日本におけるスタニスラフスキー・システムその2 : 小山内薫の劇評をめぐって（プロジェクト特集号 : <声>とテクスト論)

背景と目的：

小山内薫は、日本の演劇界における重要な人物であり、特に築地小劇場の創設やロシアの劇作家の作品を取り上げるなどの功績で知られています。彼の演劇観は、スタニスラフスキー・システムの影響を受けながらも独自の路線を歩んできました。本論文では、小山内の劇評を通じて、彼の演劇観がどのように変化したかを明らかにし、その背景としてヨーロッパでの観劇体験がどのように影響を与えたかを探ります。

主要な発見：

小山内の劇評を分析することで、彼の演劇観が20年間で大きく変化したことがわかります。初期の頃は写実主義を重視し、観客に見せるための演技を批判していましたが、晩年には歌舞伎の形式や表現も評価するようになりました。特に、モスクワ芸術座での観劇経験が彼の考え方に大きな影響を与えたと考えられます。スタニスラフスキー・システムに気付かないままでも、役者の動きや舞台全体の統一感を重視するようになったことが確認されます。

方法論：

本論文では、小山内薫の劇評を時系列に沿って分析し、彼の演劇観の変化を追跡します。明治38年から39年、昭和3年の劇評を中心に、さらに彼がヨーロッパで観劇した際の記録も参照します。特に、ロシアでの観劇体験が彼に与えた影響を詳細に検討し、劇評の中に表れる小山内の視点の変化を明らかにします。

結論と意義：

小山内薫の劇評を通じて、彼の演劇観が写実主義から形式や表現を評価する方向へと変化したことが確認されました。特に、モスクワ芸術座での観劇体験が彼に与えた影響は大きく、スタニスラフスキー・システムに気付かないままでも、役者の動きや舞台全体の統一感を重視するようになったことがわかりました。この研究は、演劇史における小山内薫の位置付けを再評価する上で重要な意義を持ちます。

今後の展望：

今後の研究では、小山内薫の演劇観の変化が日本の演劇界に与えた影響をさらに詳細に探ることが求められます。また、彼の劇評を通じて、当時の日本とヨーロッパの演劇界の交流や影響関係を明らかにすることも重要です。さらに、スタニスラフスキー・システムの日本への導入とその受容についても深く掘り下げることで、現代の演劇における彼の遺産を再確認することができるでしょう。