論文詳細
医歯学系
大学院医歯学総合研究科(医)
#学位論文
日本人若年女性におけるHPVワクチン接種のHPV感染に対する長期有効性 : リアルワールドデータ
- AI解説:
- 日本では2010年に、13~16歳の女子を対象として公費によるヒトパピローマウイルス(human papillomavirus: HPV)ワクチン接種が導入され、2013年4月に定期接種(national immunization program: NIP)に組み込まれた。しかし、その直後に国による積極的勧奨が中止され、全国の接種率は約70%から1%未満へと低下したため、公費の対象であり続けたにもかかわらず、多くのコホートで十分な予防が得られない状況が生じた。著者らは、これまでの日本の研究(著者ら自身の研究を含む)で、20代前半女性における短期的なワクチン有効性、すなわちHPV16/18感染および子宮頸部異常の減少が示されてきたことに言及している。一方で、25歳を超える年齢層に関する日本のエビデンスには不足があるとし、その重要性として、女性の20代におけるHPV感染率は23~26歳でピークに達し、性活動が高く曝露リスクが大きいことを挙げている。そこで本研究は、日本の25~26歳女性を対象に、ワクチン接種から約10年後におけるHPVワクチンの実臨床(real-world)での長期有効性を評価することを目的とした。
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医歯学系
大学院医歯学総合研究科(医)
#学位論文
日本人若年女性におけるHPVワクチン接種のHPV感染に対する長期有効性 : リアルワールドデータ
AI解説
- 背景と目的:
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日本では2010年に、13~16歳の女子を対象として公費によるヒトパピローマウイルス(human papillomavirus: HPV)ワクチン接種が導入され、2013年4月に定期接種(national immunization program: NIP)に組み込まれた。しかし、その直後に国による積極的勧奨が中止され、全国の接種率は約70%から1%未満へと低下したため、公費の対象であり続けたにもかかわらず、多くのコホートで十分な予防が得られない状況が生じた。著者らは、これまでの日本の研究(著者ら自身の研究を含む)で、20代前半女性における短期的なワクチン有効性、すなわちHPV16/18感染および子宮頸部異常の減少が示されてきたことに言及している。一方で、25歳を超える年齢層に関する日本のエビデンスには不足があるとし、その重要性として、女性の20代におけるHPV感染率は23~26歳でピークに達し、性活動が高く曝露リスクが大きいことを挙げている。そこで本研究は、日本の25~26歳女性を対象に、ワクチン接種から約10年後におけるHPVワクチンの実臨床(real-world)での長期有効性を評価することを目的とした。
- 主要な発見:
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25~26歳女性では、高リスクHPVの全体感染率は、接種者と未接種者で有意差がなかった(21.3% vs 23.7%; P = 0.63)。これに対し、HPV16/18感染は接種群で0%(0/150)、未接種群で5.4%(15/279)であり、有意差が認められた(P = 0.0018)。これは、著者らのオッズ比に基づく方法で算出したワクチン有効性(vaccine effectiveness: VE)が100%に相当した。さらに、日本人女性において2価ワクチンで交差防御(cross-protection)が報告されている型であるHPV31/45/52についても、接種者の感染率は未接種者より有意に低かった(3.3% vs 10.0%; P = 0.013)。出生コホート比較では、公費世代(1994年生まれ)におけるHPV16/18感染は0%(0/124)であり、導入前世代(1993年生まれ)の4.9%(15/305)より有意に低かった(P = 0.0077)。一方、高リスクHPV全体はコホート間で有意差がなかった(24.2% vs 22.3%; P = 0.70)。コホートレベルでの交差防御(HPV31/45/52)は、公費世代で低かった(4.8% vs 8.9%)ものの、有意差はなかった(P = 0.23)。
- 方法論:
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本研究では、2019年4月から2020年3月に新潟市で子宮頸がん検診を受診した25~26歳女性(1993~1994年出生コホート)を登録した。検診の残余検体を用い、BD Onclarity™ HPV kitでHPV検査を実施し、Onclarity™で陽性となった検体はMEBGENTM HPV kitでgenotypingを行った。ワクチン接種歴および性行動に関する変数(初交年齢、過去の性パートナー数)は質問票で収集し、公費接種者については新潟市の公的記録を確認して接種日とワクチン種類を確定した。選択バイアスを減らすため、参加者は接種状況、性活動、検診結果にかかわらず募集した。解析では、(1) 接種者と未接種者、(2) 公費世代(1994年生まれ)と導入前世代(1993年生まれ)を比較した。統計解析はEZRを用い、Fisherの正確検定、カイ二乗検定、t検定を実施し、VEはVE = (1 − OR) × 100として算出した。ワクチン接種からHPV検査までの平均期間は102.7か月(中央値103; 範囲92–109)であった。検診受診者770人に参加を依頼し、482人が登録(62.6%)した。除外(4価ワクチン接種者1人および質問票不備など)後、429人(接種者150人、未接種者279人)を解析対象とした。著者らは、実際のサンプルサイズと観察された感染率に基づくHPV16/18比較の統計学的検出力(power)を0.817と報告している。
- 結論と意義:
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著者らは、日本の実臨床の検診データを用いた結果として、2価HPVワクチンが、25~26歳女性において、接種からおよそ9年後でもHPV16/18感染に対する長期的な有効性を示すと結論づけている。また、接種者と未接種者の比較では、HPV31/45/52に対する交差防御と整合する所見も得られたとしている。この年齢層は性活動が高くHPV曝露リスクが増大する時期と重なるため、持続的な防御は生涯の子宮頸がんリスク低減という観点から臨床的に重要であると強調している。さらに、本研究結果を日本の政策状況の中に位置づけ、NIPに含まれていたにもかかわらず積極的勧奨の中止後に接種率が崩壊し、高リスク年齢に入る若年女性の多くが未接種のまま残された点を指摘している。限界として、抗体価(antibody titer)測定がないため防御の免疫学的相関(immunological correlates of protection)について結論できないこと、集団免疫(herd immunity)を評価する能力が限られること、検診参加や25歳と26歳のコホート差に関連した選択や交絡(confounding)の可能性があることを挙げている。それでも、接種者でHPV16/18感染が観察されなかった点は、日本におけるHPVワクチンの公衆衛生上の価値を支持する証拠になると述べている。
- 今後の展望:
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著者らは、長期有効性をさらに検証するため、特に25~26歳女性における子宮頸部前がん病変(cervical precancers)に対する効果について継続的な追跡を提案している。また将来的には、9価ワクチンの長期有効性評価も行う必要があるとしている。加えて、日本で積極的勧奨が再開された後に必要と考える対応として、メディアを通じた正確な科学情報の発信、行動経済学(behavioral economics)的アプローチに基づく公衆教育、キャッチアップ接種(catch-up vaccination)政策の実施、ならびに9価ワクチンのNIPへの組み込みを挙げている。集団免疫効果を有意義に評価するには、より多くの症例とより長い追跡期間が必要であり、現行の研究デザインとサンプルサイズでは十分に対応できないとも述べている。総じて、今後の方向性として、実臨床コホートでの有効性モニタリングという科学的側面と、情報発信および制度変更を通じた接種率の回復・拡大という政策的側面の両方が強調されている。
- 背景と目的:
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日本では2010年に、13~16歳の女子を対象に、自治体がお金を出す形で
接種が始まりました。2013年4月には国のHPVワクチン ( HPVへの感染を防ぎ、将来の子宮頸がんなどのリスクを下げるためのワクチンです) にも入りました。しかしその直後に、国が「積極的に勧める」ことをやめたため、接種率は約70%から1%未満まで急に下がりました。その結果、公費で打てる状態が続いていたのに、多くの世代で十分な予防ができない状況が起きました。定期接種 ( 国の制度として、決められた年齢で公費により受けられる予防接種です)
これまで日本の研究では、20代前半の女性で、ワクチンによって の感染や子宮頸部の異常が減ることが示されてきました。ただ、25歳を超える年齢についての日本のデータは少ないままでした。20代のHPV感染は23~26歳ごろに多くなり、感染する機会が増えやすい時期です。そこでこの研究は、日本の25~26歳女性を対象に、接種から約10年後でもHPVワクチンがどれくらい効果を保っているかを、実際の検診データで確かめることを目的にしました。HPV16型と18型 ( 子宮頸がんの原因になりやすい代表的な型で、ワクチンの主な予防対象です)
