論文詳細
自然科学系
農学部
#学術雑誌論文
マウスの発生初期胚におけるBCBに対する染色性と胚盤胞期への発生能との関係
- AI解説:
- 近年、ブリリアントクレシル青(BCB)を用いた卵母細胞の選別が、さまざまな哺乳動物で試みられている。BCBはNADPHによって還元される性質があり、細胞の染色性はG-6-PDH活性の指標となる。本研究では、マウスの発生初期胚におけるBCB染色性とその後の発生能、およびG-6-PDH活性との関連性を調べることを目的とした。また、加齢動物の初期胚においても、BCB染色性と胚盤胞への発生能の違いを検討した。
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自然科学系
農学部
#学術雑誌論文
マウスの発生初期胚におけるBCBに対する染色性と胚盤胞期への発生能との関係
AI解説
- 背景と目的:
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近年、ブリリアントクレシル青(BCB)を用いた卵母細胞の選別が、さまざまな哺乳動物で試みられている。BCBはNADPHによって還元される性質があり、細胞の染色性はG-6-PDH活性の指標となる。本研究では、マウスの発生初期胚におけるBCB染色性とその後の発生能、およびG-6-PDH活性との関連性を調べることを目的とした。また、加齢動物の初期胚においても、BCB染色性と胚盤胞への発生能の違いを検討した。
- 主要な発見:
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成熟モデルマウスの2細胞期から桑実胚期の胚において、BCB陽性胚の出現率は94.2-96.4%と高く、発生率も85.7-96.7%であった。一方、加齢モデルマウスでは陽性胚の出現率は79.5%および58.6%と低下し、発生率は77.1%および79.4%であった。また、G-6-PDH活性とBCB染色性には有意な相関が確認され、強度のG-6-PDH活性を示す卵子と胚はBCBに陰性であることが多かった。
- 方法論:
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60から90日齢の成熟モデルマウス68匹と、300から360日齢の加齢モデルマウス30匹を使用し、卵子及び初期胚を採取した。BCB染色は26µMのBCBを含む培養液に浸漬し、染色後に陽性と陰性に分類した。さらに、胚をM16培養液で培養し、胚盤胞への発生の有無を観察した。G-6-PDH活性は組織化学的に検出し、ジホルマザン顆粒の量と分布状態に基づいて分類した。
- 結論と意義:
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BCB陽性の胚は、BCB陰性の胚に比べて胚盤胞への発生率が高いことが確認された。また、加齢動物でもBCB陽性の胚は発生能が高く、BCB染色は発生能の高い胚の非侵襲的選別に有効であることが示された。さらに、G-6-PDH活性とBCB染色性には密接な関係があり、G-6-PDH活性をBCB染色によって非侵襲的に推測することが可能であることが示唆された。
- 今後の展望:
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今後の研究では、他の動物種におけるBCB染色性と発生能の関連性の検証が求められる。また、BCBに陰性の未受精卵子の質についてのさらなる調査が必要であり、BCB染色による選別方法の最適化が期待される。加齢に伴う発生能の低下メカニズムの解明も重要な課題であり、BCB染色を用いた初期胚の選別技術の応用範囲を広げることが目指される。
- 背景と目的:
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最近、
という物質を使って、動物の卵母細胞(卵になる前の細胞)を選別する方法が研究されています。BCBはブリリアントクレシル青(BCB) ( NADPHによって色が変わる物質で、細胞の特定の酵素の活性を調べるのに使われます。) という物質によって色が変わるので、細胞の中の特定の酵素の働きを見るのに使われます。この研究では、マウスの初期の胚(受精卵が分裂していく過程)におけるBCBの色の変化とその後の発生能力、そしてNADPH ( 細胞の中でエネルギーを運ぶ役割をする物質です。) という酵素の活性との関係を調べることが目的です。また、年を取ったマウスの胚についても同じことを調べました。G-6-PDH ( グルコース-6-リン酸脱水素酵素の略で、細胞のエネルギー代謝に関与する酵素です。)
- 主要な発見:
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若いマウスの胚では、BCBによって色が変わるものが94.2%-96.4%と高い割合で見られ、発生能力も85.7%-96.7%と高かったです。しかし、年を取ったマウスの胚では、BCBの色が変わるものの割合が79.5%および58.6%と低下し、発生能力も77.1%および79.4%に低下しました。また、
