論文詳細
医歯学系
大学院医歯学総合研究科(医)
#学位論文
中高年及び高齢女性における脊椎矢状面アライメント不良がロコモティブシンドロームと身体機能に及ぼす影響
- AI解説:
- 成人脊柱変形(adult spinal deformity: ASD)、とりわけ全体的な矢状面アライメント不良(global sagittal malalignment)は、腰痛(low back pain: LBP)や健康関連QOL(health-related quality of life: HRQOL)の低下と関連し、その影響は主要な慢性疾患に匹敵するとされることから注目されている。それにもかかわらず、地域在住の中高年者における日常の移動能力アウトカムに関して、矢状面アライメント不良がもつ臨床的意味は、日常生活動作や歩行能力との関係を含め、十分には検討されてこなかった。これと並行して、日本では移動機能の段階的な低下としてロコモティブシンドローム(locomotive syndrome: LS)の概念が推進され、標準化されたテストや質問票で評価されている。また、サルコペニアは日常機能に影響する筋疾患として定義されている。矢状面アライメント不良に関連する慢性LBPは一般的であるため、著者らは、矢状面アライメントがLSおよびサルコペニアとどのように関連するかを明らかにすることが、予防や健康寿命の観点から有用になり得ると述べている。そこで本研究は、地域在住の中高年女性を対象に、全体的な矢状面アライメントがLS、サルコペニア、LBP関連障害、HRQOL、ならびに客観的な身体パフォーマンスと関連するかを検討することを目的とした。
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医歯学系
大学院医歯学総合研究科(医)
#学位論文
中高年及び高齢女性における脊椎矢状面アライメント不良がロコモティブシンドロームと身体機能に及ぼす影響
AI解説
- 背景と目的:
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成人脊柱変形(adult spinal deformity: ASD)、とりわけ全体的な矢状面アライメント不良(global sagittal malalignment)は、腰痛(low back pain: LBP)や健康関連QOL(health-related quality of life: HRQOL)の低下と関連し、その影響は主要な慢性疾患に匹敵するとされることから注目されている。それにもかかわらず、地域在住の中高年者における日常の移動能力アウトカムに関して、矢状面アライメント不良がもつ臨床的意味は、日常生活動作や歩行能力との関係を含め、十分には検討されてこなかった。これと並行して、日本では移動機能の段階的な低下としてロコモティブシンドローム(locomotive syndrome: LS)の概念が推進され、標準化されたテストや質問票で評価されている。また、サルコペニアは日常機能に影響する筋疾患として定義されている。矢状面アライメント不良に関連する慢性LBPは一般的であるため、著者らは、矢状面アライメントがLSおよびサルコペニアとどのように関連するかを明らかにすることが、予防や健康寿命の観点から有用になり得ると述べている。そこで本研究は、地域在住の中高年女性を対象に、全体的な矢状面アライメントがLS、サルコペニア、LBP関連障害、HRQOL、ならびに客観的な身体パフォーマンスと関連するかを検討することを目的とした。
- 主要な発見:
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地域在住女性361名(平均年齢 71.1 ± 6.0歳)において、サルコペニアの有病率は3.6%(13/361)、LSは43.8%(ステージ1~3の合計、158/361)、中等度~重度のLBP関連障害(ODI ≥ 20%)は32.7%(118/361)であった。脊柱傾斜角(spinal inclination angle: SIA)で定量化した全体的な矢状面アライメントは、LS重症度(GLFS-25: r = 0.312)、LBP関連障害(ODI%: r = 0.284)と相関し、とくに歩行関連機能(TUG: r = 0.501)との相関が強かった。これらの関連は年齢で調整後も維持された(GLFS-25 r′ = 0.292、ODI% r′ = 0.267、TUG r′ = 0.453)。SIAはLSステージが高いほど段階的に悪化した一方で、本サンプルではサルコペニアの有無が矢状面アライメントに測定可能な影響を与えることはなかった。ROC(receiver-operating characteristic)解析では、ODI ≥ 20%(AUC 0.64、感度52%、特異度70%)およびLSステージ ≥ 2(AUC 0.69、感度59%、特異度68%)の検出に対し、同一のSIAカットオフ(5°)が同定された。SIA ≥ 5°(後弯群;n = 133)の参加者は、SIA < 5°(n = 228)と比べて、自己申告によるHRQOLが低く、筋力、歩行能力、体幹バランスに関連する身体パフォーマンスも低かった。
