論文詳細
自然科学系
農学部
#紀要論文
大腸菌のCsrグローバル制御システムによる転写後調節
- AI解説:
- 細菌は、栄養利用可能性の変化や、指数増殖期から定常期への移行などの環境変化に応じて遺伝子発現を調節するために、グローバルな制御システムに依存している。*Escherichia coli*(*E. coli*)では、carbon storage regulator(Csr)システム(他の細菌における関連するRsmシステム)が、指数増殖期と定常期の成長、あるいは浮遊性(planktonic)とバイオフィルム(biofilm)という生活様式の切り替えなどの生理的移行を調整する主要な転写後(post-transcriptional)制御ネットワークとして位置づけられている。本論文はレビューとして、中心的制御因子であるCsrA(61アミノ酸のRNA結合タンパク質)が、標的転写産物のリーダー領域に結合することで翻訳とmRNA安定性をどのように調節するかを概説する。また、複数の結合モチーフを介してCsrAを隔離(sequester)する小型非コードRNA(small non-coding RNA)であるCsrBおよびCsrCが、どのようにCsrA活性に拮抗するかも説明する。レビューの重要な目的は、CsrA–RNA相互作用の機構的知見を、CsrA活性を制御する制御回路(regulatory circuitry)—具体的にはBarA/UvrYによるcsrB/csrCの転写制御、および膜タンパク質CsrDによるCsrB/CsrCの選択的分解(selective turnover)—と統合することにある。
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自然科学系
農学部
#紀要論文
大腸菌のCsrグローバル制御システムによる転写後調節
AI解説
- 背景と目的:
-
細菌は、栄養利用可能性の変化や、指数増殖期から定常期への移行などの環境変化に応じて遺伝子発現を調節するために、グローバルな制御システムに依存している。*Escherichia coli*(*E. coli*)では、carbon storage regulator(Csr)システム(他の細菌における関連するRsmシステム)が、指数増殖期と定常期の成長、あるいは浮遊性(planktonic)とバイオフィルム(biofilm)という生活様式の切り替えなどの生理的移行を調整する主要な転写後(post-transcriptional)制御ネットワークとして位置づけられている。本論文はレビューとして、中心的制御因子であるCsrA(61アミノ酸のRNA結合タンパク質)が、標的転写産物のリーダー領域に結合することで翻訳とmRNA安定性をどのように調節するかを概説する。また、複数の結合モチーフを介してCsrAを隔離(sequester)する小型非コードRNA(small non-coding RNA)であるCsrBおよびCsrCが、どのようにCsrA活性に拮抗するかも説明する。レビューの重要な目的は、CsrA–RNA相互作用の機構的知見を、CsrA活性を制御する制御回路(regulatory circuitry)—具体的にはBarA/UvrYによるcsrB/csrCの転写制御、および膜タンパク質CsrDによるCsrB/CsrCの選択的分解(selective turnover)—と統合することにある。
- 主要な発見:
-
CsrAは、糖新生(gluconeogenesis)、グリコーゲン生合成と異化、ペプチド輸送、バイオフィルム形成などの経路を抑制する一方で、解糖(glycolysis)、酢酸代謝、鞭毛生合成を活性化する、グローバルな転写後制御因子として記述されている。抑制についてレビューが強調するのは繰り返し現れる機構であり、CsrAはmRNAリーダー領域の複数部位に結合し、典型的にはShine–Dalgarno配列および/または開始領域と重なる部位を含むことでリボソームのアクセスを妨げ、翻訳を阻害する;この点はglgCAP、cstA、pgaABCDで詳述されている。glgCAPの例では、翻訳阻害がmRNA分解の加速と結びついており、CsrAが不安定化を促進するという見方と整合するとされる。