論文詳細
医歯学系
大学院医歯学総合研究科(医)
#学位論文
ホスファターゼ活性が保持されたInpp4a切断変異体による小脳表現型の減弱化
- AI解説:
- Phosphoinositides(PIPs)は膜脂質の中でも存在量が少ない一方、リン酸化と脱リン酸化が迅速に起こることで、空間的に限定されたシグナルを生み出し、膜輸送、細胞骨格の再編成、イオンチャネル活性などの過程を調節する。INPP4Aは脳で発現が豊富な inositol polyphosphate-4-phosphataseであり、PI(3,4)P2およびPI(3,4,5)P3から4′位リン酸を除去することで、ニューロンにおけるPI3K関連シグナルを形成する。これまでのマウス研究では、Inpp4aの破綻が出生後の神経変性を引き起こし得ることが示されており、ヒトでもINPP4A変異が、小脳萎縮を伴うものと伴わないものの双方を含む、多様な神経発達・神経変性表現型と関連することが報告されている。しかし、この表現型の多様性をもたらす機序は不明である。本研究は、異なるInpp4a変異アレルが別個の脳表現型を生む理由を説明するために、exon 1と2を欠くノックアウト系統(Inpp4aΔEx1,2)とexon 23を欠くノックアウト系統(Inpp4aΔEx23)という2つのKOマウス系統を直接比較し、転写産物/タンパク質アイソフォームおよび酵素(phosphatase)活性の違いが小脳の脆弱性と相関するかを検証した。
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医歯学系
大学院医歯学総合研究科(医)
#学位論文
ホスファターゼ活性が保持されたInpp4a切断変異体による小脳表現型の減弱化
AI解説
- 背景と目的:
-
Phosphoinositides(PIPs)は膜脂質の中でも存在量が少ない一方、リン酸化と脱リン酸化が迅速に起こることで、空間的に限定されたシグナルを生み出し、膜輸送、細胞骨格の再編成、イオンチャネル活性などの過程を調節する。INPP4Aは脳で発現が豊富な inositol polyphosphate-4-phosphataseであり、PI(3,4)P2およびPI(3,4,5)P3から4′位リン酸を除去することで、ニューロンにおけるPI3K関連シグナルを形成する。これまでのマウス研究では、Inpp4aの破綻が出生後の神経変性を引き起こし得ることが示されており、ヒトでもINPP4A変異が、小脳萎縮を伴うものと伴わないものの双方を含む、多様な神経発達・神経変性表現型と関連することが報告されている。しかし、この表現型の多様性をもたらす機序は不明である。本研究は、異なるInpp4a変異アレルが別個の脳表現型を生む理由を説明するために、exon 1と2を欠くノックアウト系統(Inpp4aΔEx1,2)とexon 23を欠くノックアウト系統(Inpp4aΔEx23)という2つのKOマウス系統を直接比較し、転写産物/タンパク質アイソフォームおよび酵素(phosphatase)活性の違いが小脳の脆弱性と相関するかを検証した。
- 主要な発見:
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2つのKO系統はいずれも線条体の病理を共有していたが、小脳の転帰と発作関連行動は顕著に異なった。Inpp4aΔEx23 KOマウスでは、Purkinje細胞の喪失、ミクログリア活性化、強いアポトーシスマーカー(cleaved-Caspase3およびssDNA)を伴う明確な小脳萎縮が認められ、特にP7では顆粒細胞層で顕著であり、一部のcl-Casp3陽性Purkinje細胞もみられた。対照的に、Inpp4aΔEx1,2 KOマウスは、小脳の大きさが実質的に正常で、小脳において同程度のPurkinje細胞変性やミクログリア活性化は認められなかった。ただし、この系統でも線条体変性に加え、痛み誘発性てんかん(本研究でこの系統の新しい表現型として報告)がみられた。分子解析では、両変異体でInpp4a mRNAの減少と低いタンパク質量が示されたが、機能アッセイでは重要な相違が明らかになった。