論文詳細
経済科学部
#紀要論文
和紙原料の流通状況とその諸課題
- AI解説:
- 2014年に「和紙日本の手漉和紙技術」がユネスコの無形文化遺産に登録されたことを受け、和紙製造技術への関心が高まっています。しかし、和紙の需要は減少傾向にあり、特に楮(こうぞ)の生産が減少しています。この論文の目的は、和紙の主要原料である楮の生産と流通の現状を調査し、その結果を基に和紙産業の持続可能性を検討することです。和紙の将来を見据え、国内外の原料生産の現状について詳しく報告し、今後必要となる対策や持続可能な供給方法を模索するための基礎資料を提供することが狙いです。
AI解説を見る
経済科学部
#紀要論文
和紙原料の流通状況とその諸課題
AI解説
- 背景と目的:
-
2014年に「和紙日本の手漉和紙技術」がユネスコの無形文化遺産に登録されたことを受け、和紙製造技術への関心が高まっています。しかし、和紙の需要は減少傾向にあり、特に楮(こうぞ)の生産が減少しています。この論文の目的は、和紙の主要原料である楮の生産と流通の現状を調査し、その結果を基に和紙産業の持続可能性を検討することです。和紙の将来を見据え、国内外の原料生産の現状について詳しく報告し、今後必要となる対策や持続可能な供給方法を模索するための基礎資料を提供することが狙いです。
- 主要な発見:
-
国内における楮の収穫量は1975年から直近までに大幅に減少しており、その背景には和紙の需要低下があります。さらに、低価格を求める市場の要請に応じて、タイや中国、パラグアイなどからの輸入楮が増加し、国内生産を圧迫しています。特にタイ産の楮は1975年以降、台風被害による国内生産の低迷を背景に輸入が拡大され、現在では和紙の主要原料の半数以上を占めています。また、輸入楮の依存は、その国の経済状況や政治的安定性に大きく左右されるリスクも浮き彫りになっています。
- 方法論:
-
この論文では、公刊資料による文献調査とともに、産地や流通業者への聞き取り調査を行い、実態を把握しました。具体的には、高知県産の楮を中心に国内の生産状況を調査し、タイ、中国、パラグアイなど海外の楮輸入事情についても現地の生産方法、品質、価格動向などを詳述しました。さらに、それぞれの地域での生産・流通の現状を比較し、国内外の楮生産の課題や将来展望について総合的に分析しました。
- 結論と意義:
-
和紙産業の持続可能性を確保するためには、国内の楮生産の復興が急務であることが明らかになりました。国内生産が減少し続けると、和紙の特徴を生かした製品の品質低下や、地域特性が失われるリスクが高まります。輸入楮への依存はコスト削減に寄与しますが、長期的には供給の不安定性が問題となります。このため、地域コミュニティや自治体の支援、企業との連携を通じて、生産者の意欲を高める施策が重要となります。また、持続可能な生産体制を構築するために、CSV(Creating Shared Value)の観点から企業の役割にも期待が寄せられています。
- 今後の展望:
-
今後の展望としては、国内外の楮生産のさらなる安定化と品質向上が求められます。特に国内産業の復興には、政府や企業の支援が不可欠です。具体的には、楮栽培の機械化や効率化、教育活動を通じた新たな担い手の育成が挙げられます。また、輸入に依存するリスクを低減するための多角的な供給源の確保や、品質管理の徹底が重要です。さらに、和紙の新たな用途開発やプロモーション活動を通じて、和紙文化の普及と需要喚起を図ることが期待されています。企業とのコラボレーションを進め、ブランド価値の向上とともに地域社会全体での和紙産業振興を目指します。
- 背景と目的:
-
2014年に「和紙日本の手漉和紙技術」が
に登録されてから、和紙作りに対する関心が高まっています。しかし、和紙の需要は減少しており、特にユネスコの無形文化遺産 ( ユネスコ(国際連合教育科学文化機関)が登録する、形のない文化(例えば、伝統工芸や舞踊など)を保護しようとする取り組みです。) (こうぞ)の生産が減っています。この論文の目的は、和紙の主な材料である楮の生産と流通の現状を調査し、和紙産業の持続可能性を検討することです。和紙の将来を見据えて、国内外の原料生産の現状を詳しく報告し、今後必要な対策や持続可能な供給方法を考えます。楮 ( 和紙の主要な原料となる植物で、その樹皮から繊維を取って紙を作ります。)
- 主要な発見:
-
日本国内での
の収穫量は1975年以降、大幅に減少しています。その背景には和紙の需要の低下があります。さらに、安価な市場の要求に応じて、タイや中国、パラグアイなどからの輸入楮が増え、国内生産を圧迫しています。特にタイ産の楮は1975年以降、台風による国内生産の低迷を受けて輸入が増え、現在では和紙の主要原料の半分以上を占めています。輸入楮への依存は、その国の経済状況や政治的安定性に大きく影響を受けるリスクがあります。楮 ( 和紙の主要な原料となる植物で、その樹皮から繊維を取って紙を作ります。)
- 方法論:
-
この論文では、公開されている資料による文献調査と、産地や流通業者への聞き取り調査を行い、実態を把握しました。具体的には、高知県産の
を中心に国内の生産状況を調査し、タイ、中国、パラグアイなど海外の楮輸入の実情についても現地の生産方法、品質、価格動向などを詳しく調べました。それぞれの地域での生産・流通の現状を比較し、国内外の楮生産の課題や将来展望を総合的に分析しました。楮 ( 和紙の主要な原料となる植物で、その樹皮から繊維を取って紙を作ります。)