活性化について、最もよく特徴づけられた例は*flhDC*であり、CsrAが5′リーダーに結合することは、野生型ではcsrA変異株よりも翻訳融合(translational fusion)の発現が約3〜4倍高いこと、またmRNA安定性が増すことと相関する;ただし、その安定化の正確な機構は未解明であると明確に述べられている。拮抗的な小RNAであるCsrB(366 nt;約18反復)とCsrC(245 nt;9反復)は、CsrA結合要素の反復を含み、複数のCsrAサブユニットに結合する;CsrAの親和性はCsrCよりCsrBに対して約10倍高い。両RNAは半減期が短く(約2分)、迅速な応答性を支持する。大きな進展として強調されるのは、CsrDがCsrBとCsrCの分解に必要な特異性因子(specificity factor)であることの同定である:csrD変異株ではCsrB/CsrCが著しく安定化し、CsrA制御の表現型がそれに応じて変化し、分解(turnover)はRNase Eに依存する(また*pnp*変異株では損なわれる)。CsrDはGGDEFおよびEALドメインを含むにもかかわらず、モチーフの乖離、置換解析、ならびに試験条件下で2D-TLCによりc-di-GMPが検出されないことに基づき、cyclic di-GMP代謝とは独立に作用すると論じられている。
- 方法論:
-
本論文はレビューであるため、引用研究において複数の実験アプローチで得られた結果を統合している。遺伝学的解析には、グリコーゲン蓄積に影響する制御変異株の単離(これがcsrA同定につながった)、csrB-lacZ、csrA′-′lacZ、glgCA′-′lacZ、flhDC′-′lacZ、cstA′-′lacZ、pgaA′-′lacZといった染色体上の翻訳レポーター融合(chromosomal translational reporter fusion)の利用、ならびに運動性、バイオフィルム形成、グリコーゲン貯蔵に関連する表現型アッセイが含まれる。制御回路は、BarA/UvrY二成分系(two-component system)の変異を用いて解析され、さらにS-30抽出液におけるin vitroの転写–翻訳共役(coupled transcription–translation)アッセイも用いられた(例:精製組換えタンパク質を用いた試験として、UvrYがin vitroでcsrB転写を刺激すること、またCsrAが抽出液中でflhDC融合の翻訳を刺激すること)。RNA–タンパク質相互作用は、ゲル移動度シフトアッセイ(gel mobility shift assay)および定量的結合比較(CsrBとCsrCに対する親和性の約10倍差を含む)で検討された。RNAの安定性と量は、Northern解析と半減期測定で評価され(CsrB/CsrCの約2分の半減期、ならびにcsrD変異株での強い安定化を含む)、CsrDが制御因子であることの同定には、csrB-lacZ株に対するmini-Tn10camトランスポゾン変異導入(transposon mutagenesis)と挿入部位のマッピングが用いられた。RNase Eおよびdegradosomeの関与は遺伝学的に検証され(RNase E要件、*pnp*変異およびdegradosome集合欠陥の影響)、さらにcsrDが試験したRNase E基質(rpsO、rpsT、RyhB)の分解回転に影響しないことを示す特異性対照も行われた。CsrA結合決定因子(CsrA-binding determinants)を定義するために、SELEX由来のリガンド選択(ligand selection)からコンセンサス(RUACARGGAUGU)が得られ、変異解析で補完された。またCsrAのアラニンスキャン変異導入(alanine-scanning mutagenesis;58変異体)により、特定領域(β1およびβ5)がRNA結合と制御機能に結びつけられた。構造的背景として、CsrAホモログの独立に解かれた三次元構造が提示され、2つのRNA結合面をもつ対称的二量体を支持している。
- 結論と意義:
-
