論文詳細
自然科学系
農学部
#紀要論文
キュウリ果実のアポプラストには高濃度の内生植物ホルモンが存在する
- AI解説:
- アポプラスト(apoplast: AP)—細胞壁や維管束空間を含む細胞外の連続体—は、phytohormone(植物ホルモン)を含む低分子シグナル分子の輸送における重要な区画として提案されている。abscisic acid(ABA)に関する先行研究では、水ストレスなどの環境条件が細胞内pHを変化させ、その結果、組織全体のABAが上昇する前にAP溶液中のABAが増加し得ることが示唆されており、ホルモン作用が細胞膜の外側で開始されるという考えと整合的である。これを補うように、細胞表面での植物ホルモンの受容または活性を示す報告も複数ある。具体的には、孔辺細胞においてAP側に向いたABA結合部位があること、細胞外のABA conjugates(抱合体)によりABA応答性遺伝子が誘導されること、細胞外で作用するindole-3-acetic acid(IAA)類縁体が応答を引き起こし得るという証拠、さらにアリューロン組織で細胞膜に面したgibberellin(GA)受容体が報告されていること、である。こうした背景のもと、本論文は、キュウリ果実のAP溶液に特異的なphytohormone濃度を明確にすることを目的とする。液体クロマトグラフィー–質量分析(liquid chromatography–mass spectrometry: LC–MS)を用い、果実の異なる組織(pulp/fleshおよびplacenta)のAP溶液とシンプラスト(symplast: SY)溶液、ならびにpericarpの測定を行い、IAA、ABA、活性型cytokinins(CKs; tZおよびiP)、活性型GAs(GA1およびGA4)を定量することに焦点を当てた。
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自然科学系
農学部
#紀要論文
キュウリ果実のアポプラストには高濃度の内生植物ホルモンが存在する
AI解説
- 背景と目的:
-
アポプラスト(apoplast: AP)—細胞壁や維管束空間を含む細胞外の連続体—は、phytohormone(植物ホルモン)を含む低分子シグナル分子の輸送における重要な区画として提案されている。abscisic acid(ABA)に関する先行研究では、水ストレスなどの環境条件が細胞内pHを変化させ、その結果、組織全体のABAが上昇する前にAP溶液中のABAが増加し得ることが示唆されており、ホルモン作用が細胞膜の外側で開始されるという考えと整合的である。これを補うように、細胞表面での植物ホルモンの受容または活性を示す報告も複数ある。具体的には、孔辺細胞においてAP側に向いたABA結合部位があること、細胞外のABA conjugates(抱合体)によりABA応答性遺伝子が誘導されること、細胞外で作用するindole-3-acetic acid(IAA)類縁体が応答を引き起こし得るという証拠、さらにアリューロン組織で細胞膜に面したgibberellin(GA)受容体が報告されていること、である。こうした背景のもと、本論文は、キュウリ果実のAP溶液に特異的なphytohormone濃度を明確にすることを目的とする。液体クロマトグラフィー–質量分析(liquid chromatography–mass spectrometry: LC–MS)を用い、果実の異なる組織(pulp/fleshおよびplacenta)のAP溶液とシンプラスト(symplast: SY)溶液、ならびにpericarpの測定を行い、IAA、ABA、活性型cytokinins(CKs; tZおよびiP)、活性型GAs(GA1およびGA4)を定量することに焦点を当てた。
- 主要な発見:
-
