論文詳細
医歯学系
大学院医歯学総合研究科(医)
#学位論文
CRISPR/CasRxは新生児期マウスのKRAS変異誘発性脳動静脈奇形の形成を抑制する
- AI解説:
- 脳動静脈奇形(brain arteriovenous malformations: bAVMs)は、本来介在するはずの毛細血管床を介さずに、動脈から静脈へ血液が直接流れる異常な血管のもつれであり、破裂や出血のリスクを高める。現在の治療(切除、塞栓術、放射線外科)は多くの場合有効だが、病変が大きい場合や機能的に重要な領域(eloquent regions)にある場合には高リスクになり得るため、非侵襲的アプローチへの関心が高まっている。bAVMsの多くは散発例であり、近年の研究により、散発例の相当数(報告範囲 28%–87%)で内皮細胞に体細胞KRAS変異が同定され、KRAS経路の恒常的活性化が原因である可能性が示唆されている。しかし、bAVMsの出生後発達(病変が出生後に新たに形成され、出血や発作が起こるまで無症状のまま経過し得るという点で重要)は、既存の動物モデルの限界(浸透率が低い、全身性のrecombination、技術的障壁、あるいは致死性)のため、研究が困難であった。本研究の目的は、(i) KRASにより誘導されるbAVM様病変が出生後早期の発達期に開始する、効率的で内皮特異的なマウスモデルを確立すること、(ii) RNAを標的とするCRISPR/CasRxアプローチにより変異KRASを抑制して病変形成を軽減できるかを検証すること、である。
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医歯学系
大学院医歯学総合研究科(医)
#学位論文
CRISPR/CasRxは新生児期マウスのKRAS変異誘発性脳動静脈奇形の形成を抑制する
AI解説
- 背景と目的:
-
脳動静脈奇形(brain arteriovenous malformations: bAVMs)は、本来介在するはずの毛細血管床を介さずに、動脈から静脈へ血液が直接流れる異常な血管のもつれであり、破裂や出血のリスクを高める。現在の治療(切除、塞栓術、放射線外科)は多くの場合有効だが、病変が大きい場合や機能的に重要な領域(eloquent regions)にある場合には高リスクになり得るため、非侵襲的アプローチへの関心が高まっている。bAVMsの多くは散発例であり、近年の研究により、散発例の相当数(報告範囲 28%–87%)で内皮細胞に体細胞KRAS変異が同定され、KRAS経路の恒常的活性化が原因である可能性が示唆されている。しかし、bAVMsの出生後発達(病変が出生後に新たに形成され、出血や発作が起こるまで無症状のまま経過し得るという点で重要)は、既存の動物モデルの限界(浸透率が低い、全身性のrecombination、技術的障壁、あるいは致死性)のため、研究が困難であった。本研究の目的は、(i) KRASにより誘導されるbAVM様病変が出生後早期の発達期に開始する、効率的で内皮特異的なマウスモデルを確立すること、(ii) RNAを標的とするCRISPR/CasRxアプローチにより変異KRASを抑制して病変形成を軽減できるかを検証すること、である。
- 主要な発見:
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出生後に内皮KRAS活性化を誘導する4つの戦略を試した結果、著者らは内皮特異性の高いモデルを同定した。すなわち、Cdh5-CreERT2;lsl-tdTomatoマウスに対し、P5でtamoxifenを投与しつつ、AAV-PHP.V1-CAG-DIO-HA-KRASG12Dをretro-orbital投与すると、神経細胞/グリアでの標識を最小限に抑えながら、tdTomato+の内皮病変が生じた。疾患の重症度はAAV用量で調整可能であった。ウイルス量を減らすと、マウスはより長く生存しつつ、出血性の脳病変と異常な血管のもつれを形成した。1 × 10^7 GCでは、病変数は脳あたり平均57.7 ± 13.0(n = 3)で、対照は0 ± 0(n = 3)であった。病変は注入後5日から15日にかけて複雑性が増し、一般に300–500 μmで、一部は1,000 μmを超え、血管径の拡大も示した。病変は広く分布したが小脳では発生が少なかった。