論文詳細
医歯学系
大学院医歯学総合研究科(医)
#学位論文
DSS誘発腸炎モデルマウスの粘膜でのDNA損傷応答にCcndbp1-Atm-Chk2経路が関与する
- AI解説:
- マウスにおけるdextran sodium sulfate(DSS)誘発性大腸炎は、潰瘍性大腸炎(ulcerative colitis:UC)を含むヒト大腸炎の実験モデルとして広く用いられている。このモデルでは、大腸上皮の損傷に加えて、炎症細胞の浸潤、陰窩(crypt)の障害、潰瘍形成、結腸短縮が生じ、下痢、直腸出血、体重減少などの臨床症状も伴う。先行研究から、DSSは粘膜上皮細胞に酸化的DNA損傷およびDNA二本鎖切断を誘導し、通常はataxia telangiectasia mutated(Atm)–checkpoint kinase 2(Chk2)経路を介するDNA損傷応答と、その下流のp53依存的アポトーシスを引き起こすことが示されている。AtmノックアウトマウスではDSS曝露後の上皮アポトーシスが減少すると報告されているが、DSS大腸炎におけるAtm–Chk2シグナルの具体的な関与は、直接には検討されていなかった。著者らは以前、別の状況において、cyclin D1-binding protein 1(Ccndbp1;GCIP、HHMとしても知られる)が、DNA二本鎖損傷後のAtm–Chk2関連アポトーシスを強く誘導するために必要であることを見いだしている。Ccndbp1は結腸を含む複数の組織で発現していることから、本研究では、Ccndbp1がAtm–Chk2経路の活性化およびそれに関連する上皮アポトーシスを介して、DSS誘発性大腸炎に寄与するかどうかを明らかにすることを目的とした。
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医歯学系
大学院医歯学総合研究科(医)
#学位論文
DSS誘発腸炎モデルマウスの粘膜でのDNA損傷応答にCcndbp1-Atm-Chk2経路が関与する
AI解説
- 背景と目的:
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マウスにおけるdextran sodium sulfate(DSS)誘発性大腸炎は、潰瘍性大腸炎(ulcerative colitis:UC)を含むヒト大腸炎の実験モデルとして広く用いられている。このモデルでは、大腸上皮の損傷に加えて、炎症細胞の浸潤、陰窩(crypt)の障害、潰瘍形成、結腸短縮が生じ、下痢、直腸出血、体重減少などの臨床症状も伴う。先行研究から、DSSは粘膜上皮細胞に酸化的DNA損傷およびDNA二本鎖切断を誘導し、通常はataxia telangiectasia mutated(Atm)–checkpoint kinase 2(Chk2)経路を介するDNA損傷応答と、その下流のp53依存的アポトーシスを引き起こすことが示されている。AtmノックアウトマウスではDSS曝露後の上皮アポトーシスが減少すると報告されているが、DSS大腸炎におけるAtm–Chk2シグナルの具体的な関与は、直接には検討されていなかった。著者らは以前、別の状況において、cyclin D1-binding protein 1(Ccndbp1;GCIP、HHMとしても知られる)が、DNA二本鎖損傷後のAtm–Chk2関連アポトーシスを強く誘導するために必要であることを見いだしている。Ccndbp1は結腸を含む複数の組織で発現していることから、本研究では、Ccndbp1がAtm–Chk2経路の活性化およびそれに関連する上皮アポトーシスを介して、DSS誘発性大腸炎に寄与するかどうかを明らかにすることを目的とした。
- 主要な発見:
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Ccndbp1ノックアウトマウスは、肉眼所見、臨床指標、組織学的指標のいずれにおいても、野生型マウスよりDSS誘発性大腸炎が軽症であった。2% DSSを1週間投与すると、野生型では結腸長が94.7 ± 2.1 mmから71.8 ± 5.2 mmへと著しく短縮した一方、Ccndbp1ノックアウトでは結腸長がより長く保たれ(89.3 ± 7.8 mm)、DSS条件下で野生型との差は有意であった。Disease activity index(DAI)は野生型で5.6 ± 2.1点まで上昇したが、Ccndbp1ノックアウトでは有意に低かった(3.8 ± 1.8点)。組織学的には、8日目に野生型で遠位大腸の大腸炎が近位(0.0)より重症で(組織スコア4.2 ± 2.9)、遠位優位が明確であったのに対し、Ccndbp1ノックアウトではこの顕著な遠位優位がみられず、全体として炎症が軽度であった。機序に関して、AtmおよびChk2の総タンパク質量は、遺伝子型や結腸部位による明確な差がなかった。しかしDSSは、野生型の粘膜上皮(特に遠位大腸)でAtm(S1981)とChk2(Thr68)のリン酸化を増加させた一方、このリン酸化反応はCcndbp1ノックアウトでは認められなかった。DNA損傷応答シグナルの低下と整合して、DSS処置野生型の遠位大腸ではアポトーシスマーカー(TUNEL陽性およびHNF4α陽性上皮細胞におけるcleaved caspase 3)が増加したが、Ccndbp1ノックアウトでは増加しなかった。全トランスクリプトームシーケンスとgene ontology enrichment解析でも、Ccndbp1ノックアウト組織では炎症・サイトカイン応答・アポトーシス関連の遺伝子セットの代表性が低く、transport(輸送)複合体関連遺伝子のenrichmentが高いことが示された。さらに著者らは、8日目にIFN-γ、IL-1β、IL-6、IL-10を含む炎症関連遺伝子の発現低下も報告している。
- 方法論:
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本研究では、specific pathogen-free条件下で飼育した雄のBALB/c野生型マウス(8週齢、25–30 g、n = 50)と、年齢・体重を一致させたCcndbp1ノックアウトマウス(n = 50)を用いた。大腸炎は、飲水として2%(w/v)DSSを1週間自由摂取させることで誘導した。動物は、体重減少、便性状、直腸出血を統合した標準化disease activity index(DAI;最大12点)により毎日モニタリングした。マウスはDSS開始後5日目と8日目に安楽死させた。結腸を摘出して全長を測定し、縦切開して肉眼観察を行い、さらに近位半分と遠位半分に分けて部位別解析を行った。病理組織学的評価は、各部位から作製したホルマリン固定・パラフィン包埋の横断切片(5 µm)にhematoxylin and eosin染色を施し、炎症重症度、陰窩障害、潰瘍形成をスコア化(最大11点)した。免疫組織化学により、Atm(総量およびリン酸化型S1981)、Chk2(総量およびリン酸化型Thr68)、アポトーシスマーカーとしてのcleaved caspase 3(Asp175)、および粘膜上皮細胞同定のためのHNF4αを定量し、シグナルはImageJによる定量または陽性細胞数のカウントで評価した。アポトーシス細胞はTUNEL染色でも検出した。分子プロファイリングとして、遠位大腸組織で全トランスクリプトームシーケンス(各群2サンプル)を行い、その後g:Profilerを用いてgene ontology enrichment解析を実施した。加えて、定量RT-PCR(Gapdhで正規化、2-ΔΔCt法)によりサイトカイン関連転写産物(IFN-γ、IL-1β、IL-6、IL-10)を評価した。統計解析はStudent’s t-testまたはBonferroni補正付きone-way ANOVAを用い、有意水準はp ≤ 0.05とした。
- 結論と意義:
-