- 結論と意義:
-
和紙産業の持続可能性を確保するためには、国内の
生産を復興させることが急務であることがわかりました。国内生産が減少し続けると、和紙の品質が下がり、地域特有の特徴が失われるリスクがあります。輸入楮への依存はコスト削減に役立ちますが、長期的には供給の不安定性が問題となります。このため、地域コミュニティや自治体の支援、企業との連携を通じて、生産者の意欲を高める施策が重要です。また、持続可能な生産体制を構築するために、楮 ( 和紙の主要な原料となる植物で、その樹皮から繊維を取って紙を作ります。) (Creating Shared Value)の観点から企業の役割にも期待されています。CSV ( 企業が社会的課題を解決することで、同時に経済的な価値も生み出す経営の考え方です。)
- 今後の展望:
-
今後は、国内外の
生産のさらなる安定化と品質向上が求められます。特に国内の和紙産業の復興には、政府や企業の支援が必要です。具体的には、楮栽培の機械化や効率化、新たな担い手の育成が求められます。また、輸入に依存するリスクを減らすための多角的な供給源の確保や品質管理の徹底が重要です。さらに、和紙の新たな用途開発やプロモーション活動を通じて、和紙文化の普及と需要を喚起することが期待されています。企業とのコラボレーションを進め、ブランド価値の向上とともに地域社会全体で和紙産業の振興を目指します。楮 ( 和紙の主要な原料となる植物で、その樹皮から繊維を取って紙を作ります。)
- 何のために?:
-
2014年に、「和紙を作る
技術 」がユネスコの大事な文化に選 ばれました。でも、和紙の人気は減 っています。特 に、和紙の材料 のひとつ「楮 (こうぞ)」の生産 が少なくなっています。この研究は、楮 の生産 と売り方を調べて、和紙作りをずっと続 ける方法 を考えることが目的 です。
- 何が分かったの?:
-
日本では、1975年から
楮 の収穫 が減 っています。その原因 は、和紙の人気が下がったからです。さらに、タイや中国、パラグアイから安い楮 を輸入 することが増 えています。特 に、タイからの楮 は多くの和紙に使われています。これに頼 ると、その国の経済 や政治 の問題に影響 されるリスクがあります。
- どうやったの?:
-
この研究では、本や
資料 を調べたり、楮 を作っている人たちに話を聞いたりしました。高知県での楮 の生産 や、タイ、中国、パラグアイでの楮 の生産 方法 や品質 、値段 を詳 しく調べました。いろいろな場所での生産 や売り方を比 べてみました。そして、楮 生産 にどんな問題があるかを分析 しました。
- 研究のまとめ:
-
和紙作りを
続 けるためには、日本での楮 生産 を増 やすことが大事だとわかりました。日本で楮 が減 ると、和紙の質 が悪くなり、その地域 の特別 な和紙がなくなる危険 があります。安い楮 を輸入 するのはお金の節約 になりますが、供給 が安定しない問題があります。地域 の人や自治体 、企業 が協力 して、生産者 のやる気を高めることが必要 です。そして、長く作り続 けられる体制 を作るために、企業 も大切な役割 を果 たします。
- これからどうする?:
-
これからは、国内外の
楮 生産 をもっと安定させて、質 を上げることが求 められます。特 に、日本での和紙作りを復活 させるために、政府 や企業 の支援 が必要 です。例 えば、楮 を育てる機械 を使ったり、効率 を上げたり、新しい人を育てたりすることが大事です。また、輸入 に頼 らずに、いろんな供給 先を確保 することや、品質 管理 をしっかりすることも重要 です。そして、和紙の新しい使い方を考えたり、和紙を広める活動をして、和紙の需要 を増 やすことが期待されています。企業 と協力 して、和紙のブランド価値 を上げ、地域 全体で和紙作りを盛 り上 げます。
- 著者名:
- 長尾 雅信
- 掲載誌名:
- 新潟大学経済論集
- 巻:
- 102
- ページ:
- 37 - 49
- 発行日:
- 2017-03
- 著者による要約:
- 和紙は古来より日本社会の生活に深く根ざし,独自の文化を支えてきた。しかし,日本社会の洋式化が進むに従い和紙の需要も減退し,原料の一つである楮の生産は現在,危機に瀕している。国内の楮生産量はこの三十年で15%ほどに落ち込んだ。楮栽培の主な担い手は70~80歳代の後期高齢者という状況にある。それに応じ,楮の原料商はタイ,中国,パラグアイなどから輸入を増やしており,海外産の楮によって数量確保がなされている。但し,各国ともに経済発展の影響による生産コストの上昇などにより,今後も安泰とは言い難い。\u3000いまひとつの課題は,楮の皮たくりの人手不足にある。楮の甘皮をはぐこの作業は,和紙の風合いを出す重要な工程であり,その分手間がかかる。これまで多くの産地では,地域コミュニティに支えられて行われていたが,限界集落化に見られるようなコミュニティの衰退によって,人手が集まらない状況にある。\u3000和紙需要の低迷,動物による楮の食害,楮加工の多大なる手間に鑑みると,農家にとり楮栽培は収益源として魅力がなく,抜本的な対策が取られないままでは新たな担い手は見込めない。CSV(Creating Shared Value)運動から,楮流通を含む和紙文化の支援において企業の役割にも期待がかかる。
- 新潟大学学術リポジトリリンク:
- http://hdl.handle.net/10191/47153
一覧へ戻る
検索ページトップへ戻る