論文詳細
自然科学系
災害・復興科学科学研究所
#紀要論文
クロアチアザグレブ市後背丘陵地における三次元斜面崩壊予測システムの開発
- AI解説:
- 本研究は、クロアチアのザグレブ市北西部にあるメドヴェドニツァ山(Mt. Medvednica)の丘陵斜面を対象とし、日本・クロアチア共同プロジェクト「Risk Identification and Land-Use Planning for Disaster Mitigation of Landslides and Floods in Croatia」のパイロット地域として設定している。同地域では、Kostanjek地すべりやČrešnjevec地すべりを含む被害を伴う地すべりが発生しており、住宅、道路、農地に影響を及ぼしてきた。こうした背景のもと、著者らは、ハザード低減と地域の安全管理には、潜在的な地すべりのより良い予測と、より充実した地すべりインベントリ(inventory)が必要であると主張する。そこで本論文は、3D deterministic stability model(3次元の決定論的安定解析モデル)とprobabilistic approach(確率論的アプローチ)を統合した、三次元(3D)の斜面安定性評価システムの開発を目的とする。想定する出力は、起こり得る地すべりについて、起こりやすい位置・規模・すべり面を含む評価である。研究対象地域は、Veliki potok catchment(10 km2)である。
AI解説を見る
自然科学系
災害・復興科学科学研究所
#紀要論文
クロアチアザグレブ市後背丘陵地における三次元斜面崩壊予測システムの開発
AI解説
- 背景と目的:
-
本研究は、クロアチアのザグレブ市北西部にあるメドヴェドニツァ山(Mt. Medvednica)の丘陵斜面を対象とし、日本・クロアチア共同プロジェクト「Risk Identification and Land-Use Planning for Disaster Mitigation of Landslides and Floods in Croatia」のパイロット地域として設定している。同地域では、Kostanjek地すべりやČrešnjevec地すべりを含む被害を伴う地すべりが発生しており、住宅、道路、農地に影響を及ぼしてきた。こうした背景のもと、著者らは、ハザード低減と地域の安全管理には、潜在的な地すべりのより良い予測と、より充実した地すべりインベントリ(inventory)が必要であると主張する。そこで本論文は、3D deterministic stability model(3次元の決定論的安定解析モデル)とprobabilistic approach(確率論的アプローチ)を統合した、三次元(3D)の斜面安定性評価システムの開発を目的とする。想定する出力は、起こり得る地すべりについて、起こりやすい位置・規模・すべり面を含む評価である。研究対象地域は、Veliki potok catchment(10 km2)である。
- 主要な発見:
-
本論文は、斜面ユニット(slope units)を基本的なマッピングおよびモデリング単位として用いることが、広域の地すべりハザード評価に適していると報告している。とくに、斜面ユニットはGISツールで効率的に抽出できる点が理由として挙げられる。著者らはまた、重要な実務上の制約として、斜面ユニットの大きさが流域(watersheds)の定義方法に敏感であることを指摘し、セグメンテーションの選択がその後のハザード評価に影響することを示唆している。modified 3D Hovland-type analysis(修正3D Hovland型解析)と確率的な指標を組み合わせた提案手法であるGISベースの3D斜面安定性アプローチは、データ準備と処理を簡略化できるため、地域スケールのハザード評価に有効であると示されている。ハザードは「failure probability(破壊確率)」として運用化され、繰り返し計算に基づき、3D safety factor(3次元安全率)が1.0未満となったケースの割合として定義される。catchment全体のハザードマッピングでは、failure probabilityが70%を超える斜面ユニットを「unstable(不安定)」に分類する。結果として、研究対象地域における斜面ユニット分布図と、それに対応するfailure probabilityが示されている。
- 方法論:
-
