論文詳細
医歯学系
大学院医歯学総合研究科(歯)
#学位論文
患者由来がん関連線維芽細胞を含む, 4種類の細胞の共培養による3次元器官型in-vitro口腔がんモデルの開発とその特徴解析
- AI解説:
- 著者らは、従来の二次元(2D)の単層培養は、生理学的に妥当な細胞—細胞相互作用や細胞—マトリクス相互作用を欠き、組織構築も再現できないため、in vivoのがん生物学を十分に表現できないと論じている。三次元(3D)培養(例:spheroids、organoids、organ-on-a-chip)の利用は増えている一方で、既存の3D口腔扁平上皮癌(OSCC)モデルは、治療応答に影響する腫瘍微小環境(TME)の主要な特徴を一貫して取り込めていない。特にOSCCでは、本来の解剖学的環境として、空気—液体界面と、線維芽細胞が豊富で細胞外マトリクス(ECM)と血管を含む結合組織の上に重層した上皮が存在するため、腫瘍—間質界面を再構築する基盤としてorganotypic cultureが適切である。OSCC細胞株と市販の線維芽細胞を用いた既存のorganotypic OSCCモデルを踏まえ、本研究は、「口腔がん」領域と隣接する「正常口腔粘膜」を水平方向に統合し、さらに患者由来のがん関連線維芽細胞(patient-derived cancer-associated fibroblasts:PD-CAFs)と患者由来の正常口腔線維芽細胞(patient-derived normal oral fibroblasts:PD-NOFs)を対にして用いることで間質線維芽細胞の不均一性も組み込んだ、より生体模倣的な3D organotypic in vitro口腔がんモデルの開発と特性評価を目的とした。中心となる技術目標は、ステンレス製パーティションを用いて4種類の細胞(PD-CAFs、PD-NOFs、正常口腔粘膜ケラチノサイト(normal oral mucosa keratinocytes:NOKs)、OSCC細胞株)の共培養を可能にし、同一構造体内で腫瘍組織と周囲の正常粘膜の治療応答を比較しつつOSCC生物学を研究できるようにすることであった。
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医歯学系
大学院医歯学総合研究科(歯)
#学位論文
患者由来がん関連線維芽細胞を含む, 4種類の細胞の共培養による3次元器官型in-vitro口腔がんモデルの開発とその特徴解析
AI解説
- 背景と目的:
-
著者らは、従来の二次元(2D)の単層培養は、生理学的に妥当な細胞—細胞相互作用や細胞—マトリクス相互作用を欠き、組織構築も再現できないため、in vivoのがん生物学を十分に表現できないと論じている。三次元(3D)培養(例:spheroids、organoids、organ-on-a-chip)の利用は増えている一方で、既存の3D口腔扁平上皮癌(OSCC)モデルは、治療応答に影響する腫瘍微小環境(TME)の主要な特徴を一貫して取り込めていない。特にOSCCでは、本来の解剖学的環境として、空気—液体界面と、線維芽細胞が豊富で細胞外マトリクス(ECM)と血管を含む結合組織の上に重層した上皮が存在するため、腫瘍—間質界面を再構築する基盤としてorganotypic cultureが適切である。OSCC細胞株と市販の線維芽細胞を用いた既存のorganotypic OSCCモデルを踏まえ、本研究は、「口腔がん」領域と隣接する「正常口腔粘膜」を水平方向に統合し、さらに患者由来のがん関連線維芽細胞(patient-derived cancer-associated fibroblasts:PD-CAFs)と患者由来の正常口腔線維芽細胞(patient-derived normal oral fibroblasts:PD-NOFs)を対にして用いることで間質線維芽細胞の不均一性も組み込んだ、より生体模倣的な3D organotypic in vitro口腔がんモデルの開発と特性評価を目的とした。中心となる技術目標は、ステンレス製パーティションを用いて4種類の細胞(PD-CAFs、PD-NOFs、正常口腔粘膜ケラチノサイト(normal oral mucosa keratinocytes:NOKs)、OSCC細胞株)の共培養を可能にし、同一構造体内で腫瘍組織と周囲の正常粘膜の治療応答を比較しつつOSCC生物学を研究できるようにすることであった。
