論文詳細
医歯学系
医学部保健学科
#紀要論文
Investigation of The Effects of Artifacts in Phase Contrast MRI on Turbulent Kinetic Energy Using Numerical Phantoms
- AI解説:
- Turbulent kinetic energy(TKE)は、乱流を伴う血流に関連するエネルギー損失を定量化する指標であり、循環系のhemodynamics(血行動態)を特徴づけたり、異常な流れの状態を同定したりするためのbiomarkerとして提案されている。基礎的研究では、単純化した狭窄管のphantomにおいて、速度およびintravoxel velocity standard deviation(IVSD)について数値シミュレーションと実験が一致することが報告されている。また臨床動機に基づく研究では、TKEが加齢に伴う大動脈形状により変化し、病的な流れの条件で増加することが示唆されている。実際には、TKEはphase-contrast(PC)MRIで測定されることが多く、しばしば4D flow imagingとして実装される。これは時間分解能をもつ3D速度情報を提供する一方、通常は撮像時間の制約と達成可能な空間分解能の制約の下で運用される。空間分解能の低下や高速撮像の選択肢は、PC MRIのmagnitude画像およびvelocity画像にartifactを生じさせ得る。代表例として、高周波成分のサンプリングが限られることによるtruncation artifactや、乱流における急速な速度変動に伴うmotion artifactがある。これらのartifactは頻繁に生じるにもかかわらず、特にmagnitude画像におけるtruncation artifactがTKE画像の正確性と解釈可能性に与える具体的影響は十分に明確化されていない。本研究は、数値phantomを用いた制御されたシミュレーションにより、PC MRIで生じるtruncation artifactとmotion artifactがTKE画像へどのように伝播するかを体系的に解明することを目的とした。
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医歯学系
医学部保健学科
#紀要論文
Investigation of The Effects of Artifacts in Phase Contrast MRI on Turbulent Kinetic Energy Using Numerical Phantoms
AI解説
- 背景と目的:
-
Turbulent kinetic energy(TKE)は、乱流を伴う血流に関連するエネルギー損失を定量化する指標であり、循環系のhemodynamics(血行動態)を特徴づけたり、異常な流れの状態を同定したりするためのbiomarkerとして提案されている。基礎的研究では、単純化した狭窄管のphantomにおいて、速度およびintravoxel velocity standard deviation(IVSD)について数値シミュレーションと実験が一致することが報告されている。また臨床動機に基づく研究では、TKEが加齢に伴う大動脈形状により変化し、病的な流れの条件で増加することが示唆されている。実際には、TKEはphase-contrast(PC)MRIで測定されることが多く、しばしば4D flow imagingとして実装される。これは時間分解能をもつ3D速度情報を提供する一方、通常は撮像時間の制約と達成可能な空間分解能の制約の下で運用される。空間分解能の低下や高速撮像の選択肢は、PC MRIのmagnitude画像およびvelocity画像にartifactを生じさせ得る。代表例として、高周波成分のサンプリングが限られることによるtruncation artifactや、乱流における急速な速度変動に伴うmotion artifactがある。これらのartifactは頻繁に生じるにもかかわらず、特にmagnitude画像におけるtruncation artifactがTKE画像の正確性と解釈可能性に与える具体的影響は十分に明確化されていない。本研究は、数値phantomを用いた制御されたシミュレーションにより、PC MRIで生じるtruncation artifactとmotion artifactがTKE画像へどのように伝播するかを体系的に解明することを目的とした。
- 主要な発見:
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シミュレーションの結果、TKE画像におけるartifactパターンは、基となるPC MRIのmagnitude画像におけるartifactパターンと大きく異なり得ることが示され、目視による予測は信頼できないことが分かった。acquisition matrixが512×512 pixelsの場合、TKE画像は広くノイズ様のartifact挙動(white noiseに類似すると記述)を示した。一方、より小さいacquisition matrixでは構造化された信号変化が生じた。250×250および167×167 pixelsでは、TKE分布において中心部の高信号領域が現れ、その外側に低信号帯、さらに周辺部に高信号領域がみられた。125×125 pixelsでは、中心部の低信号領域がより広範となり、周辺近くの信号が相対的に高くなった。windowingを狭めると、125×125〜250×250 pixelsのacquisition matrixで、前後(anteroposterior: AP)方向および左右(right-left: RL)方向の両方に、縞状の高/低信号が交互に現れるパターンが観察された。重要な点として、magnitude画像に現れるtruncation artifactの見え方はTKE artifactに単純には対応しなかった。例えば167×167 pixelsでは、magnitude画像で中心部の著明な信号低下が見られた一方、対応するTKE画像では中心部信号が増加しており、影響領域に質的な「反転」が生じることが示された。定量的には、標準偏差50 cm/sのturbulence modelを用いた場合、理想的なTKEは375 J/m3であり、ROI平均TKEはすべてのacquisition matrixにわたり設定値の5%以内に収まった。しかし、ROI内の最小値・最大値は10%を超えて乖離し得たことから、平均推定が安定していても局所的なTKE分布は信頼できない可能性が示唆された。
- 方法論:
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著者らは、2D PC MRIの枠組みに合わせ、円形血管の軸方向断面を表す数値phantomを用いて、MATLAB 2023bでPC MRI様のシミュレーションを実施した。高解像度の基準となるmagnitude画像とvelocity画像を、250×250 mm2のfield of view上で2000×2000 pixelsとして生成した。血管半径はR = 6 mm、スライス方向平均速度の最大値はUmax = 144 cm/sとした。スライス方向の平均速度プロファイルは対数則(logarithmic law)に従い、面内の平均速度はゼロに設定した。乱流は、3方向すべてに標準偏差50 cm/sの正規分布に従うランダムなゆらぎとしてモデル化し、phase-encodingの各取得ステップごとに(frequency-encodingの充填中ではなく)このランダム値を更新した。これは、乱流によって生じる時間的変動がmotion artifactを誘発し得る状況を模擬するためである。流体領域のmagnitude信号は、スライス方向速度に比例しつつ上限を設ける形で定義し、upeak = 110 cm/s、Smax = 1600 a.u.、背景組織信号500 a.u.などのパラメータを用いた。MR取得を模擬するため、velocity画像をVENC = 200 cm/sとπ/VENCのスケーリングを用いてphase画像へ変換し(速度エンコードしないphaseはゼロに設定)、Fourier変換によりk-space様データを得た。その後、acquisitionおよびreconstruction matrix設定を適用した。reconstructionは512×512 pixelsに固定し、acquisition matrixは512×512、250×250、167×167、125×125と変化させた。欠落した高周波成分はzero-filledとし、Cartesian filling(frequencyの後にphase)を仮定した。逆Fourier変換によりmagnitude画像とvelocity画像を得て、これらには高周波サンプリング制限によるtruncation artifactと、phase encoding中の乱流更新によるmotion artifactが含まれる。続いて、研究で示された式(4)および(5)に基づき、速度エンコードあり/なしのmagnitude画像における信号低下からTKE画像を計算した。水の密度は1000 kg/m3とした。評価は、TKE・magnitude・velocity各画像の定性的な視覚比較と、血管領域内のROIに基づく統計(turbulence modelが意味する理想TKEとの比較を含む)を組み合わせて行った。
- 結論と意義:
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本研究は、PC MRIで生じるartifactが、対応するmagnitude画像やvelocity画像から目視では推測できない形でTKE画像を変化させ得ると結論づけている。magnitude画像のtruncation artifactは、TKE画像では縞状、あるいは別の形で再配分された信号パターンへ変換され得る。またvelocity画像は、magnitude画像ともTKE画像とも同等のartifactパターンを示さない場合がある。その結果、magnitude画像やvelocity画像におけるartifactの見え方からTKE画像の歪みを予測することは困難である。こうした複雑な画像レベルの影響にもかかわらず、ROI平均TKEはacquisition matrixサイズ全体で理想値に近く(5%以内)保たれ、シミュレーション条件下では平均TKE推定が、検討したtruncation artifactとmotion artifactに対して比較的ロバストである可能性が示された。一方で、最小値・最大値が10%超の変動を示したことから、平均ではなく詳細な分布パターンに依存する解釈には注意が必要であり、画像内の空間的TKE不均一性は信頼性に欠け得る。総じて、本研究は評価量としての平均TKEの有用性を支持しつつ、artifactの影響を受けたTKE mapの解釈には限界があることを示している。
