論文詳細
法学部
#紀要論文
Right to health in international human rights law
- AI解説:
- 本稿は、国際人権法における「健康への権利(right to health)」を取り上げ、医療を必要とする外国人(non-nationals)の退去強制(expulsion/deportation)といった移民管理との相互作用に焦点を当てる。著者は健康への権利を広い概念として捉え、医療(health care)にとどまらず「健康の基礎的決定要因(the “underlying determinants of health”)」にまで及ぶとし、社会権規約(International Covenant on Economic, Social and Cultural Rights: ICESCR)第12条が「すべての人(everyone)」に到達可能な最高水準の身体的・精神的健康への権利を認めている点を強調する。この規範的背景のもと、本稿は、外国人の健康状態がどのような場合に退去強制の判断に影響すべきか、また当局が個々人の医療状況を考慮しない場合に退去強制が健康への権利を侵害しうるのかを問う。これを検討するため、まずICESCRと一般的意見第14号(General Comment No. 14)の下での健康への権利の規範的範囲を明確化し、次に退去強制の文脈で健康問題が争点となった日本の裁判例を分析し、最後に、健康を理由とする送還停止の主張が通常、欧州人権条約(European Convention on Human Rights: ECHR)第3条および第8条の枠組みで論じられる欧州人権裁判所(European Court of Human Rights: ECtHR)の判例法と比較する。
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法学部
#紀要論文
Right to health in international human rights law
AI解説
- 背景と目的:
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本稿は、国際人権法における「健康への権利(right to health)」を取り上げ、医療を必要とする外国人(non-nationals)の退去強制(expulsion/deportation)といった移民管理との相互作用に焦点を当てる。著者は健康への権利を広い概念として捉え、医療(health care)にとどまらず「健康の基礎的決定要因(the “underlying determinants of health”)」にまで及ぶとし、社会権規約(International Covenant on Economic, Social and Cultural Rights: ICESCR)第12条が「すべての人(everyone)」に到達可能な最高水準の身体的・精神的健康への権利を認めている点を強調する。この規範的背景のもと、本稿は、外国人の健康状態がどのような場合に退去強制の判断に影響すべきか、また当局が個々人の医療状況を考慮しない場合に退去強制が健康への権利を侵害しうるのかを問う。これを検討するため、まずICESCRと一般的意見第14号(General Comment No. 14)の下での健康への権利の規範的範囲を明確化し、次に退去強制の文脈で健康問題が争点となった日本の裁判例を分析し、最後に、健康を理由とする送還停止の主張が通常、欧州人権条約(European Convention on Human Rights: ECHR)第3条および第8条の枠組みで論じられる欧州人権裁判所(European Court of Human Rights: ECtHR)の判例法と比較する。
- 主要な発見:
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規範面では、本稿は、ICESCR第12条が「健康(health)」を厳密に定義してはいないものの、一般的意見第14号と整合する形で、「利用可能性(availability)」「アクセス可能性(accessibility)」「受容可能性(acceptability)」「質(quality)」からなる多面的理解を支持し、救済へのアクセスを含め、健康への権利を尊重(respect)・保護(protect)・充足(fulfil)する国家義務を課すことを強調する。移民の文脈では、著者は関連する2点を指摘する。すなわち、健康への権利は原則として非差別的で国籍にかかわらず適用される一方で、そこから直ちに、医療上の理由で外国人が受入国に滞在する一般的権利が導かれるわけではない、という点である。日本の裁判例分析によれば、それでも裁判所は、「実質的障害(substantial hindrance)」や、出身国における治療の実際上の利用可能性/負担可能性という観点から退去強制の判断を吟味しうる。X and others v. Minister of Justice(バングラデシュ人家族)では、東京地方裁判所が法務大臣の判断に誤りがあるとし、(i) バングラデシュで当該薬が入手可能かどうかに疑いがあること、(ii) 費用がバングラデシュの平均所得のおよそ3分の1(約1500タカ)と説明されていることを重視したうえで、停留精巣(cryptorchidism)の手術後の子どものフォローアップ医療への懸念も示した。しかし、東京高等裁判所はこれを覆し、当該薬剤と必要なサービスは利用可能であるとして(バングラデシュ政府省庁のデータベースを引用)、この場面でICESCR第12条は個人の権利としての請求権(individual entitlements)を付与しないと判断し、最高裁判所は上告を棄却した。さらに他の日本の事例(末期の胸腺癌(terminal thymic carcinoma)、経過観察を伴う脳腫瘍、ダウン症の子ども、先天性四肢変形(a congenital limb deformity))を通じて本稿が見いだすパターンは、成功する主張には、出身国の医療水準が「劣っている」ことを示すだけでは足りず、必要な治療へのアクセス欠如により予見可能な悪化(foreseeable deterioration)が生じることを示す必要がある、という点であり、結論は強く事案依存である。欧州との比較では、ECtHRにおけるECHR第3条の基準は歴史的に非常に厳格(D. v. the United Kingdom、N. v. the United Kingdom)と説明される一方、Paposhvili v. Belgium により「極めて例外的な事例(very exceptional cases)」の範囲が拡張され、強い苦痛を伴う、または平均余命の著しい短縮をもたらす「重大で急速かつ不可逆的な悪化(a “serious, rapid and irreversible decline”)」のリスクが含まれうるとされ、さらに意思決定者に対し、費用・距離・社会的/家族的支援を含む実際上のアクセスを事案ごとに評価することを求めたとされる。
- 方法論:
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本研究は、条約解釈、権威ある解釈資料、判例の検討に基づく、教義学的かつ比較法的な法分析である。第一に、ICESCR第12条を精読し、その起源を世界人権宣言(Universal Declaration of Human Rights)第25条1項にたどり、他の普遍的および地域的な文書の中に位置づけることで、健康への権利の規範的内容を概説する。次に、社会権規約委員会(Committee on Economic, Social and Cultural Rights)の一般的意見第14号を用いて、権利の範囲(「健康の基礎的決定要因(the “underlying determinants of health”)」を含む)、AAAQ枠組み(availability, accessibility, acceptability, quality)、および義務の三分類(respect, protect, fulfil)を、救済へのアクセスを含めて説明する。第二に、本稿は、出入国管理及び難民認定法の下での退去強制と「在留特別許可(special permit to stay)」の裁量を中心に日本の裁判例を分析し、重篤な疾病で日本での治療を要することや家族の看護の必要などを「積極要素(positive elements)」として挙げる2006年の省庁ガイドラインが実務上果たす役割も扱う。主要事件(X and others v. Minister of Justice)を複数の審級(東京地裁、東京高裁、最高裁の上告棄却)で検討し、その後、結論の異なる他の日本の裁判例を簡潔に論じて文脈づける。第三に、本稿は、ECtHRの判例法と比較し、健康を理由とする送還に関する主張がECHR第3条(場合により第8条)で審査される点を踏まえつつ、D. から N.、さらに Paposhvili へと至る基準の変化を含め、裁判所の閾値テスト(threshold tests)に焦点を当てる。この比較により、共通点(例:現実的リスクと医療への実際上のアクセスの重視)と相違点(例:閾値の厳しさ、違法行為の扱い)を特定する。