placentaとfleshの両方において、定量したすべてのphytohormoneは、対応するSY溶液よりもAP溶液で高濃度であった。遠心により回収された溶液重量に占めるAP溶液の割合は、placentaで11.3%、pulpで8.2%であった。IAAについては、AP濃度はplacentaのSY濃度の4.0×、fleshのSY濃度の6.5×であり、APの絶対濃度は84 pmol/gFW(placenta)および67 pmol/gFW(flesh)と報告された。活性型CKsでは、調べた各部位でtZがiPを上回った。SYに対する比として、AP中のtZはplacentaで2×、fleshで5.5×であり、AP中のiPはplacentaで2×、fleshで3×であった。GAsでは、SYに対してAP中のGA1はplacentaで8×、fleshで3.5×であり、GA4はplacentaで3×、fleshで3.5×であった。ABAは、SYに対してAPでplacentaが1.5×、fleshが2×であった。考察では組織分布のパターンにも触れられており、GA1とGA4はplacentaのAPで「高濃度(highly concentrated)」で、GA1はpericarpでも「高濃度(highly concentrated)」であった。またCKs(tZとiP)はplacentaおよびfleshよりもpericarpで高かった。著者は、これらのパターンはキュウリ果実におけるホルモンの細胞外プールが相当量存在することと整合的であり、急速な果実成長の生理と関連する可能性があると解釈している。
- 方法論:
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ハウス栽培のキュウリ(Cucumis sativus;台木「all-star Ikki」、穂木「high green 22」)を、日本の新潟市から10月上旬に入手した。この時期は昆虫による受粉が少なかったため、果実は主として単為結果により生産された。24本の果実(長さ22 cm)を氷詰めで研究室へ搬送した。両端から0.5 cmを除去後、果実を1 cm片に切断した。組織はpericarpに分け、さらにコルクボーラーを用いてplacentaとflesh/pulp成分に分離した。placentaおよびfleshのAP溶液とSY溶液は遠心により取得した。組織片をプラスチックメッシュ上に置き、4°Cで4500 g、5 min遠心してAP溶液を得た(先行研究に従う)。ホルモン抽出には安定同位体の内部標準(例:13C6-IAA、d6-ABA;d5-tZ、d6-iP、d2-GA1、d2-GA4)を用いた。IAAとABAは2段階の連続HPLC(ODS-3、次いでC-30-S-Select;いずれも40% ethanolの等速溶出)で精製し、目的の保持時間の画分を回収した。GAsとCKsは分配(pH調整を伴うethyl acetate画分およびbutanol画分)、HPLC分画(IAA/ABAの方法に類似した第2精製を含む)、および濃縮を行った。最終的な同定と定量はLC–MS(SIMモード;LCMS 2010EV, Shimadzu)で実施し、カラムはCadenza CD-C18、溶離液は70% ethanol + 30% ultrapure water + 0.1% acetic acidを用いた。濃度は、天然体と標識体のピーク面積比から算出した。単一果実から得られるAP溶液量が研究室の分析限界を下回ったため、24本の果実由来のすべてのAP/SY溶液をプールして1試料として分析し、反復測定は行えなかった。
- 結論と意義:
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本研究は、キュウリ果実のplacentaおよびfleshのいずれにおいても、内生のIAA、ABA、活性型CKs(tZ、iP)、活性型GAs(GA1、GA4)が、SY溶液よりAP溶液で高濃度に存在することを報告している。著者は、これらの結果は、アポプラストがphytohormone輸送とシグナル伝達における重要な経路であるという広い見方を支持すると主張する。これは、ABAについて細胞外向きの受容体結合部位があるという先行報告、細胞膜関連のGA受容(perception)が報告されていること、またIAAが細胞外で作用し得るという証拠とも整合的である。