- 主要な発見:
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25~26歳女性では、
全体の感染率は、接種した人と接種していない人で大きな差はありませんでした。ハイリスクHPV ( 感染すると子宮頸がんなどにつながりやすいHPVの型のグループです)
一方で、 の感染は、接種した人では0%で、接種していない人では5.4%でした。この差は統計的にもはっきりしており、研究の計算ではワクチンの有効性は100%に相当しました。HPV16型と18型 ( 子宮頸がんの原因になりやすい代表的な型で、ワクチンの主な予防対象です)
また、 で効果が広がる可能性があるとされるHPV31型、45型、52型でも、接種した人の感染率は接種していない人より低くなっていました。2価ワクチン ( 主にHPV16型と18型に対して効果を持つタイプのHPVワクチンです)
生まれ年で比べると、公費接種の対象になった1994年生まれではHPV16型と18型の感染が0%で、対象外だった1993年生まれより低い結果でした。ただし、ハイリスクHPV全体では世代間の差は見られませんでした。
- 方法論:
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2019年4月から2020年3月に、新潟市で子宮頸がん検診を受けた25~26歳女性(1993~1994年生まれ)を対象にしました。検診で残った検体を使ってHPV検査を行い、陽性のものはどの型かをさらに調べました。
ワクチンを打ったかどうかや性行動に関する情報は質問票で集め、公費で接種した人については市の記録で接種日とワクチンの種類を確認しました。偏りを減らすため、接種状況や性活動、検診結果に関係なく参加者を集めました。
解析では、接種者と未接種者の比較、そして1994年生まれと1993年生まれの比較を行いました。統計ソフトで検定を行い、 も計算しました。平均すると、接種から検査まで約8.6年でした。最終的に429人(接種者150人、未接種者279人)を分析しました。ワクチン有効性 ( ワクチンによって感染や病気がどれくらい減ったかを示す割合です)
- 結論と意義:
-
この研究は、実際の検診データを使って、2価
が25~26歳でも、接種からおよそ9年後にHPVワクチン ( HPVへの感染を防ぎ、将来の子宮頸がんなどのリスクを下げるためのワクチンです) の感染を防ぐ効果が続いていることを示しました。また、HPV31型、45型、52型でも感染が少ないという結果が出ており、効果が一部広がる可能性とも合っています。HPV16型と18型 ( 子宮頸がんの原因になりやすい代表的な型で、ワクチンの主な予防対象です)
25~26歳はHPVに感染する機会が増えやすい時期なので、この時期にも効果が続くことは、将来の子宮頸がんのリスクを下げるうえで重要だと考えられます。
一方で、抗体の量を測っていないため「なぜ効果が続くのか」を免疫の面からは説明できないこと、 のような社会全体の効果を評価するには限界があること、参加者の偏りや別の要因の影響が入りうることが課題として挙げられました。それでも、接種者でHPV16型と18型の感染が見つからなかった点は、日本でのHPVワクチンの公衆衛生上の価値を支持する結果だと述べています。集団免疫 ( 多くの人が免疫を持つことで、社会全体で感染が広がりにくくなる効果です)
- 今後の展望:
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今後は、感染だけでなく、子宮頸部の前がん病変をどれだけ防げるかを、25~26歳でさらに追跡して確かめることが提案されています。また、
についても長期的な効果を評価する必要があるとしています。9価ワクチン ( より多くのHPVの型を対象にしたHPVワクチンで、予防できる範囲が広いのが特徴です)
さらに、国の が再開された後に必要なこととして、メディアでの正確な情報発信、積極的勧奨 ( 国や自治体が対象者に対して、接種を受けるよう強く案内し勧めることです) の考え方を使った公衆教育、打ち逃した世代への行動経済学 ( 人が必ずしも合理的に行動しないことを前提に、行動を促す方法を考える学問です) 、9価ワクチンのキャッチアップ接種 ( 本来の時期に打てなかった人が、後から受けるための追加の接種です) への組み込みが挙げられています。定期接種 ( 国の制度として、決められた年齢で公費により受けられる予防接種です) の効果までしっかり評価するには、もっと多くの人数と長い追跡が必要だとも述べています。集団免疫 ( 多くの人が免疫を持つことで、社会全体で感染が広がりにくくなる効果です)
- 何のために?:
-
日本では2010年から、
を打てました。HPVワクチン ( HPVにうつりにくくするための注射 です:HPVによる病気やがんのリスクを下げる目的 で打ちます)