- 主要な発見:
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本研究は、OSCC細胞層(HSC-3またはHSC-4)が中央を占め、その両側をNOKs由来の重層扁平な口腔粘膜上皮が挟む形で配置され、これら全体が連続したコラーゲン基盤の間質区画に支えられる3D organotypicモデルの作製に成功したと報告している。この間質区画には、中央にPD-CAFs、周辺にPD-NOFsが含まれていた。病理組織学的には、NOKs由来上皮は角化と基底細胞の整列を伴う秩序だった層構造を示し、正常粘膜の表現型と一致した。OSCC区画では重層したがん細胞層が形成され、HSC-3は非角化性の重層構造と不整な腫瘍—間質境界を呈し、早期浸潤を示唆した一方、HSC-4は複数の角化巣を示し、より分化した癌様の外観と整合した。HSC-3およびHSC-4の両モデルで、がん細胞は初期播種領域を越えて側方へ拡大し、界面で隣接する正常上皮領域の上に重なった。これに伴い、Ki-67陽性の増殖細胞は、正常上皮のように基底層に限局するのではなく、OSCC層全体に分布していた。PKH色素による蛍光追跡では、PD-CAFsとPD-NOFsは13日間にわたり概ね当初播種した間質領域に留まり、境界での混ざり合いは限定的であり、「がん間質」と「正常結合組織」の意図した空間関係が保持されることが示された。基底膜関連マーカー解析では、正常上皮の下方でlaminin-γ2とintegrin-α6が線状に共局在し、基底膜様構造の形成と整合した一方、この線状パターンはOSCC領域との境界では消失した。OSCC層内では、laminin-γ2は線状の基底膜様界面を示さず、びまん性に発現し(HSC-4よりHSC-3でより顕著)、線状の基底膜様界面がないことが示された。間質マーカー解析では、α-SMA陽性細胞は上皮区画近傍に多く、正常結合組織よりもがん間質でより豊富であった。またLRRC15の免疫反応性はがん間質でびまん性で、正常結合組織ではシグナルが最小限であった。LRRC15はさらに、正常上皮の基底細胞およびOSCC領域の下層でも検出された。著者らは、OSCC区画近傍でのα-SMAの増加は、本モデル内での腫瘍—CAF間クロストークと整合すると解釈している。
- 方法論:
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ヒト組織の取得は、新潟大学の倫理承認(#2015-5018および#2022-0300)の下で、インフォームド・コンセントを得て実施され、切除標本から同一検体内のOSCC組織と隣接する正常口腔粘膜を対として採取した。初代NOKsは、正常粘膜を一晩のtrypsin/EDTA処理(0.025%)により処理し、上皮を機械的に分離した後、無血清EpiLife(0.06 mM Ca2+)とkeratinocyte growth supplementで増殖させた。NOKsは継代p1〜p3を使用した。PD-CAFsは、腫瘍コア組織を細断し、micro-tissue explant法(組織を擦って傷を付けた培養皿表面にすり付ける)で樹立し、DMEM + 10% FBSで増殖させた。PD-NOFsは、上皮除去後の結合組織からexplant培養により得た。いずれの線維芽細胞もp3〜p5を使用した。OSCC成分には、認証済みでマイコプラズマ陰性の舌SCC細胞株HSC-3(JCRB0623)およびHSC-4(JCRB0624)を用い、DMEM + 10% FBSで維持した。3Dモデルは、type I collagenマトリクスとステンレス製パーティションを用いて、six-well insert内で区画を空間的に分離して構築した。day 0に、パーティション外側にPD-NOFs(5.5 × 10^5 cellsを3300 μLのマトリクス中)、内側にPD-CAFs(7.5 × 10^4 cellsを450 μL)を含むコラーゲン間質を鋳込み、浸漬培養で2日間培養した。