論文詳細

人文社会科学系 経済科学部 #紀要論文

和紙原料の流通状況とその諸課題

AI解説:
2014年に「和紙日本の手漉和紙技術」がユネスコの無形文化遺産(ユネスコ(国際連合教育科学文化機関)が登録する、形のない文化(例えば、伝統工芸や舞踊など)を保護しようとする取り組みです。)に登録されてから、和紙作りに対する関心が高まっています。しかし、和紙の需要は減少しており、特に(和紙の主要な原料となる植物で、その樹皮から繊維を取って紙を作ります。)(こうぞ)の生産が減っています。この論文の目的は、和紙の主な材料である楮の生産と流通の現状を調査し、和紙産業の持続可能性を検討することです。和紙の将来を見据えて、国内外の原料生産の現状を詳しく報告し、今後必要な対策や持続可能な供給方法を考えます。
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著者名:
長尾 雅信
掲載誌名:
新潟大学経済論集
巻:
102
ページ:
37 - 49
発行日:
2017-03
著者による要約:
和紙は古来より日本社会の生活に深く根ざし,独自の文化を支えてきた。しかし,日本社会の洋式化が進むに従い和紙の需要も減退し,原料の一つである楮の生産は現在,危機に瀕している。国内の楮生産量はこの三十年で15%ほどに落ち込んだ。楮栽培の主な担い手は70~80歳代の後期高齢者という状況にある。それに応じ,楮の原料商はタイ,中国,パラグアイなどから輸入を増やしており,海外産の楮によって数量確保がなされている。但し,各国ともに経済発展の影響による生産コストの上昇などにより,今後も安泰とは言い難い。\u3000いまひとつの課題は,楮の皮たくりの人手不足にある。楮の甘皮をはぐこの作業は,和紙の風合いを出す重要な工程であり,その分手間がかかる。これまで多くの産地では,地域コミュニティに支えられて行われていたが,限界集落化に見られるようなコミュニティの衰退によって,人手が集まらない状況にある。\u3000和紙需要の低迷,動物による楮の食害,楮加工の多大なる手間に鑑みると,農家にとり楮栽培は収益源として魅力がなく,抜本的な対策が取られないままでは新たな担い手は見込めない。CSV(Creating Shared Value)運動から,楮流通を含む和紙文化の支援において企業の役割にも期待がかかる。
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