レビューは、*E. coli*のCsrシステムが統合された恒常性(homeostatic)的な自己調節回路として作動し、CsrAが広範な転写後制御を担う一方で、BarA/UvrY二成分系を通じて自身の拮抗因子であるCsrBとCsrCの産生も同時に促進すると結論づけている。CsrB/CsrCによるCsrAの隔離は、グローバルな遺伝子発現を調整する機構を提供し、これらRNAの短い寿命は迅速な生理的移行を可能にするものとして位置づけられる。中心的な意義として、CsrDが、CsrA自身の発現を変えることなく、RNase E依存的なCsrBおよびCsrC分解を選択的に可能にすることで、遊離CsrAのプールを調節するという追加の制御層を付加する点が主張されている。さらに本論文は、CsrA介在性抑制に共通する機構—複数部位への結合と、しばしばリボソームアクセスを遮断すること—を強調し、これを、十分には理解されていない活性化機構(flhDC mRNAの安定化に代表される)と対比する。最後に、GGDEF/EALドメインタンパク質(CsrD)がcyclic di-GMP代謝に関与することなく選択的RNA分解を制御し得るという概念的な新規性を強調し、このドメイン構成をもつシグナル伝達タンパク質による選択的RNA分解回転制御として初の報告であると提示している。
- 今後の展望:
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レビューの統合の中では、いくつかの不足点と今後の方向性が示唆されている。CsrAが*flhDC*などの標的を正に制御する機構は、CsrA依存的な安定化と発現増加の明確な証拠があるにもかかわらず未定義のままであり、CsrA結合がどのように転写産物を保護するのか、あるいはそのプロセシングをどのように変えるのかを解決すべき未解明の機構的課題として挙げられている。レビューはまた、CsrDをdegradosome介在性のCsrB/CsrC分解に対する特異性因子として位置づける一方で、その直接的な分子作用様式は確立しておらず、膜トポロジーおよびHAMP様、GGDEF、EALドメインが、これらRNAに対するRNase Eの選択的リクルートまたは活性化にどのように寄与するかを明らかにする必要性が示唆される。さらに、CsrDオルソログが多くのグラム陰性菌で報告され、標準的なcyclic di-GMP酵素とは異なる保存要素を含む可能性が示されていることから、CsrD–RNase E経路がどの程度広く存在するのか、またCsrA活性の制御を通じて代謝、運動性、バイオフィルム関連遺伝子発現をどのように形作るのかを決定するため、より広範な比較研究および機能解析へと展開することが示されている。
- 背景と目的:
-
細菌は、周りの環境が変わると、生きのびるために「どの遺伝子を働かせるか」を全体的に切り替えます。大腸菌では、その切り替えを助ける重要な仕組みとしてCsrシステムがあります。Csrシステムの中心はCsrAという小さなタンパク質で、
という遺伝情報の読み取り方を調整して、タンパク質が作られる量やmRNAの壊れやすさを変えます。mRNA ( DNAの情報を写し取ったRNAで、タンパク質を作るための設計図になります。安定性や翻訳されやすさが遺伝子発現量を左右します。)
このレビュー論文は、CsrAがmRNAに結合してどのように遺伝子の働きを変えるのか、そしてCsrB・CsrCという小さなRNAがCsrAの働きを弱める仕組みをまとめています。さらに、CsrB・CsrCが作られたり分解されたりする調節( やBarA/UvrY ( 二成分系の名前で、環境情報に応じてcsrBやcsrCの転写を調節し、結果的にCsrA活性の調整につながります。Csrシステムの回路の上流に位置します。) の働き)まで含めて、全体がどうつながっているかを整理することが目的です。CsrD ( CsrB/CsrCの分解を進める方向に働き、CsrAがどれだけ自由に使えるかを調整する膜タンパク質です。c-di-GMP代謝とは別の形で選択的RNA分解に関わる点が重要です。)
- 主要な発見:
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CsrAは多くの遺伝子に影響する「全体をまとめて調整する役」の因子です。たとえば、糖を作り出す経路やグリコーゲンに関わる経路、ペプチド輸送、