ワークフローは、Veliki potok catchmentを、地形・地質特性が類似する領域を表すことを意図した斜面ユニットに分割することから始まる。このセグメンテーションはArcGIS(ArcGIS Version 10)のhydrology analysis toolsを用いて実施し、ModelBuilderにより自動抽出を可能にしている。各斜面ユニットについて、著者らはGISベースのmodified 3D Hovland’s slope stability analysis(修正3D Hovland斜面安定解析)を実装し、臨界すべり面(critical sliding surface)を同定するとともに、対応する三次元安全率を算出する。候補となるすべり面は、楕円体(ellipsoids)の下半分としてパラメータ化する。楕円体の傾斜方向は斜面ユニットの主たる傾斜方向(main dip direction)に一致させ、楕円体の中心は、斜面ユニット内のグリッドセル中心にランダムに割り当てることで、複数の試行構成を可能にする。これらの試行から、各斜面ユニットごとに、最小の3次元安全率と、それに対応する臨界すべり面を得る。単一の安全率値では評価に不十分であることを踏まえ、本研究では各斜面ユニットのfailure probabilityを、安全率 < 1.0となった試行数を総試行数で割った比として定義する。70%の閾値を用いて斜面ユニットを不安定とラベル付けし、地すべりハザードマップを作成する。
- 結論と意義:
-
本論文は、GIS主導で斜面ユニットに基づく枠組みが、空間データの取り扱いと安定計算をより扱いやすくすることで、地域スケールの地すべりハザード評価を支援し得ると結論づけている。決定論的な3D安定モデルと確率論的解釈を組み合わせることは、単一の安全率への依存を超え、failure probabilityによって安定性を要約する点で、とくに有用だと提示されている。実務的には、このアプローチはArcGISの機能—とりわけ斜面ユニットの自動抽出と、効率化された空間処理—を活用し、大量の空間・地質データに従来伴ってきた作業負担を軽減する。著者らは、斜面ユニットという概念が広域の評価対象として有効であることを強調する一方で、セグメンテーションの結果が流域定義に依存するため、ハザードマップの構築と解釈に影響する点も指摘する。総じて、本研究は提案システムを、パイロット地域における潜在的に不安定な領域の特定と、ハザード低減計画の支援に役立つツールとして位置づけている。
- 背景と目的:
-
この研究は、クロアチアの首都ザグレブ市の北西にあるメドヴェドニツァ山の丘の斜面を対象にしています。ここは、日本とクロアチアが一緒に進める「地すべりや洪水の被害を減らすための危険の見つけ方と土地利用計画」のプロジェクトで、試験的に調べる地域として選ばれています。
この地域では、Kostanjek地すべりやČrešnjevec地すべりなど、実際に被害を出した地すべりが起きていて、家や道路、農地などに影響してきました。そこで研究者たちは、被害を減らして地域の安全を守るためには、これから起こりそうな地すべりをより正確に予測し、地すべりの記録や分布の情報をもっと充実させる必要があると考えました。
本研究の目的は、3次元の安定計算(決められた条件で計算する方法)と、確率で危険度を表す考え方を組み合わせて、斜面の危険度を3Dで評価できる仕組みを作ることです。地すべりが起こりそうな場所や規模、どこですべるか(すべり面)まで評価することを目指しています。対象地域はVeliki potok流域(約10平方キロメートル)です。
- 主要な発見:
-
この研究では、広い地域で地すべりの危険度を調べるときに、「
」を基本の単位として地図化や計算を行う方法が適していると述べています。斜面ユニットは、斜面ユニット ( 地形や地質の特徴が似ている斜面のまとまりで、危険度評価の基本単位として使います。広い地域を効率よく分けて調べるために役立ちます。) の道具を使うことで比較的効率よく取り出せるためです。GIS ( 地図情報をコンピュータ上で扱い、位置に関するデータを重ねたり分析したりできる仕組みです。地すべりのような地理的な現象を、データとして整理し評価するのに重要です。)
一方で、斜面ユニットの大きさは、流域をどう区切るかに影響されやすいという注意点も示しています。つまり、最初の区切り方( )の選び方が、その後の危険度評価の結果にも影響します。セグメンテーション ( 対象地域をいくつかのまとまり(ここでは斜面ユニット)に分割することです。最初の分割のしかたが、その後の計算や危険度地図に影響します。)
