論文詳細
医学部保健学科
医歯学系
#紀要論文
IL-12/IL-23p40モノクローナル抗体製剤ウステキヌマブの腫瘍抗原特異的細胞傷害性T細胞 (CTL) に対する影響
- AI解説:
- 乾癬はT細胞介在性自己免疫性皮膚疾患であり、その発症にはIL-12およびIL-23が重要な役割を果たしている。ウステキヌマブはIL-12/IL-23p40に特異的に結合するモノクローナル抗体であり、乾癬の治療に有効であることが報告されている。しかし、IL-12は抗腫瘍免疫においても重要な役割を果たすため、ウステキヌマブの使用により腫瘍発生率が増加する可能性が懸念される。本研究の目的は、ウステキヌマブが抗原特異的癌免疫に及ぼす影響を明らかにすることである。
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医学部保健学科
医歯学系
#紀要論文
IL-12/IL-23p40モノクローナル抗体製剤ウステキヌマブの腫瘍抗原特異的細胞傷害性T細胞 (CTL) に対する影響
AI解説
- 背景と目的:
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乾癬はT細胞介在性自己免疫性皮膚疾患であり、その発症にはIL-12およびIL-23が重要な役割を果たしている。ウステキヌマブはIL-12/IL-23p40に特異的に結合するモノクローナル抗体であり、乾癬の治療に有効であることが報告されている。しかし、IL-12は抗腫瘍免疫においても重要な役割を果たすため、ウステキヌマブの使用により腫瘍発生率が増加する可能性が懸念される。本研究の目的は、ウステキヌマブが抗原特異的癌免疫に及ぼす影響を明らかにすることである。
- 主要な発見:
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本研究では、乾癬患者においてウステキヌマブの投与が乾癬症状を改善する一方で、腫瘍抗原特異的CTLのfrequencyに影響を与えないことを確認した。in vitroの実験でも、樹状細胞の抗原提示能および抗原特異的CTLの誘導に対するウステキヌマブの抑制効果は見られなかった。これにより、ウステキヌマブは腫瘍免疫応答を抑制することなく乾癬治療に有用であることが示唆された。
- 方法論:
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本研究は、乾癬患者を対象に、mWT1ペプチド投与後にウステキヌマブを投与し、抗原特異的CTLのfrequencyを測定することにより行われた。また、in vitro実験では、樹状細胞の抗原提示能および抗原特異的CTLの誘導に対するウステキヌマブの影響を評価するために、混合リンパ球培養法(MLPC法)やPMDC刺激培養法が用いられた。各実験では、ウステキヌマブの有無による細胞の増殖や抗原提示能の変化をフローサイトメトリーや3H-thymidine取り込み試験で解析した。
- 結論と意義:
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本研究の結果、ウステキヌマブが乾癬治療において有効でありながら、腫瘍免疫応答に影響を与えないことが示された。具体的には、ウステキヌマブの投与後も腫瘍抗原特異的CTLのfrequencyに有意な変化が見られなかったことから、ウステキヌマブ治療による腫瘍発生リスクの増加は懸念されないと結論づけられる。これにより、ウステキヌマブの安全性が再確認され、乾癬治療における選択肢としての重要性が強調される。
- 今後の展望:
-
今後の研究では、ウステキヌマブの抗腫瘍免疫に対する影響をさらに詳細に解析することが必要である。特に、CTLと並んで抗腫瘍免疫において重要な役割を担うNK細胞に対するウステキヌマブの作用についても検討することが望まれる。これにより、ウステキヌマブのさらなる安全性と有効性を確立し、乾癬治療の最適な戦略を構築するための基礎データを提供できると考えられる。
- 背景と目的:
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という病気は、乾癬 ( 皮膚が赤くなり、かゆみや痛みを伴う病気です。) という免疫細胞が関係するT細胞 ( 体の中の免疫細胞の一種で、病原菌やウイルスと戦います。) の皮膚の病気です。この病気の発症にはIL-12とIL-23という物質が重要な役割を果たしています。自己免疫 ( 自分の体の細胞を攻撃してしまう免疫反応のことです。) という薬はIL-12とIL-23に特別に結合する抗体で、乾癬の治療に効果があることが知られています。ただし、IL-12はがんに対する免疫にも大事な役割を持っているため、ウステキヌマブを使うとがんができやすくなるかもしれないという心配があります。この研究の目的は、ウステキヌマブががんに対する免疫にどう影響するのかを確かめることです。ウステキヌマブ ( 乾癬の治療に使われる薬で、IL-12とIL-23に結合してその働きを止めます。)
- 主要な発見:
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この研究では、
の患者に乾癬 ( 皮膚が赤くなり、かゆみや痛みを伴う病気です。) を使うと、乾癬の症状が改善される一方で、がんに対する特定の免疫細胞(ウステキヌマブ ( 乾癬の治療に使われる薬で、IL-12とIL-23に結合してその働きを止めます。) )の数には影響がないことがわかりました。また、実験室での実験でも、ウステキヌマブが免疫細胞の働きを妨げないことが確認されました。これにより、ウステキヌマブはがんに対する免疫を抑えずに乾癬の治療に使えることが示されました。CTL ( 細胞傷害性T細胞のこと。病原菌やがん細胞を直接攻撃する免疫細胞です。)
- 方法論:
-
この研究では、
の患者にmWT1ペプチドという物質を投与した後、乾癬 ( 皮膚が赤くなり、かゆみや痛みを伴う病気です。) を投与して、がんに特異的なウステキヌマブ ( 乾癬の治療に使われる薬で、IL-12とIL-23に結合してその働きを止めます。) の数を測定しました。また、実験室でCTL ( 細胞傷害性T細胞のこと。病原菌やがん細胞を直接攻撃する免疫細胞です。) が抗原を提示する能力や、CTLがどれくらい誘導されるかを調べるために、混合リンパ球培養法(MLPC法)やPMDC刺激培養法を使いました。それぞれの実験では、細胞の増殖や抗原提示の能力を樹状細胞 ( 免疫細胞の一種で、他の免疫細胞に病原体を知らせる役割を持っています。) という方法やフローサイトメトリー ( 細胞の種類や状態を調べるための技術です。) で解析しました。3H-thymidine取り込み試験 ( 細胞がどれだけ増えたかを測る方法です。)
- 結論と意義:
-
この研究の結果、
はウステキヌマブ ( 乾癬の治療に使われる薬で、IL-12とIL-23に結合してその働きを止めます。) の治療に効果がありながら、がんに対する免疫応答には影響を与えないことがわかりました。具体的には、ウステキヌマブを投与してもがんに特異的な乾癬 ( 皮膚が赤くなり、かゆみや痛みを伴う病気です。) の数に変化が見られなかったため、ウステキヌマブががんの発生リスクを高める心配はないと結論づけられます。これにより、ウステキヌマブの安全性が改めて確認され、乾癬治療において重要な選択肢であることが強調されます。CTL ( 細胞傷害性T細胞のこと。病原菌やがん細胞を直接攻撃する免疫細胞です。)
- 今後の展望:
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今後の研究では、
ががんに対する免疫にどのような影響を与えるかをさらに詳しく調べることが必要です。特に、がんに対する免疫で重要な役割を持つNK細胞へのウステキヌマブの影響についても研究することが望まれます。これにより、ウステキヌマブのさらなる安全性と有効性を明らかにし、ウステキヌマブ ( 乾癬の治療に使われる薬で、IL-12とIL-23に結合してその働きを止めます。) 治療の最適な方法を見つけるための基礎データを提供できると考えられます。乾癬 ( 皮膚が赤くなり、かゆみや痛みを伴う病気です。)
- 何のために?:
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乾癬 (かんせん)は、皮膚 の病気です。体の守りをする細胞 が原因 で起こります。IL-12とIL-23という物質 が関係 しています。ウステキヌマブという薬はこの物質 を抑 えます。乾癬 に効 きますが、がんができやすくなるかもしれません。この研究は、ウステキヌマブががんにどう影響 するか調べることです。
- 何が分かったの?:
-
乾癬 の人にウステキヌマブを使うと、乾癬 の症状 が良 くなります。しかし、がんの免疫 細胞 の数は変 わりませんでした。実験 でも、ウステキヌマブは免疫 細胞 の働 きを邪魔 しませんでした。ウステキヌマブはがんの免疫 を抑 えないとわかりました。
- どうやったの?:
-
乾癬 の人にmWT1ペプチドを使い、その後ウステキヌマブを投与 しました。そして、がんに特別 な免疫 細胞 の数を測 りました。実験室 では、樹状 細胞 (じゅじょうさいぼう)を使って細胞 の働 きを調べました。フローサイトメトリーや3H-thymidine取 り込 み試験 を使いました。
- 研究のまとめ:
-
ウステキヌマブは
乾癬 に効 きますが、がんの免疫 には影響 しません。がんの免疫 細胞 の数も変 わりませんでした。だから、ウステキヌマブは安心して使えます。乾癬 の治療 に役立つ薬です。
- これからどうする?:
-
これからの研究で、ウステキヌマブががんの
免疫 にどう影響 するかもっと調べます。特 に、NK細胞 への影響 を研究します。ウステキヌマブの安全な使い方を見つけるためです。
- 著者名:
- 西澤 幹則, 成田 美和子, 岩谷 俊平, 大岩 恵理, 岩渕 南, 内山 孝由, 松山 麻子, 高橋 益廣
- 掲載誌名:
- 新潟大学保健学雑誌
- 巻:
- 11
- 号:
- 1
- ページ:
- 75 - 82
- 発行日:
- 2014-03
- 著者による要約:
- ウステキヌマブはヒト型抗ヒト interleukin(IL)-12/IL-23p40モノクローナル抗体製剤であり,乾癬の治療に用いられている。しかし,IL-12は抗腫瘍免疫において重要な役割を担うため,ウステキヌマブによる腫瘍発生率の増加が懸念されている。今回の検討では,ウステキヌマブの抗原特異的癌免疫における影響を明らかにすることを目的とした。乾癬患者に対する in vivo の検討では,ウステキヌマブの投与により乾癬症状は改善されたが,腫瘍抗原特異的細胞傷害性 T 細胞(CTL)の frequency は投与開始以降も抑制されることはなかった。また in vitro の検討では,樹状細胞の抗原提示能及び抗原特異的 CTL の誘導に対するウステキヌマブの抑制効果は確認できなかった。これらの結果から,ウステキヌマブは樹状細胞の機能や腫瘍抗原特異的 CTL の誘導を抑制することなく乾癬症状を改善することが可能であり,ウステキヌマブ治療症例における腫瘍発症の増加は見られないという最近の臨床試験の知見を支持するものと考えられた。
Ustekinumab (a humanized monoclonal antibody against the common p40 subunit shared by IL-12 andIL-23) blocks the pathways of T helper (Th)-1 and Th-17, which play pivotal roles in cell-mediated immunity and production of pro-inflammatory cytokines. Ustekinumab is currently used for the treatment of moderate to severe psoriasis with remarkable efficiency. However, worries about the development of malignancies in ustekinumab-treated patients could not be completely cleared because of the major role of IL-12 and IL-23 in tumor immunity. In the present study, we tried to elucidate the effects of ustekinumab on antigen-specific tumor immunity. A 56 years-old male volunteer was subcutaneously administered with 20 times of WT1 peptide. WT1 tetramer+ CD8+ T cells appeared after the first peptide administration and the frequency of WT1 tetramer+ T cells elevated to more than 15 in 10^6 CD8+ T cells. He began to be treated with subcutaneous injections of ustekinumab for moderate psoriasis. Psoriasis plaques were almost cleared up at week 12. The frequency of WT1 tetramer+ T cells with cytotoxic ability has not changed for 22 months since the initiation of ustekinumab treatment. The effects of ustekinumab on antigen presenting and CTL inducing abilities of dendritic cells were explored in vitro, resulting in little effects on both immune functions. These in vivo/vitro findings imply that ustekinumab improves psoriasis without suppressing tumor antigen-specific cytotoxic T lymphocytes and support the data of recent clinical trials showing a comparable incidence of malignancies between ustekinumab-treated psoriatic patients and the control.
- 新潟大学学術リポジトリリンク:
- http://hdl.handle.net/10191/38941
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