- 結論と意義:
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本稿は、日本の実務とECtHRの判例法が、共通する中核的な実務上の困難を抱えると結論づける。すなわち、裁判所や当局は、健康状態、送還による害の予見可能性、受入国における治療の現実世界での利用可能性・アクセス可能性について、証拠に敏感な精密判断を下さなければならず、著者はこれを司法にとって本質的に困難な作業だと位置づける。同時に本稿は、いくつかの比較上の示唆を導く。取り上げた日本の事例には、ECtHRの歴史的に厳格な第3条アプローチと比べて、比較的「人道的(“humane”)」な傾向がみられる、すなわち、救済を瀕死に近い状況に限るのではなく、(少なくとも一部の判断では)治療の利用可能性と負担可能性を詳細に吟味する、という意味である。しかし日本の結論は、別の構造的制約にも左右される。すなわち、日本の裁判所は一般にICESCRを自動執行的(self-executing)とは扱わず、そのため条約が退去強制への直接の法的障壁として機能しにくく、第12条の義務と在留特別許可に関する国内ガイドラインとの理論的関係も未解決のままである。さらに著者は、不行跡(misconduct)の関連性に関する重要な対比を指摘する。ECtHRは第3条の保護が個人の行為の非難可能性にかかわらず適用されると述べている一方で、日本の意思決定では重大な出入国法違反が人道的考慮と比較衡量されうるため、健康上の必要が大きい場合でも保護が狭まる可能性がある。総じて本稿の意義は、退去強制の文脈における健康への権利の主張が抽象的な条約文言へ還元できるものではなく、医療へのアクセスに関する具体的評価と、裁量・ガイドライン・司法審査を通じて国内法制度が国際規範をどのように媒介するかに左右されることを明確化した点にある。
- 今後の展望:
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本稿は、確立した教義的解決を示すというより、今後の事例の積み重ねを通じて発展させるべき未解決の論点をいくつか示している。日本について著者は、2006年ガイドラインにある「重篤な疾病(serious disease)」および「特別な事情(special circumstances)」の概念がどのように解釈・適用されるべきか、より深い検討が必要だとする。というのも、裁判実務は、ガイドライン本文には明示されていない「悪化の予見可能性(foreseeability-of-deterioration)」基準に依拠しているように見えるためである。また、ICESCR第12条(および一般的意見第14号による解釈)と在留特別許可の国内枠組みとの理論的連関は、十分に明確化されていないことも指摘される。とりわけ、裁判所が規約を自動執行的と扱うことに消極的である点が、この領域で「人権保護にとっての重大な問題(a “substantial problem for human rights protection”)」を生むとされる。欧州側では、本稿は Paposhvili v. Belgium を、瀕死の切迫を超えて「極めて例外的な事例」の概念を広げ、費用・距離・社会的/家族的支援といった実際上のアクセス要因を前面に出した重要な転換として扱う。この展開は、今後の訴訟と行政実務が、実質的で事案ごとの評価の十分性や、送還国が受入国から「個別的で十分な保証(“individual and sufficient assurances”)」を得ているかに焦点を当てる可能性が高いことを示唆する。最後に著者は、両制度に共通して、医学的予後と出身国における治療への実際のアクセスに関する事実認定の質と精度を高めることが引き続き中心課題になると強調する。これらの判断が、人道的な送還停止の主張が認められるか否かを大きく左右するためである。
- 背景と目的:
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この文章は、国際人権法でいう「