出血は脊髄でも観察され、他臓器は概ね保たれていたが、脾臓の出血が時折みられた(5匹中4匹)。三次元解析(latex perfusionおよびCUBIC clearingとlight-sheet imaging)により、nidus様の構築が示された。すなわち、蛇行した血管のもつれが複数の流入動脈と拡張した流出静脈に連結し、動静脈シャントが直接存在し、動脈瘤様および静脈瘤様の接合部構造、さらにヒトbAVMsに似た多層性の血管配置が認められた。組織学的には、変異KRASを発現する内皮細胞でpERKの増加、Ki67陽性の散発、細胞および核サイズの増大がみられた。病変は微小出血に関連する所見(赤血球の血管外漏出、ヘモジデリンを含む貪食細胞)と炎症性浸潤(Iba1+ミクログリア/マクロファージ、反応性GFAP+アストロサイト、Ly6G+好中球、B220+ B細胞、ならびに散発的なCD3+ T細胞/MPO+好中球)を示した。scRNA-seq(総計16,747細胞;対照7,382;KRAS 9,365)では、毛細血管内皮クラスターが最も大きなトランスクリプトーム変化(上方制御116遺伝子、下方制御64遺伝子)を示し、KRAS活性化と内皮の恒常性/BBB関連遺伝子プログラムの破綻に整合する経路シグナルが示唆された。ヒトbAVM内皮のDEGsとの重なりは部分的で(共通の上方制御22、共通の下方制御87)、完全一致ではなかった。内皮以外でも、ミクログリア/マクロファージとアストロサイトで活性化関連の遺伝子発現変化、白血球集団の増加、ならびにKRAS条件で増殖性の線維芽細胞様perivascularクラスターの出現が報告された。治療面では、KRASG12D RNAを標的とするCRISPR/CasRxにより、in vitroでKRAS転写産物量が対照近くまで低下し、in vivoでも転帰が改善した。すなわち、CasRxとKRASG12D標的gRNAのAAV同時投与により、生存が延長し、強い誘導条件では出血/もつれの数と大きさが有意に減少した。また、低用量の「few nidus」モデルでは、P5で同時投与すると病変形成を完全に阻止し、病変が形成され始めた後(誘導14日後)に投与した場合でも病変サイズを縮小した。比較として、trametinibは病変減少に非有意な傾向を示すにとどまり、検討したレジメンでは成長と毛の異常を引き起こした。
- 方法論:
-
本研究では、出生後早期にKRAS駆動の血管奇形を開始させる4つのアプローチを体系的に比較し、脳内皮細胞への発現制限に焦点を当てた。新生仔(P5)マウスに対し、低体温麻酔下でretro-orbitalからAAVを注射し、適用可能な場合はtamoxifenを併用してCreERを活性化した。アプローチは以下を含む:(1) Cdh5-CreERT2;lsl-KrasG12Dマウスでの遺伝学的誘導(P5でtamoxifen)では高い死亡率と最小限の血管表現型となった。(2) lsl-KrasG12Dlcl-EGFPマウスにAAV-PHP.V1-Ple261-iCreを注射すると、もつれが形成されたが、神経細胞/アストロサイトへのrecombination漏れがみられた。(3) AAV-PHP.V1-Ple261-iCreと、HA-KRASG12Dを発現するCre依存性AAVの共注射はP18までに致死で、オフターゲットのrecombinationも認めた。(4) 最終モデルとして、Cdh5-CreERT2;lsl-tdTomatoマウスにP5でtamoxifenを投与しつつAAV-PHP.V1-CAG-DIO-HA-KRASG12Dを注射し、高い内皮特異性を達成した。疾患重症度はAAVゲノムコピー数(6 × 10^10から1 × 10^7 GCまで)を変化させて調整し、主要解析には1 × 10^7 GCおよび3 × 10^7 GC条件が含まれた。病変負荷、サイズ、血管径は、ImageJを用いてtdTomato標識連続切片上で定量し、生存はlog-rank検定で評価した。nidus様シャント構造の検証には、実体顕微鏡観察、青色latex perfusion後のclearing、CUBIC tissue clearingとlight-sheet microscopy、ならびにIMARISによる3D再構成/トレースを用いた。病理および免疫組織化学では、MAPK活性化(pERK)、内皮増殖(Ki67)、変異タンパク局在(HA、RasG12D)、出血と鉄沈着(H&E、鉄染色)、グリア活性化(Iba1、GFAP)、免疫浸潤(Ly6G、B220、CD3、MPO)を評価した。