さらに本論文は、AP中のホルモン濃度が高いことで、ホルモンが合成部位から作用部位へアポプラストを介して移動し得ること、また細胞内に入らなくても受容体に結合して応答を引き起こし得ることが示唆され、その結果、急速な成長を含むキュウリ果実の生理に関連した効率的なシグナル伝達が可能になるかもしれない、と述べている。解釈には方法論上の注意点も併記されている。遠心による回収ではAPとSYが一部混合する可能性がある(ただし著者は、その場合AP–SY差は拡大ではなく縮小する方向に働くと推論している)。また、24本分をプールしたため、報告濃度は反復された生物学的推定ではなく、単一の合成測定値である。加えて、収穫後AP回収までの数時間に果実が水ストレスを受けた可能性があり、著者はこれを、過去の葉における水ストレス観察と同様に、細胞内pH変化に伴うAP中ABA増加の可能性と結び付けている。
- 今後の展望:
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本論文は、キュウリのpericarpでCK濃度(tZとiP)が相対的に高い理由を明らかにするため、さらなる研究が必要であると明記している。これは、果実におけるCK作用は主に細胞分裂促進に関係すると予想される一方で、キュウリのpericarpでは細胞分裂が特に活発ではないと記述されているためである。より広い観点では、本研究の所見は、果実アポプラスト中のphytohormoneが細胞外の受容体部位に到達することで直接シグナル伝達に関与し、急速な果実成長に関連する生理応答を媒介する、という提案された機能的解釈を検証する追加研究を動機づける。著者の議論は、ここで挙げた方法論上の制約に関わる未解決問題も将来研究で扱い得るとしており、具体的には、AP–SY分離のより厳密な検証、反復分析が可能な十分量のAP確保、ならびに収穫後の水ストレスがAPへのABA蓄積に与える影響と、果実のin situのホルモン状態とを切り分けることが挙げられている。
- 背景と目的:
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(AP)は、細胞の外側にある空間で、細胞壁や水や物質が通るすき間(アポプラスト ( 細胞膜の外側にある連続した空間で、細胞壁や水・物質が通るすき間を含みます。細胞で作られた物質が外へ出たり、低分子のシグナル分子が運ばれたりする場として重要です。) の空間など)を含みます。ここは、維管束 ( 水や養分を運ぶ通路(道管・師管など)を含む組織です。APはこうした通路の空間ともつながり、シグナル分子の運搬に関わると考えられます。) のような体のはたらきを調整する小さな物質が運ばれる場所として重要だと考えられています。植物ホルモン ( 植物の成長や反応(成長速度、細胞分裂、乾燥への応答など)を調整する化学物質です。少量でも大きな影響を与えるため、どこにどれだけあるかが重要になります。)
これまでの研究では、乾燥などの が起きると細胞内の水ストレス ( 乾燥などで植物が水不足になり、生理状態が変化することです。pH変化やABA増加などにつながり、今回の測定結果にも影響した可能性があるため注意点になります。) が変わり、その結果、葉全体のpH ( 酸性・アルカリ性の度合いを示す値です。細胞内のpHが変わるとホルモンの動き方(特にAPへの移動)に影響し、反応の始まり方に関わります。) (植物ホルモンの一種)が増えるより先に、APの液体中のABAが先に増えることが示されてきました。つまり、ホルモンの働きが細胞膜の外側から始まる可能性があります。実際に、細胞膜の外側に向いたホルモンの受け取り場所(結合部位やABA ( 乾燥などのストレス応答に関わる植物ホルモンで、気孔を閉じる反応などに関係します。水ストレスでAP中の濃度が先に上がることがあり、細胞外側から作用が始まる可能性が重要です。) )がある、という報告もあります。受容体 ( ホルモンなどのシグナル分子を受け取り、細胞の反応を始めるタンパク質です。細胞膜の外側に向いた受け取り部分があると、ホルモンが細胞内に入らなくても反応が起きうる点が重要です。)