形成などは抑えます。一方で、糖を分解してエネルギーを得る経路や酢酸の代謝、べん毛(運動)に必要な遺伝子は働かせる方向に調整します。バイオフィルム ( 細菌が表面にくっついて集団で作る膜状の構造です。薬剤や環境ストレスに強くなることがあり、細菌の生活様式の重要な切り替え先です。)
抑えるときによく見られる仕組みは、CsrAが の先頭付近(mRNA ( DNAの情報を写し取ったRNAで、タンパク質を作るための設計図になります。安定性や翻訳されやすさが遺伝子発現量を左右します。) )の複数箇所に結合し、リーダー領域 ( mRNAの先頭側にある、タンパク質の設計図部分の手前の領域です。ここに調節因子が結合すると翻訳が変化しやすく、制御の要所になります。) が結合しにくくなる位置をふさぐことで、リボソーム ( mRNAを読み取り、アミノ酸をつなげてタンパク質を作る装置です。mRNA上の特定部位に結合して翻訳を開始します。) を止めるというものです。例としてglgCAP、cstA、pgaABCDが説明されています。glgCAPでは翻訳が止まるだけでなく、mRNAの分解が速くなることも示され、CsrAがmRNAを不安定にする働きと合うとされています。翻訳 ( mRNAの情報を読み取ってタンパク質を作る過程です。リボソームがmRNAに結合できるかどうかが量を大きく左右します。)
一方、働きを高める例としてはflhDCがよく調べられており、CsrAが5′側のリーダーに結合すると、タンパク質が作られやすくなり、mRNAも壊れにくくなることが示されています。ただし、なぜ安定化するのかという詳しい仕組みはまだ分かっていません。
CsrBとCsrCという小さなRNAは、CsrAが結合できる配列をたくさん持っていて、CsrAを多数つかまえることで、CsrAがmRNAに結合できないようにします。CsrAはCsrCよりCsrBに強く結合します。CsrBとCsrCは寿命が短く、状況の変化にすばやく対応できると考えられています。
さらに大きな進展として、 という膜タンパク質が、CsrBとCsrCを選んで分解させるのに必要な因子だと示された点が強調されています。csrDに変異があるとCsrB/CsrCが分解されにくくなり、その結果CsrAの働き方(CsrAが自由に使える量)が変わります。この分解はCsrD ( CsrB/CsrCの分解を進める方向に働き、CsrAがどれだけ自由に使えるかを調整する膜タンパク質です。c-di-GMP代謝とは別の形で選択的RNA分解に関わる点が重要です。) という分解酵素に依存します。またCsrDはGGDEFやEALというドメインを持ちますが、一般的にそれらが関わるRNase E ( 細菌でRNA分解に重要な酵素です。CsrB/CsrCの分解にも必要で、RNA量の調節に直接関わります。) の代謝とは別のしくみで働くと考えられています。c-di-GMP ( 細菌でよく使われる細胞内シグナル分子で、運動性やバイオフィルムなどの切り替えに関わることがあります。ただしCsrDは通常のc-di-GMP代謝とは別に働くとされています。)
- 方法論:
-
この論文はレビューなので、先行研究の結果をまとめています。使われた代表的な方法は次の通りです。
遺伝子の働きの変化を調べるために、特定遺伝子に変異を入れた株の解析や、遺伝子の発現量を測るレポーター(例:lacZ融合)を染色体上で使う方法が利用されています。運動性、 形成、グリコーゲン蓄積などの性質も調べられています。バイオフィルム ( 細菌が表面にくっついて集団で作る膜状の構造です。薬剤や環境ストレスに強くなることがあり、細菌の生活様式の重要な切り替え先です。)
調節のつながり( の関与など)を確かめるために、BarA/UvrY ( 二成分系の名前で、環境情報に応じてcsrBやcsrCの転写を調節し、結果的にCsrA活性の調整につながります。Csrシステムの回路の上流に位置します。) の変異株や、試験管内で転写と二成分系 ( 外の変化を感知するタンパク質と、それを受けて遺伝子の働きを変えるタンパク質の2つで情報を伝える仕組みです。BarA/UvrYはこの型でCsrB/CsrCの転写に関わります。) を再現する実験が使われました。翻訳 ( mRNAの情報を読み取ってタンパク質を作る過程です。リボソームがmRNAに結合できるかどうかが量を大きく左右します。)
