 細胞内の不要物処理などに関わるタンパク質で、条件によってはKeap1をつかまえてNrf2の働きを助けます)
この研究では、 という酵素が、ドパミンによる酸化ストレスや細胞死から神経細胞を守るのか、そしてUSP10がNrf2と関係する抗酸化の仕組みにどう影響するのかを調べました。USP10 ( ユビキチン化という目印を外す酵素の1つで、この研究ではNrf2の働きを高めて神経細胞を酸化ストレスから守る役割が示されました)
- 主要な発見:
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ドパミンに似た性質をもつ細胞株
でSH-SY5Y ( ヒトの神経芽腫由来の細胞株で、ドパミン神経に似た性質があり神経の研究でよく使われます) を減らすと、ドパミンによる細胞の生存率低下が強まり、細胞死の目印も増えました。同時に、細胞内のUSP10 ( ユビキチン化という目印を外す酵素の1つで、この研究ではNrf2の働きを高めて神経細胞を酸化ストレスから守る役割が示されました) もより多くたまりました。この毒性は抗酸化物質の活性酸素種 ( 細胞の中で生まれる反応性の高い酸素の仲間で、少量なら情報伝達に役立ちますが、多すぎるとタンパク質やDNAなどを傷つける原因になります) で弱まったため、活性酸素種が原因の細胞死だと考えられました。また、N-acetylcysteine ( 体内で抗酸化物質を作る材料になり、活性酸素種によるダメージを減らす目的で実験でも使われます) に対しても弱くなり、USP10が過酸化水素 ( 細胞内でも生じる活性酸素種の一種で、酸化ストレスの代表的な要因として実験でよく使われます) 全体への耐性に関わる可能性が示されました。酸化ストレス ( 活性酸素種などによる攻撃と、それを打ち消す抗酸化の力のバランスが崩れ、細胞が傷つきやすくなる状態です)
しくみを調べると、通常はドパミンによって や、その働きで増えるNrf2 ( 酸化ストレスがかかったときに、抗酸化に関わる遺伝子のスイッチを入れて細胞を守る転写因子です) が増えますが、USP10を減らすとその増加が小さくなり、Nrf2が核へ移動してたまる量も減りました。さらに、Nrf2やHO-1 ( Nrf2によって増える抗酸化に関わる遺伝子産物の1つで、酸化ストレスから細胞を守る側に働きます) を減らしてもドパミン毒性は強まりました。一方でp62 ( 細胞内の不要物処理などに関わるタンパク質で、条件によってはKeap1をつかまえてNrf2の働きを助けます) を減らすと、USP10を減らして起きた毒性の強まりが一部打ち消され、Nrf2やHO-1も回復しました。Keap1 ( ふだんNrf2を抑えて分解されやすくする役割を持ち、Nrf2が働きすぎないように調整する因子です)
また、USP10を減らしてもNrf2のmRNAは減らなかったのに、ドパミンのストレス下で細胞全体のタンパク質合成が弱まり、 が増えました。これはNrf2のタンパク質が作られにくくなることと合っています。ストレス顆粒 ( 強いストレス時に細胞質にできる粒状の集まりで、翻訳を止められたmRNAなどが集まることで細胞を守る面があります)
さらにUSP10はp62と結びつき、p62の特定部位の を増やし、p62とKeap1の結合を強める方向に働きました。USP10を減らすと、このリン酸化やp62とKeap1の結びつき、p62のかたまりの形成が弱まりました。リン酸化した状態をまねるp62変異体を入れると、Nrf2の働きが強まり、USP10を減らした細胞でも生存率が大きく改善しました。ただし完全には元に戻らず、USP10には別の守り方もあると考えられました。リン酸化 ( タンパク質にリン酸が付く化学変化で、タンパク質の働きが強まったり弱まったりする調節方法の1つです)
- 方法論:
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ヒト由来の神経芽腫細胞