すなわち、Inpp4aΔEx1,2アレルがコードするN末端欠失型Inpp4aタンパク質は、PtdIns(3,4)P2に対するphosphatase活性を相当程度保持しており(野生型に比べてわずかに低下するのみ)、一方でInpp4aΔEx23がコードするタンパク質は活性を欠いていた。Inpp4a欠損に関連するシグナル変化もアレル依存的であり、phospho-Akt免疫反応性はInpp4aΔEx23 KOマウスの変性するPurkinje細胞軸索で増加したが、野生型またはInpp4aΔEx1,2 KOの小脳ではみられなかった。さらに、野生型組織におけるRNA-seq/qPCRは、小脳で豊富なalternative isoformの使用(特に、推定transmembrane domainを含むexon 24を取り込んだbeta isoform)を明らかにし、この小脳アイソフォーム(「Inpp4a CB」として検討)が、哺乳類細胞においてPtdIns(3,4)P2に対するphosphatase活性を欠くことを示唆した。
- 方法論:
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著者らは、C57BL/6背景で維持した2つのInpp4a変異マウス系統で、表現型および分子の並行比較を行った。対象はInpp4aΔEx1,2(Inpp4atm1Tsak)と、Inpp4afloxをActb-iCre-IRES-GFPによりCre依存的に組換えて作製したexon 23欠失アレル(Inpp4aΔEx23)である。行動表現型評価として、運動異常の観察と痛み誘発性てんかんの記録を行い、加えてrotarod試験を実施した。神経解剖学的および細胞病理は、10-μm厚のパラフィン脳切片に対する組織学および免疫組織化学で評価し、Purkinje細胞(Calbindin)、ミクログリア(Iba1)、アストロサイト(GFAP)、アポトーシス(cleaved-Caspase3、ssDNA)、経路活性化(phospho-Akt)のマーカーを用いた。マーカー陽性シグナルの定量はMetaMorphで行い、領域面積で正規化したうえで、各マウスにつき3切片、各群少なくとも3匹を用いた。Inpp4a発現はin situ hybridizationとqPCR(Gapdh正規化のΔΔCT)により評価し、さらにCNS各領域でwestern blottingを行った。転写産物アイソフォームの特性化として、P14の野生型前脳と小脳でRNA-seqを実施し、qPCRによりexon使用/アイソフォーム(Ex22 total、Ex24 beta、Ex25 alpha)を検証した。機能酵素学は、FLAGタグ付きInpp4aコンストラクト(野生型、小脳アイソフォーム、ΔEx1,2、ΔEx23)をHEK293T細胞で発現させ、anti-FLAGアフィニティでタンパク質を精製し、LC-MS/MSでPtdIns(3,4)P2の変換を測定した。これにはPdIns(3)Pをレジオアイソマー特異的に検出するためのPRMC-MSも含めた。発現タンパク質の細胞内局在は、NIH3T3細胞でanti-FLAGおよびα-Tubulinを用いた免疫細胞化学により評価した。最後に、小脳特異的要件を検証するため、En1-Cre;Inpp4a flox/floxの条件付きKOマウスを作製し、生存、運動失調(ataxia)、および領域別の神経病理を調べた。
- 結論と意義:
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本研究は、Inpp4a変異体間で小脳表現型が分岐する理由として、アレル依存的にINPP4Aのphosphatase活性が保持されるか失われるかが、妥当な機序的説明になり得ると結論づけた。具体的には、Inpp4aΔEx1,2マウスでは、alternative translation initiationにより、これまで認識されていなかったN末端欠失型Inpp4aタンパク質が産生される。