論文詳細
人文学部
#紀要論文
Two Sides of the Same Coin : An Examination of Hallidayan and Schegloffian Accounts of Pitch Accent in Natural English Conversation
- AI解説:
- 本論文は、自然な英語の会話においてpitch accent(ピッチアクセント)が何をしているのかをめぐる、長年の見解の不一致を扱う。Halliday(情報構造)の伝統では、pitch accentは主として新しい情報や際立った情報を示す音韻的な顕著性(prominence)とみなされ、既知の情報はdeaccenting(アクセントが置かれないこと)される傾向があるとされる。これに対し、Schegloffに関連する会話分析(conversation analysis)の立場は、pitch accentがturn-taking(発話順番の調整)にも寄与しうる、すなわち近づいているTransition Relevance Place(TRP)を予告(project)することで、話者が発話権(floor)を手放しそうな位置を参加者が予測できるようにする、と主張する。本研究は、作例ではなく自然発生的なやり取りを用いて、どちらの説明が日常会話で観察可能な「音韻的現実(phonological reality)」により適合するかを判断することを目的とする。具体的には、pitch accentが主に新情報と一致するのか、turn transition(順番交代)のシグナルとして機能するのか、そして両機能が同一の会話システム内で共存しうるのかを問う。
AI解説を見る
人文学部
#紀要論文
Two Sides of the Same Coin : An Examination of Hallidayan and Schegloffian Accounts of Pitch Accent in Natural English Conversation
AI解説
- 背景と目的:
-
本論文は、自然な英語の会話においてpitch accent(ピッチアクセント)が何をしているのかをめぐる、長年の見解の不一致を扱う。Halliday(情報構造)の伝統では、pitch accentは主として新しい情報や際立った情報を示す音韻的な顕著性(prominence)とみなされ、既知の情報はdeaccenting(アクセントが置かれないこと)される傾向があるとされる。これに対し、Schegloffに関連する会話分析(conversation analysis)の立場は、pitch accentがturn-taking(発話順番の調整)にも寄与しうる、すなわち近づいているTransition Relevance Place(TRP)を予告(project)することで、話者が発話権(floor)を手放しそうな位置を参加者が予測できるようにする、と主張する。本研究は、作例ではなく自然発生的なやり取りを用いて、どちらの説明が日常会話で観察可能な「音韻的現実(phonological reality)」により適合するかを判断することを目的とする。具体的には、pitch accentが主に新情報と一致するのか、turn transition(順番交代)のシグナルとして機能するのか、そして両機能が同一の会話システム内で共存しうるのかを問う。
- 主要な発見:
-
結果は両方の立場を部分的に支持したが、いずれも例外なく当てはまる(categorical)ものとしては確認されなかった。Halliday的予測については、pitch accentは新情報を導入する内容語(content word)にしばしば現れ、とくに会話の早い段階で顕著であり、また反復項目がdeaccentingされる例も複数の抜粋で示された。数量的には、データセットにはpitch accentが128個含まれていたが、kinesthetic deixisおよびcontrastive stressに起因するとされたmarked casesを除外すると、121個のアクセントが残った。そのうち、71個(55%)が新情報としてコード化された内容語に、44個(34%)が既知(given)の内容語に、6個が機能語/構造語(function/structure word)に置かれていた。新–既知の厳密な説明にとって大きな難点となったのは、反復された素材が頻繁にアクセント付けされていた点であり、とりわけnear-repetitions(ほぼ同じ反復)では、話者が語句だけでなくpitch accentの配置やより広いイントネーション・パターンまでも再現していた。