- 方法論:
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本研究は横断研究であり、2019年に日本・新潟県阿賀野市の水中運動プログラム参加者を対象に実施されたロコモ検診に基づく。受検者403名のうち、必要な測定をすべて完了した53~88歳の女性361名を解析対象とした。体組成(四肢骨格筋量を含む)はbioelectrical impedance(MC-780A-N, Tanita)で測定し、body mass index(BMI)とskeletal muscle mass index(SMI)を算出した。サルコペニアはAWGS 2019の女性基準により、握力(grip strength: GS)< 18 kgかつSMI < 5.7 kg/m²で定義した。全体的な矢状面アライメントは、立位中間位でSpinal Mouse®を用いて非侵襲的に評価し、主要指標としてSIA(T1~S1)を用い、胸椎後弯角(thoracic kyphosis angle: TKA)と腰椎前弯角(lumbar lordosis angle: LLA)も追加で測定した。身体パフォーマンスは、GS、timed up-and-go(TUG;3 m)、最大ストライド長、片脚立位時間(one-leg standing time: OLS;最大60 s)で評価した。LSはGLFS-25質問票(十分な回答率として83%、250/302が報告)で評価し、JOAの閾値によりステージ0およびステージ1~3に分類した。LBP関連障害はOswestry Disability Index(ODI)で測定し、ODI ≥ 20%を中等度~重度障害の閾値とした。HRQOLはSF-8(PCSおよびMCS)で評価した。統計解析として、ノンパラメトリックな群間比較(Mann–Whitney U、Kruskal–WallisにBonferroni補正)、Pearson相関および年齢調整の偏相関、ROC解析によるSIAカットオフの導出を行い、同定したカットオフで定義した群間比較を行った。
- 結論と意義:
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本研究は、地域在住の中高年女性において、前方への全体的矢状面アライメント不良(SIA高値)が、移動機能の悪化(GLFS-25高値およびLSステージ進行)、LBP関連障害の増大(ODI%高値)、ならびに客観的身体パフォーマンスの低下、とくにTUGの遅延と関連することを結論づけている。著者らは、LSの進行と並行して矢状面アライメントが悪化した点を強調し、LSステージ分類が脊柱姿勢に伴う機能低下を反映する臨床的に意味のある枠組みであることを支持すると述べている。実務的に重要な結果として、SIA ≥ 5°が、臨床的に重要なLBP関連障害(ODI ≥ 20%)と、より進行したLS(ステージ ≥ 2)の双方に関連する閾値として同定され、中等度の識別能(AUC 0.64–0.69)を示した。これに対し、GS低値とSMI低値で定義したサルコペニアは、本サンプルでは矢状面アライメント不良と関連しなかったが、著者らはサルコペニア有病率が低いことを踏まえ慎重に解釈している。さらに著者らは、矢状面変形の健康負担と機能的帰結は他の慢性疾患に匹敵する注意を要し、非侵襲的に測定したSIAが、この集団におけるHRQOL低下および移動関連機能の障害を示す指標となり得ると主張している。
- 背景と目的:
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成人になると、背骨の形が変わって体が前に傾いてしまうことがあり、これが腰の痛みや生活の質の低下につながると注目されています。しかし、地域で普通に暮らしている中高年の人たちについて、こうした「姿勢のずれ」が、日常生活での動きや歩く力とどれくらい関係するのかは、十分に調べられていませんでした。
一方、日本では、年齢とともに移動する力が落ちていく状態を として評価する考え方が広まっています。また、筋肉が減って日常生活に支障が出るロコモティブシンドローム ( 骨や関節、筋肉などの衰えで移動する力が低下した状態です。進むと、外出や日常生活が難しくなるため、早めの気づきが大切です。) も重要な問題です。サルコペニア ( 加齢などで筋肉量や筋力が低下し、日常生活に支障が出る状態です。転倒や要介護のリスクに関係します。)
そこでこの研究は、地域で暮らす中高年女性を対象に、体が前に傾くような背骨の姿勢が、ロコモの進み具合、サルコペニア、 による生活への支障、生活の質、そして実際の体の動きのテスト結果と関係するかを調べることを目的としました。腰痛 ( 腰のあたりに続く痛みのことです。長引くと、日常生活の動作や気持ちの面にも影響します。)