day 2に、短いパーティション外側の間質表面へNOKs(1.0 × 10^6を100 μL)を播種し、浸漬培養で2日間培養した。day 4に、パーティション内側へOSCC細胞(5.0 × 10^5を50 μL)を播種し、浸漬培養で2日間培養した。day 6からday 13まではパーティションを除去し、収縮を可能にするために構造体をinsert壁から離し、DMEMとkeratinocyte mediumを1:1で混合し10% FBSを加えた培地(2日ごとに交換)を用いて空気—液体界面培養を行った。合計98個のモデルを作製した。モデルの特性評価には、H&E組織染色、Ki-67、α-SMA、LRRC15の免疫組織化学、laminin-γ2とintegrin-α6の蛍光免疫染色を用いた。間質区画の分離を確認するため、PD-CAFsとPD-NOFsをそれぞれPKH-26とPKH-67で事前標識した。PD-CAFsとPD-NOFsは2D培養でも、α-SMAとvimentinの免疫蛍光で特性評価し、α-SMAの局在は手術検体でも確認した。
- 結論と意義:
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著者らは、PD-CAFs、PD-NOFs、NOKs、OSCC細胞株(HSC-3またはHSC-4)の4種類の細胞を共培養し、口腔粘膜内に発生する口腔がんを模倣することを意図した空間配置をもつ3D organotypic in vitro OSCCモデルを開発したと結論づけている。本モデルは、垂直方向の極性(空気に曝される上皮が下方から栄養供給される)と、ステンレス製パーティション戦略による腫瘍と正常粘膜成分の水平方向での隣接配置の両方を実現した。特性評価データは、正常粘膜区画が重層上皮と、laminin-γ2/integrin-α6の基底膜様の組織化を形成することを支持する一方、OSCC区画ではこの線状の基底膜様パターンが欠如し、がん細胞層内にびまん性のlaminin-γ2が認められることを示した。間質解析は、PD-CAFsとPD-NOFsが播種領域で概ね分離されたままである一方、CAF関連マーカー(α-SMAおよびLRRC15)ががん間質で増加し、α-SMA陽性細胞が上皮界面近傍に集積することを示した。著者らは、これらの特徴を、本モデルがOSCCのTMEに関連する重要な性質(がん—間質相互作用を含む)を再現し、同一構造体内で腫瘍と正常粘膜の応答を同時に評価できることの根拠と解釈している。また、動物実験の一部に代わり得るトランスレーショナルな意義と、治療効果の病理組織学的評価のプラットフォームとしての有用性を強調し、放射線生物学におけるorganotypicモデルの既報での活用とも整合すると述べている。
- 今後の展望:
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著者らは、本モデルが前臨床ツールとして、OSCC区画におけるlaminin-γ2沈着パターンを標的とするアプローチを含む抗がん戦略のスクリーニングおよび開発に利用でき、さらに正常口腔粘膜への影響を同時に観察しながら併用療法(化学療法+放射線療法)を評価できると提案している。また、隣接する正常上皮上へHSC-3/HSC-4が側方に拡大した所見と、界面でのKi-67染色所見を合わせると、in vitroで「lateral invasion(側方浸潤)」を検討できる可能性がある一方、本プロトコルで用いた腫瘍—間質接触9日間では間質層への深い浸潤は目立たず、より長い共培養(先行研究では14日)を要する可能性があるとも述べている。議論では、ECM分子、プロテアーゼ、上皮—間葉転換(epithelial–mesenchymal transition)関連過程などを含む、間質区画のさらなる分子学的特性評価の必要性が強調されている。長期的方向性として、より高い生体模倣性と治療評価プラットフォームとしての価値向上のため、追加のTME成分、特に内皮細胞(血管)および免疫細胞を組み込むことを目標に挙げている。さらに、手作業のワークフロー、低スループット、再現性とスケーラビリティの制限、凍結保存ができないこと、共培養のため上清解析に制約があること、ライブイメージングがないことといった実務上の限界も明示し、このorganotypicモデルは研究課題に応じてorganoidシステムと相補的に用いるべきだと主張している。