トランスクリプトーム解析では、大脳皮質からtdTomato+およびtdTomato−細胞をFACSで分取(P13およびP20でサンプル採取)し、内皮を濃縮しつつ他細胞種も保持するためにプールして、10x Genomics single-cell 3′ v3.1で処理した。解析にはambient RNA除去(SoupX)、doubletフィルタリング(DoubletFinder)、Seuratによるクラスタリング/DEG検定(adjusted P < 0.05)、GO/経路解析(clusterProfiler、SCPA)を含めた。治療検証では、CasRx(RfxCas13d)とKRASG12D変異塩基をまたぐgRNAをAAVで投与し、KRAS誘導と同時(P5)または遅れて(P19)投与した。病変転帰はvehicleおよびtrametinib(1 mg/kg、2週間、毎日経口強制投与)と比較した。
- 結論と意義:
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本研究は、KRASG12Dにより駆動されるbAVM様疾患について、出生後に発症し内皮特異的なマウスモデルを提示した。このモデルは、動静脈シャントの直接存在、複数の流入動脈、拡張した流出静脈といったnidusを規定する特徴を備えた血管のもつれを再現性よく生じさせ、出血と炎症性/反応性の組織応答も伴った。AAV用量を調整することで、機序研究に有用な広範で急速に進行する病変も、成人まで生存し得てヒトに典型的な局所性の病変と長い無症状期により近い低病変負荷表現型も作り分けられる。組織学、血管の3D再構成、scRNA-seqに基づき、著者らは毛細血管内皮細胞が特に影響を受けやすいこと、病変形成には内皮MAPK活性化と内皮の形態学的肥大に加え、免疫細胞のリクルートやグリア活性化など、より広範な多細胞性応答が関与することを示した。重要なのは、変異KRAS配列を標的とするRNA標的型CRISPR/CasRx戦略が病変形成を大幅に抑制し、条件によっては検出可能な病変を完全に防ぎ得ること、さらに開始後に投与しても既存病変のサイズを低下させ得ることを示す概念実証を提供した点である。著者らは、試験条件下で効果が限定的で有害事象もみられた全身性MEK阻害に対し、より特異的かつ有効な代替となる可能性を位置づけている。
- 今後の展望:
-
著者らは、モデルと治療戦略のさらなる発展・応用に向けた方向性をいくつか挙げている。第一に、病変は確率的な位置に発生し(ウイルス導入のばらつきを反映している可能性が高い)ため、奇形誘導をあらかじめ定めた脳領域に局在化する方法を確立できれば、より制御された研究が可能になる。これには、同一個体内で血管リモデリングと治療効果を追跡できる縦断的in vivo imaging(例:反復2-photon microscopyに適した皮質病変)も含まれる。著者らは、領域への直接AAV注入や循環ウイルスの磁気誘引を試したが成功しなかったと報告しており、別の標的化アプローチが必要である。第二に、変異KRASの過剰発現やウイルス感染そのものの影響によりヒト疾患と乖離する可能性、ならびに頭蓋外での出血所見(特に脾臓)の散発があるなど、現行システムの限界を指摘し、より特異的なAAVセロタイプや、より厳密な遺伝学的制限の開発が動機づけられるとしている。第三に、AAVの反復投与は抗AAV抗体を誘導して以降の導入効率を低下させ得るため、後期のAAV-CasRx投与による治療効果が過小評価されている可能性があり、反復治療設計のためには免疫学的障壁への対策が重要になる。最後に、著者らはこのプラットフォームを用いて、追加または併用の分子介入(KRAS経路構成要素を標的とする阻害薬を含む)を検証し、scRNA-seqに基づく仮説を用いて時間経過に伴う多細胞相互作用を解析することで、特に無症状期や手術高リスク状況におけるbAVMsに対し、より有効で低毒性の非侵襲的治療の同定を目指せると提案している。
- 背景と目的:
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は、本来なら動脈と静脈の間にある「毛細血管」を通らずに、動脈から静脈へ血液が直接流れてしまう血管の異常です。このため血管に強い負担がかかり、破裂して脳出血を起こす危険が高まります。脳動静脈奇形 ( 脳の血管で、動脈と静脈が毛細血管をはさまずに直接つながってしまい、血管がもつれて出血しやすくなる病気です)
