新人看護師の‘観察・判断への気づき’を育てる視線解析を用いた教育プログラムの評価 : 臨床経験豊富な看護師の‘DVD教材’視聴による気づきの分析

近年、医療の高度化や在院日数の短縮化、医療安全に対する意識の高まりなどによって、新人看護師に求められる臨床実践能力が複雑多様化しています。このため、新人看護師の臨床実践能力の不足がインシデントや離職の一因となることが指摘されています。本研究の目的は、臨床経験豊富な看護師の視線解析と観察意図を収録したDVD教材を用いて、新人看護師の教育プログラムを評価し、その効果を質的に分析することです。具体的には、新人看護師に視線運動データを提示してふり返りを行い、さらにDVD教材を視聴させることで、経験豊富な看護師の観察や判断の傾向に気づかせる教育支援を実施します。

本研究の結果、新人看護師が経験豊富な看護師の観察特徴や意図に気づき、それに基づいて自分の観察の不足箇所や癖を評価することができました。また、経験豊富な看護師の視線と自分の視線との類似性を確認することで、新人看護師は安心感を得て成長を実感しました。これにより、新人看護師が自身の課題を明確にし、新たな目標を見出すことができました。これらの結果から、教育プログラムが新人看護師にとって、視覚的および言語的に経験豊富な看護師の臨床知を取り込む過程を促進し、自己の課題の意味づけに効果があることが示されました。

本研究の対象者は、A病院に入職した6か月後の新人看護師28名です。教育プログラムは、①視線運動計測、②自分の視線によるふり返り、③経験豊富な看護師の視線と観察意図を収録したDVD教材視聴によるふり返りの3つで構成されています。視線運動は模擬病室画像を観察しながら専用のシステムを用いて計測・解析しました。その後、パソコン画面で再生した視線運動データをもとにふり返りを行い、DVD教材を視聴して共同注視的な教育支援を受けました。教育支援者は、主体的なリフレクションを促進するために、新人看護師の語りを意味ある文脈ごとに抜き出し、コード化して分析しました。

本研究の結論として、経験豊富な看護師の視線解析と観察意図を収録したDVD教材視聴によって、新人看護師の観察・判断への気づきを質的に分析し、【経験豊富な看護師の観察の特徴の分析】、【経験豊富な看護師の観察意図を確認】、【観察の不足箇所や観察の癖を評価】、【課題の明確化】、【類似した視線の軌跡による安心と成長の自覚】の5つのカテゴリーに分類できました。この教育プログラムは、新人看護師にとって、経験豊富な看護師の臨床知の可視化と言語化を通じて、自己の課題の意味づけと成長の過程をサポートする有効な手段であることが示されました。

今後の展望として、より多様な臨床シナリオや異なる病院環境における教育プログラムの適用を検討することが挙げられます。また、新人看護師の長期的な成長や専門性の向上を支援するための継続的な教育プログラムの開発が必要です。さらに、視線解析技術や教育方法を進化させることで、より効果的な新人看護師の教育支援が期待されます。最終的には、これらの取り組みが看護現場の安全性向上や看護師の離職防止に寄与することが目指されます。

最近、医療技術が進歩し、患者が病院にいる日数が短くなったことや、医療の安全性が重視されるようになりました。そのため、新人の看護師に必要とされる技術や知識が増えています。しかし、新人の看護師が必要な技術を持っていないと、ミスをしたり、仕事を辞めてしまうことがあります。この研究の目的は、経験豊富な看護師がどこを見て患者を観察しているかを記録したDVDを使って、新人看護師の教育プログラムを評価し、その効果を詳しく調べることです。

この研究では、新人看護師が経験豊富な看護師の観察方法や意図に気づき、それに基づいて自分の観察の不足を見つけることができました。また、経験豊富な看護師の観察の仕方と自分の観察の仕方が似ていることを確認することで、新人看護師は安心感を得て成長を感じました。この教育プログラムは、新人看護師が視覚的および言語的に経験豊富な看護師の知識を取り込むのを助け、自己の課題の意味を理解するのに効果があることが示されました。

この研究の対象は、A病院に入職して6か月経った新人看護師28名です。教育プログラムは、①視線運動(人がどこを見ているかを計測することです。視線が特定の場所にとどまる時間や移動のパターンを解析します。)の計測、②自分の視線のふり返り、③経験豊富な看護師の視線と観察意図を収録したDVDを視聴してふり返る、の3つで構成されています。視線運動は模擬病室の画像を観察しながら専用のシステムを使って計測し、そのデータをもとにパソコンでふり返りを行います。そして、DVDを視聴して共同でふり返りを行いました。教育支援者は、新人看護師の話を意味のある文脈ごとにまとめ、分析しました。

この研究では、経験豊富な看護師の視線解析と観察意図を記録したDVDを使った教育プログラムによって、新人看護師が観察や判断の仕方に気づくことができ、それを質的に分析しました。これにより、【経験豊富な看護師の観察の特徴】、【観察意図の確認】、【観察の不足や癖の評価】、【課題の明確化】、【類似点による安心と成長】の5つのカテゴリーに分類できました。このプログラムは、新人看護師が経験豊富な看護師の知識を見える形で学ぶのを助け、自己の成長をサポートする有効な方法であることが示されました。

今後は、もっといろいろな場面や違う病院での教育プログラムの適用を考えることが必要です。また、新人看護師の長期的な成長を支援するために継続的な教育プログラムの開発が必要です。さらに、視線解析技術や教育方法を進化させることで、新人看護師の教育をもっと効果的にすることが期待されます。これらの取り組みが、看護の現場の安全性向上や看護師の離職防止に役立つことを目指しています。