を培養し、ドパミンでSH-SY5Y ( ヒトの神経芽腫由来の細胞株で、ドパミン神経に似た性質があり神経の研究でよく使われます) を起こすモデルとして使いました。酸化ストレス ( 活性酸素種などによる攻撃と、それを打ち消す抗酸化の力のバランスが崩れ、細胞が傷つきやすくなる状態です) 、USP10 ( ユビキチン化という目印を外す酵素の1つで、この研究ではNrf2の働きを高めて神経細胞を酸化ストレスから守る役割が示されました) 、Nrf2 ( 酸化ストレスがかかったときに、抗酸化に関わる遺伝子のスイッチを入れて細胞を守る転写因子です) 、p62 ( 細胞内の不要物処理などに関わるタンパク質で、条件によってはKeap1をつかまえてNrf2の働きを助けます) はKeap1 ( ふだんNrf2を抑えて分解されやすくする役割を持ち、Nrf2が働きすぎないように調整する因子です) でそれぞれ減らし、タンパク質量の変化を確認しました。ドパミンやsiRNA ( 特定の遺伝子のmRNAをねらって減らし、その遺伝子の働きを弱めるために使う短いRNAです) でストレスを与え、細胞の生存率、細胞死の目印、過酸化水素 ( 細胞内でも生じる活性酸素種の一種で、酸化ストレスの代表的な要因として実験でよく使われます) の量を測定しました。活性酸素種 ( 細胞の中で生まれる反応性の高い酸素の仲間で、少量なら情報伝達に役立ちますが、多すぎるとタンパク質やDNAなどを傷つける原因になります)
Nrf2経路の活性は、Nrf2やその標的遺伝子産物の量、mRNA量、核と細胞質での分布などで評価しました。タンパク質合成の強さは新しく作られたタンパク質の検出で調べ、 は特定のマーカーを使った染色で数えました。さらに、USP10とp62の結合、p62とKeap1の結合、p62のストレス顆粒 ( 強いストレス時に細胞質にできる粒状の集まりで、翻訳を止められたmRNAなどが集まることで細胞を守る面があります) 状態なども解析しました。リン酸化 ( タンパク質にリン酸が付く化学変化で、タンパク質の働きが強まったり弱まったりする調節方法の1つです)
- 結論と意義:
-
は、ドパミンによるUSP10 ( ユビキチン化という目印を外す酵素の1つで、この研究ではNrf2の働きを高めて神経細胞を酸化ストレスから守る役割が示されました) が原因の酸化ストレス ( 活性酸素種などによる攻撃と、それを打ち消す抗酸化の力のバランスが崩れ、細胞が傷つきやすくなる状態です) の増加と細胞死を抑え、神経細胞を守る因子だと結論づけられました。重要な点は2つあります。活性酸素種 ( 細胞の中で生まれる反応性の高い酸素の仲間で、少量なら情報伝達に役立ちますが、多すぎるとタンパク質やDNAなどを傷つける原因になります)
1つ目は、ドパミンのストレス下でタンパク質合成が落ちすぎないように支え、 のタンパク質が作られるのを助けることです。2つ目は、Nrf2 ( 酸化ストレスがかかったときに、抗酸化に関わる遺伝子のスイッチを入れて細胞を守る転写因子です) を活性化してp62 ( 細胞内の不要物処理などに関わるタンパク質で、条件によってはKeap1をつかまえてNrf2の働きを助けます) のNrf2抑制を弱め、Nrf2が核で働いて抗酸化遺伝子を増やせるようにすることです。Keap1 ( ふだんNrf2を抑えて分解されやすくする役割を持ち、Nrf2が働きすぎないように調整する因子です)
この結果は、酸化ストレスが関わる病気、特に のような神経の病気で、USP10を活性化することが治療の考え方になり得ることを示しています。ただし、この研究は主に細胞モデルでの結果です。パーキンソン病 ( 主にドパミン作動性ニューロンが失われることで、ふるえや動きにくさなどが起こる神経の病気です)
- 今後の展望:
-
今後の課題として、まず