は、がんにつながることもあるHPV ( ヒトパピローマウイルスというウイルスの名前です:うつることがあり一部はがんの原因 にもなるためワクチンで防 ぐことが大切です) です。ウイルス ( とても小さな病原体の一種 です:体に入ると病気の原因 になることがあります)
13~16歳 の女の子は、お金を出してもらえました。
2013年からは、国の決まった注射 になりました。
でも国が、強くおすすめしなくなりました。
そのため、打つ人がとても少なくなりました。
お金は出るのに、守れない人が増 えました。
これまで、20代前半では が分かっていました。効果 ( 注射 などをしたときにどれだけ役に立ったかという結果 です:続 くかどうかがワクチンの大切な点です)
でも25歳 より上の日本の は少なめでした。データ ( 調べて集めた数字や記録 です:根拠 として結果 を確 かめるために使います)
そこで25~26歳 で、効果 が続 くか調べました。
注射 から10年くらい後でも効 くかを見ました。
- 何が分かったの?:
-
25~26
歳 では、危 ない 全体はHPV ( ヒトパピローマウイルスというウイルスの名前です:うつることがあり一部はがんの原因 にもなるためワクチンで防 ぐことが大切です) 差 が少しでした。
でも と18は、大きくちがいました。HPV16 ( HPVの型 の名前です:がんにつながりやすい型 として特 に注意されます)
注射 した人は0%、していない人は5.4%でした。
計算では、 がとても高いことになりました。効果 ( 注射 などをしたときにどれだけ役に立ったかという結果 です:続 くかどうかがワクチンの大切な点です)
ほかの でも、少なくなることがありました。型 ( 同じHPVでも種類 のちがいを表す言い方です:型 によって危険 さやワクチンの効 き方が変 わります)
1994年生まれは、16と18が0%でした。
1993年生まれより、低 い結果 でした。
でも危 ないHPV全体では、差 は見えませんでした。
- どうやったの?:
-
新潟市で、25~26
歳 の女性 を調べました。
2019年4月から、2020年3月までです。
の、のこりの子宮けいがん 検診 ( 子宮の入口にできるがんを早めに見つけるための検査 です:症状 が出る前に見つけて治 しやすくするために重要 です) 材料 を使いました。
がいるかを調べ、HPV ( ヒトパピローマウイルスというウイルスの名前です:うつることがあり一部はがんの原因 にもなるためワクチンで防 ぐことが大切です) も調べました。型 ( 同じHPVでも種類 のちがいを表す言い方です:型 によって危険 さやワクチンの効 き方が変 わります)
注射 したかは、 で聞きました。アンケート ( 質問 に答えて情報 を集める方法 です:注射 したかなど本人の情報 を集めるのに使います)
お金を出してもらった人は、市の記録 も見ました。
をへらすため、広くかたより ( 集めた人や条件 が片寄 って結果 がゆがむことです:かたよりが少ないほど結果 が正しくなります) 参加者 を集めました。
注射 した人と、していない人を比 べました。
1994年生まれと、1993年生まれも比 べました。
全部で429人を調べました。
注射 から検査 まで、 8.6年でした。平均 ( みんなの数をならして出す代表の値 です:全体としてどれくらいかをつかむのに使います)
- 研究のまとめ:
-
この研究で、
が長く効果 ( 注射 などをしたときにどれだけ役に立ったかという結果 です:続 くかどうかがワクチンの大切な点です) 続 くと分かりました。
25~26歳 でも、16と18を防 げていました。
注射 から9年ほどたっても、守れていました。
ほかの でも、少ないかもしれません。型 ( 同じHPVでも種類 のちがいを表す言い方です:型 によって危険 さやワクチンの効 き方が変 わります)
25~26歳 は、うつりやすい時期だとされます。
だから効果 が続 くのは、大切だと考えられます。
ただ、体の中の守る力は測 っていません。
社会全体の効果 も、十分には分かりません。
それでも、注射 した人で0%は大事な結果 です。
- これからどうする?:
-
これからは、
を前がん ( がんになる手前の状態 です:ここで見つけて防 げるとがんになりにくくなります) 防 げるかも見ます。
25~26歳 で、さらに追いかけて調べます。
9つの にきくワクチンも、長く調べます。型 ( 同じHPVでも種類 のちがいを表す言い方です:型 によって危険 さやワクチンの効 き方が変 わります)
正しい情報 を、分かりやすく伝 えることが大切です。
打ちそこねた人が、あとで打てる仕組みも必要 です。
もっと多い人数で、長い間の も調査 ( あることを調べて確 かめることです:人数や期間を増 やすとより確 かな結論 に近づきます) 必要 です。
- 著者名:
- 黒澤 めぐみ
- 新潟大学学術リポジトリリンク:
- http://hdl.handle.net/10191/0002001848