- 今後の展望:
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著者らは、今後の研究に向けた複数の方向性と留意点を挙げている。第一に、本シミュレーションは2D PC MRIを仮定しており、同じ知見が4D flow imagingでも成り立つかは不確かである。4D flowへ拡張するには、体積励起やslice encodingを含む追加シミュレーションが必要となるが、著者らは、これらの要因が面内のtruncation artifactに与える影響は限定的であるはずだと主張している。第二に、本研究では血管断面にわたり一様なTKEは観察されなかった。したがって、古典的な縞状のtruncation artifactがmagnitude画像で明瞭に見えない場合(例:特定の低acquisition matrix条件)であっても、TKE画像の診断上の有用性はacquisition matrixサイズに応じて慎重に評価する必要があることが示唆される。第三に、turbulence model(標準偏差50 cm/sのランダムゆらぎ)は単純な円管としては強すぎる可能性があり、仮定した速度プロファイル(対数則)も実際の血流より複雑性が低い可能性がある。したがって、得られたTKE値を臨床解釈や他の実験状況へ直接移し替えることは推奨されない。著者らは、血管閉塞後など、生体内で遭遇するより現実的で複雑な乱流シナリオを将来の検討に取り入れ、臨床的に関連のあるhemodynamics下でartifactの影響をより適切に特徴づけるべきだと述べている。
- 背景と目的:
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は、血液の流れが乱流(流れが不規則にゆれる状態)になったときに起きるエネルギーの損失を数値で表す指標です。血液の流れ方(Turbulent kinetic energy(TKE) ( 血液の流れが乱流になったときに生じるエネルギー損失を表す量です。血流の異常や負担の大きさを数値で捉えるために使われ、診断や研究の目印として期待されています。) )を理解したり、異常な流れを見つけたりするための目印(血行動態 ( 血液が心臓や血管の中をどう流れているかという状態のことです。流速や流れの向き、圧力の変化などを含み、病気による循環の変化を理解するのに重要です。) )として期待されています。バイオマーカー ( 体の状態や病気の有無を判断するための「手がかりになる指標」です。画像や血液検査の値などが該当し、TKEも血流の異常を示す指標として提案されています。)
TKEは主に で測りますが、実際の撮影では「短い時間で撮る」「細かく撮りきれない」といった制約があります。その結果、画像にphase contrast(PC)MRI ( 血液などの流れの速度をMRIで測る方法です。体を切らずに血流情報を得られるため、心臓や血管の評価によく使われます。) (本物ではない写り込みやゆがみ)が出ることがあります。代表的なものに、画像の細かい情報が足りないことで起きるartifact ( 本来そこにない模様やゆがみが画像に出ることです。撮影の制約や動きなどが原因で起こり、画像の読み取りを難しくします。) (縞のような乱れ)や、乱流による急な速度変化が原因で起きるtruncation artifact ( k-spaceで高周波成分(細かい情報)を十分に集められないときに出る、波打つような縞模様の乱れです。解像度を下げたり撮影を速くしたりすると起こりやすくなります。) があります。motion artifact ( 撮影中の動きによって生じる画像の乱れです。本研究では、乱流による急な速度変化が原因で起きる状況をシミュレーションしました。)
しかし、特に に出るtruncation artifactが、TKE画像の正しさや読み取りやすさにどう影響するのかは、十分に分かっていませんでした。そこで本研究は、条件をコントロールできる数値magnitude画像 ( MRIで得られる「信号の強さ」を表した基本的な画像です。形が見やすい一方で、撮り方によってartifactの影響を受けることがあります。) を使ったシミュレーションにより、PC MRIのartifactがTKE画像にどう影響するかを整理して明らかにすることを目的としました。phantom ( 装置や解析の性能を確かめるために使う、人体の代わりのモデルです。数値phantomはコンピュータ上で作るモデルで、条件を正確にそろえて検証できます。)
- 主要な発見:
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シミュレーションの結果、TKE画像に出る
の見え方は、元になるPC MRIのartifact ( 本来そこにない模様やゆがみが画像に出ることです。撮影の制約や動きなどが原因で起こり、画像の読み取りを難しくします。) のartifactと大きく違う場合があると分かりました。つまり、magnitude画像を見て「TKE画像はこう乱れるはず」と目で予想するのは当てになりません。magnitude画像 ( MRIで得られる「信号の強さ」を表した基本的な画像です。形が見やすい一方で、撮り方によってartifactの影響を受けることがあります。)
が512×512 pixelsのとき、TKE画像のartifactは広い範囲にノイズのように出ました。一方、acquisition matrixが小さい場合は、もっと規則的な模様として現れました。たとえば250×250や167×167 pixelsでは、血管断面の中心が高く、その外側が低く、さらに周辺が高いといった分布が出ました。125×125 pixelsでは中心の低い領域がより広がり、周辺が相対的に高くなりました。さらに表示のコントラストを強めると、125×125〜250×250 pixelsでは、前後方向と左右方向の両方に、高い低いが交互に並ぶ縞模様が見られました。acquisition matrix ( 実際にk-spaceから集めるデータ量を決める設定で、画素数が小さいほど細かい情報が不足しやすくなります。撮影時間とも関係します。)
重要なのは、magnitude画像の が、そのまま同じ形でTKE画像に出るわけではない点です。たとえば167×167 pixelsでは、magnitude画像では中心の信号が大きく下がるのに、TKE画像では逆に中心が高くなるという「反転」のような現象が起きました。truncation artifact ( k-spaceで高周波成分(細かい情報)を十分に集められないときに出る、波打つような縞模様の乱れです。解像度を下げたり撮影を速くしたりすると起こりやすくなります。)
数値としては、理想的なTKEが375 J/m3になる条件で、血管内の 平均TKEはどのacquisition matrixでも設定値の5%以内でした。ただしROI内の最小値や最大値は10%以上ずれることがあり、平均は安定していても、細かい場所ごとのTKE分布は信頼できない可能性が示されました。ROI ( 画像の中で評価するために選んだ範囲のことです。その範囲内の平均値や最大最小などを計算し、結果を比べます。)
- 方法論:
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円形の血管断面を表す数値
を作り、MATLABで2D PC MRIをまねたシミュレーションを行いました。まず、高解像度の基準画像として、field of view 250×250 mm2を2000×2000 pixelsで用意しました。血管半径は6 mm、スライス方向の平均流速の最大値は144 cm/sに設定しました。平均流速の形はphantom ( 装置や解析の性能を確かめるために使う、人体の代わりのモデルです。数値phantomはコンピュータ上で作るモデルで、条件を正確にそろえて検証できます。) に従うものとし、面内方向の平均流速は0としました。対数則 ( 管の中の流れで、壁に近い部分の速度分布を近似するために使われる考え方です。本研究では平均流速の形を単純化するために用いられました。)
乱流は、3方向それぞれに標準偏差50 cm/sのランダムなゆらぎとして加え、phase-encodingの各ステップごとに値を更新することで、乱流が原因の が起きる状況を再現しました。motion artifact ( 撮影中の動きによって生じる画像の乱れです。本研究では、乱流による急な速度変化が原因で起きる状況をシミュレーションしました。)
その後、速度情報を =200 cm/sで位相に変換し、VENC ( PC MRIで速度を測るときの「測定できる速度の上限」の設定です。低すぎると速度が折り返して誤差が出やすく、高すぎると感度が下がりやすいという特徴があります。) でFourier変換 ( k-spaceのデータから画像を作るための数学的な変換です。MRIではk-spaceと画像の行き来に必ず使われます。) を作り、k-space ( MRIが直接集めるデータが並ぶ領域で、画像そのものではなく、画像を作るための周波数成分の情報が入っています。ここで高周波成分が欠けるとtruncation artifactが起きやすくなります。) を512×512、250×250、167×167、125×125に変えながら高周波成分の不足(zero-filled)を再現しました。再構成は512×512に固定し、逆Fourier変換でacquisition matrix ( 実際にk-spaceから集めるデータ量を決める設定で、画素数が小さいほど細かい情報が不足しやすくなります。撮影時間とも関係します。) とmagnitude画像 ( MRIで得られる「信号の強さ」を表した基本的な画像です。形が見やすい一方で、撮り方によってartifactの影響を受けることがあります。) を作りました。最後に、速度エンコードありなしのmagnitude画像の信号低下からTKE画像を計算し、見た目の比較とvelocity画像 ( PC MRIで得られる「速度」を画像として表したものです。どこでどのくらいの速さで流れているかを示します。) 統計で評価しました。ROI ( 画像の中で評価するために選んだ範囲のことです。その範囲内の平均値や最大最小などを計算し、結果を比べます。)