そこでこの研究は、キュウリ果実のAP液体の中に、植物ホルモンがどれくらい含まれているのかをはっきりさせることを目的としました。果実の部位( /pulpとflesh ( 果実の食べる部分にあたる組織です。placentaと比べて、APとSYの差やホルモン量の傾向を調べる対象になりました。) )ごとに、APとplacenta ( キュウリ果実の種に近い中心部の組織です。ホルモン濃度の特徴が出やすく、GAが高い部位として注目されました。) (SY)の液体、さらにシンプラスト ( 細胞膜の内側どうしがつながった領域で、細胞質側を通って物質が移動する範囲を指します。APと比べることで、細胞外と細胞内のどちらにホルモンが多いかを判断できます。) について、pericarp ( 果実の外側の果皮部分です。サイトカイニンが相対的に高いなど、他の部位と違うパターンが見られたため、今後の研究課題になっています。) という方法でLC–MS ( 液体クロマトグラフィーで分離し、質量分析で物質を見分けて量を測る方法です。植物ホルモンのような微量物質を高い精度で定量できるため、本研究の中心的な測定法です。) 、ABA、活性型IAA ( オーキシンと呼ばれる植物ホルモンの代表例で、伸長成長などに関わります。細胞内に入らなくても細胞膜の外側で働きうる可能性が議論されています。) (サイトカイニン ( 主に細胞分裂を進める働きがある植物ホルモンの仲間です。果実の成長や部位ごとの役割と結びつくため、どの部分に多いかが研究の焦点になります。) とtZ ( 代表的な活性型サイトカイニンの一つで、細胞分裂や成長調節に関わります。この研究では多くの部位でiPより濃度が高く、部位差の理解に役立ちます。) )、活性型iP ( 活性型サイトカイニンの一つで、tZと並んで量が測られます。どの部位で増えるかは、サイトカイニンの移動や働きを考える手がかりになります。) (ジベレリン ( 茎や果実の伸びなど成長促進に関わる植物ホルモン群です。合成場所から別の場所へ移動して働くことが多く、AP中の存在は輸送経路の理解につながります。) とGA1 ( 活性型ジベレリンの一つで、成長促進に関わります。placentaのAPやpericarpで高いことが、果実の成長との関係として注目されます。) )を量りました。GA4 ( 活性型ジベレリンの一つで、GA1と並んで成長に関わります。APで高濃度だったことが、細胞外プールの重要性を考える材料になります。)
- 主要な発見:
-
とplacenta ( キュウリ果実の種に近い中心部の組織です。ホルモン濃度の特徴が出やすく、GAが高い部位として注目されました。) のどちらでも、調べたすべてのflesh ( 果実の食べる部分にあたる組織です。placentaと比べて、APとSYの差やホルモン量の傾向を調べる対象になりました。) は、SYの液体よりAPの液体のほうが濃度が高くなっていました。植物ホルモン ( 植物の成長や反応(成長速度、細胞分裂、乾燥への応答など)を調整する化学物質です。少量でも大きな影響を与えるため、どこにどれだけあるかが重要になります。) で回収できた液体のうち、AP液体の割合はplacentaで11.3%、pulpで8.2%でした。遠心 ( 高速回転で液体成分を取り出す操作です。AP液体とSY液体を回収するのに使われますが、両者が少し混ざる可能性があるため解釈に注意が必要です。)
は、APがSYの4.0倍(placenta)と6.5倍(flesh)で、APの濃度はplacentaで84IAA ( オーキシンと呼ばれる植物ホルモンの代表例で、伸長成長などに関わります。細胞内に入らなくても細胞膜の外側で働きうる可能性が議論されています。) /pmol ( 非常に小さい量の物質の量を表す単位で、ピコモルと読みます。ホルモンは微量で働くため、この単位で濃度が表されます。) 、fleshで67 pmol/gFWでした。gFW ( 新鮮な状態の重さ(fresh weight)1 gあたり、という意味です。水分を含んだ果実の組織で濃度を比べるときに使われます。)