治療としては手術で切り取る方法、血管を詰める方法、放射線で治療する方法などがありますが、病変が大きい場合や脳の大事な場所にある場合は、治療そのものが危険になることがあります。そこで、体への負担が少ない治療法(非侵襲的な治療)への関心が高まっています。
最近、家族性ではない脳動静脈奇形( )の多くで、血管の内側を作る細胞(散発例 ( 遺伝的に家族に同じ病気が多いタイプではなく、偶然起きることが多いタイプのことです) )にKRASという遺伝子の変異が見つかり、この変異が病気の原因になっている可能性が示されました。一方で、この病気が「生まれた後に発達していく過程」を調べるための動物モデルは、これまでうまく作るのが難しいという問題がありました。内皮細胞 ( 血管の内側を一枚で覆っている細胞で、血管の形やバリア機能を保つのに重要です)
この研究の目的は、次の2つです。
1つ目は、出生後の早い時期に、内皮細胞だけで を働かせて病変ができる、効率のよいマウスモデルを作ることです。KRAS変異 ( KRASという遺伝子に起きた変化で、細胞増殖などのスイッチが過剰に入りやすくなり、病気の原因になることがあります)
2つ目は、RNAを狙うCRISPRの方法( )で変異KRASを弱めることで、病変を減らせるかを確かめることです。CRISPR CasRx ( DNAではなくRNAを狙って切るタイプのCRISPRで、特定のRNAを減らして遺伝子の働きを弱めるのに使えます)
- 主要な発見:
-
研究チームは、出生後に
でKRASを活性化させる方法を4種類試し、その中で「内皮細胞にかなり限定して」病変を作れる方法を見つけました。具体的には、生後5日目のマウスに内皮細胞 ( 血管の内側を一枚で覆っている細胞で、血管の形やバリア機能を保つのに重要です) を使って仕組みをオンにし、tamoxifen ( CreERT2のスイッチを入れるために使う薬で、投与すると狙った遺伝子操作が起こります) というウイルスベクターでAAV ( 遺伝子を細胞に運ぶためによく使われるウイルスベクターで、研究や遺伝子治療で利用されます) を導入すると、神経細胞やグリア細胞への影響をできるだけ少なくしながら、内皮細胞由来の病変が作れました。さらに、AAVの量を調整することで病気の重さも調整できました。KRASG12D ( KRASの代表的な変異の一つで、特定の場所の変化によってKRASが働き続けやすくなります)
AAV量を少なくすると、マウスはより長く生きられる一方で、出血を伴う脳の病変や血管のもつれが形成されました。ある条件では、病変数は脳あたり平均約58個で、対照群は0個でした。病変は注入後5日から15日の間にだんだん複雑になり、多くは0.3から0.5mmほどの大きさで、一部は1mmを超えました。血管が太くなる変化も見られました。病変は脳のいろいろな場所にできましたが、小脳では少なめでした。脊髄でも出血が見られ、他の臓器は基本的に保たれていましたが、脾臓で出血が起こることがありました。
三次元的な観察では、ヒトの に似た「脳動静脈奇形 ( 脳の血管で、動脈と静脈が毛細血管をはさまずに直接つながってしまい、血管がもつれて出血しやすくなる病気です) のような構造」が確認されました。つまり、曲がりくねった血管のもつれが、複数の流入動脈と、太くなった流出静脈につながり、動脈と静脈が直接つながる部分がありました。さらに、動脈瘤や静脈瘤のような形の接合部や、層が重なったような血管配置も見られました。nidus ( 脳動静脈奇形の中心部にある血管のもつれで、動脈と静脈が直接つながる重要な構造です)
組織の観察では、 を持つ内皮細胞でKRAS変異 ( KRASという遺伝子に起きた変化で、細胞増殖などのスイッチが過剰に入りやすくなり、病気の原因になることがあります) が強く働いているサインが増え、細胞や核が大きくなる変化が見られました。また、赤血球が血管の外に漏れるような小さな出血の跡や、炎症に関わる細胞(MAPK経路 ( 細胞に増殖や変化の指令を伝える重要な信号の流れで、KRASの下流で働きます) 、ミクログリア ( 脳の中にいる免疫の細胞で、炎症や掃除の役割を持ちます) 、好中球、B細胞など)が集まる反応も見られました。マクロファージ ( 体の中で異物や壊れたものを処理する免疫細胞で、炎症反応に関わります)