- 結論と意義:
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PC MRIで起きる
は、artifact ( 本来そこにない模様やゆがみが画像に出ることです。撮影の制約や動きなどが原因で起こり、画像の読み取りを難しくします。) やmagnitude画像 ( MRIで得られる「信号の強さ」を表した基本的な画像です。形が見やすい一方で、撮り方によってartifactの影響を受けることがあります。) を見ただけでは予測できない形でTKE画像を変化させることが分かりました。magnitude画像のvelocity画像 ( PC MRIで得られる「速度」を画像として表したものです。どこでどのくらいの速さで流れているかを示します。) が、TKE画像では縞模様など別の形に変わって現れることがあり、velocity画像もmagnitude画像やTKE画像と同じartifactパターンにならない場合がありました。truncation artifact ( k-spaceで高周波成分(細かい情報)を十分に集められないときに出る、波打つような縞模様の乱れです。解像度を下げたり撮影を速くしたりすると起こりやすくなります。)
一方で、 平均TKEはどのROI ( 画像の中で評価するために選んだ範囲のことです。その範囲内の平均値や最大最小などを計算し、結果を比べます。) でも理想値に近く、今回の条件では平均値としてのTKEはartifactに対して比較的影響を受けにくい可能性が示されました。ただし、画像内の最小値や最大値が大きくずれることがあるため、TKEの「細かい分布」まで使って判断する場合は注意が必要です。acquisition matrix ( 実際にk-spaceから集めるデータ量を決める設定で、画素数が小さいほど細かい情報が不足しやすくなります。撮影時間とも関係します。)
- 今後の展望:
-
今後の課題として、今回の研究は2D PC MRIの想定であり、
でも同じことが起きるかは確実ではない点が挙げられます。4D flowに広げるには、体積としての撮像やslice encodingを含めた追加シミュレーションが必要です。4D flow imaging ( 3次元の空間(3D)に加えて時間変化も含めて血流を測るPC MRIの方法です。1回の心拍の中で血流の向きと速さの変化を立体的に調べられますが、撮影時間と解像度の両立が難しいことがあります。)
また、 で典型的な縞状のmagnitude画像 ( MRIで得られる「信号の強さ」を表した基本的な画像です。形が見やすい一方で、撮り方によってartifactの影響を受けることがあります。) が目立たない条件でも、TKE画像では影響が出ることがあり得るため、truncation artifact ( k-spaceで高周波成分(細かい情報)を十分に集められないときに出る、波打つような縞模様の乱れです。解像度を下げたり撮影を速くしたりすると起こりやすくなります。) サイズに応じてTKE画像の診断への使いやすさを慎重に評価する必要があります。acquisition matrix ( 実際にk-spaceから集めるデータ量を決める設定で、画素数が小さいほど細かい情報が不足しやすくなります。撮影時間とも関係します。)
さらに、今回の乱流モデル(標準偏差50 cm/sのランダムゆらぎ)や速度分布( )は単純化されており、現実の血流より単純な可能性があります。そのため、この研究で得たTKE値をそのまま臨床に当てはめるのは避けるべきで、今後は血管が狭くなった後など、より現実に近い複雑な乱流条件での検討が求められます。対数則 ( 管の中の流れで、壁に近い部分の速度分布を近似するために使われる考え方です。本研究では平均流速の形を単純化するために用いられました。)
- 何のために?:
-
血は、体の中を流れる大切な
液 です。
でも、ときどき流れがゆれて、みだれます。
は、そのみだれでへる力のTKE ( 血の流れがみだれているときに失 われるエネルギーの大きさを表す指標 です。血の流れの異常 を見つけたり、その強さを比 べたりするのに使います) 目印 です。
この目印 で、変 な流れを見つけたいです。
TKEは、 というPC MRI ( 血の流れる速さや向きを画像 として調べるMRI検査 の方法 です。血管 の中の流れを「見える化」できるため、TKEを計算する元の情報 になります) 検査 で調べます。
ただ、早く撮 るなどの決まりがあります。
そのため、画像 ににせの模様 が出ます。
しましまに見えることもあります。
動きのせいで、ぼけることもあります。
でも、そのしま模様 がTKEにどう出るかは、
よく分かっていませんでした。