」を取り上げ、病気などで医療が必要な外国人を国が強制的に帰国させる場合に、その人の健康をどこまで考えるべきかを考えます。健康への権利 ( 国籍に関係なく、できる限り高い水準の心身の健康を守られるべきだという人権です。病気の治療だけでなく、健康に生きるための条件も含む広い考え方で、国がそれを邪魔せず、守り、実現に向けて制度を整えることが重要です。)
筆者は「健康への権利」は、病院での治療だけでなく、清潔な環境や安全な水など、健康を支える条件全体にも関わる広い考え方だと説明します。また、 という国際ルールの第12条が、国籍に関係なく「すべての人」に、到達できる最高水準の心身の健康を守る権利を認めている点を重視します。社会権規約 ( 正式には経済的社会的文化的権利に関する国際規約で、健康、教育、労働など生活に関わる権利を定めた国際条約です。国は段階的に権利の実現を進める義務を負います。)
そのうえで、外国人を帰国させる判断で健康状態はどんな場合に重要になるのか、そして当局が医療事情を十分に見ないまま帰国させると「健康への権利」の侵害になりうるのかを問題にします。検討のために、国際ルールの内容整理、日本の裁判例の分析、 の考え方との比較を行います。欧州人権裁判所 ( 欧州人権条約にもとづき、加盟国の人権侵害の訴えを審査する国際裁判所です。各国の送還判断にも影響する基準を示します。)
- 主要な発見:
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国際ルールの面では、
第12条は「健康」を細かく定義していないものの、社会権規約 ( 正式には経済的社会的文化的権利に関する国際規約で、健康、教育、労働など生活に関わる権利を定めた国際条約です。国は段階的に権利の実現を進める義務を負います。) に沿って、一般的意見第14号 ( 社会権規約を監督する国連の委員会が出した、健康への権利の考え方を詳しく説明する文書です。健康への権利が医療だけに限られないことや、国の義務の内容を示します。) は次の4つの面から考えるべきだとします。医療や制度があるか、利用しやすいか、文化や人権に配慮されているか、内容の健康への権利 ( 国籍に関係なく、できる限り高い水準の心身の健康を守られるべきだという人権です。病気の治療だけでなく、健康に生きるための条件も含む広い考え方で、国がそれを邪魔せず、守り、実現に向けて制度を整えることが重要です。) が十分か、という点です。また国には、健康への権利を邪魔しないこと、第三者による妨げから守ること、必要な仕組みを整えることが求められます。さらに、権利侵害があったときに救済を求められる仕組みも重要だとします。質 ( 医療や薬が安全で効果があり、専門的に適切であることです。形だけ整っていても質が低いと健康を守れないため重要です。)
移民の場面では、健康への権利は国籍によらず原則として差別なく及ぶ一方で、それだけで「医療のためにその国に住み続ける権利」が当然に認められるわけではない、と整理します。
日本の裁判例からは、帰国させると治療が現実には受けられないことが大きな問題になる場合があると分かります。たとえばバングラデシュ人家族の事件では、東京地裁は、薬が本当に手に入るのか、費用が重すぎないか、子どもの手術後の継続的な診察ができるのかを重視して、国の判断に問題があるとしました。しかし東京高裁は、薬や医療サービスは利用できるとして結論を逆にし、社会権規約第12条は個人が裁判で直接「権利として要求できる形」ではないとも述べ、最高裁も判断を変えませんでした。
ほかの日本の事例をまとめると、出身国の医療水準が日本より低いと言うだけでは足りず、必要な治療にアクセスできないことで健康が悪化する見込みが高いことを示す必要があり、結論はケースごとの事情に強く左右されます。
の判例では、以前は「帰国で欧州人権裁判所 ( 欧州人権条約にもとづき、加盟国の人権侵害の訴えを審査する国際裁判所です。各国の送還判断にも影響する基準を示します。) されるのは本当に例外で、ほぼ死が近い場合に限る」という非常に厳しい基準が中心でしたが、Paposhvili事件で考え方が広がりました。死の直前でなくても、帰国により深刻で急激で元に戻らない悪化が起こり、強い苦痛や寿命の大幅な短縮につながる現実的な危険があれば問題になりうるとされ、費用や距離、支援の有無など「実際に医療を受けられるか」を個別に確かめることが求められました。保護 ( 国が、企業や他人など第三者による妨害から人々を守る義務です。医療の差別や不当な扱いを防ぐために重要です。)
- 方法論:
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この研究は、条約の文章の読み取りや、国連委員会の解釈文書、裁判例をもとにした法律の分析です。