Schegloff的予測については、pitch accentはTRPとして扱われた統語的完結点(syntactic completion point)上またはその近傍にしばしば現れたが、これも一貫してはいなかった。91件のturn change(順番交代)のうち87件は統語的完結点で起きていた。統語的非完結(syntactic non-completion)での4件のturn change、continuerに基づく18件のturn change、discourse markerに基づく6件のturn changeを除外すると、「非自明(non-trivial)」なturn changeが64件残り、そのうち35件(55%)は、交代の位置または交代のわずか手前にpitch accentがあることと一致していた。さらに本論文は、pitch accent+統語的完結が常にturn changeを生むわけではない体系的理由として、境界を不明瞭にする戦略的な「rush-through」、視線がないことなどの文脈的要因、そして認知的制約(例:すぐ返答できる答えが用意できていない)を記述する。また、contrastive pitch accentsはturn-transitionの手がかりとしては振る舞わないと論じられた。
- 方法論:
-
分析は、英語母語話者2名(New Zealand EnglishとBritish English)の単一のデジタル録音による相互行為に基づく。録音は18分以上であったが、実際の対話(8分間の会話)のうち最初の3分のみを分析対象とした。これは、会話初期は新/既知の地位(new/given status)を確定しやすいこと、また長い区間は詳細なコード化が非現実的であることを、著者らが理由として挙げたためである。この区間の全発話について、(i) pitch-accentの位置、(ii) 新情報か既知情報か、(iii) 統語的完結点、(iv) 統語的完結点における音韻的(イントネーション上の)完結(phonological completion)をコード化した。
pitch accentはSchegloffに沿って広く操作化され、(a) 発話内で相対的に最も強いピッチ移動(最大の上昇/下降:largest step-up/step-down)である場合、または(b) 強度(デシベル音量)の増加による顕著性(prominence)である場合、とされた。聴取判断はPRAATで確認された。新情報は、内容語について厳密な「初出(first mention)」規則で意味論的に同定し、ただし新しい意味で再使用された項目、または談話上新規の指示対象(discourse-novel referent)を記述する項目は例外とした。以後の言及は既知としてコード化した。統語的完結は最上位節(highest clause)の動詞の項構造(verb argument structure)により定義し、補部(complements)や付加(additions)について追加の完結点も設定した。音韻的完結は統語的完結点でのみコード化され、文末イントネーションがlow-fallまたはhigh-riseである場合に存在すると扱った。その他の境界タイプも記録したが、音韻的完結としては数えなかった。理論的評価は共起/相関(collocation/correlation)に依拠し、pitch accentが新情報と整合することをHallidayの証拠、pitch accentが(統語的完結と結びついて)TRP/turn changeと整合することをSchegloffの証拠とみなした。
- 結論と意義:
-
本論文は、「同じコインの裏表(two sides of the same coin)」という特徴づけが妥当だと結論づける。すなわち、この会話サンプルにおけるpitch accentは、情報構造上の機能とturn projection(順番交代の予告)機能の双方を支持しているように見えるが、それはいずれも確率的(probabilistically)に、という形である。情報構造について著者らは、pitch accentは概して新情報を強調することが多い一方で、既知の素材、とりわけ反復されたturnに置かれるアクセントの割合が相当程度あることから、単純にdeaccentingを期待するだけでは不十分だと述べる。turn-takingについて著者らは、pitch accentが統語的完結としばしば協調してTRPをより目立たせ、参加者がturn終結の手がかりとしてアクセントに志向することがある(ときにタイミングのずれた参入/overlapを含む)と論じる。しかし同時に、turn changeは、発話末イントネーション、系列的位置(例:「third position」での寄与)、戦略的な音声設計(rush-through)、文脈的/認知的制約など、複数要因の相互作用によって形づくられるため、pitch accentを単独の引き金(standalone trigger)として扱うことはできない、と強調する。本研究の意義は、自然発生的な会話(naturally occurring talk)を用いた実証的比較を提示し、会話実践の中でpitch accentを多機能的(multifunctional)に位置づけた点にある。他方で、きわめて限定されたデータセットに基づくため、証拠は暫定的であることも認めている。
- 今後の展望:
-
