論文詳細
人文学部
#紀要論文
On the Interpretations of the Discontinuous WH-mo Construction
- AI解説:
- 本論文は、日本語の不連続WH-mo構文(discontinuous WH-mo construction)の意味解釈を検討する。この構文では、*dare*「誰」のような不定語句(indeterminate phrase)が関係節の内部に現れる一方で、助詞*mo*はその不定語句の外側に現れる。しかし、構文全体としては典型的に全称に近い解釈(例:「すべてのxについて…」)が得られる。先行研究では、これに対して競合する2つの説明が提案されている。**埋め込み制限部説(embedded restrictor view: ERV)**では、埋め込み節内の不定語句が意味的に*mo*と関連づけられ、全称量化の制限部(restrictor)を提供すると考える。これに対し、**直接制限部説(direct restrictor view: DRV)**では、関係節の主要部名詞(例:「宿題」)そのものが*mo*を制限し、*mo*は主要部名詞が指す集合を量化するとする。本論文の主目的は、この構文の真理条件的ふるまいを精査し、とりわけ日本語において主要部名詞が定的(definite)にも不定的(indefinite)にも解釈されうる点に注目して、DRVよりもERVのほうが観察される解釈の範囲を適切に捉えると論じ直すことである。
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人文学部
#紀要論文
On the Interpretations of the Discontinuous WH-mo Construction
AI解説
- 背景と目的:
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本論文は、日本語の不連続WH-mo構文(discontinuous WH-mo construction)の意味解釈を検討する。この構文では、*dare*「誰」のような不定語句(indeterminate phrase)が関係節の内部に現れる一方で、助詞*mo*はその不定語句の外側に現れる。しかし、構文全体としては典型的に全称に近い解釈(例:「すべてのxについて…」)が得られる。先行研究では、これに対して競合する2つの説明が提案されている。**埋め込み制限部説(embedded restrictor view: ERV)**では、埋め込み節内の不定語句が意味的に*mo*と関連づけられ、全称量化の制限部(restrictor)を提供すると考える。これに対し、**直接制限部説(direct restrictor view: DRV)**では、関係節の主要部名詞(例:「宿題」)そのものが*mo*を制限し、*mo*は主要部名詞が指す集合を量化するとする。本論文の主目的は、この構文の真理条件的ふるまいを精査し、とりわけ日本語において主要部名詞が定的(definite)にも不定的(indefinite)にも解釈されうる点に注目して、DRVよりもERVのほうが観察される解釈の範囲を適切に捉えると論じ直すことである。
- 主要な発見:
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中心となる経験的主張は、不連続WH-mo構文を一般に「*mo*が主要部名詞を量化する」として(DRVのように)分析することはできない、という点である。本論文は、主要部名詞の指示対象のうち多くが主節述語(matrix predicate)を満たさない場合であっても、埋め込み節内の不定語句が導入する各値(value)ごとに、主要部名詞の中に適切な証人(witness)が存在する限り、文が真と判断される例を示す。たとえば「すべての教授について、(少なくとも)その教授が教えた学生のうち誰かが大学院に進学した」というタイプの例では、各教授の学生のうち一部だけが進学していても文は真のままであるが、どれか1人でも「そのような学生が1人もいない教授」がいると偽になる。このパターンは、主要部名詞(学生)に対する全称力ではなく、埋め込み不定語句(教授)に対する全称力を示す。週の曜日とパーティー出席を扱う例からも同様の点が導かれ、決定的に偽にする条件は「出席した学生がいない日」の存在であって、「出席しない学生」がいることではない。さらに本論文は、DRVに有利に見える事例(例:宿題がすべてA評価を受ける)が生じるのは、*mo*が意味論的に主要部名詞を全称的に束縛(bind)するからではなく、ある条件下で主要部名詞が定的に近い解釈へと強制されるためだと論じる。
- 方法論:
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本論文は、体系的に変化させた状況設定における日本語の受容性判断(acceptability judgments)と真理条件判断(truth-condition judgments)にもとづき、理論主導の意味論的議論を進める。まず、鍵となる例を用いてDRVの動機づけを再構成し、DRVが「主要部名詞の個体のうち1つでも述語を満たさなければ偽になる」と予測することを示す。この予測は、慎重に特定された状況ではいくつかの判断と整合的であることも示される。次に、浮遊量化(floated quantification)のある例(例:*hito-ri-wa*「少なくとも1人」)と、浮遊量化のない例の双方を含む追加例を導入し、*mo*が主要部名詞集合を量化せねばならないのか、それとも埋め込み不定語句の集合を量化するのかを検証する。著者は、場面記述を表形式で提示し(各集団の人数、述語を満たす人数など)、文が真であるためにどの対象が全称的に覆われる必要があるのかを切り分ける。その後、名詞句に関する日本語の独立の性質へと分析を進める。すなわち、日本語には明示的な定性(definiteness)や数(number)の標示がないため、主要部名詞は定的/不定的、単数/複数の読みのあいだで潜在的に曖昧になりうると論じられる。最後に、本論文は述語タイプがWH-moの読みを制約しうることを検討する。具体的には、Carlson (1977) の意味での個体レベル述語(individual-level)と段階レベル述語(stage-level)の区別、およびMilsarkに帰される関連観察にもとづき、個体レベル述語が不定主語を制限しうるため、WH-mo例で利用可能な解釈が形作られるとする。また、語用論的なもっともらしさ(例:現実世界では「複数の母」をもつことは稀である)も、特定の文が実際には曖昧に見えにくい理由を説明するために用いられる。
- 結論と意義:
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本論文は、不連続WH-mo構文について、**埋め込み制限部説(ERV)**が**直接制限部説(DRV)**よりも包括的に説明できると結論づける。ERVは、埋め込み不定語句が提供する各値が主要部名詞の内部で適切に(しばしば存在的に)満たされる限り、主要部名詞が主節述語によって網羅的に覆われる必要がない事例を正しく予測する。これに対しDRVが扱えるのは、主要部名詞が「関連する主要部名詞の個体すべてが述語を満たす」ことを事実上要求するように解釈される場合という部分集合に限られる。そして本論文は、そのような解釈は構文に固有のものではなく、名詞句解釈に関する独立の制約からしばしば生じると主張する。本分析の意義は、DRVの主要な根拠とされてきた論点を組み替える点にある。すなわち、主要部名詞に対する全称量化のように見えるデータは、(i) 日本語名詞句における定性と数の曖昧性、(ii) 不定主語を好まない個体レベル述語に伴う制約、(iii) 関係名詞(例:「母」)において聞き手を定的解釈へと傾ける語用論的圧力、によって説明できるとする。総じて本論文は、*mo*の意味的依存先は主要部名詞ではなく、埋め込み不定語句であるという立場を強化する。
- 今後の展望:
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本論文には、独立した「今後の課題」節や明示的な研究計画は提示されていない。
- 背景と目的:
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この論文は、日本語の「
」という言い方の意味の作られ方を調べています。この構文では、「誰」「どの先生」などのことばが不連続WH mo構文 ( 関係節の中に「誰」「どの〜」のようなWH語があり、助詞「も」はその外側に出るのに、文全体としては「すべての〜について」のような意味になりやすい日本語の構文です。この構文がどこを「全部」として扱うのかを調べることが、意味のしくみを理解するうえで重要です。) の中に出てくるのに対して、「も」はその外側に出てきます。それなのに、文全体の意味は「すべての〜について」といった、全員や全部をまとめて言う意味になりやすいのが特徴です。関係節 ( 名詞を詳しく説明するための節で、「〜した学生」「〜が書いた論文」のような形で名詞にかかります。不連続WH mo構文では、不定語句が関係節の中に入ることがポイントです。)
これまでの研究では、この意味がどう作られるかについて大きく2つの考え方がありました。1つ目は、関係節の中の「誰」「どの先生」などが「も」と結びついて、「すべての〜」の範囲を決めるという考え方です。2つ目は、関係節の中心にある名詞(例:「宿題」「学生」)が「も」の範囲を決めて、「も」はその名詞が指す集まり全体について言っている、という考え方です。
この論文の目的は、文が「正しいと言える条件( )」を細かく確かめて、特に日本語の名詞が「特定のもの」か「どれでもよいもの」かを文によって変えて解釈できる点に注目しながら、2つ目の考え方よりも1つ目の考え方のほうが、実際に出てくる意味の幅をうまく説明できると主張し直すことです。真理条件 ( ある文が、どんな状況なら「正しい」と言えて、どんな状況なら「正しくない」と言えるかを決める条件のことです。論文は、状況を変えたときの真理条件の違いから、どの分析が正しいかを判断します。)