CsrAがRNAに結合するかどうかは、 などで評価され、CsrBとCsrCへの結合の強さの差も定量されています。CsrB/CsrCの量や寿命はゲル移動度シフトアッセイ ( タンパク質がRNAに結合するかを、電気泳動での移動の遅れとして見る実験です。結合の有無や強さの比較に使えます。) やNorthern解析 ( RNAを検出して量やサイズを調べる方法です。CsrB/CsrCの量の変化や安定性の評価に使われます。) 測定で調べられました。半減期 ( あるRNAの量が半分になるまでの時間です。CsrB/CsrCは半減期が短く、細胞が変化にすばやく対応する助けになります。)
また の発見にはCsrD ( CsrB/CsrCの分解を進める方向に働き、CsrAがどれだけ自由に使えるかを調整する膜タンパク質です。c-di-GMP代謝とは別の形で選択的RNA分解に関わる点が重要です。) で原因遺伝子を探す方法が使われ、トランスポゾン変異導入 ( DNAにランダムに挿入される配列を利用して遺伝子を壊し、どの遺伝子が表現型に関わるか探す方法です。CsrDの同定に利用されました。) や分解複合体(RNase E ( 細菌でRNA分解に重要な酵素です。CsrB/CsrCの分解にも必要で、RNA量の調節に直接関わります。) )の関与は遺伝学的に検証されています。さらに、CsrAが好む結合配列の特徴を調べるためにdegradosome ( RNase Eを中心に複数の酵素が集まってRNA分解を進める複合体です。特定RNAの分解効率に影響し、CsrB分解にも関与します。) や変異解析、CsrA側のアラニンスキャン変異なども用いられ、立体構造の情報と合わせてRNA結合面が議論されています。SELEX ( 多数のRNA配列の中から、特定タンパク質に強く結合するものを選び出して、好まれる配列の特徴を見つける方法です。CsrAが結合しやすい配列の共通点を決めるのに使われました。)
- 結論と意義:
-
Csrシステムは、CsrAが多くの遺伝子をまとめて調整しつつ、同時にCsrAを抑えるCsrB/CsrCの産生も促すことで、バランスを保つ自己調節回路として働くとまとめられています。CsrB/CsrCがCsrAを「つかまえる」ことで、細菌全体の
の切り替えが可能になり、しかも両RNAの寿命が短いことが素早い切り替えに役立つと考えられます。遺伝子発現 ( DNAの情報をもとにmRNAが作られ、最終的にタンパク質が作られて働くまでの流れのことです。細菌は状況に応じてこの量を調節します。)
特に重要な点として、 がCsrAの量自体を変えずに、CsrB/CsrCの分解を進めることで「自由に働けるCsrAの量」を調整し、制御にもう一段階の仕組みを加えていることが強調されています。さらに、CsrAが抑制するときの共通パターン(複数箇所に結合してCsrD ( CsrB/CsrCの分解を進める方向に働き、CsrAがどれだけ自由に使えるかを調整する膜タンパク質です。c-di-GMP代謝とは別の形で選択的RNA分解に関わる点が重要です。) を邪魔する)が整理される一方で、活性化の詳しい仕組みはまだ十分に分かっていないことも示されています。リボソーム ( mRNAを読み取り、アミノ酸をつなげてタンパク質を作る装置です。mRNA上の特定部位に結合して翻訳を開始します。)
また、GGDEF/ を持つCsrDが、EALドメイン ( 多くの場合c-di-GMPを分解する酵素に見られる構造の一部です。CsrDでは一般的なc-di-GMP分解とは結びつかない形で機能すると考えられています。) 代謝とは無関係に特定RNAの分解を選択的に進めるという考え方は新しく、シグナル伝達タンパク質が選択的RNA分解を制御する例として重要だと位置づけられています。c-di-GMP ( 細菌でよく使われる細胞内シグナル分子で、運動性やバイオフィルムなどの切り替えに関わることがあります。ただしCsrDは通常のc-di-GMP代謝とは別に働くとされています。)
- 今後の展望:
-
今後の課題として、CsrAがflhDCなどを「働かせる方向」に調節する具体的な仕組みが未解明である点が挙げられています。CsrAの結合がどうやって