本論文は、結論が暫定的であることを明示しており、その根拠として、証拠が録音1件の会話、しかもその3分区間のみに由来する点を挙げている。両説明をより確実に評価するには、より自然主義的な対話データとより大きなサンプルを用いた、より広範な実証研究が必要だと示唆する。議論ではまた、今後の研究が対処すべき具体的な方法論上の課題として、pitch accentの役割を他のturn-taking資源(とくに発話末イントネーション・パターン)から切り分けること、さらに系列的文脈と参加者行動(例:視線、応答可能性、rush-throughによる戦略的な境界の不明瞭化)が、潜在的TRPが実際に「採用」されるかどうかをどのように調整するのかを特定することを挙げている。加えて、将来研究ではpitch accentを一様な相互行為機能をもつものと仮定するのではなく、異質なもの(例:contrastiveとnon-contrastiveのアクセント)として扱うべきであり、アクセント配置が情報状態(information status)を反映する場合と、反復における相互行為的な予告や模倣(imitation)を反映する場合とを切り分けられる分析手法を発展させるべきだ、と示唆している。
- 背景と目的:
-
この研究は、英語の自然な会話で
が何のために使われているのかについて、考え方が分かれている問題を調べています。pitch accent ( 会話の中で特に目立つ音の強調のことです。声の高さが大きく上がったり下がったりする部分、または音量が上がって目立つ部分を指します。新しい情報を強調したり、話が一区切りしそうだと相手に伝えるのに関わると考えられます。)
1つ目の考え方は、pitch accentは「新しく出てきた大事な情報」を目立たせるためのものだ、というものです。この立場では、すでに出た情報はアクセントを置かないことが多いと考えます。
2つ目の考え方は、pitch accentが会話の順番交代にも関係すると考えます。つまり、「そろそろ話し手が話し終わりそうだ」という場所を予告して、次の人が話し始めるタイミングをつかみやすくする、という立場です。
この研究は、作った例文ではなく実際の会話データを使って、どちらの説明が日常会話の実態に合うか、また両方の役割が同時に成り立つのかを確かめることを目的としています。
- 主要な発見:
-
結果として、2つの考え方はどちらもある程度当てはまりましたが、「いつも必ずそうなる」とは言えませんでした。
新情報との関係では、 は新しいpitch accent ( 会話の中で特に目立つ音の強調のことです。声の高さが大きく上がったり下がったりする部分、または音量が上がって目立つ部分を指します。新しい情報を強調したり、話が一区切りしそうだと相手に伝えるのに関わると考えられます。) に置かれることが多く、会話の最初のほうで特に目立ちました。一方で、同じ内容を繰り返しているのにアクセントが付く例も多く見つかりました。データでは、特別な理由で付いたものを除くとpitch accentは121個あり、そのうち新情報の内容語に71個、既知情報の内容語に44個、内容語 ( 名詞や動詞や形容詞など、意味の中心になる語のことです。新情報かどうかを判断する対象になりやすいです。) に6個ありました。特に「ほぼ同じ言い直し」では、言葉だけでなくアクセントの位置や機能語 ( 前置詞や代名詞など、文の形を作る役割が強い語のことです。内容語に比べるとアクセントが置かれにくいとされます。) の形まで似せることがあり、新情報だけで説明するのは難しいことが分かりました。イントネーション ( 声の高さの動きによる話し方のパターンのことです。文の終わりや続きそうな感じを伝えるのに使われます。)
順番交代との関係では、pitch accentが文として区切りがつく場所やその近くに出やすい傾向がありました。ただしこれも一貫しておらず、順番交代が起きるかどうかは、話す速さで区切りをぼかすこと、視線などの状況、すぐに返事できるかどうかといった要因にも左右されました。また、対比を強調するタイプのpitch accentは、順番交代の合図としては働きにくいと述べています。
- 方法論:
-
英語母語話者2人の自然な会話をデジタル録音したデータを使いました。録音は18分以上ありますが、実際の会話8分のうち最初の3分だけを分析しました。会話の最初のほうが新情報と既知情報を判断しやすいことと、長時間を細かく分析するのが現実的ではないことが理由です。
分析では、各発話について の位置、新情報か既知情報か、文として区切りがつく場所、そしてその場所でpitch accent ( 会話の中で特に目立つ音の強調のことです。声の高さが大きく上がったり下がったりする部分、または音量が上がって目立つ部分を指します。新しい情報を強調したり、話が一区切りしそうだと相手に伝えるのに関わると考えられます。) 的にも終わっているかを記録しました。pitch accentは、発話の中で特に大きく声の高さが動く部分、または音量が上がって目立つ部分として広く捉え、ソフトを使って確認しました。イントネーション ( 声の高さの動きによる話し方のパターンのことです。文の終わりや続きそうな感じを伝えるのに使われます。)
- 結論と意義:
-
この研究は、