がUSP10 ( ユビキチン化という目印を外す酵素の1つで、この研究ではNrf2の働きを高めて神経細胞を酸化ストレスから守る役割が示されました) 下で酸化ストレス ( 活性酸素種などによる攻撃と、それを打ち消す抗酸化の力のバランスが崩れ、細胞が傷つきやすくなる状態です) のタンパク質合成をどう支えているのかを詳しく調べる必要があります。特に、USP10を減らすとNrf2 ( 酸化ストレスがかかったときに、抗酸化に関わる遺伝子のスイッチを入れて細胞を守る転写因子です) 関連タンパク質のリボソーム ( mRNAからタンパク質を作るための装置で、翻訳の中心になる構造です) が変わる点から、タンパク質合成装置の不調との関係が注目されます。ユビキチン化 ( タンパク質にユビキチンという目印を付ける仕組みで、分解や機能調節の合図として使われます)
次に、USP10が のp62 ( 細胞内の不要物処理などに関わるタンパク質で、条件によってはKeap1をつかまえてNrf2の働きを助けます) を増やす具体的な仕組みは未解明で、リン酸化を進める酵素の活性化や、リン酸化を外す酵素の抑制などの可能性が残っています。リン酸化 ( タンパク質にリン酸が付く化学変化で、タンパク質の働きが強まったり弱まったりする調節方法の1つです)
さらに、 で見られるパーキンソン病 ( 主にドパミン作動性ニューロンが失われることで、ふるえや動きにくさなどが起こる神経の病気です) に似た凝集体と、USP10の抗酸化作用が病気の進行の中でどう結びつくのかも重要です。最後に、患者の脳でUSP10がNrf2の働きをどの程度調整できているのか、現実の病態に即した検証が求められます。Lewy小体 ( パーキンソン病の脳で見られる特徴的なタンパク質のかたまりで、α-synucleinなどが集まってできます)
- 何のために?:
-
わたしたちの体の中には、
「 」というものがあります。活性酸素 ( 体の中でできるとても小さな物質 で少しなら体を守るはたらきもあるがふえすぎると細胞 をこわすので病気と関係 することがある)
ふだんは、体のはたらきを助けます。
でも、ふえすぎると をこわします。細胞 ( 体をつくっているとても小さな部品で生きるためのはたらきをしていてこわれたり死んだりすると体の調子が悪くなる)
とくに、 の神経 ( 脳 や体の中で情報 を伝 えるしくみで体を動かしたり感じたり考えたりするのに大事) 細胞 は弱いです。
そのため、病気と関係 します。
たとえば、 です。パーキンソン病 ( 体がふるえたり動きにくくなったりする神経 の病気で脳 の神経細胞が弱ることと関係 がある)
は、ドパミン ( 神経 の合図に使われる物質 で体の動きや気持ちに関係 するが状況 によっては細胞 にストレスを起こすことがある) 神経 の合図に大事です。
でも、活性酸素をふやすこともあります。
すると、細胞 が死ぬことがあります。
体には、守る仕組みもあります。
その中心の一つが、 です。Nrf2 ( 細胞 を守る遺伝子 をはたらかせる中心の役目をするたんぱく質 でストレスから体を守るために重要 )
Nrf2は、体を守る をはたらかせます。遺伝子 ( 体の設計図 のような情報 でどんなたんぱく質 を作るかを決めていて体を守るしくみを動かすためにも必要 )
Nrf2は、 やKeap1 ( Nrf2のはたらきをおさえる調整役のたんぱく質 でこれがどう動くかで守る力が変 わる) で調整されます。p62 ( 細胞 の中の片 づけや調整に関 わるたんぱく質 でKeap1と関係 してNrf2を助ける方向に働 くことがある)
この研究は、 を調べました。USP10 ( 細胞 を守るはたらきがあるかもしれないたんぱく質 でNrf2やp62のしくみに関 わりストレスへの強さを左右する)
USP10は、細胞 を守るかもしれません。
ドパミンの から守れるか調べました。ストレス ( 細胞 にとっての負担 やダメージの原因 のことで強いと細胞 が弱ったり死んだりする)
そして、Nrf2の仕組みとの関係 も見ました。
- 何が分かったの?:
-
の神経 ( 脳 や体の中で情報 を伝 えるしくみで体を動かしたり感じたり考えたりするのに大事) に近い細胞 ( 体をつくっているとても小さな部品で生きるためのはたらきをしていてこわれたり死んだりすると体の調子が悪くなる) 細胞 を使いました。