著者らは、Ccndbp1がAtm–Chk2 DNA損傷応答経路の活性化と、それに伴う粘膜上皮アポトーシスを可能にすることで、急性期のDSS誘発性大腸炎の病態形成に重要に寄与すると結論づけている。実験では、Ccndbp1欠失はAtmやChk2の総発現量を実質的に変えなかった一方で、DSSに伴うこれらタンパク質のリン酸化を抑制し、上皮細胞におけるTUNEL陽性の減少およびcleaved caspase 3の低下と一致した。このDNA損傷応答シグナルとアポトーシスの減弱は、臨床活動性(DAI低下)、肉眼的障害(結腸短縮の軽減)、組織学的炎症の改善と同時に認められ、特に野生型でみられた遠位優位の重症度を軽減した。トランスクリプトーム解析もこの表現型と整合的に提示され、Ccndbp1ノックアウトマウスで炎症およびアポトーシス関連の遺伝子プログラムのenrichmentが低下していた。本研究の意義として、急性期のDSS大腸炎機序における未報告の構成要素としてCcndbp1を同定し、上皮DNA損傷シグナルを下流の炎症性変化へ結び付けた点が挙げられる。著者らは限界として、Ccndbp1が炎症細胞のリクルート(集積)に直接及ぼす影響を確立していないこと、ヒト大腸炎検体での検証が必要であること、さらにアポトーシスはゲノム不安定な細胞を排除する保護的役割も持ちうるため治療的解釈が複雑になることを指摘している。
- 今後の展望:
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本論文は、得られた知見と注意点に基づき、複数の追試・発展方向を提案している。第一に、8日目に炎症関連遺伝子発現が低いことを観察しており、急性期を超えてCcndbp1が慢性炎症や炎症関連発がん(例:colitic cancer)に影響するかを、UC様の病勢進行の文脈で長期的に検討する研究が必要だとしている。第二に、Ccndbp1は末梢白血球にも発現しており、本研究は主として粘膜上皮のアポトーシスとDNA損傷シグナルに焦点を当てて免疫細胞のリクルート機構自体は扱っていないため、粘膜へ浸潤する免疫細胞におけるCcndbp1の役割評価を推奨している。第三に、ヒト大腸炎検体を用いた分子基盤の解析により、Ccndbp1–Atm–Chk2軸がヒトでも同様に働くかどうかを検証すべきだとしている。最後に、Atm–Chk2経路の特異的阻害薬を用いた追加の基礎・臨床研究により治療可能性と安全性をより適切に評価する必要があるとし、特にアポトーシス抑制はDNA損傷細胞の排除を妨げ、ゲノム安定性に影響しうる点を強調している。
- 背景と目的:
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DSSという薬剤をマウスに与えて起こす大腸炎は、人の大腸炎(特に
)を調べるためによく使われる実験モデルです。このモデルでは、大腸の表面をおおう細胞が傷つき、炎症が起き、腸のくぼみの構造が壊れたり、ただれ(潰瘍)ができたり、腸が短くなったりします。その結果、下痢や血便、体重減少なども起こります。潰瘍性大腸炎 ( 大腸に炎症やただれが起こる病気で、下痢や血便などが続きやすく、特に肛門に近い大腸で強くなりやすいです)
これまでの研究から、DSSは大腸の細胞のDNAを傷つけ、細胞の中で とAtm ( DNAの重大な損傷を検知して、修復や細胞の停止などの反応を始めるスイッチ役のタンパク質です) という仕組みが働いて「DNAが壊れた」という合図を出し、その流れでChk2 ( Atmからの合図を受け取り、細胞周期の停止や細胞死などにつなげるタンパク質です) に関係した細胞死(p53 ( DNAが傷ついた細胞が増えないように、細胞の増殖を止めたり細胞死を起こしたりする重要なタンパク質です) )が起きることが示されていました。Atmを欠くマウスではDSSによる細胞死が減ることは知られていましたが、DSS大腸炎の中でAtmとChk2の働きがどう関わるかは、はっきり調べられていませんでした。アポトーシス ( 細胞が周囲に迷惑をかけにくい形で自分から死ぬ仕組みで、傷ついた細胞を取り除くのに役立ちます)
