<研究ノート>「人間発達の経済学」研究の現状と展望 : 第7回人間発達の経済学日中会議に参加して

背景と目的：

本論文は、日本学術振興会のアジア研究教育拠点事業の一環として行われた「人間の持続的発達に関する経済学的研究」の第7回日中全体会議の報告とその議論を紹介し、「人間発達の経済学」の今日の到達点と共生経済学との関連を探ることを目的としています。この国際共同研究プロジェクトは、2007年に開始され、日本と中国の研究者が人間発達に関する経済学的視点を深めるために共同で研究を行ってきました。

主要な発見：

会議では、日本、中国、ベトナム、ラオスなどの研究者が参加し、24篇の論文が発表されました。特に注目されたのは、中国の新疆ウィグル自治区における少数民族経済や、ベトナムの社会主義市場経済への転換と人間発達の意義などです。これらの議論を通じて、市場メカニズムだけではなく、政府の役割が人間発達と持続可能な発展において重要であることが確認されました。

方法論：

本論文は、会議で報告された論文のテーマと理論的関連性を中心に総括を行っています。特に、共通セッションや分科会での報告内容を詳細に分析し、経済人仮説の限界や社会的人間の研究のあり方について理論的枠組みを検討しています。また、各報告が掲げる理論的主張と実証分析を取り上げ、その意義を論じています。

結論と意義：

本論文は、「人間発達の経済学」の今日の到達点を概括し、持続可能な発展を達成するために市場メカニズムだけではなく、政府の介入や調整が重要であることを強調しています。また、経済成長から質的発展への転換が求められる現代において、人間発達がどのように経済政策や社会制度に反映されるべきかを示唆しています。さらに、この国際共同研究プロジェクトが若手研究者の育成に寄与している点も意義深いです。

今後の展望：

今後の展望としては、「人間発達の経済学」の理論的枠組みをさらに深化させ、実践的な政策提言に結びつけることが求められます。また、共生経済学との理論的接点を探り、持続可能な社会の構築に向けた具体的な方法論を探求することが期待されます。特に、地域経済の発展や都市化事業といった具体的なケーススタディを通じて、人間発達の経済学がどのように応用されるかを示すことが重要です。