論文詳細
人文学部
#紀要論文
The impact of two phonetic features on intelligible speech among ELF users
- AI解説:
- 発音指導では、母語話者のアクセントを目指すよりも、聞き手が話し手の意図したメッセージを理解できることとしての「intelligibility(了解可能性)」を重視する傾向が強まっている。しかし、特に英語を国際共通語として用いるEnglish as a lingua franca(ELF)の状況(L2話者どうしのやり取りが多い状況)では、どの発音特徴が了解可能性を最も強く支えるのかについて、依然として大きな意見の相違がある。シラバス設計をめぐる提案としては、Lingua Franca Core、functional load principle、local varieties(地域変種)への注目などがあるが、これらの枠組みは、音素的特徴(語の意味の対立を示す)と音声的特徴(それ自体は意味の対立を示さない)のどちらが相対的に重要かを明確に示していない。本論文は、音声的特徴でありながら了解可能性に影響すると主張されてきた2つの特徴、(1) 母音長の変動(特に語末の有声子音 vs. 無声子音の前での違い)と、(2) 語頭の閉鎖音におけるaspiration(帯気)のパターンに焦点を当てる。先行研究の知見は一貫せず、またJenkins(2000)の主張は実験的に検証されていないため、本研究では実験手法により、母音長の変動がELF使用者間の了解可能性に影響するか(H1)、およびaspirationの変動がELF使用者間の了解可能性に影響するか(H2)という2つの仮説を検証する。
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人文学部
#紀要論文
The impact of two phonetic features on intelligible speech among ELF users
AI解説
- 背景と目的:
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発音指導では、母語話者のアクセントを目指すよりも、聞き手が話し手の意図したメッセージを理解できることとしての「intelligibility(了解可能性)」を重視する傾向が強まっている。しかし、特に英語を国際共通語として用いるEnglish as a lingua franca(ELF)の状況(L2話者どうしのやり取りが多い状況)では、どの発音特徴が了解可能性を最も強く支えるのかについて、依然として大きな意見の相違がある。シラバス設計をめぐる提案としては、Lingua Franca Core、functional load principle、local varieties(地域変種)への注目などがあるが、これらの枠組みは、音素的特徴(語の意味の対立を示す)と音声的特徴(それ自体は意味の対立を示さない)のどちらが相対的に重要かを明確に示していない。本論文は、音声的特徴でありながら了解可能性に影響すると主張されてきた2つの特徴、(1) 母音長の変動(特に語末の有声子音 vs. 無声子音の前での違い)と、(2) 語頭の閉鎖音におけるaspiration(帯気)のパターンに焦点を当てる。先行研究の知見は一貫せず、またJenkins(2000)の主張は実験的に検証されていないため、本研究では実験手法により、母音長の変動がELF使用者間の了解可能性に影響するか(H1)、およびaspirationの変動がELF使用者間の了解可能性に影響するか(H2)という2つの仮説を検証する。
- 主要な発見:
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母音長の変動については、General American(GA)英語のパターンに一致する母音長で生成された語と、GAパターンから逸脱した語との間で、了解可能性に統計的に有意な差は見られなかった:χ2 (1) = 0.08, p = .773。対応するオッズ比は1.08であり、GAに一致する母音長の実現が、非一致の実現よりも理解されやすい可能性はごく僅かであることを示した。著者は、これを本実験において母音長の変動が了解可能性に及ぼす実質的影響が小さい証拠だと解釈し、母音長の変動が了解可能性に資するとする主張に反する一方で、関連性が最小限であるとする研究と整合的であると述べている。