研究者たちは以前、 というタンパク質が、DNAの大きな損傷が起きたときにAtmとChk2に関係する細胞死を強く起こすために必要だと報告していました。Ccndbp1は大腸でも作られているため、本研究ではCcndbp1がAtmとChk2の働きのスイッチを入れ、細胞死を通じてDSS大腸炎を悪化させるのかどうかを明らかにすることを目的としました。Ccndbp1 ( AtmとChk2の経路に関わり、DNA損傷後の細胞死を起こしやすくする方向に働くと考えられるタンパク質です)
- 主要な発見:
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を持たないマウスは、通常のマウスに比べてDSSで起こる大腸炎が全体的に軽くなりました。具体的には、DSSを1週間与えると通常のマウスでは腸が大きく短くなりましたが、Ccndbp1を持たないマウスでは腸の長さがより保たれました。下痢・血便・体重減少をまとめた指標(DAI)も、Ccndbp1を持たないマウスのほうが低く、症状が軽いことが示されました。Ccndbp1 ( AtmとChk2の経路に関わり、DNA損傷後の細胞死を起こしやすくする方向に働くと考えられるタンパク質です)
組織を詳しく見ると、通常のマウスでは特に遠位大腸(肛門に近い側)で炎症が強く出ましたが、Ccndbp1を持たないマウスではこの「遠位側が特に重い」という特徴が目立たず、全体として炎症が軽い傾向でした。
仕組みの面では、 とAtm ( DNAの重大な損傷を検知して、修復や細胞の停止などの反応を始めるスイッチ役のタンパク質です) の「量」自体は大きく変わりませんでした。しかしDSSを与えると、通常のマウスではAtmとChk2が活性化の目印であるChk2 ( Atmからの合図を受け取り、細胞周期の停止や細胞死などにつなげるタンパク質です) を受けました(特に遠位大腸)が、Ccndbp1を持たないマウスではこのリン酸化がほとんど起こりませんでした。リン酸化 ( タンパク質にリン酸が付く化学的変化で、スイッチが入った状態を示すことが多く、細胞内の情報伝達で重要です)
それに対応して、通常のマウスでは細胞死のサイン( 陽性細胞や、TUNEL ( DNAが切れている細胞を検出する方法で、細胞死が起きているかを調べるのに使われます) が増えた上皮細胞)が増えましたが、Ccndbp1を持たないマウスでは増えませんでした。遺伝子の働き方をまとめて調べた解析でも、Ccndbp1を持たないマウスでは炎症やcleaved caspase 3 ( 細胞死が進むときに働く酵素の活性化された形で、アポトーシスの代表的な目印です) 反応、細胞死に関係する遺伝子のまとまりが弱く出ていました。また、サイトカイン ( 免疫細胞などが出す情報伝達物質で、炎症を強めたり弱めたりして免疫反応を調整します) やIFN-γ ( 免疫反応を強める方向に働く代表的なサイトカインの1つで、炎症の状態を反映します) など炎症に関係する遺伝子の発現も低下していました。IL-1β ( 炎症を起こす力が強いサイトカインで、組織の炎症や痛みなどに関わります)
- 方法論:
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8週齢の雄マウスとして、通常のBALB/cマウスと
Ccndbp1 ( AtmとChk2の経路に関わり、DNA損傷後の細胞死を起こしやすくする方向に働くと考えられるタンパク質です) を用いました。2% DSSを飲み水として1週間自由に飲ませ、大腸炎を起こしました。毎日、体重・便の状態・出血の程度をまとめたDAIで症状を評価しました。ノックアウトマウス ( 特定の遺伝子が働かないように作られたマウスで、その遺伝子の役割を調べるために使われます)
DSS開始後5日目と8日目にマウスを処置し、大腸を取り出して長さを測り、見た目の観察も行いました。大腸を近位側と遠位側に分け、部位ごとに組織を観察しました。組織切片を染色して炎症の強さ、腸のくぼみ構造の壊れ方、潰瘍の程度を点数化しました。