- 主要な発見:
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この論文が中心的に示すのは、「も」が
の中心の名詞(例:「学生」)をいつも「全員・全部」としてまとめている、と考えるのは無理がある、という点です。関係節 ( 名詞を詳しく説明するための節で、「〜した学生」「〜が書いた論文」のような形で名詞にかかります。不連続WH mo構文では、不定語句が関係節の中に入ることがポイントです。)
たとえば「どの先生についても、その先生が教えた学生のうち誰かが大学院に進学した」のような文では、先生ごとに見て「進学した学生が少なくとも1人いる」なら文は正しいと言えます。逆に、どれか1人でも「進学した学生が1人もいない先生」がいると、その文は正しくないことになります。これは、「学生全員が進学した」が必要なのではなく、「先生それぞれについて条件を満たす学生がいるか」が大事だということです。
曜日とパーティー出席の例でも同じで、「出席しない学生がいる日がある」だけでは文はすぐに間違いになりません。決 に間違いになるのは、「その日に出席した学生が0人の日がある」ときです。定的 ( 話し手と聞き手が「どれのことか分かっている」特定のものとして名詞を解釈する読み方です。日本語は定的かどうかをはっきり示しにくいので、解釈の違いが議論のポイントになります。)
また、「宿題が全部Aだった」のように、一見すると「も」が名詞(宿題)全体を「全部」として言っているように見える例についても、実は「も」が名詞を全称的にまとめているからではなく、ある条件のもとで名詞が「特定のもの全部」という解釈になりやすいからだと論じています。
- 方法論:
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この論文は、いろいろな状況を想定して、日本語の文が自然に聞こえるか(
)や、その状況で文が正しいと言えるか(受容性判断 ( その文が日本語として自然に聞こえるかどうかの判断です。意味が成り立つかだけでなく、話者がどう感じるかもデータとして使うため重要です。) 判断)を確かめながら議論を進めます。真理条件 ( ある文が、どんな状況なら「正しい」と言えて、どんな状況なら「正しくない」と言えるかを決める条件のことです。論文は、状況を変えたときの真理条件の違いから、どの分析が正しいかを判断します。)
まず、先行研究の「名詞全体を『も』がまとめる」という考え方が、どんな場合に文を間違いだと予測するのかを整理します。そのうえで、量を表す表現(例:「少なくとも1人」)がある場合・ない場合の両方の例を使い、「も」が本当に の中心の名詞の集まりをまとめているのか、それとも関係節の中の「誰」「どの曜日」などをまとめているのかを検証します。人数や条件を満たした人数を表で示し、どれが「全部カバーされる必要がある対象」なのかを切り分けます。関係節 ( 名詞を詳しく説明するための節で、「〜した学生」「〜が書いた論文」のような形で名詞にかかります。不連続WH mo構文では、不定語句が関係節の中に入ることがポイントです。)
さらに、日本語の名詞は英語のように「the / a」などで特定かどうかをはっきり示さないため、同じ名詞でも文脈によって「特定のもの」にも「どれでもよいもの」にも読めてしまう点を使って分析します。最後に、述語の種類によっては「特定でない主語」が使いにくくなり、その結果、文の解釈が偏ることや、現実世界の常識(たとえば母親が複数いるのは普通は考えにくい)も、解釈が1つに見えやすい理由として働くことを述べます。
- 結論と意義:
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この論文は、
について、「不連続WH mo構文 ( 関係節の中に「誰」「どの〜」のようなWH語があり、助詞「も」はその外側に出るのに、文全体としては「すべての〜について」のような意味になりやすい日本語の構文です。この構文がどこを「全部」として扱うのかを調べることが、意味のしくみを理解するうえで重要です。) の中の『誰』『どの先生』などが『も』の範囲を決める」という考え方のほうが、「関係節の中心の名詞が『も』の範囲を決める」という考え方よりも、広い範囲の例を説明できると結論づけます。関係節 ( 名詞を詳しく説明するための節で、「〜した学生」「〜が書いた論文」のような形で名詞にかかります。不連続WH mo構文では、不定語句が関係節の中に入ることがポイントです。)
つまり、文が正しくなるために必要なのは「中心の名詞が指すもの全部が主節の条件を満たすこと」ではなく、「関係節の中で出てくる各パターン(各先生、各曜日など)ごとに、中心の名詞の中に条件を満たす例が見つかること」だと説明します。名詞が「全部Aの宿題」のように見える場合も、構文そのものの力というより、日本語名詞の「特定かどうか・単数か複数かがはっきりしない性質」や、述語の種類の制約、現実的な常識による読みの偏りで説明できるとします。
