中国対越政策の冷却化と再活性化（1963－1973) : 米越交渉開始、カンボジア・クーデタ、米中接近

背景と目的：

本論文は、中国の対ヴェトナム援助政策の変遷を1963年から1973年にかけて検討するものです。特に1968年を転換点として、中国の援助が減少し、1970年のカンボジアのクーデタを契機に再び活発化するまでの過程を探ります。ヴェトナム戦争における中国の戦略的な動機や国際的な影響を理解することを目的としています。

主要な発見：

1968年に中国のヴェトナム援助に大きな変化が見られ、援助の減少や軍の撤退が進みました。これによりヴェトナムと中国の関係は冷却化し、中国は米国との関係改善を模索するようになりました。1970年のカンボジアのクーデタにより、中国の援助は再び活発化し、ヴェトナムのソ連への傾斜を防ぐための施策が取られました。しかし、最終的には中国の政策は失敗に終わり、ヴェトナムはソ連の影響下により深く入りました。

方法論：

本論文は、歴史的な文献や公式記録を基に、中国のヴェトナムへの援助政策の変遷を分析します。具体的な兵器援助の量や軍部隊の派遣数、国際交渉の記録などを詳細に検討し、政策変化の背景にある国際的・国内的要因を探ります。

結論と意義：

中国のヴェトナム援助政策は、初期には大規模であったが、1968年のヴェトナムの米国との交渉開始を契機に減少しました。その後、カンボジアのクーデタを契機に再び活発化しましたが、結局のところヴェトナムは中国の影響下から離れ、ソ連の影響下に入ることとなりました。この過程は、冷戦期の国際関係と中国の外交政策の複雑さを示すものであり、現代の国際関係を理解する上でも重要な意義を持ちます。

今後の展望：

中国とヴェトナムの関係はその後も複雑なまま推移し、1980年代には中越戦争が発生しました。今後は、さらに詳細な資料を元に中越関係の全体像を明らかにし、現代の中国外交政策との連続性や変化を探ることが求められます。また、他の国との関係性も含めた東アジア全体の冷戦史を包括的に理解するための研究が必要です。