遺伝子発現を細胞ごとに調べる解析では、特に毛細血管の内皮細胞が大きく変化しており、 に関わる性質が乱れている可能性が示されました。ヒトの病気で見られる変化と一部は共通していましたが、完全に同じではありませんでした。血液脳関門 ( 血液中の物質が脳へ簡単に入りすぎないようにする仕組みで、脳を守るバリアとして重要です)
治療の実験では、KRASG12DのRNAを狙う を使うことで、培養細胞ではKRASの量が大きく減り、マウスでも生存が延び、出血や血管のもつれの数と大きさが減りました。病変が少ないモデルでは、早い時期に投与すると病変形成を完全に防げ、病変ができ始めた後に投与しても病変サイズを小さくできました。比較として使ったCRISPR CasRx ( DNAではなくRNAを狙って切るタイプのCRISPRで、特定のRNAを減らして遺伝子の働きを弱めるのに使えます) は、効果ははっきりせず、成長や毛の異常といった問題も起こしました。trametinib ( MAPK経路の一部であるMEKを抑える薬で、病変の進行を抑える可能性がある一方、副作用も問題になります)
- 方法論:
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この研究では、出生後の早い時期に
による病変を起こす方法を4種類比べ、できるだけ脳のKRAS変異 ( KRASという遺伝子に起きた変化で、細胞増殖などのスイッチが過剰に入りやすくなり、病気の原因になることがあります) に限って遺伝子が働く方法を探しました。生後5日目のマウスに、低体温麻酔を行った上で目の奥の静脈から内皮細胞 ( 血管の内側を一枚で覆っている細胞で、血管の形やバリア機能を保つのに重要です) を注射し、必要に応じてAAV ( 遺伝子を細胞に運ぶためによく使われるウイルスベクターで、研究や遺伝子治療で利用されます) でCreERの仕組みを作動させました。tamoxifen ( CreERT2のスイッチを入れるために使う薬で、投与すると狙った遺伝子操作が起こります)
最終的に選ばれたモデルでは、Cdh5- の仕組みを持つマウスにtamoxifenを投与しながら、CreERT2 ( 薬剤でオンにできる遺伝子スイッチの仕組みで、特定の細胞だけで遺伝子を働かせるために使います) をCre依存的に発現するAAVを投与しました。AAVの量を変えることで病変の数や重症度を調整し、組織切片の蛍光標識を使って病変数や血管の太さなどを測定しました。KRASG12D ( KRASの代表的な変異の一つで、特定の場所の変化によってKRASが働き続けやすくなります)
血管の立体構造は、latexを流して血管を見やすくしたり、脳を透明化する方法と光シート顕微鏡を組み合わせたりして、三次元で再構成しました。さらに免疫染色などで、 の活性、内皮細胞の増殖、出血の跡、炎症反応などを評価しました。遺伝子発現の解析は、細胞を分けて単一細胞RNA解析を行い、どの細胞がどのように変化しているかを調べました。MAPK経路 ( 細胞に増殖や変化の指令を伝える重要な信号の流れで、KRASの下流で働きます)
治療では、CasRxとKRASG12Dを狙うCRISPR CasRx ( DNAではなくRNAを狙って切るタイプのCRISPRで、特定のRNAを減らして遺伝子の働きを弱めるのに使えます) をAAVで投与し、KRAS導入と同時に投与する条件と、遅れて投与する条件の両方を調べました。薬剤治療としてgRNA ( CRISPRが狙う場所を案内する短いRNAで、どの配列を標的にするかを決めます) も比較対象にしました。trametinib ( MAPK経路の一部であるMEKを抑える薬で、病変の進行を抑える可能性がある一方、副作用も問題になります)
- 結論と意義:
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この研究は、
によって起こるKRASG12D ( KRASの代表的な変異の一つで、特定の場所の変化によってKRASが働き続けやすくなります) に似た病変を、生まれた後に脳動静脈奇形 ( 脳の血管で、動脈と静脈が毛細血管をはさまずに直接つながってしまい、血管がもつれて出血しやすくなる病気です) で発症させられるマウスモデルを示しました。このモデルでは、動脈と静脈が直接つながる構造や、複数の流入動脈と拡張した流出静脈を含む血管のもつれなど、ヒトの病気に重要な特徴が再現され、出血や炎症反応も伴いました。内皮細胞 ( 血管の内側を一枚で覆っている細胞で、血管の形やバリア機能を保つのに重要です)