- 今後の展望:
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この論文では、独立した「今後の課題」の節や、はっきりした研究計画は示されていません。
- 何のために?:
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この文は、日本語の言い方を調べます。
「だれ」「どの先生」みたいな言葉です。
それは、文の中の小さな文に出ます。
でも「も」は、その外に出ます。
それでも文の意味は、
「みんなについて」になりやすいです。
今まで、考え方は2つありました。
1つ目は、「だれ」などが「も」と組みます。
そして、「みんな」の を決めます。範囲 ( 文の中で、その言葉が「どこまで」「なにを全部にするか」を決める部分のことです。例 えば「だれも」は「だれ」の範囲 が広がって「みんな」の意味になりやすいので大事です)
2つ目は、「学生」などの が決めます。名詞 ( 人や物の名前を表す言葉です。例 えば「学生」「先生」「曜日」「宿題」などで、文の意味の決め方に関係 します)
「も」は、その名詞 ぜんぶのことだとします。
この文のねらいは、文が正しい を見ます。条件 ( その文が「正しいと言えるために必要 な決まり」のことです。どんなときに文が成 り立つかを考えるために使います)
それで、どちらが合うか考えます。
そして、1つ目の考えがよいと言います。
- 何が分かったの?:
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「も」が、いつも
を名詞 ( 人や物の名前を表す言葉です。例 えば「学生」「先生」「曜日」「宿題」などで、文の意味の決め方に関係 します)
「ぜんぶ」と言うのは、むずかしいです。
たとえば、先生の文を考えます。
先生ごとに、進学した学生が1人でもいれば、
文は正しいと言えます。
でも、1人もいない先生がいたら、
文は正しくありません。
つまり、「学生ぜんいん」ではないです。
「先生それぞれで、だれかいる」が大事です。
曜日と出席 の話も同じです。
休む人がいる日があっても、すぐ間違 いではないです。
その日、だれも来ない日があると、間違 いです。
「宿題がぜんぶA」のような文も見ます。
これは、「も」が宿題ぜんぶを言うからではないです。
ときどき名詞 が「ある宿題ぜんぶ」に
なりやすいからだと話します。
- どうやったの?:
-
いろいろな場面を考えて、たしかめます。
文が自然 に聞こえるかを見ます。
その場面で、文が正しいかも見ます。
まず、前の考え方の予想をまとめます。
つぎに、「少なくとも1人」みたいな言葉が、
あるときと、ないときで比 べます。
そして、「も」が何をまとめるかを調べます。
「 の集まり」か、「だれ」などかを見ます。名詞 ( 人や物の名前を表す言葉です。例 えば「学生」「先生」「曜日」「宿題」などで、文の意味の決め方に関係 します)
人数を表にして、分けて考えます。
日本語の名詞 は、
かどうかがはっきりしにくいです。特定 ( どの人や物かが「はっきり決まっている」ことです。特定 かどうかで名詞 の受け取り方が変 わり、文の意味にも影響 します)
だから、同じ名詞 でも読み方が変 わります。
また、ことばの種類 で、読み方がかたよります。
ふつうの常識 も、読み方にえいきょうします。
- 研究のまとめ:
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この文は、1つ目の考え方がよいとまとめます。
つまり、「だれ」「どの先生」などが、
「も」の を決めると言います。範囲 ( 文の中で、その言葉が「どこまで」「なにを全部にするか」を決める部分のことです。例 えば「だれも」は「だれ」の範囲 が広がって「みんな」の意味になりやすいので大事です)
文が正しくなるには、
ぜんぶが名詞 ( 人や物の名前を表す言葉です。例 えば「学生」「先生」「曜日」「宿題」などで、文の意味の決め方に関係 します) をみたす条件 ( その文が「正しいと言えるために必要 な決まり」のことです。どんなときに文が成 り立つかを考えるために使います) 必要 はないです。
先生や曜日ごとに見て、
条件 をみたす人や物が1つでもあればよいです。
「宿題がぜんぶA」に見える文も、
作り方だけの力ではないと言います。
名詞 のあいまいさや、ことばの決まり、
常識 で、そう読めることがあると考えます。
- これからどうする?:
-
この文では、今後の計画は書かれていません。
- 著者名:
- Homma Shinsuke
- 掲載誌名:
- 新潟大学言語文化研究
- 巻:
- 15
- ページ:
- 1 - 11
- 発行日:
- 2010-07
- 新潟大学学術リポジトリリンク:
- http://hdl.handle.net/10191/13152