提案されたGISベースの3D斜面安定性の方法は、修正した3D Hovland型解析に確率的な考え方を組み合わせており、データ準備や処理の手間を減らせるため、地域規模の危険度評価に役立つとされています。危険度は「破壊確率」として表し、繰り返し計算のうち、3次元安全率が1.0未満になった割合で決めます。流域全体の地図では、破壊確率が70%を超える斜面ユニットを「不安定」と分類しました。その結果、斜面ユニットの分布図と、それぞれの破壊確率が示されています。
- 方法論:
-
まず、Veliki potok流域を、地形や地質の特徴が似ているまとまりごとに「
」に分割します。この作業は斜面ユニット ( 地形や地質の特徴が似ている斜面のまとまりで、危険度評価の基本単位として使います。広い地域を効率よく分けて調べるために役立ちます。) の水文解析ツールを使って行い、ArcGIS ( GISソフトウェアの一つで、地図データの管理や解析を行えます。本研究では、斜面ユニットの抽出や空間データ処理を効率化するために使っています。) によって自動的に抽出できるようにしています。ModelBuilder ( ArcGISで、複数の処理手順をつないで自動化するための機能です。繰り返し作業を減らし、同じ方法を別地域にも適用しやすくします。)
次に、各斜面ユニットについて、 上で修正3D Hovland斜面安定解析を行い、もっとも危険になりやすいすべり面(GIS ( 地図情報をコンピュータ上で扱い、位置に関するデータを重ねたり分析したりできる仕組みです。地すべりのような地理的な現象を、データとして整理し評価するのに重要です。) )を見つけ、そのときの3次元安全率を計算します。すべり面の候補は、臨界すべり面 ( 想定されるすべり面の中で、もっとも危険(安全率が最も低い)になるすべり面のことです。地すべりが起きるとしたらどの面ですべりやすいかを考える上で重要です。) の下半分として表します。楕円体の傾きの向きは、その斜面ユニットで代表的な傾斜方向に合わせます。また楕円体の中心は、斜面ユニット内の格子(グリッド)の中心にランダムに置き、いろいろな条件で試せるようにします。楕円体 ( 3次元の丸い形(球を伸ばしたような形)をした立体のことです。本研究では、すべり面の形を表すために、楕円体の下半分を使って候補を作ります。)
こうした多数の試行の中から、各斜面ユニットで最小の3次元安全率と、それに対応する臨界すべり面を選びます。ただし、安全率が1つだけでは評価として不十分だと考え、破壊確率を「安全率が1.0未満になった回数÷総試行回数」で定義します。そして破壊確率70%を基準に、不安定な斜面ユニットを判定し、地すべり を作成します。ハザードマップ ( 危険が起こりやすい場所を地図として示したものです。どこを優先して対策するかを考える材料になります。)
- 結論と意義:
-
この研究は、
を中心にしてGIS ( 地図情報をコンピュータ上で扱い、位置に関するデータを重ねたり分析したりできる仕組みです。地すべりのような地理的な現象を、データとして整理し評価するのに重要です。) を基準に扱う枠組みが、空間データの整理や安定計算を行いやすくし、地域規模での地すべり危険度評価を助けると結論づけています。斜面ユニット ( 地形や地質の特徴が似ている斜面のまとまりで、危険度評価の基本単位として使います。広い地域を効率よく分けて調べるために役立ちます。)
また、決定論的な3D安定モデルに確率の考え方を加えることで、安全率1つに頼るのではなく、破壊確率として安定性をまとめて示せる点が重要だとしています。実務面では、 による斜面ユニットの自動抽出や効率的な処理によって、大量の地形・地質データを扱う負担を減らせると述べています。ArcGIS ( GISソフトウェアの一つで、地図データの管理や解析を行えます。本研究では、斜面ユニットの抽出や空間データ処理を効率化するために使っています。)
ただし、斜面ユニットの区切られ方が流域の定義に左右されるため、 の作り方や読み取り方に影響が出る点には注意が必要だと指摘しています。全体として、この仕組みは、危険な場所を見つけて対策を考えるための道具として役立つと位置づけられています。ハザードマップ ( 危険が起こりやすい場所を地図として示したものです。どこを優先して対策するかを考える材料になります。)
- 何のために?:
-
この研究は、クロアチアの山を調べます。
場所は、ザグレブ市の北西の丘 です。
ここでは、土がすべることがありました。