さらに、免疫染色で やAtm ( DNAの重大な損傷を検知して、修復や細胞の停止などの反応を始めるスイッチ役のタンパク質です) (Chk2 ( Atmからの合図を受け取り、細胞周期の停止や細胞死などにつなげるタンパク質です) 型も含む)、細胞死の指標であるリン酸化 ( タンパク質にリン酸が付く化学的変化で、スイッチが入った状態を示すことが多く、細胞内の情報伝達で重要です) 、上皮細胞を確認するためのcleaved caspase 3 ( 細胞死が進むときに働く酵素の活性化された形で、アポトーシスの代表的な目印です) を測定しました。HNF4α ( 大腸などの上皮細胞を見分けるための目印として使われるタンパク質です) 染色でも細胞死を検出しました。加えて、遠位大腸で遺伝子発現を幅広く調べる解析と、特定の炎症関連遺伝子を定量するPCR検査を行いました。TUNEL ( DNAが切れている細胞を検出する方法で、細胞死が起きているかを調べるのに使われます)
- 結論と意義:
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は、DSSでDNAが傷ついたときにCcndbp1 ( AtmとChk2の経路に関わり、DNA損傷後の細胞死を起こしやすくする方向に働くと考えられるタンパク質です) とAtm ( DNAの重大な損傷を検知して、修復や細胞の停止などの反応を始めるスイッチ役のタンパク質です) の経路を活性化させ、その結果として大腸の上皮細胞の細胞死を起こしやすくし、急性期のDSS大腸炎を進める重要な要素だと結論づけられました。Ccndbp1がないと、AtmやChk2の量は変わらなくても活性化(Chk2 ( Atmからの合図を受け取り、細胞周期の停止や細胞死などにつなげるタンパク質です) )が起こりにくくなり、細胞死も減り、症状や組織の炎症も軽くなりました。リン酸化 ( タンパク質にリン酸が付く化学的変化で、スイッチが入った状態を示すことが多く、細胞内の情報伝達で重要です)
この研究の重要な点は、DSS大腸炎の仕組みの中でCcndbp1という分子が新しい関係者として示され、DNA損傷の合図が炎症や組織障害につながる流れの理解が進んだことです。一方で、Ccndbp1が免疫細胞の集まり方に直接影響するかは十分に確かめられていないことや、人の検体での確認が必要なこと、細胞死を抑えることが必ずしも安全とは限らないことも課題として挙げられています。
- 今後の展望:
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今後は、急性期だけでなく長期的に見たときに
が慢性炎症や炎症に関連したがん(大腸炎関連がん)に影響するかを調べる必要があります。Ccndbp1 ( AtmとChk2の経路に関わり、DNA損傷後の細胞死を起こしやすくする方向に働くと考えられるタンパク質です)
また、Ccndbp1は白血球などの免疫細胞でも作られるため、腸に入り込む免疫細胞側でCcndbp1がどんな役割を持つかも評価することが提案されています。
さらに、人の大腸炎の検体を用いて、Ccndbp1と とAtm ( DNAの重大な損傷を検知して、修復や細胞の停止などの反応を始めるスイッチ役のタンパク質です) のつながりが人でも同じように働くかを検証することが重要です。加えて、AtmとChk2の経路を抑える薬を使った研究で、治療としての可能性と安全性をより丁寧に確かめる必要があります。Chk2 ( Atmからの合図を受け取り、細胞周期の停止や細胞死などにつなげるタンパク質です)
- 何のために?:
-
という薬を、マウスにあげます。DSS ( マウスに飲ませて、腸 に炎症 を起こさせるために使う薬の名前です:人の大腸炎 に近い状態 を作って、病気のしくみや薬の効 き方を調べるのに重要 です)
すると、だいちょうがはれます。
これは、人のだいちょうえんを調べる方法 です。
だいちょうの表の細胞 が、きずつきます。
それで、はれたり、ただれたりします。
おなかをこわし、血がまじることもあります。
体重がへることもあります。
DSSは、細胞 の中の もこわします。DNA ( 細胞 の中にある、体の情報 が書かれた設計図 のような物質 です:こわれると細胞 が危険 だと判断 して反応 が起きるため、この研究の中心になります)
