中俣正義と小林新一の分岐点 : 1950年代を中心に

この論文の背景と目的は、地域映像アーカイブの企画により、新潟市歴史博物館が所蔵する二人の写真家—小林新一（1917-2012）と中俣正義（1918-1985）—の写真資料を展示する試みを通じて、彼らの写真が持つ特質やその違いについて探求することにあります。特に、小林が自身をフォト・ジャーナリストとして認識し、記事としての写真に重点を置いていたのに対し、中俣は観光ガイドブックや写真集に適した、独立した作品としての写真を撮影していた点に注目しています。この対照的なアプローチを持つ二人を比較展示することで、彼らの写真がどのように異なる効果を生み出すかを検証することが目的です。

主要な発見として、二人の写真家が同じ新潟県をテーマにしながらも、写真に対するアプローチが大きく異なっていた点が挙げられます。中俣正義は、特定の地域や行事を主題にした写真を撮り、その中に普遍的な魅力を見出し展示することが多かったのに対し、小林新一は、特定のテーマについての報道写真やフォト・ジャーナルとしての写真に重きを置いていました。この違いは、たとえば1965年の佐渡の「トキ」を取材した際に明確に現れ、中俣がトキそのものを詳細に撮影したのに対し、小林はトキを取り巻く人間の姿を中心に撮影しました。このように、両者のアプローチの違いが写真の独自性や伝えたいメッセージに大きな影響を与えていることが明らかになりました。

この研究では、主に新潟市歴史博物館での展示を通じて、小林新一と中俣正義の写真資料を比較し、その特性や違いを分析する方法が採られました。具体的には、小林新一の写真フィルムを検証する展覧会が先行して行われ、その後、中俣正義の写真と合わせて展示することで、両者の写真がいかに異なる文脈で解釈されるかを観察しました。また、『カメラ』や『写真の教室』といった当時の写真雑誌への寄稿やコンテストの結果をもとに、二人のキャリアの始まりや写真に対する姿勢の違いを追跡しました。さらに、特定のテーマに対するアプローチの差異についても、具体的な作品例を挙げて分析しました。

論文の結論として、中俣正義と小林新一の写真が、それぞれ異なるコンテクストで独自の価値を持つことが示されました。中俣は、特定の地域や行事に焦点を当て、その魅力を普遍的なものとして表現することに成功しました。一方、小林は、社会的な背景や出来事に対する関心を持ち、それを報道写真として記録し伝えることに重きを置いていました。この違いは、それぞれの写真が持つメッセージや影響力に大きく寄与しており、写真を通じた地域の歴史や文化の理解を深める重要な要素となっていることが確認されました。

今後の展望として、こうした対照的なアプローチを持つ写真家の作品をさらに多くの視点から比較研究することが挙げられます。具体的には、他の地域や時代における写真家との比較を行うことで、写真というメディアが持つ多様性や可能性をより深く理解することができるでしょう。また、デジタルアーカイブやインタラクティブな展示方法を活用して、一般の人々がこれらの写真資料にアクセスしやすくする取り組みが必要です。それにより、地域の歴史や文化をより広く伝えることができ、写真の持つ教育的価値や社会的意義を一層高めることが期待されます。

この研究は、新潟市歴史(れきし)博物館(はくぶつかん)にある二人の写真家、小林新一さんと中俣正義さんの写真を展示(てんじ)します。二人の写真の特長(とくちょう)や違(ちが)いを調べるためです。小林さんはニュースの写真を撮(と)り、中俣さんは観光(かんこう)ガイドブックの写真を撮(と)っていました。これらの違(ちが)いが写真にどのように影響(えいきょう)するかを調べます。

二人の写真家は、同じ新潟県を撮(と)りましたが、写真の撮(と)り方(かた)が大きく違(ちが)いました。中俣さんは、地域(ちいき)や行事を撮(と)り、その魅力(みりょく)を見つけました。小林さんは、ニュースの写真を撮(と)ることに力を入れました。たとえば、1965年に佐渡のトキを撮(と)ったとき、中俣さんはトキそのものを撮(と)りました。小林さんは、トキの周(まわ)りの人々を撮(と)りました。この違(ちが)いが写真にどんな影響(えいきょう)を与(あた)えるかを知ることができました。

この研究では、歴史(れきし)博物館(はくぶつかん)で二人の写真を比(くら)べました。まず、小林新一さんの写真フィルム(写真を撮(と)るための昔の道具で、今は主にデジタルカメラを使うけど、昔はこのフィルムが使われていました。定義(ていぎ)：カメラで写真を撮(と)るための、化学薬品が塗(ぬ)られた薄(うす)いシート。使い方：フィルムをカメラに入れて、写真を撮(と)ります。そのあと、フィルムを現像(げんぞう)して写真にします。重要度(じゅうようど)：昔は写真を撮(と)るために必(かなら)ず使われていた大切な道具です。)を展示(てんじ)しました。次に、中俣正義さんの写真も展示(てんじ)し、二人の写真がどう違(ちが)うかを見ました。また、写真雑誌(ざっし)やコンテストの結果(けっか)を調べて、二人の写真家としての歩みも追いました。

研究の結果(けっか)、中俣正義さんと小林新一さんの写真は、それぞれ独自(どくじ)の価値(かち)があることがわかりました。中俣さんは、地域(ちいき)や行事の魅力(みりょく)を引き出すのが得意(とくい)でした。一方、小林さんは、社会のことを記録(きろく)し伝(つた)えるのが得意(とくい)でした。この違(ちが)いが、それぞれの写真が持つメッセージや影響力(えいきょうりょく)に大きく役立っています。写真を通じて地域(ちいき)の歴史(れきし)や文化を知る大切な要素(ようそ)です。

今後は、こうした異(こと)なるアプローチを持つ写真家の作品をもっと研究します。他の地域(ちいき)や時代の写真とも比(くら)べます。これにより、写真の多様性(たようせい)や可能性(かのうせい)をもっと理解(りかい)できます。また、デジタルアーカイブ(昔の写真や文章などをコンピューターに入れてネットで見ることができるようにしたもの。定義(ていぎ)：紙の資料(しりょう)やフィルムなどをデジタル化して保存(ほぞん)し、インターネットを通じて誰(だれ)でも見られるようにすること。使い方：特別(とくべつ)な資料(しりょう)を保存(ほぞん)し続(つづ)けるうえで、デジタルアーカイブはとても大切です。重要度(じゅうようど)：デジタルアーカイブは、資料(しりょう)を長持ちさせたり、みんなに見てもらうために重要(じゅうよう)です。)や新しい展示(てんじ)方法(ほうほう)を使って、みんなが写真を見やすくすることが大切です。これにより、地域(ちいき)の歴史(れきし)や文化を広く伝(つた)え、写真の教育的(てき)価値(かち)や社会的(しゃかいてき)意義(いぎ)を高めることが期待されます。