土がすべると、家や道がこわれます。
畑にも、よくないえいきょうが出ます。
そのため、安全を守る研究をします。
日本とクロアチアが、一緒 に進めます。
あぶない場所を、見つけたいのです。
そして、被害 をへらしたいのです。
目的 は、斜面 のあぶなさを調べることです。
で、立体てきに考えて調べます。3D ( たて横高さの三つの方向で立体として考えることです。平らな地図だけでは分かりにくい斜面 の形やすべりやすさを考えるのに役立ちます)
どこがすべりそうかも、知りたいです。
どれくらい大きくすべるかも見ます。
調べる広さは、約 10 です。平方キロ ( 面積 の大きさを表す単位 で一辺 が1キロの正方形の広さのことです。調べる場所がどれくらい広いかを数字で伝 えるために使います)
- 何が分かったの?:
-
広い場所を調べるとき、区切りが大切です。
研究では、斜面 を小さなまとまりに分けます。
このまとまりを、「 」と言います。斜面 ユニット( 斜面 を小さなまとまりに分けたものです。形や地面のようすがにている場所どうしを一つにまとめて作ります。広い場所の危 なさを調べるときに整理しやすくなり計算もしやすくなるので大事ですが区切り方で結果 が変 わることがあります)
地図の道具で、わりと早く作れます。
でも、区切り方で大きさが変 わります。
だから、結果 も変 わることがあります。
あぶなさは、「 」で表します。こわれる 確率 ( 斜面 がくずれたり土がすべったりする可能性 を数字で表したものです。何回も計算して危 なさを比 べたり地図にしたりするために重要 です)
何回も計算して、こわれそうか見ます。
安全の数字が1.0より小さい回を数えます。
そのわり合いを、こわれる確率 にします。
70%より大きい所は、とてもあぶないです。
その結果 を、地図にして示 しました。
- どうやったの?:
-
まず、
を流域 ( 雨がふった水が集まって同じ川に流れていく範囲 のことです。どこからどこまでを調べるかを決める言い方で研究のはじめに決める大事な単位 です) に分けます。斜面 ユニット( 斜面 を小さなまとまりに分けたものです。形や地面のようすがにている場所どうしを一つにまとめて作ります。広い場所の危 なさを調べるときに整理しやすくなり計算もしやすくなるので大事ですが区切り方で結果 が変 わることがあります)
形や地面のようすが、にている所で分けます。
この作業は、地図のソフトで自動にします。
次に、各 ユニットで立体の計算をします。
土がすべる面を、たくさん試 して探 します。
すべる面は、たまご形の半分で表します。
向きは、その斜面 の下りる向きに合わせます。
中心は、ユニットの中でばらばらに置 きます。
こうして、いろいろな場合を試 せます。
いちばんあぶない面と、安全の数字を決めます。
その後、 も計算します。こわれる 確率 ( 斜面 がくずれたり土がすべったりする可能性 を数字で表したものです。何回も計算して危 なさを比 べたり地図にしたりするために重要 です)
確率 が70%より大きい所を、 とします。不安定 ( くずれたりすべったりしやすい状態 のことです。この文章ではこわれる確率 が高い場所を不安定 として特 に注意が必要 な場所だと示 します)
最後 に、地すべりのあぶなさ地図を作ります。
- 研究のまとめ:
-
で考えると、整理しやすいです。斜面 ユニット( 斜面 を小さなまとまりに分けたものです。形や地面のようすがにている場所どうしを一つにまとめて作ります。広い場所の危 なさを調べるときに整理しやすくなり計算もしやすくなるので大事ですが区切り方で結果 が変 わることがあります)
計算もしやすくなり、広い場所を見られます。
1つの数字だけに、たよらない点が大事です。
で、まとめてこわれる 確率 ( 斜面 がくずれたり土がすべったりする可能性 を数字で表したものです。何回も計算して危 なさを比 べたり地図にしたりするために重要 です) 示 せます。
自動のしくみで、作業の手間もへらせます。
ただし、区切り方で結果 が変 わることがあります。
地図を作るときも、読むときも注意がいります。
それでも、あぶない場所を見つける助けになります。
- 著者名:
- 王 純祥, 丸井 英明, 渡部 直喜
- 掲載誌名:
- 新潟大学災害・復興科学研究所年報
- 巻:
- 2
- ページ:
- 93 - 94
- 発行日:
- 2013-09
- 新潟大学学術リポジトリリンク:
- http://hdl.handle.net/10191/29607