この欠失型はN末端C2 domainの一部を欠くにもかかわらず、PI(3,4)P2に対する酵素活性を保持しており、著者らはこれが小脳変性を軽減し、「減弱した(attenuated)」小脳表現型につながる可能性が高いと論じている。これに対して、exon 23の欠失はphosphatase活性を消失させ、強い小脳アポトーシス、Purkinje細胞喪失、ミクログリア活性化、ならびに変性するPurkinje軸索でのphospho-Akt増加と関連していた。En1-Cre条件付きKOは、Inpp4aが小脳で直接必要であることも支持した。すなわち、小脳/中脳系譜で標的欠失させると、線条体のミクログリア活性化は保たれる一方で、重度の小脳萎縮、運動失調、早期致死(4–5週)が生じ、Inpp4aΔEx23 KOマウスでみられる小脳表現型の主因が小脳でのInpp4a破綻であることを示唆した。総合すると、これらの結果は、ヒトのINPP4A関連疾患における症状の多様性を理解するための実験的根拠に基づく枠組みを提供し、変異の位置と残存酵素機能が神経病理学的転帰を大きく変え得る点を強調している。
- 今後の展望:
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著者らは、この2つの変異マウス系統を、症状が多様なヒトINPP4A関連疾患の治療戦略を開発するための相補的モデルとして位置づけるとともに、データから提起される複数の機序的課題を強調している。第一に、小脳は特徴的なInpp4a splice variantを発現しており、その中には推定transmembrane domainを含む小脳で豊富なbeta isoformがある。このアイソフォームはアッセイでPtdIns(3,4)P2に対するphosphatase活性が検出されなかったため、本論文はその非酵素的機能を明確にする必要性を指摘している。議論では、phosphatase活性を超えた役割(例:シナプス調節、あるいはストレス応答やDNA修復などの核内機能)を可能性として提案しているが、確立した結論ではない。第二に、本研究は、alternative translation initiationが意図された「null」アレルをhypomorphicアレルへ変換し、表現型の重症度を規定し得ることを示唆しており、これは設計されたマウスKOと、切断型でも機能性タンパク質の産生が許容され得るヒトのnonsense変異の解釈の双方にとって重要である。第三に、培養細胞で観察されたΔEx1,2欠失型タンパク質の凝集様の異常局在は、C2 domain喪失が細胞内標的化に与える影響や、autophagy関連機構との相互作用が細胞病理に寄与するかどうかを、さらに検討する動機となる。最後に、Inpp4aΔEx23 KOマウスの変性Purkinje軸索でphospho-Aktシグナルが観察されたことから、本研究は、小脳内の軸索変性に関する今後の機序研究で、細胞内シグナル変化を候補経路として検討すべきだと示している。
- 背景と目的:
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ホスホイノシチド(PIPs)という脂質は細胞の膜に少しだけ存在しますが、リン酸が付いたり外れたりする変化がすばやく起こるため、細胞の中の特定の場所で合図(シグナル)を出す役割を持っています。これにより、物質を運ぶ仕組みや細胞の形づくり、イオンチャネルのはたらきなどが調節されます。
という酵素は脳で多く作られており、INPP4A ( PI(3,4)P2やPI(3,4,5)P3から特定のリン酸を外す酵素で、脳で多く働きます。神経のシグナル調節に重要です。) やPI(3,4)P2 ( PIPsの一種で、PI3Kなどの反応で作られ、細胞の成長や神経の発達に関わる合図になります。量の調節が重要です。) から特定のリン酸を外すことで、神経細胞のPI(3,4,5)P3 ( PIPsの一種で、受容体刺激などで増え、細胞内のシグナルを強める役割があります。PI(3,4)P2の材料にもなります。) に関わるシグナルを整えます。マウスではInpp4aがうまく働かないと生後に神経が傷むことがあり、人でもINPP4Aの変異が、小脳が縮む場合と縮まない場合の両方を含むさまざまな症状と関係すると報告されています。しかし、なぜ変異の種類で症状が変わるのかはよく分かっていません。PI3K ( PIPsにリン酸を付ける酵素群で、細胞増殖や生存に関わるシグナルを開始します。)