という酵素の活性とBCBの色の変化には強い関連がありました。G-6-PDHの活性が高い卵子や胚は、BCBで色が変わらないことが多かったです。G-6-PDH ( グルコース-6-リン酸脱水素酵素の略で、細胞のエネルギー代謝に関与する酵素です。)
- 方法論:
-
60から90日齢の若いマウス68匹と、300から360日齢の年を取ったマウス30匹を使って、卵子と初期の胚を取り出しました。BCB染色は26µMのBCBを含む液に浸して行い、染色後に色が変わったものと変わらなかったものに分けました。その後、胚をM16培養液で育てて、
(発生が進んだ胚)になるかどうかを観察しました。胚盤胞 ( 受精卵が成長してできる構造で、将来の胎児の基になる部分です。) 活性は特別な方法で検出し、ジホルマザンという物質の量と分布を見て分類しました。G-6-PDH ( グルコース-6-リン酸脱水素酵素の略で、細胞のエネルギー代謝に関与する酵素です。)
- 結論と意義:
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BCBの色が変わる胚は、色が変わらない胚に比べて
になる確率が高いことが分かりました。また、年を取ったマウスでも同じ結果が得られました。BCB染色は、発生能力の高い胚を選ぶのに有効であることが示されました。さらに、胚盤胞 ( 受精卵が成長してできる構造で、将来の胎児の基になる部分です。) 活性とBCBの色の変化には密接な関係があり、BCB染色を使ってこの酵素の活性を非侵襲的に推測できることが示されました。G-6-PDH ( グルコース-6-リン酸脱水素酵素の略で、細胞のエネルギー代謝に関与する酵素です。)
- 今後の展望:
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今後の研究では、他の動物でもBCBの色の変化と発生能力の関係を調べる必要があります。また、BCBで色が変わらない未受精卵の質についてのさらなる調査が必要です。BCB染色を用いた選別方法の最適化が期待されます。加齢による発生能力の低下のメカニズムの解明も重要な課題です。
- 何のために?:
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最近 、 という薬を使って、BCB ( 細胞 の色を変 えて、元気な細胞 を選 ぶための薬です。) を動物の赤ちゃんになる 細胞 ( まだ赤ちゃんになっていない、とても小さな細胞 のことです。) 選 ぶ方法 が研究されています。BCBは、細胞 の中の特別 な物質 で色が変 わります。この研究では、マウスの赤ちゃんになる細胞 でBCBの色の変化 と、その細胞 がどれくらい元気に育つかを調べました。年を取ったマウスでも同じことを調べました。
- 何が分かったの?:
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若 いマウスでは、 で色がBCB ( 細胞 の色を変 えて、元気な細胞 を選 ぶための薬です。) 変 わる細胞 がたくさん見られました。その細胞 は元気に育ちました。でも、年を取ったマウスでは、BCBの色が変 わる細胞 が少なくなり、育ちも悪かったです。 というG-6-PDH ( 細胞 の中にある特別 な物質 です。これが多いと、細胞 はBCBで色が変 わりにくいです。) 特別 な物質 がたくさんある細胞 は、BCBで色が変 わりませんでした。
- どうやったの?:
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若 いマウス68匹 と、年を取ったマウス30匹 を使いました。 をBCB ( 細胞 の色を変 えて、元気な細胞 を選 ぶための薬です。) 含 む液 に細胞 を浸 して、色が変 わるかどうかを見ました。その後、細胞 を育てて、どれくらい元気に育つか観察 しました。 のG-6-PDH ( 細胞 の中にある特別 な物質 です。これが多いと、細胞 はBCBで色が変 わりにくいです。) 量 も特別 な方法 で調べました。
- 研究のまとめ:
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で色がBCB ( 細胞 の色を変 えて、元気な細胞 を選 ぶための薬です。) 変 わる細胞 は、色が変 わらない細胞 よりも元気に育ちやすいことがわかりました。この方法 は、元気な細胞 を選 ぶのに役立ちます。 のG-6-PDH ( 細胞 の中にある特別 な物質 です。これが多いと、細胞 はBCBで色が変 わりにくいです。) 量 とBCBの色の変化 には関係 があることがわかりました。
- これからどうする?:
-
これからの研究では、他の動物でも
で色がBCB ( 細胞 の色を変 えて、元気な細胞 を選 ぶための薬です。) 変 わる細胞 が元気に育つか調べる必要 があります。年を取った動物の細胞 がなぜ育ちにくくなるのかも研究します。
- 著者名:
- 小林 万優, 住田 翔太郎, 新村 末雄