- 背景と目的:
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これまでよく使われてきた2D培養は、細胞を平らな面に1層で育てる方法です。しかしこの方法だと、体の中で起きているような細胞どうしの関わりや、細胞が足場とやりとりする仕組みが再現しにくく、本当のがんのふるまいを十分に表せないと考えられています。
一方、3D培養は体の中に近い形で細胞を育てられるため注目されていますが、 では、治療の効き方に関わる腫瘍の周りの環境をうまく取り入れたモデルがまだ不十分でした。口腔扁平上皮癌 ( 口の中の粘膜の表面を作る細胞から起こりやすいがんの一種です。口腔がんの多くを占め、浸潤や再発の研究でよく扱われます。)
口の中の組織は、上の面が空気や唾液に触れ、下には が多い結合組織があり、そこには線維芽細胞 ( 結合組織に多い細胞で、細胞外マトリクスを作ったり組織の修復に関わったりします。がんでは性質が変わって治療反応にも影響します。) や血管などもあります。そこで研究者たちは、こうした「がんと周りの組織の境目」を再現しやすい細胞外マトリクス ( 細胞の外にある網目状のたんぱく質などで、細胞の足場になったり情報を伝えたりします。がんの浸潤や線維芽細胞の働きとも関係します。) という3Dモデルに注目しました。organotypic culture ( 上皮の下に線維芽細胞入りのコラーゲンなどを置き、空気液体界面で育てて組織の形を再現する3D培養法です。がんと周辺組織の境界を作りやすい点が重要です。)
この研究の目的は、同じモデルの中で「口腔がんの部分」と「隣の正常な口腔粘膜の部分」を横に並べ、さらに患者さん由来の線維芽細胞(がんに関わるものと正常なもの)も組み合わせて、より体に近い口腔がんモデルを作って特徴を調べることでした。中心となる工夫は、ステンレス製の仕切りを使って4種類の細胞を同時に育て、がんと正常組織の治療反応を同じ条件で比べられるようにすることです。
- 主要な発見:
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研究者たちは、中央に口腔がん細胞(
またはHSC-3 ( 舌の口腔扁平上皮癌から作られた細胞株です。モデル内で角化が少なく、境界が不整になりやすいなど、浸潤性の特徴を調べるのに使われます。) )を置き、その両側を正常の口腔粘膜の細胞(NOKs)が作る上皮が挟む形の3Dモデル作製に成功しました。全体はコラーゲンを土台にしたHSC-4 ( 舌の口腔扁平上皮癌から作られた細胞株です。角化を示しやすく、より分化したタイプのがんの特徴を再現するのに使われます。) で支えられ、間質の中央には間質 ( 上皮の下にある結合組織側の領域のことです。線維芽細胞や細胞外マトリクスなどを含み、がん細胞の増殖や浸潤に影響します。) の患者由来 ( 手術などで得た患者さんの組織から取り出して培養した細胞や材料のことです。個人差を反映しやすく、より現実的なモデル作りに役立ちます。) 、周辺には患者由来の正常がん関連線維芽細胞 ( がんの近くにいて、がんの増殖や浸潤を助けたり治療の効き方に影響したりする線維芽細胞です。腫瘍微小環境の中心的な要素として重要です。) を入れました。線維芽細胞 ( 結合組織に多い細胞で、細胞外マトリクスを作ったり組織の修復に関わったりします。がんでは性質が変わって治療反応にも影響します。)
観察すると、正常側の上皮は層がきれいに並び、角化なども見られて正常の粘膜に近い見た目でした。がん側では、がん細胞が重なった層を作り、HSC-3は角化が少なく境界がでこぼこしていて、浸潤の始まりを思わせる形でした。HSC-4は角化のかたまりが複数あり、より分化したがんらしい特徴に合っていました。