を守るのか、mRNAの処理のされ方をどう変えるのかを明らかにする必要があります。mRNA ( DNAの情報を写し取ったRNAで、タンパク質を作るための設計図になります。安定性や翻訳されやすさが遺伝子発現量を左右します。)
また、 がどのようにしてCsrD ( CsrB/CsrCの分解を進める方向に働き、CsrAがどれだけ自由に使えるかを調整する膜タンパク質です。c-di-GMP代謝とは別の形で選択的RNA分解に関わる点が重要です。) によるCsrB/CsrCの分解を選択的に起こさせるのかという直接的な仕組みもまだ確立していません。CsrDの各ドメインがRNase Eの呼び寄せや活性化にどう関わるかが今後の焦点です。RNase E ( 細菌でRNA分解に重要な酵素です。CsrB/CsrCの分解にも必要で、RNA量の調節に直接関わります。)
さらに、CsrDに似たタンパク質が多くのグラム陰性菌にあることから、この経路がどれくらい広く存在するのか、そして代謝・運動性・ 形成などをどう形作るのかを、種をまたいだ比較研究で調べる必要があると示されています。バイオフィルム ( 細菌が表面にくっついて集団で作る膜状の構造です。薬剤や環境ストレスに強くなることがあり、細菌の生活様式の重要な切り替え先です。)
- 何のために?:
-
ばいきんは、まわりが
変 わると、
生きるために体のしくみを変 えます。
そのために、どの「しるし」を使うか、
まとめて切りかえます。
には、その切りかえを助ける、大腸菌 ( 人や動物の腸 の中にいる細菌 の一つで、研究によく使われます。身近な「ばいきん」の例 として、体の中でどう生きるかの仕組みを調べるのに重要 です。)
というしくみがあります。Csr ( 大腸菌 の中で、いろいろな遺伝子 のはたらきをまとめて切りかえる調整のしくみの名前です。環境 が変 わったときに生きのびるための全体の切りかえに関 わるので重要 です。)
という小さなたんぱくが中心です。CsrA ( Csrの中心になる小さなたんぱくで、mRNAにくっついて、たんぱくが作られる量 を増 やしたり減 らしたりします。細胞 のはたらきのオンオフを決める役として重要 です。)
CsrAは、 という「mRNA ( 遺伝子 の情報 を運ぶRNAで、たんぱくを作るための「設計図 」として使われます。どのたんぱくをどれだけ作るかを決める材料 なので重要 です。) 設計図 」にくっつきます。
そして、たんぱくが作られる量 を変 えます。
この文は、CsrAのはたらきをまとめます。
また、 とCsrB ( 小さなRNAの一つで、CsrAをたくさんつかまえて、CsrAがmRNAにくっつくのをじゃまします。CsrAのはたらきを弱めて切りかえを作るので重要 です。) という小さなCsrC ( 小さなRNAの一つで、CsrBと同じようにCsrAをつかまえて調整します。CsrBと一緒 に働 いて切りかえの速さや強さを決めるので重要 です。) が、RNA ( 細胞 の中にある分子で、情報 を運んだり、細胞 の調整に使われたりします。たんぱく作りや調整の中心にあるので重要 です。)
CsrAをよわめるしくみもまとめます。
さらに、それらが作られたり、こわれたりする、
全体のつながりも整理します。
- 何が分かったの?:
-
は、たくさんのCsrA ( Csrの中心になる小さなたんぱくで、mRNAにくっついて、たんぱくが作られる量 を増 やしたり減 らしたりします。細胞 のはたらきのオンオフを決める役として重要 です。) をまとめて、遺伝子 ( 生き物の体の作り方やはたらき方の情報 をもつ部分です。どんなたんぱくを作るかの元になるので重要 です。)
する「まとめ役」です。調整 ( 細胞 の中で、はたらきを強くしたり弱くしたりしてバランスを取ることです。環境 の変化 に合わせて生きのびるために必要 なので重要 です。)
CsrAは、いくつかのはたらきを止めます。
たとえば、糖 を作る道すじなどです。
また、体を守るねばねばの集まりも止めます。
でも、別 のはたらきは強くします。
たとえば、糖 をこわして力を出す道すじです。
また、動くためのしっぽも助けます。
止めるときは、よくある形があります。