DNAは、体のせつめい書みたいなものです。
こわれると、 とAtm ( DNAがこわれたときに気づいて、細胞 に合図を出すたんぱく質 です:DNAのきずへの反応 の始まりに関 わるので重要 です) がはたらきます。Chk2 ( Atmからの合図を受けて、次の反応 を進めるたんぱく質 です:DNAがこわれたときに細胞 がどう動くかを決める流れに必要 です)
そして、「こわれたよ」と合図を出します。
そのあと、 につながり、p53 ( DNAのこわれ方が大きいときに、細胞 を止めたり死なせたりする方向へ働 くたんぱく質 です:こわれた細胞 を残 さないための大事な仕組みです) 細胞 が死にます。
前の研究で、 が大事だと分かりました。Ccndbp1 ( この研究で注目している遺伝子 やたんぱく質 の名前です:AtmやChk2の働 きを強めて細胞死 や炎症 を進める可能性 があり重要 です)
大きなDNAのきずで、細胞死 を強めます。
Ccndbp1は、だいちょうでも作られます。
そこで、こう考えました。
Ccndbp1が、AtmとChk2を動かすのか。
それで、だいちょうえんがひどくなるのか。
それをはっきりさせるのが目的 です。
- 何が分かったの?:
-
がないマウスは、病気が軽めでした。Ccndbp1 ( この研究で注目している遺伝子 やたんぱく質 の名前です:AtmやChk2の働 きを強めて細胞死 や炎症 を進める可能性 があり重要 です)
を1週間あげると、ふつうはDSS ( マウスに飲ませて、腸 に炎症 を起こさせるために使う薬の名前です:人の大腸炎 に近い状態 を作って、病気のしくみや薬の効 き方を調べるのに重要 です) 腸 が短くなります。
でも、Ccndbp1なしでは、短くなりにくいです。
下り、血便 、体重へりも、少なめでした。
ふつうのマウスは、肛門 に近い所が重くなります。
でも、Ccndbp1なしは、そのかたよりが弱いです。
全体に、はれが軽いようでした。
とAtm ( DNAがこわれたときに気づいて、細胞 に合図を出すたんぱく質 です:DNAのきずへの反応 の始まりに関 わるので重要 です) の「数」は、あまりChk2 ( Atmからの合図を受けて、次の反応 を進めるたんぱく質 です:DNAがこわれたときに細胞 がどう動くかを決める流れに必要 です) 変 わりません。
でも、ふつうはDSSで、AtmとChk2が動きます。
「動いたしるし」がつく、と考えてください。
とくに肛門 に近い所で、よく見られました。
Ccndbp1なしでは、そのしるしがほぼ出ません。
ふつうは、細胞 が死んだしるしが増 えました。
でも、Ccndbp1なしでは、増 えませんでした。
また、はれや細胞死 に関係 する も弱めです。遺伝子 ( 体の働 き方を決める情報 で、DNAの中にあります:どの遺伝子 が強く働 くか弱く働 くかで炎症 の起き方が変 わるため調べます)
やIFN-γ ( 炎症 を強める方向に働 く免疫 の合図の物質 の名前です:量 が増 えると炎症 が強くなりやすいので重要 です) なども、少なくなりました。IL-1β ( 炎症 を起こす合図の物質 の名前です:炎症 の強さを知る目安になり、病気の重さと関係 します)
- どうやったの?:
-
8週れいのオスマウスを使いました。
ふつうのマウスと、 なしのマウスです。Ccndbp1 ( この研究で注目している遺伝子 やたんぱく質 の名前です:AtmやChk2の働 きを強めて細胞死 や炎症 を進める可能性 があり重要 です)
2%の を、水にまぜて1週間のませました。DSS ( マウスに飲ませて、腸 に炎症 を起こさせるために使う薬の名前です:人の大腸炎 に近い状態 を作って、病気のしくみや薬の効 き方を調べるのに重要 です)
毎日、体重と便 と出血を見ました。
それをまとめて、 で点にしました。DAI ( 体重や便 や出血などをまとめて点数にした指標 です:病気の重さを比 べやすくするために使います)
5日目と8日目に、マウスをしらべました。
だいちょうを取り出し、長さをはかりました。
見た目も、よく見ました。