また、 の量を変えることで、病変が多数できて早く進行する状態から、病変が少なく長く生存できる状態まで作り分けられました。これにより、病気の仕組みを調べたり、治療法を試したりしやすくなります。AAV ( 遺伝子を細胞に運ぶためによく使われるウイルスベクターで、研究や遺伝子治療で利用されます)
さらに重要なのは、変異KRASのRNAを狙う が、病変の形成を大きく抑え、条件によっては病変を完全に防げること、病変ができ始めた後でもサイズを小さくできることを示した点です。全身に効く薬で副作用が出やすい方法よりも、より狙いを絞った治療の可能性を示しました。CRISPR CasRx ( DNAではなくRNAを狙って切るタイプのCRISPRで、特定のRNAを減らして遺伝子の働きを弱めるのに使えます)
- 今後の展望:
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今後の課題として、まず病変が脳のどこにできるかがランダムになりやすいので、決まった脳領域に病変を作る方法を確立できれば、より正確な研究ができると述べられています。例えば、同じ個体で時間を追って観察する画像解析も進めやすくなります。
次に、このモデルでは の強い発現やウイルス感染そのものの影響で、ヒトの病気と少し違う可能性があり、また脾臓で出血が起きることもあるため、より狙いを絞れるKRAS変異 ( KRASという遺伝子に起きた変化で、細胞増殖などのスイッチが過剰に入りやすくなり、病気の原因になることがあります) や遺伝学的な工夫が必要だとされています。AAV ( 遺伝子を細胞に運ぶためによく使われるウイルスベクターで、研究や遺伝子治療で利用されます)
さらに、AAVを繰り返し投与すると免疫反応で効きにくくなる可能性があるため、将来の反復治療を考えるなら免疫の問題への対策が重要です。最後に、このモデルを使ってKRAS経路を狙う別の分子治療や組み合わせ治療を試し、無症状の時期も含めて病気の進行を抑える安全な治療法を探すことが提案されています。
- 何のために?:
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脳 には、血が流れる血管 があります。
ふつうは、細い血管 を通って流れます。
でも、ある病気ではちがいます。
から動脈 ( 心ぞうから出た血を体に送る血管 です:静脈 と役わりがちがい病気の説明 でどちらの血管 かが大事になります) へ、すぐ血が流れます。静脈 ( 体の中を回った血を心ぞうにもどす血管 です:動脈 と直接 つながると危 ない状態 になりやすいです)
これを、 といいます。脳動静脈奇形 ( 脳 の中で動脈 と静脈 が本来の細い血管 を通らずに直接 つながってしまう病気の名前です:血管 に強い負担 がかかって切れやすくなり脳出血 の原因 になるので治療 や研究でとても重要 です)
血管 にむりがかかり、やぶれます。
すると、脳 の中で出血しやすいです。
治療 には、手術 などがあります。
血管 をふさいだりもします。
で放射線 ( 目に見えない強いエネルギーで体の中の一部に当てて治療 に使います:手術 がむずかしい場所でも治療 の選択肢 になります) 治 す方法 もあります。
でも、場所や大きさで危険 もあります。
だから、体にやさしい治療 が大事です。
この病気では、 というKRAS ( 細胞 に増 えろなどの合図を出すはたらきに関 わる遺伝子 の名前です:こわれたり変化 したりすると病気の原因 になりうるため研究の中心になります) が、遺伝子 ( 体のつくり方やはたらき方の情報 が書かれた設計図 のようなものです:病気の原因 を調べたり治療 を考えたりする土台になります)
こわれていることがあります。
それが、原因 かもしれません。
でも、病気の進み方を調べる、
動物のしくみ作りがむずかしいです。
この研究の目的 は2つです。
1つ目は、マウスで病気を作ることです。
生まれてすぐの時期に作ります。
しかも、血管 の内側 の細胞 だけで、
KRASの変化 をはたらかせます。
