論文詳細
医歯学系
大学院医歯学総合研究科(歯)
#紀要論文
口腔顎顔面領域に発生した脂肪腫の臨床的検討
- AI解説:
- 脂肪腫は、分化した脂肪細胞からなる非上皮性腫瘍であり、全身の様々な部位に発生する。特に上半身の軀幹や頸部に多く見られるが、口腔顎顔面領域に発生する事例は比較的まれである。本研究は、過去21年間に経験した32例の口腔顎顔面領域の脂肪腫について、臨床的および病理組織学的な特徴を明らかにし、他施設の報告例と比較することでその特徴と傾向を検討することを目的とした。
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医歯学系
大学院医歯学総合研究科(歯)
#紀要論文
口腔顎顔面領域に発生した脂肪腫の臨床的検討
AI解説
- 背景と目的:
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脂肪腫は、分化した脂肪細胞からなる非上皮性腫瘍であり、全身の様々な部位に発生する。特に上半身の軀幹や頸部に多く見られるが、口腔顎顔面領域に発生する事例は比較的まれである。本研究は、過去21年間に経験した32例の口腔顎顔面領域の脂肪腫について、臨床的および病理組織学的な特徴を明らかにし、他施設の報告例と比較することでその特徴と傾向を検討することを目的とした。
- 主要な発見:
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本研究での脂肪腫の発生部位としては、頬粘膜が最も多く、次いで舌、下唇が続くことが判明した。また、性別による顕著な差は見られなかったが、年齢は40歳以上が大部分を占める中高年層に多い傾向が見られた。臨床診断においては、脂肪腫と診断されるケースが半数に留まり、線維腫や他の良性腫瘍と誤診されることもあった。摘出物の大きさは10mm以下が多く、再発は観察されなかった。
- 方法論:
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1989年1月から2009年12月までの21年間において、腫瘍摘出術を施行された32例を対象とした。外来診療記録と病理組織診断書を元に、性別、初診時年齢、病悩期間、受診経路、発生部位、臨床診断、摘出物の大きさ、病理組織学的診断を詳細に調査した。これにより、各症例の特徴を総合的に分析し、他施設の報告例との比較を行った。
- 結論と意義:
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口腔顎顔面領域の脂肪腫は比較的まれであるが、一定のパターンが見られることが判明した。性差はほとんどなく、中高年層に多く見られる傾向がある。また、臨床診断が容易でない場合も多く、画像診断の活用が重要である。再発が観察されなかったことから、完全摘出が可能であれば予後は良好であると言える。これらの知見は、口腔顎顔面領域の脂肪腫治療において有益であり、臨床診断の精度向上に寄与する。
- 今後の展望:
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脂肪腫の発生機序やリスクファクターについてのさらなる研究が必要である。また、画像診断技術の進歩により、より正確な臨床診断が可能となることが期待される。特に、MRIやCTの使用を通じて脂肪腫と他の軟組織腫瘍との鑑別診断を強化することが重要である。今後の研究では、脂肪腫の遺伝的背景や分子生物学的特徴についても検討し、より包括的な理解を深めることが求められる。
- 背景と目的:
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というのは、脂肪細胞からできている脂肪腫 ( 脂肪細胞からできる腫瘍のことです。良性で、普通は無害ですが、場所によっては問題になることがあります。) のことです。これは体のいろんな場所にできますが、特に上半身に多いです。しかし、口の中やあご、顔の周りにできるのは珍しいです。この研究では、過去21年間に経験した32例の口の中やあご、顔の脂肪腫について調べました。他の病院と比べて、その特徴や傾向を明らかにすることを目的としました。非上皮性腫瘍 ( 皮膚や粘膜ではない部分からできる腫瘍のことです。)
- 主要な発見:
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この研究でわかったことは、
ができる場所としては頬の内側が一番多く、次に舌、下唇が続くということです。また、男女の差はあまりなく、40歳以上の中高年層が多いという傾向がありました。診断の際には、脂肪腫とわかるケースは半分しかなく、線維腫や他の良性腫瘍と間違えることもありました。摘出した脂肪腫の大きさは10mm以下が多く、脂肪腫 ( 脂肪細胞からできる腫瘍のことです。良性で、普通は無害ですが、場所によっては問題になることがあります。) は見られませんでした。再発 ( 手術などで取り除いた後、再び腫瘍ができることです。)