活性型 では、どの部位でもサイトカイニン ( 主に細胞分裂を進める働きがある植物ホルモンの仲間です。果実の成長や部位ごとの役割と結びつくため、どの部分に多いかが研究の焦点になります。) がtZ ( 代表的な活性型サイトカイニンの一つで、細胞分裂や成長調節に関わります。この研究では多くの部位でiPより濃度が高く、部位差の理解に役立ちます。) より多く、AP中のtZはSYの2倍(placenta)と5.5倍(flesh)、AP中のiPはSYの2倍(placenta)と3倍(flesh)でした。iP ( 活性型サイトカイニンの一つで、tZと並んで量が測られます。どの部位で増えるかは、サイトカイニンの移動や働きを考える手がかりになります。)
では、AP中のジベレリン ( 茎や果実の伸びなど成長促進に関わる植物ホルモン群です。合成場所から別の場所へ移動して働くことが多く、AP中の存在は輸送経路の理解につながります。) がSYの8倍(placenta)と3.5倍(flesh)、GA1 ( 活性型ジベレリンの一つで、成長促進に関わります。placentaのAPやpericarpで高いことが、果実の成長との関係として注目されます。) がSYの3倍(placenta)と3.5倍(flesh)でした。GA4 ( 活性型ジベレリンの一つで、GA1と並んで成長に関わります。APで高濃度だったことが、細胞外プールの重要性を考える材料になります。) はAPがSYの1.5倍(placenta)と2倍(flesh)でした。ABA ( 乾燥などのストレス応答に関わる植物ホルモンで、気孔を閉じる反応などに関係します。水ストレスでAP中の濃度が先に上がることがあり、細胞外側から作用が始まる可能性が重要です。)
部位ごとの特徴として、GA1とGA4はplacentaのAPで特に高く、GA1は でも特に高いと述べられています。一方、サイトカイニン(tZとiP)はplacentaやfleshよりpericarpで高い傾向がありました。著者は、こうした結果は「細胞外(AP)にかなりの量のホルモンがたまっている」ことと合っており、キュウリ果実の速い成長に関係している可能性があると考えています。pericarp ( 果実の外側の果皮部分です。サイトカイニンが相対的に高いなど、他の部位と違うパターンが見られたため、今後の研究課題になっています。)
- 方法論:
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ハウス栽培のキュウリ果実を24本集め、氷で冷やして研究室に運びました。両端を少し切り落としてから1 cm厚に切り、
を分け、さらに道具を使ってpericarp ( 果実の外側の果皮部分です。サイトカイニンが相対的に高いなど、他の部位と違うパターンが見られたため、今後の研究課題になっています。) とplacenta ( キュウリ果実の種に近い中心部の組織です。ホルモン濃度の特徴が出やすく、GAが高い部位として注目されました。) /pulpに分けました。placentaとfleshはflesh ( 果実の食べる部分にあたる組織です。placentaと比べて、APとSYの差やホルモン量の傾向を調べる対象になりました。) してAP液体とSY液体を回収しました(4°Cで4500 g、5分)。遠心 ( 高速回転で液体成分を取り出す操作です。AP液体とSY液体を回収するのに使われますが、両者が少し混ざる可能性があるため解釈に注意が必要です。)
ホルモンの量を正確に測るために、 で印をつけた安定同位体 ( 性質はほぼ同じでも重さが少し違う原子を使った目印です。内部標準として使うと、LC–MSで区別でき、正確な定量に役立ちます。) を加え、内部標準 ( 測定の誤差を小さくするために、あらかじめ決まった量だけ加える「目印」になる物質です。天然のホルモンと比べて量を計算できるので、定量の信頼性が上がります。) で成分を分けてから、HPLC ( 液体の中の成分をカラムで分けて取り出す分析法です。ホルモンのような微量成分をきれいに分けてから測るために使われます。) で同定と定量をしました。LC–MS ( 液体クロマトグラフィーで分離し、質量分析で物質を見分けて量を測る方法です。植物ホルモンのような微量物質を高い精度で定量できるため、本研究の中心的な測定法です。)