そこで、計算で作った血管 のモデルを使い、
にせの模様 がTKEに与 える影響 を調べました。
- 何が分かったの?:
-
TKE ( 血の流れがみだれているときに失 われるエネルギーの大きさを表す指標 です。血の流れの異常 を見つけたり、その強さを比 べたりするのに使います) 画像 のにせの模様 は、元の画像 と、
見え方がちがうことが分かりました。
だから、元の画像 だけ見ても、
TKEのくずれ方は当てられません。
とても細かく撮 ると、TKEは広く、
ざらざらした のように出ました。ノイズ ( 本当の信号 ではない、ざらざらした不要 なゆらぎのことです。画像 の見え方を悪くし、細かい場所の値 を信 じにくくする原因 になります)
あらく撮 ると、きれいな模様 のように出ました。
中心が高く、外が低 い形も出ました。
さらにあらいと、中心の低 い所が広がりました。
見え方を強くすると、たて横に、
高い低 いが交互 のしま模様 も出ました。
大事なのは、元のしま模様 がそのまま、
TKEに同じ形で出ないことです。
ある条件 では、元は中心が低 いのに、
TKEは中心が高くなることもありました。
平均 のTKEは、だいたい正しい値 でした。
でも、一番小さい所や大きい所は、
大きくずれることがありました。
だから、細かい場所の形は、
あまり信 じすぎない方がよいです。
- どうやったの?:
-
丸い
血管 の形を、計算で作りました。
そして、 をまねて計算しました。PC MRI ( 血の流れる速さや向きを画像 として調べるMRI検査 の方法 です。血管 の中の流れを「見える化」できるため、TKEを計算する元の情報 になります)
まず、とても細かい正しい画像 を作りました。
血管 の太さや、流れの速さも決めました。
血の流れ方は、決まった形になると考えました。
次に、みだれた流れを足しました。
それを何回も変 えて、動きのぼけも再現 しました。
そのあと、いろいろな細かさで撮 ったときの、
情報 不足 をわざと作りました。
そして、元の画像 や速さの画像 を作りました。
最後 に、信号 の下がり方から、TKE ( 血の流れがみだれているときに失 われるエネルギーの大きさを表す指標 です。血の流れの異常 を見つけたり、その強さを比 べたりするのに使います) 画像 を計算し、
見た目と数でくらべました。
- 研究のまとめ:
-
のにせのPC MRI ( 血の流れる速さや向きを画像 として調べるMRI検査 の方法 です。血管 の中の流れを「見える化」できるため、TKEを計算する元の情報 になります) 模様 は、元の画像 だけでは、
TKE ( 血の流れがみだれているときに失 われるエネルギーの大きさを表す指標 です。血の流れの異常 を見つけたり、その強さを比 べたりするのに使います) 画像 での出方を予想できません。
元のしま模様 が、TKEでは別 の形になることもあります。
速さの画像 も、同じ模様 にならない場合がありました。
一方で、平均 のTKEは、今回の条件 では、
にせの模様 の影響 が小さそうでした。
でも、場所ごとの一番小さい値 や大きい値 は、
大きくずれることがありました。
だから、細かい で分布 ( 場所ごとに値 がどう広がっているかという「並 び方」や「広がり方」です。平均 だけでなく、どこが高いか低 いかを判断 するのに使います) 判断 するときは、注意が必要 です。
- これからどうする?:
-
今回は、
の2D ( 平らな一枚 の面として測 ることです。立体の全部を見ないため、結果 が条件 により変 わる可能性 があり、解釈 に注意が必要 です) を考えた研究です。PC MRI ( 血の流れる速さや向きを画像 として調べるMRI検査 の方法 です。血管 の中の流れを「見える化」できるため、TKEを計算する元の情報 になります)
の4D ( 立体に加 えて時間の変化 も含 めて測 る考え方です。より現実 に近い流れを扱 える一方、2Dと同じ結果 になるとは限 らないため確認 が重要 です) 検査 でも同じかは、まだ分かりません。
そのため、立体での追加 の計算が必要 です。
また、元の画像 でしま模様 が目立たなくても、
TKE ( 血の流れがみだれているときに失 われるエネルギーの大きさを表す指標 です。血の流れの異常 を見つけたり、その強さを比 べたりするのに使います) 画像 では影響 が出るかもしれません。
だから、画像 の細かさに合わせて、
使いやすさをよく確 かめる必要 があります。
さらに、今回の血の流れの作り方は、
本当の体より単純 かもしれません。
なので、この結果 をそのまま病院で使うのは、
やめた方がよいです。
これからは、血管 がせまいときなど、
もっと本物に近い条件 で調べる必要 があります。
- 著者名:
- Kondo Tatsuya, Kanazawa Tsutomu, Saito Hiroaki, Yagi Yuta
- 掲載誌名:
- 新潟大学保健学雑誌
- 巻:
- 21
- 号:
- 1
- ページ:
- 21 - 30
- 発行日:
- 2025-03
- 新潟大学学術リポジトリリンク:
- http://hdl.handle.net/10191/0002001626