- 方法論:
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1989年から2009年までの21年間に、腫瘍摘出手術を受けた32例を対象としました。外来の診療記録や病理組織診断書をもとに、性別や年齢、発症部位、臨床診断、摘出物の大きさなどを詳しく調査しました。そして、他の病院の報告例と比較して分析しました。
- 結論と意義:
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口やあご、顔の
は珍しいですが、ある程度のパターンがあることがわかりました。男女の差はほとんどなく、中高年に多いです。また、診断が難しいことも多く、脂肪腫 ( 脂肪細胞からできる腫瘍のことです。良性で、普通は無害ですが、場所によっては問題になることがあります。) が重要です。画像診断 ( X線、CT、MRIなどで体の中を映像で見る診断方法です。) が見られなかったので、完全に摘出できれば予後は良好と言えます。これらの知見は、脂肪腫治療の精度向上に役立ちます。再発 ( 手術などで取り除いた後、再び腫瘍ができることです。)
- 今後の展望:
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ができる原因やリスクについて、さらに研究が必要です。脂肪腫 ( 脂肪細胞からできる腫瘍のことです。良性で、普通は無害ですが、場所によっては問題になることがあります。) 技術が進歩することで、より正確な診断ができることが期待されます。特にMRIやCTを使って、脂肪腫と他の腫瘍を区別することが重要です。今後の研究では、脂肪腫の遺伝的背景や分子生物学的特徴についても調べ、より深い理解を目指します。画像診断 ( X線、CT、MRIなどで体の中を映像で見る診断方法です。)
- 何のために?:
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は、脂肪 腫 ( 脂肪 細胞 からできるしこり。体のいろんな場所にできて、特 に上半身に多い。) 脂肪 細胞 からできるしこりです。体のあちこちにできますが、上半身に多いです。口の中やあご、顔にできるのは珍 しいです。この研究では、21年間で見つかった32例 を調べました。どんな特徴 があるかを他の病院と比 べました。
- 何が分かったの?:
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ができる場所で一番多いのは、ほっぺの脂肪 腫 ( 脂肪 細胞 からできるしこり。体のいろんな場所にできて、特 に上半身に多い。) 内側 です。次に多いのは舌 や下くちびるです。40歳 以上 の中高年に多いです。脂肪 腫 と できたのは半分だけです。他のしこりと診断 ( 病気やけがの状態 を確認 し、名前をつけること。脂肪 腫 は他のしこりと間違 えられることがある。) 間違 えることもありました。しこりの大きさは1センチ以下 が多く、 しませんでした。再発 ( 一度治 った病気が再 び現 れること。脂肪 腫 の場合、しっかりと手術 で取 り除 けば、再発 はしにくい。)
- どうやったの?:
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1989年から2009年の間に、しこりを取る
手術 を受けた32人を調べました。診療 記録 や の病理 ( 病気の原因 や進行を研究する学問。病気の診断 や治療 に使われる。) 結果 を見て、性別 や年齢 、しこりの場所などを詳 しく調べました。そして、他の病院の報告 と比 べました。
- 研究のまとめ:
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口やあご、顔の
は脂肪 腫 ( 脂肪 細胞 からできるしこり。体のいろんな場所にできて、特 に上半身に多い。) 珍 しいですが、少しパターンがわかりました。中高年に多く、男女の差 はほとんどありません。 が診断 ( 病気やけがの状態 を確認 し、名前をつけること。脂肪 腫 は他のしこりと間違 えられることがある。) 難 しいことが多いので、画像 を使った検査 が大事です。完全 に取ることができれば、 はしません。これらのことは、再発 ( 一度治 った病気が再 び現 れること。脂肪 腫 の場合、しっかりと手術 で取 り除 けば、再発 はしにくい。) 治療 の役に立ちます。
- これからどうする?:
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ができる脂肪 腫 ( 脂肪 細胞 からできるしこり。体のいろんな場所にできて、特 に上半身に多い。) 原因 や危険 について、もっと研究が必要 です。画像 を使った検査 が進歩すれば、もっと正確 に できるようになります。診断 ( 病気やけがの状態 を確認 し、名前をつけること。脂肪 腫 は他のしこりと間違 えられることがある。) 特 に やMRI ( 磁石 と電波を使って体の中の画像 を作る機械 。脂肪 腫 を見つけるのに役立つ。) を使って、CT ( X線を使って体の断面 を撮影 する機械 。脂肪 腫 と他のしこりを区別 するために使う。) 脂肪 腫 と他のしこりを見分けることが大事です。これからの研究では、脂肪 腫 の遺伝 や細胞 についても調べます。