CsrAが の先のほうに、何か所もつきます。mRNA ( 遺伝子 の情報 を運ぶRNAで、たんぱくを作るための「設計図 」として使われます。どのたんぱくをどれだけ作るかを決める材料 なので重要 です。)
すると、作る機械 が来にくくなります。
そのため、たんぱくが作れなくなります。
ときには、mRNAが早くこわれることもあります。
強くするときの例 は、 が有名です。flhDC ( 大腸菌 が動くためのしくみを動かす大もとの遺伝子 の名前です。CsrAが「強くする」例 として出てくる代表なので重要 です。)
CsrAがつくと、作られやすくなることがあります。
mRNAも、こわれにくくなることがあります。
でも、なぜそうなるかは、まだはっきりしません。
とCsrB ( 小さなRNAの一つで、CsrAをたくさんつかまえて、CsrAがmRNAにくっつくのをじゃまします。CsrAのはたらきを弱めて切りかえを作るので重要 です。) は、小さなCsrC ( 小さなRNAの一つで、CsrBと同じようにCsrAをつかまえて調整します。CsrBと一緒 に働 いて切りかえの速さや強さを決めるので重要 です。) です。RNA ( 細胞 の中にある分子で、情報 を運んだり、細胞 の調整に使われたりします。たんぱく作りや調整の中心にあるので重要 です。)
この2つは、CsrAをたくさんつかまえます。
だから、CsrAはmRNAにつきにくくなります。
CsrAは、CsrCよりCsrBに強くつきます。
CsrBとCsrCは、長くは生きません。
だから、すばやく切りかえられると考えます。
というたんぱくも大事だと分かりました。CsrD ( CsrBやCsrCがこわれるのを進めるのを助けるたんぱくです。CsrBやCsrCの量 を通して、自由に働 けるCsrAの量 を変 えるので重要 です。)
CsrDは、CsrBとCsrCをこわすのを助けます。
CsrDがこわれると、CsrBとCsrCが残 ります。
すると、自由に動けるCsrAがへります。
この には、分解 ( 分子をこわして小さくすることです。mRNAや小さなRNAがどれくらいの速さで分解 されるかが、切りかえの速さを決めるので重要 です。) という道具がいります。RNase E ( RNAを切ってこわすはたらきをする道具の名前です。RNAがこわれる速さが変 わると細胞 の切りかえが変 わるため重要 です。)
CsrDは別 の部品も持ちます。
でも、ふつうの働 き方とはちがうそうです。
- どうやったの?:
-
この文は、いろいろな研究を集めたまとめです。
まず、 を少し遺伝子 ( 生き物の体の作り方やはたらき方の情報 をもつ部分です。どんなたんぱくを作るかの元になるので重要 です。) 変 えた を使います。大腸菌 ( 人や動物の腸 の中にいる細菌 の一つで、研究によく使われます。身近な「ばいきん」の例 として、体の中でどう生きるかの仕組みを調べるのに重要 です。)
そして、どれだけ動くかなどを調べます。
また、ねばねばの集まり方も見ます。
さらに、たんぱくがたまるかも調べます。
つながりを見るため、別 の変 えた菌 も使います。
試験管 で、作るしくみをまねる実験 もします。
がCsrA ( Csrの中心になる小さなたんぱくで、mRNAにくっついて、たんぱくが作られる量 を増 やしたり減 らしたりします。細胞 のはたらきのオンオフを決める役として重要 です。) につくかは、動き方のRNA ( 細胞 の中にある分子で、情報 を運んだり、細胞 の調整に使われたりします。たんぱく作りや調整の中心にあるので重要 です。) 実験 で見ます。
とCsrB ( 小さなRNAの一つで、CsrAをたくさんつかまえて、CsrAがmRNAにくっつくのをじゃまします。CsrAのはたらきを弱めて切りかえを作るので重要 です。) のCsrC ( 小さなRNAの一つで、CsrBと同じようにCsrAをつかまえて調整します。CsrBと一緒 に働 いて切りかえの速さや強さを決めるので重要 です。) 量 も、別 の方法 で量 ります。
どれくらいでこわれるかも調べます。
を見つけるため、CsrD ( CsrBやCsrCがこわれるのを進めるのを助けるたんぱくです。CsrBやCsrCの量 を通して、自由に働 けるCsrAの量 を変 えるので重要 です。) 原因 さがしの方法 を使います。