そこで本研究では、Inpp4aの異なる欠損( 1と2を欠く型と、exon 23を欠く型)をもつ2種類のノックアウトマウスを直接比べ、作られるexon ( 遺伝子のうち、最終的にmRNAとして残りタンパク質情報になる部分です。どのexonが欠けるかでタンパク質の性質が変わります。) やタンパク質の形、そして酵素活性の違いが、小脳が傷つきやすいかどうかと関係するのかを調べました。mRNA ( 遺伝子の情報を写し取った分子で、タンパク質を作る設計図になります。量が減るとタンパク質も減りやすいです。)
- 主要な発見:
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2種類のノックアウトマウスはどちらも
で似た病変を示しましたが、小脳の変化と線条体 ( 大脳の深い部分にある領域で、運動や行動の調整に関わります。ここが傷むと運動異常が起きます。) に関係する行動は大きく違いました。発作 ( 脳の神経活動が一時的に乱れて起こる症状です。てんかん発作などを含みます。)
23を欠くInpp4aΔEx23では、小脳がはっきり縮み、exon ( 遺伝子のうち、最終的にmRNAとして残りタンパク質情報になる部分です。どのexonが欠けるかでタンパク質の性質が変わります。) の減少、Purkinje細胞 ( 小脳の中心的な神経細胞で、運動のなめらかさを調節します。失われると運動失調につながります。) の活性化、細胞死の強いサイン(ミクログリア ( 脳内の免疫に関わる細胞です。神経の傷害があると活性化して炎症反応に関与します。) やcleaved-Caspase3 ( アポトーシスが進んでいる細胞で増える代表的な目印です。細胞死の検出に使われます。) )が見られました。特に生後7日ごろ(P7)には顆粒細胞層で細胞死が目立ち、一部のPurkinje細胞にも細胞死のサインがありました。ssDNA ( 細胞死などでDNAが傷んだときに検出されやすい状態で、アポトーシスの指標として使われます。)
一方、exon 1と2を欠くInpp4aΔEx1,2では、小脳の大きさはほぼ正常で、Purkinje細胞の変性やミクログリア活性化も同程度には起きていませんでした。ただしこの系統では、線条体の変性に加えて、痛みをきっかけに起こるてんかんが見られました。
分子レベルでは両方ともInpp4aの とタンパク質量は減っていましたが、酵素としての働きが違いました。Inpp4aΔEx1,2が作るN末端が欠けたInpp4aタンパク質は、PtdIns(3,4)P2に対する酵素活性をかなり保っていましたが、Inpp4aΔEx23が作るタンパク質は酵素活性がありませんでした。さらに、Aktの活性化(mRNA ( 遺伝子の情報を写し取った分子で、タンパク質を作る設計図になります。量が減るとタンパク質も減りやすいです。) )は、Inpp4aΔEx23で変性しているPurkinje細胞のphospho-Akt ( Aktというタンパク質がリン酸化されて活性化した状態を示す目印です。細胞内シグナルの強さを反映します。) で増えていましたが、野生型やInpp4aΔEx1,2の小脳では見られませんでした。軸索 ( ニューロンが信号を遠くへ送るための長い突起です。ここが傷むと情報伝達に大きな影響が出ます。)
また野生型の解析から、小脳では特有の (特にexon 24を含み、膜に関わる部分を持つと推定されるbeta型)が多いことが分かり、この小脳アイソフォーム(Inpp4a CB)は細胞実験でPtdIns(3,4)P2に対する酵素活性がない可能性が示されました。アイソフォーム ( 同じ遺伝子から作られる、少し形の違うタンパク質(またはmRNA)の種類です。働きや場所が変わることがあります。)
- 方法論:
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2種類のInpp4a変異マウス(Inpp4aΔEx1,2とInpp4aΔEx23)を同じ条件で飼育し、行動、脳の形や細胞の状態、分子の変化を並行して調べました。
行動は運動の異常の観察、 の記録、痛み誘発性てんかん ( 痛み刺激がきっかけで発作が起こるタイプのてんかんです。原因となる神経回路の理解が重要です。) で評価しました。脳の組織は薄切して染色し、rotarod試験 ( 回転する棒の上にどれだけ長く乗れるかで運動機能を測る検査です。運動失調の評価に使われます。) 、Purkinje細胞 ( 小脳の中心的な神経細胞で、運動のなめらかさを調節します。失われると運動失調につながります。) 、アストロサイト、細胞死、Akt活性化などの指標となるマーカーで免疫染色し、画像解析で定量しました。ミクログリア ( 脳内の免疫に関わる細胞です。神経の傷害があると活性化して炎症反応に関与します。)
遺伝子発現はin situ hybridizationや 、タンパク質量はqPCR ( 特定のmRNA量を高感度に測る方法です。遺伝子発現の増減を定量できます。) で評価しました。さらにwestern blotting ( タンパク質量を測る実験法です。分子量の違いからアイソフォームの存在も分かります。) で小脳と前脳のRNA-seq ( 細胞や組織で作られているmRNAを網羅的に調べる方法です。アイソフォームの違いも解析できます。) の違いを調べました。アイソフォーム ( 同じ遺伝子から作られる、少し形の違うタンパク質(またはmRNA)の種類です。働きや場所が変わることがあります。)
酵素活性は、培養細胞にInpp4aタンパク質を作らせて精製し、PtdIns(3,4)P2がどれだけ変換されるかを質量分析で測定しました。加えて、小脳での必要性を確かめるため、小脳で選んでInpp4aを欠損させる マウスも作りました。条件付きノックアウト ( 体の一部の組織や特定の時期だけ遺伝子を欠損させる方法です。どの場所で遺伝子が必要かを調べられます。)
- 結論と意義:
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Inpp4aの変異によって小脳の症状が大きく変わる理由として、「酵素活性が残るかどうか」が重要な説明になり得ると結論づけました。
Inpp4aΔEx1,2では、別の開始位置から翻訳が始まることで、N末端が欠けたInpp4aタンパク質が作られ、 の一部が欠けていてもC2 domain ( 脂質(PIPsなど)に結合しやすいタンパク質の部分です。タンパク質が細胞内の正しい場所に行くのに重要です。) への酵素活性を保っていました。これが小脳の変性を弱め、軽い小脳表現型につながる可能性が高いと考えられます。PI(3,4)P2 ( PIPsの一種で、PI3Kなどの反応で作られ、細胞の成長や神経の発達に関わる合図になります。量の調節が重要です。)
一方、Inpp4aΔEx23では酵素活性が失われ、強い小脳の細胞死、 喪失、Purkinje細胞 ( 小脳の中心的な神経細胞で、運動のなめらかさを調節します。失われると運動失調につながります。) 活性化、Purkinje細胞のミクログリア ( 脳内の免疫に関わる細胞です。神経の傷害があると活性化して炎症反応に関与します。) でのAkt活性化の増加と結びついていました。小脳だけでInpp4aを欠損させる軸索 ( ニューロンが信号を遠くへ送るための長い突起です。ここが傷むと情報伝達に大きな影響が出ます。) でも重い条件付きノックアウト ( 体の一部の組織や特定の時期だけ遺伝子を欠損させる方法です。どの場所で遺伝子が必要かを調べられます。) や運動失調が起きたため、Inpp4aは小脳で直接重要だと支持されました。小脳萎縮 ( 小脳の体積が小さくなり、細胞が減るなどの変化が起きた状態です。運動の調節に影響します。)
これらは、人の 関連疾患で症状が多様になる理由を考えるうえで、「変異の場所」と「残る酵素機能」が結果を大きく変えうることを示しています。INPP4A ( PI(3,4)P2やPI(3,4,5)P3から特定のリン酸を外す酵素で、脳で多く働きます。神経のシグナル調節に重要です。)