また、がん細胞は最初に置いた範囲を超えて横に広がり、隣の正常上皮の上にかぶさるように進みました。増殖している細胞を示す は、正常上皮では主に一番下の層に限られましたが、がん層では全体に広く見られました。Ki-67 ( 細胞が分裂して増えているかどうかを示す目印として使われるたんぱく質です。がんの増殖の強さや、正常組織との違いを見るのに重要です。)
線維芽細胞を光る色素で追跡すると、がん側と正常側の線維芽細胞は13日間で大きく混ざらず、意図した位置関係が保たれました。さらに、 に関係する目印を調べると、正常上皮の下では基底膜のような線状の並びが見られましたが、がん領域との境目ではそれが消え、がん層では別の広がり方(びまん性)になっていました。基底膜 ( 上皮と結合組織の境目にある薄い層で、上皮を支えたり境界を保ったりします。がんの進行ではこの構造が壊れることが多く重要です。)
間質の特徴としては、CAFに関係するとされる目印( やα-SMA ( 筋肉の性質に関わるたんぱく質で、がん関連線維芽細胞の目印としてよく使われます。がんの近くで増えると、がんと線維芽細胞の強い関わりを示す手がかりになります。) )ががん側の間質で増え、特に上皮の近くに多いことが示され、がん細胞と線維芽細胞のやりとりが起きている可能性が示されました。LRRC15 ( 最近、いろいろな固形がんで線維芽細胞側に出やすいと報告されているたんぱく質です。がん間質の特徴を示す可能性があり、新しいCAFマーカー候補として重要です。)
- 方法論:
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患者さんの手術で得られた標本から、同じ患者さんの「がん組織」と「隣の正常な口腔粘膜」をセットで採取しました。そこから正常上皮の細胞(NOKs)、
(PD-CAFs)、正常がん関連線維芽細胞 ( がんの近くにいて、がんの増殖や浸潤を助けたり治療の効き方に影響したりする線維芽細胞です。腫瘍微小環境の中心的な要素として重要です。) (PD-NOFs)をそれぞれ培養し、がん細胞は線維芽細胞 ( 結合組織に多い細胞で、細胞外マトリクスを作ったり組織の修復に関わったりします。がんでは性質が変わって治療反応にも影響します。) またはHSC-3 ( 舌の口腔扁平上皮癌から作られた細胞株です。モデル内で角化が少なく、境界が不整になりやすいなど、浸潤性の特徴を調べるのに使われます。) というHSC-4 ( 舌の口腔扁平上皮癌から作られた細胞株です。角化を示しやすく、より分化したタイプのがんの特徴を再現するのに使われます。) を使いました。細胞株 ( 研究用に長く増やし続けられるように確立された細胞です。条件をそろえやすい一方で、患者由来細胞とは性質が異なる場合もあります。)
3Dモデルは、type Iコラーゲンを土台にし、ステンレス製の仕切りで領域を分けながら作りました。最初に として線維芽細胞入りコラーゲンを流し込み、次に正常上皮細胞、次にがん細胞を決められた場所へ順に播種しました。その後、仕切りを外し、上の面が空気に触れて下から栄養が来る間質 ( 上皮の下にある結合組織側の領域のことです。線維芽細胞や細胞外マトリクスなどを含み、がん細胞の増殖や浸潤に影響します。) で育てました。空気液体界面培養 ( 上皮の上側を空気に触れさせ、下側を培地で栄養供給する培養法です。口腔粘膜のような層構造を作りやすく、体内に近い状態を再現するために使われます。)
評価には、組織染色や、 、Ki-67 ( 細胞が分裂して増えているかどうかを示す目印として使われるたんぱく質です。がんの増殖の強さや、正常組織との違いを見るのに重要です。) 、α-SMA ( 筋肉の性質に関わるたんぱく質で、がん関連線維芽細胞の目印としてよく使われます。がんの近くで増えると、がんと線維芽細胞の強い関わりを示す手がかりになります。) などの染色、LRRC15 ( 最近、いろいろな固形がんで線維芽細胞側に出やすいと報告されているたんぱく質です。がん間質の特徴を示す可能性があり、新しいCAFマーカー候補として重要です。) 関連の染色、線維芽細胞の位置を追う蛍光色素などを使いました。基底膜 ( 上皮と結合組織の境目にある薄い層で、上皮を支えたり境界を保ったりします。がんの進行ではこの構造が壊れることが多く重要です。)