がRNase E ( RNAを切ってこわすはたらきをする道具の名前です。RNAがこわれる速さが変 わると細胞 の切りかえが変 わるため重要 です。) 関 わるかも、確 かめます。
CsrAが好 きな形の目じるしも、くわしく調べます。
- 研究のまとめ:
-
のしくみは、バランスを取るCsr ( 大腸菌 の中で、いろいろな遺伝子 のはたらきをまとめて切りかえる調整のしくみの名前です。環境 が変 わったときに生きのびるための全体の切りかえに関 わるので重要 です。) です。回路 ( いくつかのしくみがつながって、全体として決まった動きをするしくみのことです。たんぱくやRNAがたがいに影響 し合う全体像 を理解 するのに重要 です。)
が、たくさんのCsrA ( Csrの中心になる小さなたんぱくで、mRNAにくっついて、たんぱくが作られる量 を増 やしたり減 らしたりします。細胞 のはたらきのオンオフを決める役として重要 です。) をまとめて動かします。遺伝子 ( 生き物の体の作り方やはたらき方の情報 をもつ部分です。どんなたんぱくを作るかの元になるので重要 です。)
同時に、 とCsrB ( 小さなRNAの一つで、CsrAをたくさんつかまえて、CsrAがmRNAにくっつくのをじゃまします。CsrAのはたらきを弱めて切りかえを作るので重要 です。) がCsrAをつかまえます。CsrC ( 小さなRNAの一つで、CsrBと同じようにCsrAをつかまえて調整します。CsrBと一緒 に働 いて切りかえの速さや強さを決めるので重要 です。)
そのため、切りかえができると考えられます。
CsrBとCsrCは、すぐこわれます。
だから、すばやい切りかえに役立ちます。
は、CsrAの数をCsrD ( CsrBやCsrCがこわれるのを進めるのを助けるたんぱくです。CsrBやCsrCの量 を通して、自由に働 けるCsrAの量 を変 えるので重要 です。) 変 えません。
でも、CsrBとCsrCの を進めます。分解 ( 分子をこわして小さくすることです。mRNAや小さなRNAがどれくらいの速さで分解 されるかが、切りかえの速さを決めるので重要 です。)
その結果 、自由に使えるCsrAの量 が変 わります。
また、CsrAが止めるときの形が整理されました。
一方で、強くするしくみは、まだ足りません。
CsrDの新しい役わりの考え方も大切です。
しるしを受けるたんぱくが、
RNA ( 細胞 の中にある分子で、情報 を運んだり、細胞 の調整に使われたりします。たんぱく作りや調整の中心にあるので重要 です。) 分解 を選 ぶ例 として重要 です。
- これからどうする?:
-
これから、
が強くする仕組みを知りたいです。CsrA ( Csrの中心になる小さなたんぱくで、mRNAにくっついて、たんぱくが作られる量 を増 やしたり減 らしたりします。細胞 のはたらきのオンオフを決める役として重要 です。)
CsrAがどうやって を守るかがmRNA ( 遺伝子 の情報 を運ぶRNAで、たんぱくを作るための「設計図 」として使われます。どのたんぱくをどれだけ作るかを決める材料 なので重要 です。) 課題 です。
mRNAのあつかい方が、どう変 わるかも調べます。
また、 がどうやってCsrD ( CsrBやCsrCがこわれるのを進めるのを助けるたんぱくです。CsrBやCsrCの量 を通して、自由に働 けるCsrAの量 を変 えるので重要 です。) を動かすかも、RNase E ( RNAを切ってこわすはたらきをする道具の名前です。RNAがこわれる速さが変 わると細胞 の切りかえが変 わるため重要 です。)
まだよく分かっていません。
CsrDのそれぞれの部品の役目も調べます。
さらに、CsrDににたたんぱくは、ほかの菌 にもいます。
どれくらい広くある道すじかを調べます。
そして、動きやねばねば作りに、
どう関 わるかも比 べて学びます。
- 著者名:
- Suzuki Kazushi
- 掲載誌名:
- 新潟大学農学部研究報告
- 巻:
- 59
- 号:
- 2
- ページ:
- 56 - 63
- 発行日:
- 2007-03
- 新潟大学学術リポジトリリンク:
- http://hdl.handle.net/10191/4851