ただし、キュウリ1本から取れるAP液体が少なすぎて繰り返し測定ができなかったため、24本分をまとめて1つの試料として測定しました。
- 結論と意義:
-
この研究は、キュウリ果実の
とplacenta ( キュウリ果実の種に近い中心部の組織です。ホルモン濃度の特徴が出やすく、GAが高い部位として注目されました。) で、flesh ( 果実の食べる部分にあたる組織です。placentaと比べて、APとSYの差やホルモン量の傾向を調べる対象になりました。) 、IAA ( オーキシンと呼ばれる植物ホルモンの代表例で、伸長成長などに関わります。細胞内に入らなくても細胞膜の外側で働きうる可能性が議論されています。) 、活性型ABA ( 乾燥などのストレス応答に関わる植物ホルモンで、気孔を閉じる反応などに関係します。水ストレスでAP中の濃度が先に上がることがあり、細胞外側から作用が始まる可能性が重要です。) (サイトカイニン ( 主に細胞分裂を進める働きがある植物ホルモンの仲間です。果実の成長や部位ごとの役割と結びつくため、どの部分に多いかが研究の焦点になります。) 、tZ ( 代表的な活性型サイトカイニンの一つで、細胞分裂や成長調節に関わります。この研究では多くの部位でiPより濃度が高く、部位差の理解に役立ちます。) )、活性型iP ( 活性型サイトカイニンの一つで、tZと並んで量が測られます。どの部位で増えるかは、サイトカイニンの移動や働きを考える手がかりになります。) (ジベレリン ( 茎や果実の伸びなど成長促進に関わる植物ホルモン群です。合成場所から別の場所へ移動して働くことが多く、AP中の存在は輸送経路の理解につながります。) 、GA1 ( 活性型ジベレリンの一つで、成長促進に関わります。placentaのAPやpericarpで高いことが、果実の成長との関係として注目されます。) )が、SYよりAPで高濃度になっていることを示しました。GA4 ( 活性型ジベレリンの一つで、GA1と並んで成長に関わります。APで高濃度だったことが、細胞外プールの重要性を考える材料になります。)
著者はこれを、 がアポプラスト ( 細胞膜の外側にある連続した空間で、細胞壁や水・物質が通るすき間を含みます。細胞で作られた物質が外へ出たり、低分子のシグナル分子が運ばれたりする場として重要です。) の運ばれ方や情報伝達にとって重要な通り道である、という考えを後押しする結果だと述べています。細胞膜の外側で受け取られる可能性があるホルモン(ABAやGAなど)の報告や、IAAが細胞外でも働きうるという報告ともつながります。植物ホルモン ( 植物の成長や反応(成長速度、細胞分裂、乾燥への応答など)を調整する化学物質です。少量でも大きな影響を与えるため、どこにどれだけあるかが重要になります。)
さらに、ホルモンがAPを通って合成場所から作用場所へ移動し、細胞内に入らなくても に結びついて反応を起こせるなら、キュウリ果実の急速な成長のような反応が効率よく起きるかもしれない、と示唆しています。受容体 ( ホルモンなどのシグナル分子を受け取り、細胞の反応を始めるタンパク質です。細胞膜の外側に向いた受け取り部分があると、ホルモンが細胞内に入らなくても反応が起きうる点が重要です。)
一方で注意点として、 でAPとSYが少し混ざる可能性があること、24本分をまとめた1回測定で反復がないこと、収穫後に遠心 ( 高速回転で液体成分を取り出す操作です。AP液体とSY液体を回収するのに使われますが、両者が少し混ざる可能性があるため解釈に注意が必要です。) がかかってABAがAPで増えた可能性があることも述べています。水ストレス ( 乾燥などで植物が水不足になり、生理状態が変化することです。pH変化やABA増加などにつながり、今回の測定結果にも影響した可能性があるため注意点になります。)
- 今後の展望:
-
今後の課題として、