だいちょうを、手前とおしり側 に分けました。
それぞれの場所で、組織 を見ました。
はれ、くぼみのこわれ、ただれを点にしました。
さらに、色をつける検査 でたしかめました。
やAtm ( DNAがこわれたときに気づいて、細胞 に合図を出すたんぱく質 です:DNAのきずへの反応 の始まりに関 わるので重要 です) があるか、動いたかを見ました。Chk2 ( Atmからの合図を受けて、次の反応 を進めるたんぱく質 です:DNAがこわれたときに細胞 がどう動くかを決める流れに必要 です)
細胞死 のしるしも、しらべました。
細胞死 は、 というTUNEL ( 細胞 が死んでいるかを見つける検査 方法 の名前です:細胞死 が増 えたかどうかを確 かめるのに重要 です) 方法 でも見ました。
また、 のはたらきも、広く調べました。遺伝子 ( 体の働 き方を決める情報 で、DNAの中にあります:どの遺伝子 が強く働 くか弱く働 くかで炎症 の起き方が変 わるため調べます)
大事な炎症 の遺伝子 は、 で数えました。PCR ( 遺伝子 がどれくらい働 いているかを数えるための方法 です:炎症 に関係 する遺伝子 の変化 を調べるのに使います)
- 研究のまとめ:
-
は、Ccndbp1 ( この研究で注目している遺伝子 やたんぱく質 の名前です:AtmやChk2の働 きを強めて細胞死 や炎症 を進める可能性 があり重要 です) でDSS ( マウスに飲ませて、腸 に炎症 を起こさせるために使う薬の名前です:人の大腸炎 に近い状態 を作って、病気のしくみや薬の効 き方を調べるのに重要 です) がきずつくときにDNA ( 細胞 の中にある、体の情報 が書かれた設計図 のような物質 です:こわれると細胞 が危険 だと判断 して反応 が起きるため、この研究の中心になります) 関 わります。
とAtm ( DNAがこわれたときに気づいて、細胞 に合図を出すたんぱく質 です:DNAのきずへの反応 の始まりに関 わるので重要 です) を動かし、Chk2 ( Atmからの合図を受けて、次の反応 を進めるたんぱく質 です:DNAがこわれたときに細胞 がどう動くかを決める流れに必要 です) 細胞死 を起こしやすくします。
そのため、だいちょうえんが進みやすいです。
Ccndbp1がないと、AtmとChk2が動きにくいです。
だから、細胞死 がへります。
その結果 、はれや症状 も軽くなります。
この研究で、Ccndbp1が新しい関係者 だと分かりました。
DNAのきずが、病気につながる流れが見えました。
でも、まだ分からないこともあります。
免疫 の細胞 に、直接 きくかは未確認 です。
人でも同じか、たしかめる必要 があります。
細胞死 を止めるのが、安全かも注意が要 ります。
- これからどうする?:
-
これから、長い期間のえいきょうも調べます。
の慢性 ( 長い期間つづく状態 のことです:炎症 が長く続 くと体への影響 や病気の進み方が変 わるため重要 です) 炎症 や、がんとの関係 も見ます。
は、Ccndbp1 ( この研究で注目している遺伝子 やたんぱく質 の名前です:AtmやChk2の働 きを強めて細胞死 や炎症 を進める可能性 があり重要 です) などにもあります。白血球 ( 体を守る免疫 の細胞 のまとめた呼 び方です:腸 の炎症 に直接 関 わるので、この研究の次の調べどころになります)
腸 に入る免疫 の細胞 での役割 も調べます。
人のだいちょうえんでも、同じしくみか確認 します。
また、 とAtm ( DNAがこわれたときに気づいて、細胞 に合図を出すたんぱく質 です:DNAのきずへの反応 の始まりに関 わるので重要 です) をおさえる薬も調べます。Chk2 ( Atmからの合図を受けて、次の反応 を進めるたんぱく質 です:DNAがこわれたときに細胞 がどう動くかを決める流れに必要 です)
治療 に使えるか、安全かを丁寧 に見ます。
- 著者名:
- 堀米 亮子
- 新潟大学学術リポジトリリンク:
- http://hdl.handle.net/10191/0002001047