2つ目は、新しい方法 でKRASを弱め、
病気がへるかたしかめることです。
- 何が分かったの?:
-
研究チームは、4つの
方法 を試 しました。
その中で、よい方法 を見つけました。
血管 の内側 の細胞 に、しぼれました。
生後5日のマウスを使いました。
で、しくみをオンにしました。tamoxifen ( 体の中のあるスイッチを入れたり切ったりするために研究で使う薬の名前です:いつどの細胞 で遺伝子 をはたらかせるかを決めるのに重要 です)
という運び屋で、AAV ( 遺伝子 を細胞 に運ぶために使う小さな運び屋の名前です:ねらった細胞 に遺伝子 や道具を届 ける方法 としてよく使われます) を入れました。KRAS ( 細胞 に増 えろなどの合図を出すはたらきに関 わる遺伝子 の名前です:こわれたり変化 したりすると病気の原因 になりうるため研究の中心になります)
ほかの脳 の細胞 への影響 は、少なめです。
病気の重さは、AAVの量 で変 えられました。
AAVが少ないと、長く生きられました。
でも、出血や血管 のもつれができました。
病気の数は、平均 で58こほどでした。
くらべたグループは、0こでした。
病気は、日にちがたつと形が複雑 です。
大きさは、0.3から0.5mmが多めです。
1mmより大きいものもありました。
血管 が太くなることもありました。
脳 のいろいろな場所にできました。
では、少なめでした。小脳 ( うごきの調整やバランスに関 わる脳 の部分です:どこに病気ができやすいかを説明 するのに必要 です)
でも、出血が見られました。せきずい ( 脳 からつながって体の中を通り体を動かす指令 などを運ぶ大事な部分です:ここで出血が起きると重い問題になりうるため重要 です)
で出血することもありました。ひぞう ( 血をたくわえたり体を守るはたらきに関 わる臓器 です:研究で思わぬ出血が出る場所として安全性 の点で重要 です)
立体で見ると、人の病気に似 ていました。
血管 がからまった、かたまりがありました。
と動脈 ( 心ぞうから出た血を体に送る血管 です:静脈 と役わりがちがい病気の説明 でどちらの血管 かが大事になります) が、直につながる所もあります。静脈 ( 体の中を回った血を心ぞうにもどす血管 です:動脈 と直接 つながると危 ない状態 になりやすいです)
ふくらんだ形のつなぎ目も見えました。
細胞 の中では、別 のサインも見えました。
KRASの変化 がある細胞 で、
ある道すじが強くはたらいていました。
細胞 や が大きくなる核 ( 細胞 の中心にあり遺伝子 が入っている場所です:核 が大きいなどの変化 は細胞 の異常 を知る手がかりになります) 変化 もありました。
小さな出血のあとも見つかりました。
に炎症 ( 体が傷 や病気に反応 して起こす赤くなったりはれたりするような反応 です:病気が悪化する原因 になったり治療 の標的 になったりします) 関 わる細胞 も集まっていました。
さらに、細胞 ごとに を調べました。遺伝子 ( 体のつくり方やはたらき方の情報 が書かれた設計図 のようなものです:病気の原因 を調べたり治療 を考えたりする土台になります)
とくに細い血管 の細胞 が変 わっていました。
脳 を守るしくみが、乱 れるかもしれません。
人の病気と、同じ所もありました。
でも、全部が同じではありませんでした。
治療 の実験 もしました。
で、KRASを弱めました。CRISPR CasRx ( 細胞 の中の特定 の遺伝子 のはたらきを弱めるための道具の名前です:原因 になりうる遺伝子 をねらって治療 できるか確 かめるのに重要 です)
すると、KRASの量 がへりました。
マウスは、長く生きやすくなりました。
出血やもつれの数と大きさもへりました。
早く使うと、病気をふせげました。
でき始めた後でも、小さくできました。
くらべた薬は、はっきり効 きませんでした。
体の成長 や毛に、問題も出ました。
- どうやったの?:
-
研究では、4つの作り方をくらべました。
できるだけ、脳 の血管 の細胞 だけに、
がはたらく遺伝子 ( 体のつくり方やはたらき方の情報 が書かれた設計図 のようなものです:病気の原因 を調べたり治療 を考えたりする土台になります) 方法 を探 しました。
生後5日のマウスに注射 をしました。