- 主要な発見:
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地域で暮らす女性361人(平均71.1歳)を調べたところ、
は3.6%、ロコモは43.8%、サルコペニア ( 加齢などで筋肉量や筋力が低下し、日常生活に支障が出る状態です。転倒や要介護のリスクに関係します。) による生活への支障が中等度以上の人は32.7%でした。腰痛 ( 腰のあたりに続く痛みのことです。長引くと、日常生活の動作や気持ちの面にも影響します。)
背骨全体がどれだけ前に傾いているかを表す数値は、ロコモの重さ、腰痛による支障の大きさと関係していました。特に、立ち上がって歩いて戻る動作の速さに強く関係していました。この関係は年齢の影響を考慮しても残りました。
また、ロコモの段階が進むほど、背骨の前傾は段階的に悪くなりました。一方で、この調査対象では、サルコペニアがあるかどうかで背骨の前傾に明確な違いは見られませんでした。
さらに、背骨の前傾が5°以上かどうかが、腰痛の支障が中等度以上であることや、進んだロコモであることを見つける目安になりました。5°以上の人は、生活の質が低く、筋力や歩行、体のバランスに関するテスト成績も低い傾向がありました。
- 方法論:
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この研究は、ある時点での状態を調べて関係を分析する研究です。2019年に新潟県阿賀野市で、水中運動プログラムに参加している人向けの検診データを使いました。対象は必要な測定をすべて行えた53〜88歳の女性361人でした。
体の筋肉量などは体組成計で測り、 や筋肉量の基準を使って握力 ( 手で握る力のことで、全身の筋力の目安としてよく使われます。サルコペニアの判定にも利用されます。) を判定しました。背骨の前傾などの姿勢は、背中に沿わせて測る機器で、立った姿勢のまま体への負担が少ない方法で測定しました。サルコペニア ( 加齢などで筋肉量や筋力が低下し、日常生活に支障が出る状態です。転倒や要介護のリスクに関係します。)
体の動きは、握力、立ち上がって3m歩いて戻るテスト、できるだけ大股で踏み出す距離、片足立ち時間で評価しました。ロコモは質問票で段階分けし、 の生活への影響は専用の質問票で評価しました。生活の質も別の質問票で評価し、統計的に関連を調べました。腰痛 ( 腰のあたりに続く痛みのことです。長引くと、日常生活の動作や気持ちの面にも影響します。)
- 結論と意義:
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地域で暮らす中高年女性では、体が前に傾くような背骨の姿勢が強いほど、移動する力が落ちてロコモが進みやすく、
による生活の支障も大きく、実際の動作能力(特に立ち上がって歩くテスト)が低いことが示されました。腰痛 ( 腰のあたりに続く痛みのことです。長引くと、日常生活の動作や気持ちの面にも影響します。)
また、背骨の前傾が5°以上は、腰痛の支障が中等度以上であることや、ロコモが進んでいることの目安になり得ると示されました。背骨の姿勢を負担の少ない方法で測ることが、生活の質や動きやすさの低下を早めに見つける手がかりになる可能性があります。
一方で、 と背骨の前傾の関係は、この研究でははっきりしませんでした(サルコペニアの人が少なかったため、結論は慎重に考える必要があります)。サルコペニア ( 加齢などで筋肉量や筋力が低下し、日常生活に支障が出る状態です。転倒や要介護のリスクに関係します。)
- 何のために?:
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大人になると、せなかが曲がる人がいます。
体が前にかたむくこともあります。
すると、こしが痛 くなることがあります。
くらしが大変 になることもあります。
でも、どれくらい関係 するかは、まだよく でした。不明 ( まだはっきり分かっていないことです。研究では、調べた結果 でも原因 まで言えないときに使います。分からない点を示 すことで、次に何を調べるべきかが分かるので重要 です。)
日本では、歩く力がへることを見ます。
これを「 」とよぶ考えがあります。ロコモ ( ロコモティブシンドロームのことです。骨 や関節 や筋肉 などが弱って、立つ歩くといった動きがしにくくなった状態 をいいます。体の動く力をまとめて考える言葉で、進むと転びやすくなったり生活で困 りごとが増 えたりするため重要 です。)
また、筋肉 がへることも問題です。
これを「 」といいます。サルコペニア ( 年をとることなどで筋肉 の量 や筋力 がへってしまう状態 のことです。例 としては、にぎる力が弱い、歩くのが遅 くなるなどにあらわれます。筋肉 が減 ると動く力が落ち、けがや生活の不便 につながりやすいので重要 です。)