これに対し、aspirationの変動は了解可能性と強い関係を示した。GAに一致するaspirationパターンと、それからの逸脱との間の了解可能性の差は統計的に有意だった:χ2 (1) = 22.8, p < .001。オッズ比は7.78で、研究では(Chen, Cohen, & Chenの基準を用いて)大きな効果と解釈している。すなわち、標準的なaspirationパターンの語は、非標準的なaspirationパターンの語に比べて、正しく同定される可能性が7倍以上高かった。著者は、この状況における聞き手集団に対して語頭のaspirationが了解可能性に大きく影響したと結論づけ、aspirationが了解可能性の高いELF発話の主要要素になり得るという立場を支持している。
- 方法論:
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本研究は、2値アウトカムの統計分析を伴う実験的な了解可能性テストを用いた。日本の大規模な公立大学に所属する、熟達したL2英語使用者2名(20代半ばの韓国人男性とマレーシア人女性)が、General Service listから抽出した40語の1音節語を録音した。2名は、2つの対象となる音声的特徴について、GA英語に一致する発音と逸脱する発音を統制して産出するよう指導を受けた。母音長については、各話者が20項目を録音し、短い母音長 vs. 通常の母音長、およびGAパターンに対する一致 vs. 逸脱に配分した(一致10、逸脱10)。aspirationについては、各話者が語頭でのaspirated(帯気あり) vs. unaspirated(帯気なし)の実現を対照させる20項目を録音し、こちらもGAパターンに対して一致10、逸脱10となるよう均等化した(無声語頭閉鎖音でのaspiration、および有声語頭閉鎖音での非aspirationを「一致」条件に含めた)。最終的なテスト教材は、話者間の曝露を均衡させるため、韓国人話者の録音20件とマレーシア人話者の録音20件で構成された。
参加者は日本人学部生20名(女性=13、男性=7、平均年齢M = 19.4、SD = 1.35)で、電子チラシにより募集し、個別にテストした。2択のbinary forced-choice形式を用い、参加者は各語をコンピュータのスピーカーで聴き、聞こえたと思うほうの綴りの選択肢を丸で囲んだ(不確かな場合も回答するよう求めた)。各参加者は40試行(約5分)を実施し、合計800観測が得られた(母音長400、aspiration400)。順序効果を減らすため、音声系列の開始位置は参加者間でランダム化した。分析では各特徴について2 × 2のχ2検定(α = .05)を用い、効果量としてオッズ比を報告し、オッズ比の大きさの解釈には外部の基準(Chen, Cohen, & Chen, 2010)を採用した。
- 結論と意義:
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本論文は、この実験的でELFに関連する文脈(日本人の聞き手が韓国人・マレーシア人のL2発話を評価する状況)において、GA英語に対する母音長の変動は了解可能性への影響が最小限であった一方、aspirationの変動は大きく統計的にも頑健な効果をもったと結論づけている。著者は、これらの結果を、文献で見られる相反する結果のより広いパターンの一部として位置づける。すなわち、先行研究は母音長とaspirationの双方について見解が分かれており、本研究は特徴によって先行の異なる主張と整合したり矛盾したりする。不一致を単なるノイズとみなすのではなく、議論では、異なる設定にいる異なる学習者集団は、特定の音声的特徴に対して異なる反応を示し得ると主張する。この解釈によれば、発音上の優先事項に関する普遍主義的アプローチ(Lingua Franca Coreやfunctional load principleを含む)は、学習者が直面しやすいコミュニケーション環境や相手の組み合わせに合わせて調整されない限り、音声的特徴については具体性が不十分になり得る。したがって本研究の主要な教育的含意は、ここでどの特徴が重要だったか(母音長よりaspiration)にとどまらず、シラバス決定に際して、了解可能性に関わる特徴を文脈に即して検証する必要性にある。
- 今後の展望:
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本論文は、対象となる特定集団のニーズに合わせて発音シラバスを調整するために、関連する相互行為の文脈で、どの特徴が実際に了解可能性の問題を生むのかを実証的に特定することを提唱する。実践的な方向性として、録音された会話を宿題としてコースに組み込み、その録音をconversation analytic methods(会話分析の手法)で評価して、学習者自身が誤解の原因としてどの発音特徴に注意を向けているかを明らかにすることを提案している。この診断的証拠に基づき、教師は当該学習者集団の了解可能性にとって最も重大な問題に対応するよう、指導上の優先順位を調整できる。より広くは、研究間で矛盾する結果が単なる方法論上の不一致ではなく、集団固有の効果を反映している可能性があるため、今後も異なる集団と設定にわたって音声的特徴を検討し続けるべきだと示唆している。