その細胞 で、 を少なくしました。USP10 ( 細胞 を守るはたらきがあるかもしれないたんぱく質 でNrf2やp62のしくみに関 わりストレスへの強さを左右する)
すると、 でドパミン ( 神経 の合図に使われる物質 で体の動きや気持ちに関係 するが状況 によっては細胞 にストレスを起こすことがある) 細胞 がよく死にました。
細胞 が生きのこる力も下がりました。
細胞 の中の も、ふえました。活性酸素 ( 体の中でできるとても小さな物質 で少しなら体を守るはたらきもあるがふえすぎると細胞 をこわすので病気と関係 することがある)
体をさびから守る物で、弱まりました。
だから、活性酸素が原因 だと考えました。
また、別 の にも弱くなりました。ストレス ( 細胞 にとっての負担 やダメージの原因 のことで強いと細胞 が弱ったり死んだりする)
USP10は、いろいろなストレスに関係 しそうです。
ふつうは、ドパミンで がふえます。Nrf2 ( 細胞 を守る遺伝子 をはたらかせる中心の役目をするたんぱく質 でストレスから体を守るために重要 )
Nrf2がふえると、 もふえます。HO-1 ( Nrf2が増 えると一緒 に増 えやすい守りのたんぱく質 で体をさびから守る目印 として調べられる)
でも、USP10が少ないと、ふえ方が小さいです。
Nrf2が、 に行く核 ( 細胞 の中心にある場所で遺伝子 の情報 が入っていてNrf2がここで働 くと守る遺伝子 が動きやすくなる) 量 もへりました。
Nrf2や を少なくしても、p62 ( 細胞 の中の片 づけや調整に関 わるたんぱく質 でKeap1と関係 してNrf2を助ける方向に働 くことがある) 毒 が強まりました。
でも、 を少なくすると、少し元にもどりました。Keap1 ( Nrf2のはたらきをおさえる調整役のたんぱく質 でこれがどう動くかで守る力が変 わる)
Nrf2やHO-1も、ふえやすくなりました。
Nrf2のもとになる文字は、へりませんでした。
でも、ストレスのとき、 作りが弱まりました。たんぱく 質 ( 体の中で働 く道具のような物質 で細胞 を守る仕組みもたんぱく質 でできているので作れなくなると困 る)
そのため、Nrf2のたんぱく質 が作りにくいです。
ストレスのつぶつぶも、ふえました。
USP10は、p62とくっつきました。
そして、p62のスイッチを入れやすくしました。
すると、p62はKeap1と、くっつきやすいです。
USP10が少ないと、これらが弱まりました。
スイッチ入りのp62を入れると、助かりました。
細胞 は、かなり生きのこりました。
でも、全部は元にもどりませんでした。
だから、USP10には他の守り方もありそうです。
- どうやったの?:
-
人の
に近い神経 ( 脳 や体の中で情報 を伝 えるしくみで体を動かしたり感じたり考えたりするのに大事) を、そだてました。細胞 ( 体をつくっているとても小さな部品で生きるためのはたらきをしていてこわれたり死んだりすると体の調子が悪くなる)
そこに を入れて、ドパミン ( 神経 の合図に使われる物質 で体の動きや気持ちに関係 するが状況 によっては細胞 にストレスを起こすことがある) を起こしました。ストレス ( 細胞 にとっての負担 やダメージの原因 のことで強いと細胞 が弱ったり死んだりする)
やUSP10 ( 細胞 を守るはたらきがあるかもしれないたんぱく質 でNrf2やp62のしくみに関 わりストレスへの強さを左右する) などを、少なくしました。Nrf2 ( 細胞 を守る遺伝子 をはたらかせる中心の役目をするたんぱく質 でストレスから体を守るために重要 )
それぞれの のたんぱく 質 ( 体の中で働 く道具のような物質 で細胞 を守る仕組みもたんぱく質 でできているので作れなくなると困 る) 量 も確 かめました。
ストレスのあと、細胞 が生きているか見ました。
細胞 が死んだ目印 も調べました。