この研究は、中高年の女性 を調べました。
せなかのかたむきと、体の力を見ました。
ロコモや筋肉 、こしの痛 みも調べました。
くらしのしやすさとも比 べました。
そして、体のテストとも比 べました。
- 何が分かったの?:
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地域 でくらす女性 361人を調べました。
年れいの は、71.1さいでした。平均 ( いくつかの数を足して数の個数 で割 った、真ん中の目安になる数です。たとえば年れいの平均 が71.1さい、のように使います。集団 のだいたいのようすを一つの数で説明 できるので重要 です。)
の人は、3.6%でした。サルコペニア ( 年をとることなどで筋肉 の量 や筋力 がへってしまう状態 のことです。例 としては、にぎる力が弱い、歩くのが遅 くなるなどにあらわれます。筋肉 が減 ると動く力が落ち、けがや生活の不便 につながりやすいので重要 です。)
の人は、43.8%でした。ロコモ ( ロコモティブシンドロームのことです。骨 や関節 や筋肉 などが弱って、立つ歩くといった動きがしにくくなった状態 をいいます。体の動く力をまとめて考える言葉で、進むと転びやすくなったり生活で困 りごとが増 えたりするため重要 です。)
こしの痛 みで困 る人は、32.7%でした。
せなかが前に曲がるほど、ロコモが重めでした。
こしの痛 みの困 りごとも大きめでした。
とくに、立って歩いてもどる速さと関係 しました。
年れいのちがいを考えても、関係 がありました。
ロコモが進むほど、前かがみも悪くなりました。
でも筋肉 がへった人でも、差 ははっきりしません。
前かがみが5°以上 だと、目安になりました。
こしの痛 みが強めな人を見つけやすいです。
ロコモが進んだ人も見つけやすいです。
5°以上 の人は、くらしのよさが低 めでした。
力や歩き、バランスのテストも低 めでした。
- どうやったの?:
-
この研究は、ある日だけを
比 べる調査 です。
2019年に新潟県阿賀野市で行いました。
水中運動の教室に来た人の記録 を使いました。
53〜88さいの女性 361人が でした。対象 ( 調べる相手になった人や集団 のことです。たとえばこの文では、地域 でくらす女性 361人が対象 です。だれを対象 にしたかで、結果 をどこまで広げて言えるかが決まるため重要 です。)
筋肉 の量 は、体のはかりで測 りました。
にぎる力も測 りました。
そのきまりで、 を決めました。サルコペニア ( 年をとることなどで筋肉 の量 や筋力 がへってしまう状態 のことです。例 としては、にぎる力が弱い、歩くのが遅 くなるなどにあらわれます。筋肉 が減 ると動く力が落ち、けがや生活の不便 につながりやすいので重要 です。)
せなかの形は、せなかにそって測 りました。
立ったまま、体にやさしく測 りました。
体のテストもしました。
にぎる力を見ました。
立って3m歩いてもどるテストをしました。
大またでふみ出すきょりも測 りました。
片足 立ちの時間も測 りました。
は、しつもんしで分けました。ロコモ ( ロコモティブシンドロームのことです。骨 や関節 や筋肉 などが弱って、立つ歩くといった動きがしにくくなった状態 をいいます。体の動く力をまとめて考える言葉で、進むと転びやすくなったり生活で困 りごとが増 えたりするため重要 です。)
こしの痛 みも、しつもんしでたしかめました。
くらしのよさも、別 のしつもんしで見ました。
それぞれの関係 を、計算でたしかめました。
- 研究のまとめ:
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中高年の
女性 では、前かがみが強いほどでした。
歩く力がさがり、 が進みやすいです。ロコモ ( ロコモティブシンドロームのことです。骨 や関節 や筋肉 などが弱って、立つ歩くといった動きがしにくくなった状態 をいいます。体の動く力をまとめて考える言葉で、進むと転びやすくなったり生活で困 りごとが増 えたりするため重要 です。)
こしの痛 みで、生活の困 りごとがふえました。
体のテストも、低 くなりやすいです。
とくに、立って歩くテストが下がりました。
前かがみが5°以上 は、目安になりそうです。
こしの痛 みが強めな人を見つけやすいです。
ロコモが進んだ人も見つけやすいです。
せなかの形をやさしく測 ることは大切です。
くらしにくさを、早めに見つける手がかりです。
ただし筋肉 のへりとの関係 は、 でした。不明 ( まだはっきり分かっていないことです。研究では、調べた結果 でも原因 まで言えないときに使います。分からない点を示 すことで、次に何を調べるべきかが分かるので重要 です。)
筋肉 がへった人が、少なかったからです。
- 著者名:
- 久保田 美緒
- 新潟大学学術リポジトリリンク:
- http://hdl.handle.net/10191/0002001588