- 背景と目的:
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英語の発音を教えるとき、母語話者のようなアクセントを目指すよりも、聞き手が話し手の言いたいことを理解できること、つまり「了解可能性」を大切にする考え方が強まっています。特に、英語を国際的な共通語として使い、英語が母語ではない人どうしで話す場面では、どんな発音の特徴が了解可能性をいちばん支えるのかについて、意見がまだまとまっていません。
これまでにも、発音指導で何を重視するかを決める考え方はいくつか提案されてきましたが、「意味の違いに関わる発音の違い」と「意味の違いには直接つながらない発音の違い」のどちらがどれくらい重要かは、はっきりしない部分がありました。
そこでこの研究は、意味の違いには直接つながらないのに了解可能性に影響すると言われてきた次の2つに注目しました。(1)母音の長さの変化(特に語末の子音が有声音か無声音かで長さが変わること)(2)語頭の破裂音で息が強く出るかどうか(帯気)のパターンです。先行研究の結果が一致しておらず、過去の主張も実験で十分確かめられていなかったため、この研究では実験で、(H1)母音の長さの変化が了解可能性に影響するか、(H2)帯気の変化が了解可能性に影響するかを検証しました。
- 主要な発見:
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母音の長さの変化については、アメリカ英語の一般的な発音パターンに合っている場合と、そこから外れている場合で、了解可能性に明確な差は見られませんでした。つまり、この実験では、母音の長さの違いは「聞き取りやすさ」にほとんど影響しなかったと考えられます。
一方で、語頭の帯気の違いは、了解可能性と強く関係していました。アメリカ英語の一般的な帯気パターンに合っている発音のほうが、合っていない発音よりも、かなり高い確率で正しく聞き取られました。つまり、この条件のもとでは、語頭の帯気は了解可能性に大きく影響する重要な要素になり得ると結論づけられました。
- 方法論:
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この研究では、実験形式の聞き取りテストを行い、正しく聞き取れたかどうかを統計的に分析しました。
英語を第二言語として高いレベルで使える大学院生2名(韓国人男性1名、マレーシア人女性1名)が、よく知られている1音節の英単語40語を録音しました。2名は、母音の長さと帯気について、アメリカ英語の一般的なパターンに合う発音と、そこから外れる発音を意図的に作り分けて録音しました。
聞き手は日本人大学生20名で、各単語をスピーカーで聞き、2つのつづりのうち「聞こえたと思うほう」を選ぶ形式で答えました。全体で800回分の回答データが集まり、母音の長さと帯気についてそれぞれ統計的な検定を行い、どれくらい差が大きいかも数値で示しました。
- 結論と意義:
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この研究の条件(日本人の聞き手が、韓国人・マレーシア人の英語学習者の発音を聞く場面)では、母音の長さの違いは了解可能性への影響が小さく、語頭の帯気の違いは大きな影響をもつことが示されました。
また、先行研究で結果が食い違うことについて、この研究は「研究が間違っているから」ではなく、「学習者の集団や状況が違うと、どの発音の特徴が問題になるかも変わり得る」と捉えています。そのため、発音指導で何を優先するかは、一般論だけで決めるのではなく、学習者が実際に使う場面に合わせて、了解可能性に関わる要素を確かめながら決める必要があると述べています。
- 今後の展望:
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発音の指導内容を、その学習者集団の必要に合わせて調整するために、実際のやり取りの中で「どの発音の特徴が誤解を生んでいるのか」をデータにもとづいて見つけることが大切だと提案しています。
具体的には、会話を録音して宿題にし、その録音を会話分析の方法で見て、学習者自身が「聞き取りにくさ」や「誤解の原因」として何に注目しているかを明らかにするやり方が示されています。そうした証拠をもとに、教師はその集団にとって本当に必要な発音の優先順位を決めやすくなります。さらに、今後もさまざまな集団や場面で研究を続け、状況によって重要になる発音特徴が変わる可能性を検討すべきだとしています。