は「新情報を目立たせる働き」と「順番交代を予告する働き」の両方を持ちうると結論づけています。ただし、どちらも確率的で、必ずそうなるわけではありません。pitch accent ( 会話の中で特に目立つ音の強調のことです。声の高さが大きく上がったり下がったりする部分、または音量が上がって目立つ部分を指します。新しい情報を強調したり、話が一区切りしそうだと相手に伝えるのに関わると考えられます。)
また、順番交代はpitch accentだけで決まるのではなく、文末の 、会話の流れの中での位置、話し方の工夫、状況や認知面の条件など、複数の要因が組み合わさって起きると強調しています。イントネーション ( 声の高さの動きによる話し方のパターンのことです。文の終わりや続きそうな感じを伝えるのに使われます。)
自然な会話データで2つの説明を比べ、pitch accentを多機能なものとして示した点が重要ですが、データが少ないため結論は暫定的だとも述べています。
- 今後の展望:
-
今後は、もっと多くの自然な会話データを集めて、より確かな結論を出す必要があります。特に、
の働きを他の順番交代の手がかり、たとえば文末pitch accent ( 会話の中で特に目立つ音の強調のことです。声の高さが大きく上がったり下がったりする部分、または音量が上がって目立つ部分を指します。新しい情報を強調したり、話が一区切りしそうだと相手に伝えるのに関わると考えられます。) から切り分けて調べることが課題です。さらに、視線や、返答できる準備があるか、話す速さで区切りをぼかすかといった要素が、「ここで交代できそう」という場所が実際に使われるかどうかにどう影響するのかも調べる必要があります。加えて、pitch accentを一種類として扱うのではなく、対比のアクセントなど種類の違いも分けて分析するべきだと示しています。イントネーション ( 声の高さの動きによる話し方のパターンのことです。文の終わりや続きそうな感じを伝えるのに使われます。)
- 何のために?:
-
この研究は、
英語 の会話を調べます。
英語 では、声の高さを強くします。
これを「アクセント」と言います。
アクセントには、考え方が2つあります。
1つ目は、新しい大事な言葉を目立たせます。
2つ目は、話す人が代わる合図になります。
この研究は、本当の会話で確 かめます。
どちらが合っているかを見ます。
両方がいっしょにあるかも見ます。
- 何が分かったの?:
-
結果 は、2つとも少し当てはまりました。
でも、いつもそうとは言えません。
アクセントは、新しい言葉で多めでした。
とくに、会話のはじめに目立ちました。
でも、同じことを言うときもありました。
アクセントは全部で121こ見つかりました。
新しい言葉に71こ、つきました。
知っている言葉に44こ、つきました。
「は」など短い言葉に6こ、つきました。
言い直すとき、形まで似 ることもありました。
だから、新しい言葉だけでは説明 しにくいです。
また、文が切れそうな所に出やすかったです。
でも、それも毎回ではありません。
相手を見ることや、返事のしやすさも関係 しました。
強くくらべるアクセントは、合図になりにくいです。
- どうやったの?:
-
英語 が の2人の会話を母語 ( その言葉をいちばん最初 に身につけた言葉のことです:家でいつも使っている言葉や小さいころから自然 に話せる言葉です:話し方のくせや発音の特徴 に関 わるので研究で大切です) 録音 しました。
録音 は18分以上 あります。
でも、会話のはじめの3分を調べました。
はじめは、新しい話かどうか分かりやすいです。
長い時間を全部調べるのは大変 です。
調べたのは、アクセントの場所です。
それが新しい話か、知っている話かも見ました。
文の切れ目がどこかも調べました。
声の上がり下がりで終わったかも見ました。
を使い、音を目で見てソフト ( コンピュータで使う道具のプログラムのことです:音を目で見て確 かめるなど特定 の作業に使います:人の耳だけでは分かりにくいことを正確 に調べるために重要 です) 確 かめました。
- 研究のまとめ:
-
アクセントは、新しい話を目立たせます。
アクセントは、交代の合図にもなれます。
でも、どちらも必 ず起きるわけではありません。
話す人の交代は、アクセントだけで決まりません。
文の終わりの言い方も関係 します。
会話の流れの中での場所も関係 します。
話す速さや、その場のようすも関係 します。
この研究は、2つの見方をくらべました。
アクセントはいろいろな働 きがあると示 しました。
ただし、会話の数が少なく、まだ途中 です。
- これからどうする?:
-
これから、もっと会話を集める
必要 があります。
そうすれば、もっと確 かな答えが出ます。
アクセントだけの働 きを分けて調べたいです。
たとえば、文の終わりの言い方と分けます。
相手を見ることのえいきょうも調べます。
返事の準備 があるかも調べます。
話す速さで、切れ目がぼけるかも見ます。
アクセントにも、いくつか種類 があります。
くらべるためのアクセントなども分けて見ます。
- 著者名:
- O’Neal George
- 掲載誌名:
- 新潟大学言語文化研究
- 巻:
- 17
- ページ:
- 1 - 29
- 発行日:
- 2012-07
- 新潟大学学術リポジトリリンク:
- http://hdl.handle.net/10191/19282