まず 第12条の意味を整理し、社会権規約 ( 正式には経済的社会的文化的権利に関する国際規約で、健康、教育、労働など生活に関わる権利を定めた国際条約です。国は段階的に権利の実現を進める義務を負います。) を使って、一般的意見第14号 ( 社会権規約を監督する国連の委員会が出した、健康への権利の考え方を詳しく説明する文書です。健康への権利が医療だけに限られないことや、国の義務の内容を示します。) がどこまで含むのか、4つの視点での整理、国の義務の整理、救済の重要性を確認します。健康への権利 ( 国籍に関係なく、できる限り高い水準の心身の健康を守られるべきだという人権です。病気の治療だけでなく、健康に生きるための条件も含む広い考え方で、国がそれを邪魔せず、守り、実現に向けて制度を整えることが重要です。)
次に、日本の入管法にもとづく と「退去強制 ( 国が、在留資格がないなどの理由で、外国人に出国を命じて強制的に帰国させる手続きです。本人の健康や家族事情も関係しうるため、人権とのバランスが問題になります。) 」をめぐる裁判例を分析し、2006年の省庁ガイドラインが実務でどう働いているかも扱います。在留特別許可 ( 本来は退去強制の対象でも、人道上の理由などで例外的に日本に住むことを認める制度です。健康状態や家族の介護などが考慮されることがあります。)
最後に、 の判例を取り上げ、主に欧州人権裁判所 ( 欧州人権条約にもとづき、加盟国の人権侵害の訴えを審査する国際裁判所です。各国の送還判断にも影響する基準を示します。) 第3条や第8条でどんな基準が使われてきたか、その変化を比較します。欧州人権条約 ( ヨーロッパの国々が結んだ人権条約で、生命や自由、家族生活などを守るルールを定めます。欧州人権裁判所が違反の有無を判断します。)
- 結論と意義:
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筆者は、日本と欧州のどちらでも共通して、判断がとても難しい問題を抱えていると結論づけます。帰国させた場合にどれだけ健康被害が起こりうるか、出身国で治療が現実に受けられるのかを、証拠にもとづいて細かく判断しなければならないからです。
比較すると、日本の一部の判断は欧州の昔の厳しい基準より、人道的に丁寧に医療の や費用負担まで検討する傾向が見られます。ただし日本では、利用可能性 ( 病院、医師、薬、制度などが、そもそも十分に存在することを指します。存在しなければ治療を受ける前提が崩れるため重要です。) が国内でそのまま裁判の「直接の根拠」になりにくく、条約と国内の社会権規約 ( 正式には経済的社会的文化的権利に関する国際規約で、健康、教育、労働など生活に関わる権利を定めた国際条約です。国は段階的に権利の実現を進める義務を負います。) の基準の関係もはっきりしていません。在留特別許可 ( 本来は退去強制の対象でも、人道上の理由などで例外的に日本に住むことを認める制度です。健康状態や家族の介護などが考慮されることがあります。)
さらに重要な違いとして、 は、残酷な扱いを禁止する欧州人権裁判所 ( 欧州人権条約にもとづき、加盟国の人権侵害の訴えを審査する国際裁判所です。各国の送還判断にも影響する基準を示します。) は本人の過去の行為が悪くても適用されると強調する一方、日本では重大な入管法違反などが人道的判断と比べられ、健康上の必要が大きくても保護が弱まる可能性があります。保護 ( 国が、企業や他人など第三者による妨害から人々を守る義務です。医療の差別や不当な扱いを防ぐために重要です。)
この文章の意義は、「 」を理由に送還を止められるかどうかは、条約の言葉だけで決まるのではなく、実際に医療へアクセスできるかの具体的な評価や、国内制度の運用のされ方によって大きく左右されることをはっきり示した点にあります。健康への権利 ( 国籍に関係なく、できる限り高い水準の心身の健康を守られるべきだという人権です。病気の治療だけでなく、健康に生きるための条件も含む広い考え方で、国がそれを邪魔せず、守り、実現に向けて制度を整えることが重要です。)
- 今後の展望:
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今後の課題として、日本では2006年ガイドラインにある「重い病気」や「特別な事情」をどう解釈するべきか、もっと整理が必要だとします。裁判では、ガイドラインに明確に書かれていないのに「帰国で悪化する見込みが高いか」という基準が使われているように見えるためです。