- 掲載誌名:
- Journal of mammalian ova research
- 巻:
- 29
- 号:
- 4
- ページ:
- 180 - 186
- 発行日:
- 2012-10
- 著者による要約:
- 成熟モデルマウスの初期胚について,ブリリアントクレシル青(BCB)に陽性と陰性の胚の出現率とそれらの胚盤胞への発生率を調べた.2細胞期ないし桑実胚期の胚において,BCB陽性のものの出現率は,94.2ないし96.4%であり,BCB陰性胚の出現率に比べ,すべての時期で有意に高かった.また,BCB陽性胚の胚盤胞への発生率(85.7ないし96.7%)は,BCB陰性胚の0ないし50.0%に比べ,すべての時期で有意に高かった.一方,加齢モデルマウスから採取した2細胞胚および桑実胚において,BCB陽性のものの出現率は,79.5および58.6%であり,BCB陰性胚の出現率(20.5および41.4%)に比べて有意に高いとともに,BCB陽性胚の胚盤胞への発生率(77.1 および79.4%)も,BCB陰性胚の発生率(0および45.8%)に比べて有意に高かった.なお,BCB陽性の2細胞胚と桑実胚の出現頻度は,成熟モデルマウスから採取したものに比べて加齢モデルマウスから採取したもので有意に低かったが,胚盤胞への発生率は,両モデルマウスから採取した胚の間で相違なかった.以上の結果から,BCB陽性胚の体外での胚盤胞への発生率はBCB陰性胚に比べて有意に高いことが確かめられた.また,卵子と初期胚におけるBCBに対する染色性とG-6-PDH活性との間には相関のあることが考えられた.
The stainability of mouse embryos with brilliant cresyl blue (BCB) and the development to blastocysts of BCB-positive and BCB-negative embryos were examined. From the 2-cell to the morula stages, the incidences of BCB-positive embryos collected from mature mice were 94.2 to 96.4%. These rates were significantly higher at all stages than those of BCB-negative embryos. The rates of development to blastocysts of BCB-positive embryos (85.7 to 96.7%) were significantly higher than those of BCB-negative embryos (0 to 50.0%) at all stages. In 2-cell embryos and morulae collected from aged mice, the incidences of BCB-positive embryos (79.5 and 58.6%) were significantly higher than those of BCB-negative embryos (20.5 and 41.4%, respectively). The rates of development to blastocysts of BCB-positive 2-cell embryos and morulae collected from aged mice were 77.1 and 79.4%, which were significantly higher than those of BCB-negative embryos, 0 and 45.8%, respectively. Although the incidences of BCB-positive embryos collected from aged mice were significantly lower than those collected from mature mice, the rates of development to blastocysts in BCB-positive embryos did not differ between the embryos collected from aged and mature mice. In these findings, we demonstrate that BCB-positive embryos have high developmental ability to the blastocyst stage. A correlation was also found between BCB stainability and G-6-PDH activity in mouse eggs and embryos.
- 新潟大学学術リポジトリリンク:
- http://hdl.handle.net/10191/30511