目の奥 の から、静脈 ( 体の中を回った血を心ぞうにもどす血管 です:動脈 と直接 つながると危 ない状態 になりやすいです) を入れました。AAV ( 遺伝子 を細胞 に運ぶために使う小さな運び屋の名前です:ねらった細胞 に遺伝子 や道具を届 ける方法 としてよく使われます)
必要 なとき、 も使いました。tamoxifen ( 体の中のあるスイッチを入れたり切ったりするために研究で使う薬の名前です:いつどの細胞 で遺伝子 をはたらかせるかを決めるのに重要 です)
さいごに選 んだ方法 では、
あるしくみを持つマウスを使いました。
tamoxifenでスイッチを入れました。
そして、 を出すAAVを入れました。KRAS ( 細胞 に増 えろなどの合図を出すはたらきに関 わる遺伝子 の名前です:こわれたり変化 したりすると病気の原因 になりうるため研究の中心になります)
AAVの量 で、病気の数を調整しました。
光るしるしで、血管 の太さなどを測 りました。
血管 の形は、立体でも見ました。
血管 が見やすい工夫 もしました。
脳 をすけさせて、くわしく見ました。
さらに、 や出血のしるしも調べました。炎症 ( 体が傷 や病気に反応 して起こす赤くなったりはれたりするような反応 です:病気が悪化する原因 になったり治療 の標的 になったりします)
細胞 を分けて、遺伝子 の変化 も見ました。
も、AAVで入れました。CRISPR CasRx ( 細胞 の中の特定 の遺伝子 のはたらきを弱めるための道具の名前です:原因 になりうる遺伝子 をねらって治療 できるか確 かめるのに重要 です)
同じ時に入れる場合も調べました。
あとから入れる場合も調べました。
薬の も、くらべました。trametinib ( 細胞 の合図の通り道を弱める薬の名前です:新しい方法 とくらべてどれが効 くかを判断 するために出てきます)
- 研究のまとめ:
-
この研究は、マウスで病気を作れました。
生まれた後に起きる形に近いです。
人の病気に大事な形も見えました。
血管 のもつれや、直結 もありました。
出血や もいっしょに起きました。炎症 ( 体が傷 や病気に反応 して起こす赤くなったりはれたりするような反応 です:病気が悪化する原因 になったり治療 の標的 になったりします)
のAAV ( 遺伝子 を細胞 に運ぶために使う小さな運び屋の名前です:ねらった細胞 に遺伝子 や道具を届 ける方法 としてよく使われます) 量 で、重さを変 えられました。
病気が多い状態 も作れました。
病気が少なく、長く生きる状態 も作れました。
病気のしくみや治療 を、試 しやすいです。
は、とても大切です。CRISPR CasRx ( 細胞 の中の特定 の遺伝子 のはたらきを弱めるための道具の名前です:原因 になりうる遺伝子 をねらって治療 できるか確 かめるのに重要 です)
をねらって、病気をへらせました。KRAS ( 細胞 に増 えろなどの合図を出すはたらきに関 わる遺伝子 の名前です:こわれたり変化 したりすると病気の原因 になりうるため研究の中心になります)
条件 しだいで、病気をふせげました。
できた後でも、小さくできました。
体ぜんぶに効 く薬より、ねらいがしぼれます。
- これからどうする?:
-
次の
課題 があります。
病気ができる場所が、ばらばらです。
決まった場所に作れると、研究が進みます。
同じマウスで、時間の変化 も見やすいです。
このモデルは、人と少し違 うかもです。
を強く出しすぎる心配があります。KRAS ( 細胞 に増 えろなどの合図を出すはたらきに関 わる遺伝子 の名前です:こわれたり変化 したりすると病気の原因 になりうるため研究の中心になります)
のAAV ( 遺伝子 を細胞 に運ぶために使う小さな運び屋の名前です:ねらった細胞 に遺伝子 や道具を届 ける方法 としてよく使われます) 影響 もあるかもしれません。
の出血も、直したいです。ひぞう ( 血をたくわえたり体を守るはたらきに関 わる臓器 です:研究で思わぬ出血が出る場所として安全性 の点で重要 です)
もっと正確 にねらう工夫 が必要 です。
AAVを何回も使うと、効 きにくいかもです。
体の守りのしくみが、じゃまするからです。
くり返し治療 のため、対策 が大事です。
このモデルで、別 の治療 も試 します。
組み合わせ治療 も考えます。
症状 がない時期から、進み方を止めたいです。
安全でよく効 く治療 を探 していきます。