- 今後の展望:
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著者らは、この2種類のマウスを、人の
関連疾患の治療法を考えるための補い合うモデルとして使えると述べています。INPP4A ( PI(3,4)P2やPI(3,4,5)P3から特定のリン酸を外す酵素で、脳で多く働きます。神経のシグナル調節に重要です。)
今後の課題として、小脳で多いbeta型 は酵素活性が見えなかったため、酵素以外の役割が何かを調べる必要があります。また、ノックアウトの設計でも、別の開始位置からタンパク質が作られて「完全な欠損」にならず、症状の強さが変わる可能性がある点は重要です。さらに、ΔEx1,2の欠失型タンパク質が細胞内で集まりやすいように見えたことから、細胞内での行き先の異常やアイソフォーム ( 同じ遺伝子から作られる、少し形の違うタンパク質(またはmRNA)の種類です。働きや場所が変わることがあります。) との関係も検討課題になります。最後に、ΔEx23で見られたAkt活性化は、オートファジー ( 細胞が自分の中の不要物を分解して再利用する仕組みです。異常があるとタンパク質のたまりや細胞障害に関わります。) のPurkinje細胞 ( 小脳の中心的な神経細胞で、運動のなめらかさを調節します。失われると運動失調につながります。) が傷む仕組みを調べるうえでの重要な手がかりになるとしています。軸索 ( ニューロンが信号を遠くへ送るための長い突起です。ここが傷むと情報伝達に大きな影響が出ます。)
- 何のために?:
-
細胞 には、うすい「まく」があります。
そのまくには、少しだけ油のような物があります。
それが という物です。PIPs ( 細胞 の「まく」にある油のような小さな成分 で細胞 の中の合図を出すのに使われます:どこへ物を運ぶかや細胞 の形を変 えるかなどを決めるために重要 です)
PIPsは、合図を出すしごとをします。
合図で、物をはこぶことなどが決まります。
たとえば、細胞 の形も変 わります。
脳 では、 というたんぱくが大事です。INPP4A ( PIPsの形を少し変 えるたんぱくで脳 の神経 の合図をととのえるはたらきがあります:こわれたり変化 したりすると脳 の調子がくずれて病気に関係 するため重要 です)
これは、PIPsの形を少し変 えます。
そうして、神経 の合図をととのえます。
マウスでは、これがこわれると困 ります。
生まれたあとに、脳 がいたむことがあります。
人でも、INPP4Aの変化 が病気に関係 します。
でも、なぜ症状 がちがうかは不明 です。
そこで、2種類 のマウスを比 べました。
がこわれやすいかを調べました。小脳 ( 脳 の一部で体の動きをうまく調整するはたらきがあります:小脳 がこわれると歩き方や動き方に問題が出るため重要 です)
体の中の合図のちがいも見ました。
- 何が分かったの?:
-
2
種類 のマウスは、にた所もありました。
でも、 の小脳 ( 脳 の一部で体の動きをうまく調整するはたらきがあります:小脳 がこわれると歩き方や動き方に問題が出るため重要 です) 変化 は大きくちがいました。
がないマウスは、Ex23 ( 遺伝子 の中の部分を表す名前でこの研究ではINPP4Aの別 の部分を指します:この部分がないとたんぱくが働 けず小脳 がこわれやすくなるため重要 です) 小脳 が小さくなりました。
小脳 の大事な細胞 が、へりました。
細胞 をそうじする細胞 も、元気になりました。
細胞 が死ぬサインも、強く出ました。
ごろは、生後7日 ( 生まれてから7日目ごろという時期を示 す言葉です:いつ症状 や変化 が強く出るかを比 べるために重要 です) 特 に が多めでした。細胞死 ( 細胞 が自分で死ぬしくみのことで体の中で起きることがあります:脳 で多く起きると細胞 がへって働 きが弱くなるため重要 です)
と2がないマウスは、Ex1 ( 遺伝子 の中の部分を表す名前でこの研究ではINPP4Aの1番目の部分を指します:どの部分がなくなるかでたんぱくの働 きが変 わるため重要 です) 小脳 はほぼ正常 でした。