- 結論と意義:
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この研究は、4種類の細胞を同じ3D構造の中で共培養し、中央にがん、両側に正常粘膜という配置をもつ、体に近い口腔がんモデルを作ったと結論づけています。
このモデルは、口の中のように上皮が空気側に面し、下の組織から栄養を受ける形を再現しつつ、がんと正常組織が横に隣り合う状態も作れます。観察結果から、正常側では のような構造ができる一方、がん側ではそれが崩れた特徴が見られました。また、がん側の基底膜 ( 上皮と結合組織の境目にある薄い層で、上皮を支えたり境界を保ったりします。がんの進行ではこの構造が壊れることが多く重要です。) ではCAFに関係する特徴が強く出て、がんと周囲の細胞の関係を再現できている可能性が示されました。間質 ( 上皮の下にある結合組織側の領域のことです。線維芽細胞や細胞外マトリクスなどを含み、がん細胞の増殖や浸潤に影響します。)
同じモデル内でがんと正常粘膜の反応を同時に比較できるため、治療の効果や副作用を考える研究に役立つこと、動物実験の一部を置き換えられる可能性があることが意義として述べられています。
- 今後の展望:
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このモデルは、新しい抗がん治療の候補を試すスクリーニングに使え、がんだけでなく正常粘膜への影響も同時に観察できると提案されています。特に、がん層での
の現れ方を標的にする治療の検討にも役立つ可能性があります。laminin-γ2 ( 基底膜や細胞外マトリクスに関わるたんぱく質の一部です。口腔がんでは分布のしかたが病気の進み方や予後と関係することがあり、治療標的としても注目されています。)
また、がん細胞が横に広がって正常上皮の上に乗るように進む様子が見られたため、in vitroで を調べられる可能性も示されました。ただし、この実験期間では側方浸潤 ( がんが下に深く入るだけでなく、正常上皮の下や上を横方向に広がるように進む現象です。治療後の再発や予後に関わることがあり、研究上重要です。) への深い浸潤は目立たず、もっと長い培養が必要かもしれないとも述べています。間質 ( 上皮の下にある結合組織側の領域のことです。線維芽細胞や細胞外マトリクスなどを含み、がん細胞の増殖や浸潤に影響します。)
今後は、間質の分子の特徴( 、分解酵素、細胞外マトリクス ( 細胞の外にある網目状のたんぱく質などで、細胞の足場になったり情報を伝えたりします。がんの浸潤や線維芽細胞の働きとも関係します。) に関わる変化など)をさらに調べ、血管の細胞や免疫細胞も追加してより本物に近づけることが目標です。一方で、手作業が多く大量に作りにくい、再現性や拡張性に限界がある、凍結保存できない、培養液の分析やライブ観察が難しいなどの弱点もあるため、目的に応じてorganoidなど他のモデルと使い分けるべきだとしています。上皮間葉転換 ( 上皮の性質をもつ細胞が、より動きやすく侵入しやすい性質へ変わる現象です。がんの浸潤や転移と関係すると考えられ、腫瘍微小環境の研究で重要です。)
- 何のために?:
-
細胞 は、体の中で生きています。
研究では、細胞 を外で育てます。
前は、平らな皿で育てる方法 でした。
これを、 といいます。2D 培養 ( 細胞 を平らな皿の上で育てる方法 です。体の中は立体なので同じ動きになりにくく細胞 どうしの助け合いが起きにくいことがあり研究の結果 に影響 するため区別 して考えるのが大事です)
でも体の中と同じ動きは、むずかしいです。
細胞 どうしの助け合いが、見えにくいです。
そこで、立体で育てる方法 が出ました。
これを、 といいます。3D 培養 ( 細胞 を立体的 な形で育てる方法 です。体の中に近い環境 を作りやすく細胞 の広がり方や周 りとのやりとりをより本物に近く調べられるので重要 です)
口の中のがんも、3Dで調べたいです。
でも周 りの環境 まで、足りませんでした。
口の上は、空気やつばにふれます。
口の下には、ちがう細胞 が多いです。
血の管 や、土台のもとになる物もあります。