でpericarp ( 果実の外側の果皮部分です。サイトカイニンが相対的に高いなど、他の部位と違うパターンが見られたため、今後の研究課題になっています。) (サイトカイニン ( 主に細胞分裂を進める働きがある植物ホルモンの仲間です。果実の成長や部位ごとの役割と結びつくため、どの部分に多いかが研究の焦点になります。) とtZ ( 代表的な活性型サイトカイニンの一つで、細胞分裂や成長調節に関わります。この研究では多くの部位でiPより濃度が高く、部位差の理解に役立ちます。) )が相対的に高い理由を調べる必要があるとしています。サイトカイニンは果実では主に細胞分裂を進める働きがあると考えられますが、キュウリのpericarpでは細胞分裂が特に活発ではないとされるためです。iP ( 活性型サイトカイニンの一つで、tZと並んで量が測られます。どの部位で増えるかは、サイトカイニンの移動や働きを考える手がかりになります。)
また、提案されたしくみ(AP中のホルモンが細胞外の に届いて直接シグナルを伝え、速い果実成長に関わる)を確かめるために、APとSYの分離の確かさの検証、反復測定できる量のAP確保、収穫後の受容体 ( ホルモンなどのシグナル分子を受け取り、細胞の反応を始めるタンパク質です。細胞膜の外側に向いた受け取り部分があると、ホルモンが細胞内に入らなくても反応が起きうる点が重要です。) の影響の切り分けなどが必要だとしています。水ストレス ( 乾燥などで植物が水不足になり、生理状態が変化することです。pH変化やABA増加などにつながり、今回の測定結果にも影響した可能性があるため注意点になります。)
- 何のために?:
-
植物の
細胞 の外にも、すき間があります。
そのすき間を、 といいます。アポプラスト ( 植物の細胞 の外側 にあるすき間や通り道のことです。水や小さな物質 が細胞 の外を通って動く場所で、植物ホルモンの合図がどこから広がるかを考えるうえで重要 です。)
そこには、水や小さな物質 が通ります。
も、通るかもしれません。植物ホルモン ( 植物の体のはたらきや成長 を調整する物質 です。少ない量 でも効 き、水不足 への反応 や果実 の成長 などをコントロールするため、どこに多いかを調べる意味があります。)
植物ホルモンは、体のはたらきを整えます。
水が足りないと、葉の中の様子が変 わります。
そのとき、外の液 の が先にABA ( 植物ホルモンの一つで、乾 きや水不足 のときに増 えて植物に合図を出すことで知られています。外の液 で先に増 えるなら、細胞 の外側 から反応 が始まる可能性 を考えられます。) 増 えます。
だから、外側 から始まる合図かもしれません。
細胞 の外で受け取る場所がある話もあります。
そこで、キュウリで確 かめることにしました。
果実 の外と中で、ホルモン量 を調べます。
部位 ごとに、外の液 と中の液 を比 べます。
- 何が分かったの?:
-
どの
部位 でも、外の液 のほうが多めでした。
調べたホルモンは、全部そうでした。
外の液 は、 でplacenta ( キュウリの果実 の中で、種 がつく側 の部分のことです。部位 によってホルモンの量 がちがうかを調べるために区別 します。) 約 1わりでした。
では、pulp ( 果実 の中のやわらかい部分を指す言い方です。どの部分にホルモンが多いかを比 べるための区分として使います。) 約 8ぶんの1でした。
は、外のIAA ( 植物ホルモンの一つで、成長 を進めるはたらきがあることで知られています。外の液 で特 に多いなら、果実 の成長 の進み方と関係 するかもしれません。) 液 でとても多くなりました。
placentaで約 4ばい、 でflesh ( 果実 の中身の肉の部分を指す言い方です。placentaなど他の部位 と分けて量 を比 べるために使います。) 約 6ばいです。
は、サイトカイニン ( 植物ホルモンの一つで、細胞 の増 え方や成長 のバランスに関 わります。外側 の皮で多い理由を調べることで、成長 の仕組みの理解 につながります。) のほうが多めでした。tZ ( サイトカイニンの種類 の名前です。どの種類 がどの場所に多いかで、体のどこでどんな成長 の合図が強いかを考えられます。)
tZは外で、約 2ばいから5ばいでした。