大事な細胞 のいたみも、少なめでした。
でも、痛 みで起きる が見られました。けいれん ( 体が自分の意思と関係 なく急にふるえたり動いたりする状態 です:脳 の合図がうまくいかないと起きることがあり症状 を知る手がかりになります)
どちらも、たんぱくの量 はへっていました。
ただし、はたらきはちがいました。
Ex1,2のたんぱくは、少しは働 けました。
Ex23のたんぱくは、働 けませんでした。
Ex23では、別 の合図が強くなる所もありました。
小脳 には、特別 な型 が多いことも分かりました。
その型 は、別 の役目があるかもしれません。
- どうやったの?:
-
2
種類 のマウスを、同じように育てました。
そして、行動や脳 のようすを調べました。
歩き方や動き方を、よく見ました。
痛 みで起きる もけいれん ( 体が自分の意思と関係 なく急にふるえたり動いたりする状態 です:脳 の合図がうまくいかないと起きることがあり症状 を知る手がかりになります) 記録 しました。
回る棒 にのるテストもしました。
脳 をうすく切って、色をつけて見ました。
大事な細胞 やそうじの細胞 を調べました。
細胞 が死ぬサインも調べました。
たんぱくや合図の変化 も調べました。
も作り、小脳 だけで消すマウス( あるたんぱくの働 きを小脳 だけでなくしたマウスのことです:どの場所でそのたんぱくが必要 かを確 かめるため重要 です) 確 かめました。
- 研究のまとめ:
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症状 のちがいは、たんぱくが働 くかが大事です。
,2のマウスは、少しEx1 ( 遺伝子 の中の部分を表す名前でこの研究ではINPP4Aの1番目の部分を指します:どの部分がなくなるかでたんぱくの働 きが変 わるため重要 です) 働 きがのこりました。
そのため、 のこわれ方が弱いようです。小脳 ( 脳 の一部で体の動きをうまく調整するはたらきがあります:小脳 がこわれると歩き方や動き方に問題が出るため重要 です)
のマウスは、Ex23 ( 遺伝子 の中の部分を表す名前でこの研究ではINPP4Aの別 の部分を指します:この部分がないとたんぱくが働 けず小脳 がこわれやすくなるため重要 です) 働 きがなくなりました。
だから、小脳 で が強く起きました。細胞死 ( 細胞 が自分で死ぬしくみのことで体の中で起きることがあります:脳 で多く起きると細胞 がへって働 きが弱くなるため重要 です)
小脳 だけで消しても、重い症状 が出ました。
つまり、 はINPP4A ( PIPsの形を少し変 えるたんぱくで脳 の神経 の合図をととのえるはたらきがあります:こわれたり変化 したりすると脳 の調子がくずれて病気に関係 するため重要 です) 小脳 でとても大事です。
人の病気でも、変化 の場所が大事だと分かります。
のこる働 きで、症状 が大きく変 わりそうです。
- これからどうする?:
-
この2
種類 のマウスは、病気の研究に役立ちます。
に多い小脳 ( 脳 の一部で体の動きをうまく調整するはたらきがあります:小脳 がこわれると歩き方や動き方に問題が出るため重要 です) 特別 な型 の役目を調べる必要 があります。
たんぱくが少し作られると、症状 が変 わります。
だから、実験 の作り方にも気をつけます。
,2のたんぱくは、集まりやすいかもしれません。Ex1 ( 遺伝子 の中の部分を表す名前でこの研究ではINPP4Aの1番目の部分を指します:どの部分がなくなるかでたんぱくの働 きが変 わるため重要 です)
細胞 の中での動きも調べる課題 です。
で強くなった合図も、大事な手がかりです。Ex23 ( 遺伝子 の中の部分を表す名前でこの研究ではINPP4Aの別 の部分を指します:この部分がないとたんぱくが働 けず小脳 がこわれやすくなるため重要 です)
小脳 の細胞 がいたむ理由を、もっと調べます。
- 著者名:
- チャン ダン ミン
- 新潟大学学術リポジトリリンク:
- http://hdl.handle.net/10191/0002001407