- 著者名:
- 野池 淳一, 清水 武, 五島 秀樹, 川原 理絵, 植松 美由紀, 細尾 麻衣, 横林 敏夫
- 掲載誌名:
- 新潟歯学会雑誌
- 巻:
- 41
- 号:
- 2
- ページ:
- 91 - 97
- 発行日:
- 2011-12
- 著者による要約:
- 当科で1989 年から2009 年までに経験した脂肪腫32 例について臨床的および病理組織学的に検討を行い,自験例の特徴を明らかにするために,本邦他施設の多数例報告論文との比較検討も行った。自験例では男女比は1.1:1であり,ほとんどが40 歳以上であった。発生部位は頬粘膜が11 例(34%),舌が8例(25%),下唇が7例(22%)であり,1例は顎骨内に認められた。臨床診断は脂肪腫が16 例(50%),線維腫が7例(22%),良性腫瘍が6例(19%)であった。腫瘍の最大径は最小が6mm,最大が50mm で,平均が15mm であった。病理組織学的診断は単純性脂肪腫が18 例(56%),線維脂肪腫が12 例(38%),化骨性脂肪腫,粘液脂肪腫が各1例であった。一方,本邦他施設の多数例報告論文をまとめると,発生部位は頬粘膜が75 例(42%),舌が32 例(18%),下唇が22 例(12%),歯肉が21 例(12%),口底が11 例(6%)であった。病理組織学的診断は単純性脂肪腫が126 例(75%),線維脂肪腫が33 例(20%)であり,他はほとんどみられなかった。自験例と本邦他施設の報告例を比較すると,顎骨内に発生した1例,および病理組織学的に化骨性脂肪腫,粘液脂肪腫と診断された各1例はきわめて珍しい例であった。
In this report, we examined 32 cases of lipoma treated at our department from 1989 to 2009, and we compare these cases with 200 cases reported before in Japan. In our cases, the male-female ratio was 1.1:1 and most of the patients were over 40 years of age. The site of involvement was buccal mucosa in 11 cases (34%), tongue in 8 cases (25%) and lower lip in 7 cases (22%). The clinical diagnosis was lipoma in 16 cases (50%), fibroma in 7 cases (22%) and benign tumor in 6 cases (19%). The size of tumor was ranged from 6mm to 50mm, and the mean size was 15mm. The histopathological diagnosis was simple lipoma in 18 cases (56%), fibrolipoma in 12 cases (38%), and the other 2 cases were osteolipoma and myxolipoma. Consider about the cases reported before in Japan, the site of involvement was buccal mucosa in 75 cases (42%), tongue in 32 cases (18%), lower lip in 22 cases (12%), gingival in 21 cases (12%) and oral floor in 11 cases (6%). The histopathological diagnosis was simple lipoma in 126 cases (75%), fibrolipoma in 33 cases (20%) and the other type of lipomas were rarely found. In our cases, intraosseous lipoma, ossifying lipoma, and myxolipoma were extremely rare.
- 新潟大学学術リポジトリリンク:
- http://hdl.handle.net/10191/47760
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