研究者は、体に近い模型 を作りました。
がんと、元気な部分を横に並 べます。
同じ場所で、ちがいを比 べるためです。
仕切りを使い、4つの細胞 を育てます。
それで、薬のきき方も比 べられます。
- 何が分かったの?:
-
真ん中に、口のがん
細胞 を置 きました。
両はしに、元気な の粘膜 ( 口の中などのぬれている部分をおおうやわらかい膜 です。がんと元気な粘膜 を比 べることで病気でどこが変 わるかを確 かめられます) 細胞 を置 きました。
下の土台は、 で作りました。コラーゲン ( 体の中にあるたんぱく質 で皮ふや骨 などを支 える材料 です。実験 では細胞 がくっついたり動いたりする土台として使い体の中の足場に近づけるため大事です)
がんの近くには、がんに関 わる細胞 を入れました。
外側 には、ふつうの細胞 を入れました。
元気な側 は、きれいに重なって見えました。
体の粘膜 に近い形になりました。
がん側 は、細胞 が重なり方がちがいました。
がん細胞 は、横に広がっていきました。
となりの元気な細胞 の上に乗りました。
ふえる細胞 のしるしは、元気側 は下だけでした。
がん側 は、広い場所で見えました。
下の細胞 は、13日たってもあまり混 ざりません。
だから、ねらった並 びを保 てました。
元気側 の下には、うすい境目 が見えました。
でも、がんとの境目 では消えました。
がん側 の下では、広がる形に変 わりました。
がん側 の下では、特別 なしるしが増 えました。
がんと周 りが、やりとりしたかもしれません。
- どうやったの?:
-
手術 で取った組織 を使いました。
同じ人の、がんと元気な を集めます。粘膜 ( 口の中などのぬれている部分をおおうやわらかい膜 です。がんと元気な粘膜 を比 べることで病気でどこが変 わるかを確 かめられます)
元気な上の細胞 を育てました。
がんに関 わる下の細胞 も育てました。
ふつうの下の細胞 も育てました。
がん細胞 は、用意された種類 を使いました。
土台は、 です。type Iコラーゲン ( コラーゲンの種類 の一つで体の土台になりやすい型 です。土台の材料 をはっきり決めることで実験 を同じ条件 でくり返しやすく結果 を比 べやすくなります)
金ぞくの仕切りで、場所を分けました。
まず、下の細胞 入り土台を流します。
次に、元気な上の細胞 を置 きます。
そのあと、がん細胞 を真ん中に置 きます。
最後 に仕切りを外して、育てます。
上は空気、下から栄養 が来る育て方です。
色をつけて、細胞 の場所を見ました。
ふえるしるしや、境目 のしるしも調べました。
- 研究のまとめ:
-
この研究は、新しい3D
模型 を作りました。
真ん中ががん、両側 が元気な です。粘膜 ( 口の中などのぬれている部分をおおうやわらかい膜 です。がんと元気な粘膜 を比 べることで病気でどこが変 わるかを確 かめられます)
口の中のような環境 を、まねできました。
元気側 では、境目 の線ができました。
がん側 では、その線がくずれました。
がん側 の下では、特別 な変化 も見えました。
同じ模型 で、がんと元気を比 べられます。
薬の効果 や、つらい の研究に役立ちます。副作用 ( 薬が病気に効 く一方で体にとって困 る変化 が出ることです。薬の良 い点だけでなく安全さも考えるために重要 です)
動物を使う実験 を、へらせるかもしれません。
- これからどうする?:
-
この
模型 で、新しい薬の候補 を試 せます。
がんだけでなく、元気な所も見られます。
がんで出る特別 なしるしも、調べられます。
がんが横に広がる様子も見えました。
その広がり方を、くわしく調べられます。
ただ、下に深く入る動きは少なめでした。
もっと長く育てる必要 があるかもしれません。
これから、土台の成分 ももっと調べます。
血の管 の細胞 や、 の免疫 ( 体に入ったばい菌 などから守るはたらきです。がんのまわりでも免疫 の細胞 が関 わるため模型 に加 えると体の中に近い反応 を調べられます) 細胞 も足したいです。
でも作るのに手間がかかる弱点もあります。
たくさん作りにくい問題もあります。
目的 により、別 の模型 とも使い分けます。