も外で、iP ( サイトカイニンの種類 の名前です。tZと同じように、場所ごとの量 のちがいが合図の出方のちがいにつながる可能性 があります。) 約 2ばいから3ばいでした。
も、外で多くなりました。ジベレリン ( 植物ホルモンの一つで、成長 を進めるはたらきがあることで知られています。外の液 で多いなら、細胞 の外側 で成長 の合図が強い可能性 があります。)
は外で、GA1 ( ジベレリンの種類 の名前です。外の液 でどれくらい増 えるかを比 べることで、どのジベレリンが効 いていそうかを考えられます。) 約 3ばいから8ばいでした。
も外で、GA4 ( ジベレリンの種類 の名前です。GA1と同様に、種類 ごとの増 え方のちがいが成長 への関 わり方のちがいを示 すことがあります。) 約 3ばいくらいでした。
も外で、ABA ( 植物ホルモンの一つで、乾 きや水不足 のときに増 えて植物に合図を出すことで知られています。外の液 で先に増 えるなら、細胞 の外側 から反応 が始まる可能性 を考えられます。) 約 1.5ばいから2ばいでした。
はplacentaの外で、とくに高めでした。GA ( ジベレリンをまとめて表すときの呼 び方です。どの部位 で高いかを見ることで、成長 に関 わる合図がどこに集まりやすいかを調べられます。)
サイトカイニンは外側 の皮で高めでした。
外のすき間に、ホルモンがたまるようです。
それが、早い成長 に関係 するかもしれません。
- どうやったの?:
-
ハウスで育てたキュウリを24本集めました。
氷で冷 やして、研究室へ運びました。
少し切ってから、1cmの輪切 りにしました。
外の皮を分けました。
さらに、 とplacenta ( キュウリの果実 の中で、種 がつく側 の部分のことです。部位 によってホルモンの量 がちがうかを調べるために区別 します。) に分けました。flesh ( 果実 の中身の肉の部分を指す言い方です。placentaなど他の部位 と分けて量 を比 べるために使います。)
という回す遠心 ( 試料 を高速で回して、重さのちがいで液 や成分 を分ける方法 です。外の液 と中の液 をできるだけ分けて集めるために重要 な手順 です。) 方法 で、液 を取りました。
外の液 と、中の液 を分けて集めました。
ホルモンは、特別 な機械 で量 をはかりました。
でも、1本だと外の液 が少なすぎました。
だから24本分をまとめて、1回だけ測 りました。
- 研究のまとめ:
-
キュウリでは、外の
液 にホルモンが多いです。
やIAA ( 植物ホルモンの一つで、成長 を進めるはたらきがあることで知られています。外の液 で特 に多いなら、果実 の成長 の進み方と関係 するかもしれません。) などで、それが分かりました。ABA ( 植物ホルモンの一つで、乾 きや水不足 のときに増 えて植物に合図を出すことで知られています。外の液 で先に増 えるなら、細胞 の外側 から反応 が始まる可能性 を考えられます。)
外のすき間は、大事な通り道かもしれません。
ホルモンは、外で合図を出すかもしれません。
もし外で受け取れるなら、はやく反応 できます。
それが、果実 の早い成長 に役立つかもしれません。
ただし、外と中が少し混 ざる心配があります。
1回だけの測定 なので、確 かめが必要 です。
収穫 のあとに乾 き、ABAが増 えたかもです。
- これからどうする?:
-
外側 の皮で、なぜ が多いか。サイトカイニン ( 植物ホルモンの一つで、細胞 の増 え方や成長 のバランスに関 わります。外側 の皮で多い理由を調べることで、成長 の仕組みの理解 につながります。)
それを、これから調べる必要 があります。
外の液 と中の液 を、もっと正しく分けます。
何回も測 れるだけ、外の液 を集めます。
収穫 後の乾 きの影響 も、分けて調べます。
- 著者名:
- 児島 清秀
- 掲載誌名:
- 新潟大学農学部研究報告
- 巻:
- 75
- ページ:
- 7 - 12
- 発行日:
- 2023-03
- 新潟大学学術リポジトリリンク:
- http://hdl.handle.net/10191/0002000904