- 何のために?:
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英語 の発音は、 みたいにネイティブ ( その言語を小さいころから自然 に使っている人のことです。発音の目標 としてよく出てきますがこの文では相手に伝 わることも大事だと考えるために使われています。)
するだけが大事ではありません。
聞いた人が、わかることが大切です。
これを「わかりやすさ」と言います。
でも、何がいちばん大事かは、
まだ決まっていません。
そこで、この研究は2つを調べました。
1つめは、 の長さのちがいです。母音 ( 言葉の中で息を止めずにのばして言える音のことです。たとえば英語 の a i u e o のような音です。発音のちがいを考えるときに基本 になるので重要 です。)
たとえば、のばす音の長さです。
2つめは、言いはじめの息の強さです。
「パッ」と息が強いかどうかです。
この2つが、わかりやすさに
関係 するかを確 かめました。
- 何が分かったの?:
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の長さがちがっても、母音 ( 言葉の中で息を止めずにのばして言える音のことです。たとえば英語 の a i u e o のような音です。発音のちがいを考えるときに基本 になるので重要 です。)
わかりやすさはあまり変 わりません。
つまり、長さのちがいは、
聞き取りやすさにあまり関係 しません。
でも、息の強さのちがいは、
わかりやすさと強く関係 しました。
ふつうの息の出し方のほうが、
正しく聞き取られやすかったです。
だから、息の強さは大事だと言えます。
- どうやったの?:
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聞こえ方を調べるテストをしました。
英語 が上手な が2人いました。大学院生 ( 大学を卒業 したあとさらに専門 の勉強や研究をする学校に通う学生のことです。研究でどんな人が録音 したかを説明 するために重要 です。)
1人は韓国の男の人です。
もう1人はマレーシアの女の人です。
2人が、短い英単語 を40こ しました。録音 ( 声や音を機械 で記録 してあとで聞けるようにすることです。この研究では英単語 の音を集めて聞こえ方を調べるために必要 です。)
の長さと、息の強さを母音 ( 言葉の中で息を止めずにのばして言える音のことです。たとえば英語 の a i u e o のような音です。発音のちがいを考えるときに基本 になるので重要 です。) 変 えて、
わざと2しゅるい作って録音 しました。
聞く人は、日本の大学生20人です。
でスピーカー ( 録音 した音を大きく出して聞かせるための機械 です。みんなが同じ条件 で音を聞くために重要 です。) 単語 を聞きました。
そして、2つのつづりから、
聞こえたほうを選 びました。
答えは全部で800回分集まりました。
その を、計算してくらべました。データ ( 調べた結果 として集めた数や記録 のことです。この研究では答えを集めて計算しくらべる材料 になります。)
- 研究のまとめ:
-
このテストでは、
の長さより、母音 ( 言葉の中で息を止めずにのばして言える音のことです。たとえば英語 の a i u e o のような音です。発音のちがいを考えるときに基本 になるので重要 です。)
息の強さのほうが大事でした。
ただし、いつも同じとは限 りません。
人や場面がちがうと、
大事な点も変 わるかもしれません。
だから、教えるときは、
その場に合わせて決めるべきです。
ほんとうに必要 な発音を、
確 かめながら教えるのが大切です。
- これからどうする?:
-
どの発音でまちがいが起きるかを、
で見つけるのがよいです。データ ( 調べた結果 として集めた数や記録 のことです。この研究では答えを集めて計算しくらべる材料 になります。)
たとえば、会話を します。録音 ( 声や音を機械 で記録 してあとで聞けるようにすることです。この研究では英単語 の音を集めて聞こえ方を調べるために必要 です。)
それを家で見て、くわしく調べます。
学ぶ人が、どこを聞き取りにくいと
思っているかもわかります。
その結果 をもとに、先生は、
教える順 ばんを決めやすくなります。
これからも、いろいろな人や場面で、
同じように調べることが大切です。
- 著者名:
- O'Neal George
- 掲載誌名:
- 新潟大学言語文化研究
- 巻:
- 26
- ページ:
- 1 - 10
- 発行日:
- 2024-01
- 新潟大学学術リポジトリリンク:
- http://hdl.handle.net/10191/0002001188