の活性酸素 ( 体の中でできるとても小さな物質 で少しなら体を守るはたらきもあるがふえすぎると細胞 をこわすので病気と関係 することがある) 量 も測 りました。
Nrf2がどれだけはたらくかも調べました。
と核 ( 細胞 の中心にある場所で遺伝子 の情報 が入っていてNrf2がここで働 くと守る遺伝子 が動きやすくなる) 細胞 の中で、どこにあるかも見ました。
新しく作られたたんぱく質 も調べました。
ストレスのつぶつぶも、数えました。
さらに、USP10と のp62 ( 細胞 の中の片 づけや調整に関 わるたんぱく質 でKeap1と関係 してNrf2を助ける方向に働 くことがある) 結 びつきも見ました。
- 研究のまとめ:
-
は、USP10 ( 細胞 を守るはたらきがあるかもしれないたんぱく質 でNrf2やp62のしくみに関 わりストレスへの強さを左右する) の神経 ( 脳 や体の中で情報 を伝 えるしくみで体を動かしたり感じたり考えたりするのに大事) を守ると考えられます。細胞 ( 体をつくっているとても小さな部品で生きるためのはたらきをしていてこわれたり死んだりすると体の調子が悪くなる)
でふえるドパミン ( 神経 の合図に使われる物質 で体の動きや気持ちに関係 するが状況 によっては細胞 にストレスを起こすことがある) を、おさえました。活性酸素 ( 体の中でできるとても小さな物質 で少しなら体を守るはたらきもあるがふえすぎると細胞 をこわすので病気と関係 することがある)
細胞 が死ぬのも、へらしました。
大事な点は、二つあります。
一つ目は、 作りをたんぱく 質 ( 体の中で働 く道具のような物質 で細胞 を守る仕組みもたんぱく質 でできているので作れなくなると困 る) 支 えることです。
そのおかげで、 が作られやすいです。Nrf2 ( 細胞 を守る遺伝子 をはたらかせる中心の役目をするたんぱく質 でストレスから体を守るために重要 )
二つ目は、 を助けることです。p62 ( 細胞 の中の片 づけや調整に関 わるたんぱく質 でKeap1と関係 してNrf2を助ける方向に働 くことがある)
すると、 のじゃまが弱くなります。Keap1 ( Nrf2のはたらきをおさえる調整役のたんぱく質 でこれがどう動くかで守る力が変 わる)
Nrf2が で核 ( 細胞 の中心にある場所で遺伝子 の情報 が入っていてNrf2がここで働 くと守る遺伝子 が動きやすくなる) 働 き、守る がふえます。遺伝子 ( 体の設計図 のような情報 でどんなたんぱく質 を作るかを決めていて体を守るしくみを動かすためにも必要 )
この結果 は、治 りょうのヒントになります。
神経 の病気で、役に立つかもしれません。
でも、今は細胞 での結果 が中心です。
- これからどうする?:
-
これから、もっとくわしく調べます。
まず、 がどうやってUSP10 ( 細胞 を守るはたらきがあるかもしれないたんぱく質 でNrf2やp62のしくみに関 わりストレスへの強さを左右する) 作りを助けるかです。Nrf2 ( 細胞 を守る遺伝子 をはたらかせる中心の役目をするたんぱく質 でストレスから体を守るために重要 )
を作る道具のたんぱく 質 ( 体の中で働 く道具のような物質 で細胞 を守る仕組みもたんぱく質 でできているので作れなくなると困 る) 不調 も見ます。
次に、USP10が のスイッチを、p62 ( 細胞 の中の片 づけや調整に関 わるたんぱく質 でKeap1と関係 してNrf2を助ける方向に働 くことがある)
どう入れるのかも、まだ分かっていません。
スイッチを入れる などを調べます。酵素 ( 体の中の反応 を進めるたんぱく質 でスイッチを入れる役目をして仕組みを動かすのに重要 )
さらに、病気で見られるかたまりとの関係 も大事です。
本当の患者 さんの脳 でも、確 かめる必要 があります。
- 著者名:
- 山後 淳也
- 新潟大学学術リポジトリリンク:
- http://hdl.handle.net/10191/0002000864