また、 第12条と国内の社会権規約 ( 正式には経済的社会的文化的権利に関する国際規約で、健康、教育、労働など生活に関わる権利を定めた国際条約です。国は段階的に権利の実現を進める義務を負います。) の制度を、理論的にどう結びつけるのかも十分に整理されていません。裁判所が条約を国内で直接使うことに消極的な点は、人権在留特別許可 ( 本来は退去強制の対象でも、人道上の理由などで例外的に日本に住むことを認める制度です。健康状態や家族の介護などが考慮されることがあります。) の面で大きな問題になりうるとされます。保護 ( 国が、企業や他人など第三者による妨害から人々を守る義務です。医療の差別や不当な扱いを防ぐために重要です。)
欧州ではPaposhvili事件以降、費用や距離、支援などを含めた「実際のアクセス」を重視し、送還先の国から個別に十分な保証が得られているかが争点になりやすいと示されます。
全体として、医学的な見通しや出身国で本当に治療が受けられるかについて、事実認定の を高めることが、今後も中心課題だとまとめています。質 ( 医療や薬が安全で効果があり、専門的に適切であることです。形だけ整っていても質が低いと健康を守れないため重要です。)
- 何のために?:
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この文章は、「
健康 に生きる大切さ」を話します。
ここでは、それを「健康 への 」と権利 ( だれもが持っている、守られるべき大切なことです。ここでは健康 に生きるために必要 なことを求 められる意味で使います。) 呼 びます。
病気の外国の人が、日本にいることがあります。
国は、その人を国へ帰すことがあります。
そのとき、体の具合をどこまで考えるか考えます。
健康 は、病院だけの話ではありません。
きれいな水や、清潔 な場所も大事です。
にかかわらず、みんなに国籍 ( どこの国の人かを表すことばです。国籍 によって受けられる制度 や手続 きが変 わることがあり、公平に考えるために大事です。) 権利 がある、とします。
だから、 で帰国 ( 今いる国から自分の国へ帰ることです。病気の人の場合、帰国しても治療 が続 けられるかが問題になります。) 治療 ができるかが大切です。
よく調べずに帰すと、問題になるかもしれません。
そのために、日本や海外の も裁判 ( もめごとについて、法律 にもとづいて正しいかどうかを決めるしくみです。帰国させてよいかなどを決める場になるので重要 です。) 比 べます。
- 何が分かったの?:
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は、国際ルール ( 国どうしで守ろうと決めた決まりです。国の中のルールだけでなく、広い考え方で人を守るために使われます。) 健康 を広く考えます。
見る点は、主に4つあるとします。
1つ目は、 があるかどうかです。医療 ( 病気を治 したり、悪くならないようにしたりするための治療 やケアです。帰国後に受けられるかが大事なポイントになります。)
2つ目は、使いやすいかどうかです。
3つ目は、 や文化を大切にすることです。人権 ( 人が生まれながらに持つ、命や自由などの大切な権利 です。病気の人が不利 にならないように考えるときに重要 です。)
4つ目は、医療 の質 がよいことです。
国には、邪魔 をしない があります。責任 ( しなければならない役目のことです。国が医療 をじゃましない、守る、仕組みを作るなどの役目を指します。)
だれかが邪魔 するのを止める責任 もあります。
必要 な仕組みを作る責任 もあります。
困 ったとき、助けを求 める仕組みも大事です。
ただし、病気だから必 ず住めるわけではありません。
日本の では、裁判 ( もめごとについて、法律 にもとづいて正しいかどうかを決めるしくみです。帰国させてよいかなどを決める場になるので重要 です。) 治療 が本当にできるかが問題です。
薬が手に入るか、費用 が高すぎないか見ます。
手術 のあと、 できるかも見ます。通院 ( 病院に入院せずに、定期的 に病院へ通って治療 を受けることです。手術 のあとも通院できるかで健康 が守れるかが変 わります。)
でも、裁判 で結論 が変 わることもあります。
出身国の医療 が低 いだけでは足りません。
治療 できず、悪くなる可能性 を示 す必要 があります。
ヨーロッパの裁判 では、考え方が広がりました。
死にそうでなくても、ひどく悪化するなら問題です。
お金や距離 、助けがあるかも確 かめます。
- どうやったの?:
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この研究は、ルールの文や
を読みます。裁判 ( もめごとについて、法律 にもとづいて正しいかどうかを決めるしくみです。帰国させてよいかなどを決める場になるので重要 です。)
まず、 の意味を整理します。国際ルール ( 国どうしで守ろうと決めた決まりです。国の中のルールだけでなく、広い考え方で人を守るために使われます。)
次に、日本の と制度 ( 国や社会が、みんなのために作ったルールや仕組みのまとまりです。医療 やお金の助けが使えるかに関 わります。) 裁判 の例 を調べます。
がどう使われるかも見ます。ガイドライン ( 何をどうするかの目安になる指示 やまとめです。裁判 や制度 で判断 するときの参考 になり、使い方が重要 になります。)
最後 に、ヨーロッパの裁判 の考え方と比 べます。
- 研究のまとめ:
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させるかどうかは、とても帰国 ( 今いる国から自分の国へ帰ることです。病気の人の場合、帰国しても治療 が続 けられるかが問題になります。) 難 しいです。
帰国でどれだけ悪くなるか、見きわめが必要 です。
出身国で治療 できるかも、 で証拠 ( 本当だと示 すための材料 です。治療 できない、悪化する可能性 が高いなどを裁判 で認 めてもらうために必要 です。) 確 かめます。
日本では、 や医療 ( 病気を治 したり、悪くならないようにしたりするための治療 やケアです。帰国後に受けられるかが大事なポイントになります。) 費用 まで丁寧 に見る例 もあります。
でも、 が国際ルール ( 国どうしで守ろうと決めた決まりです。国の中のルールだけでなく、広い考え方で人を守るために使われます。) で使いにくい面があります。裁判 ( もめごとについて、法律 にもとづいて正しいかどうかを決めるしくみです。帰国させてよいかなどを決める場になるので重要 です。)
とのつながりも、はっきりしない所があります。制度 ( 国や社会が、みんなのために作ったルールや仕組みのまとまりです。医療 やお金の助けが使えるかに関 わります。)
ヨーロッパは、悪いことをした人でも守ると言います。
日本は、違反 が重いと守りが弱まることがあります。
大事なのは、言葉だけで決まらない点です。
実際 に治療 へ行けるかが、大きく関 わります。
国の制度 の動き方でも、結果 が変 わります。
- これからどうする?:
-
日本では、「重い病気」の考え方を整理します。
「特別 な事情 」も、もっと分かりやすくします。
では、「裁判 ( もめごとについて、法律 にもとづいて正しいかどうかを決めるしくみです。帰国させてよいかなどを決める場になるので重要 です。) で悪化するか」を見ているようです。帰国 ( 今いる国から自分の国へ帰ることです。病気の人の場合、帰国しても治療 が続 けられるかが問題になります。)
でも、それがどこから来た かが基準 ( 判断 するときのものさしです。帰国で悪化するかなどを何で決めるのかに関 わる重要 な考え方です。) 不明 です。
と、日本の国際ルール ( 国どうしで守ろうと決めた決まりです。国の中のルールだけでなく、広い考え方で人を守るために使われます。) のつなぎ方も制度 ( 国や社会が、みんなのために作ったルールや仕組みのまとまりです。医療 やお金の助けが使えるかに関 わります。) です。課題 ( これから直したり、解決 したりする必要 がある問題です。国際ルールと制度 のつなぎ方など、改善点 を示 します。)
裁判 が国際ルールを使いにくいのも問題です。
ヨーロッパは、実際 に が受けられるか医療 ( 病気を治 したり、悪くならないようにしたりするための治療 やケアです。帰国後に受けられるかが大事なポイントになります。) 重視 します。
帰国先の国が、約束 するかも問題になりやすいです。
これからも、事実をていねいに確 かめることが大切です。
- 著者名:
- Watanabe Yutaka
- 掲載誌名:
- 法政理論
- 巻:
- 49
- 号:
- 3-4
- ページ:
- 113 - 156
- 発行日:
- 2017-04
- 新潟大学学術リポジトリリンク:
- http://hdl.handle.net/10191/47556
