論文詳細
理学部
自然科学系
#学術雑誌論文
日高島弧(日高変成帯主帯)下部地殻における高度変成岩の部分溶融(<特集>日高衝突帯研究の最近の進歩(1)-その深部過程と上昇過程)
- AI解説:
- 大陸および島弧地殻下部における高度変成作用条件下では、泥質変成岩および苦鉄質変成岩の部分溶融が起こり、それに伴い珪長質マグマが生成される。この現象は地質学的、岩石化学的、および実験岩石学的に重要な研究対象となっている。日高変成帯主帯は、白亜紀以降に形成された未成熟島弧の地殻衝上断片として認識されており、特に部分溶融現象の理解が進んでいる地域である。本研究の目的は、主帯中部地域の高度変成岩類を対象に部分溶融による具体的な岩石の野外産状および記載岩石学的な観察結果を通じて、部分溶融の過程および生成されたメルトの挙動を明らかにすることである。
AI解説を見る
理学部
自然科学系
#学術雑誌論文
日高島弧(日高変成帯主帯)下部地殻における高度変成岩の部分溶融(<特集>日高衝突帯研究の最近の進歩(1)-その深部過程と上昇過程)
AI解説
- 背景と目的:
-
大陸および島弧地殻下部における高度変成作用条件下では、泥質変成岩および苦鉄質変成岩の部分溶融が起こり、それに伴い珪長質マグマが生成される。この現象は地質学的、岩石化学的、および実験岩石学的に重要な研究対象となっている。日高変成帯主帯は、白亜紀以降に形成された未成熟島弧の地殻衝上断片として認識されており、特に部分溶融現象の理解が進んでいる地域である。本研究の目的は、主帯中部地域の高度変成岩類を対象に部分溶融による具体的な岩石の野外産状および記載岩石学的な観察結果を通じて、部分溶融の過程および生成されたメルトの挙動を明らかにすることである。
- 主要な発見:
-
主帯中部地域の変成岩層序は、泥質変成岩類と苦鉄質変成岩類から構成され、東側から西側に向かって変成度が高まる。IV帯の泥質グラニュライト中では、部分溶融により生成されたリューコゾームが観察された。これらのリューコゾームは、ザクロ石、菫青石、斜方輝石などの鉱物組み合わせを特徴とし、部分溶融に伴う脱水溶融反応によって生成されたと考えられる。また、苦鉄質変成岩に見られるリューコゾームも、ホルンブレンドの脱水溶融反応により形成されたと見なされ、主帯下部地殻全体で部分溶融が進行していたことが示唆される。
- 方法論:
-
本研究では、主帯中部地域の高度変成岩類の野外観察および記載岩石学的な手法を用いて、部分溶融現象の詳細を解析した。具体的には、ナナシノ沢、大河原沢、ベニカル沢、サッシビチャリ沢川、ニシュオマナイ沢、幌別川のIV帯から得られた試料を用いて、泥質および苦鉄質変成岩中に見られるリューコゾームの産状と組織を詳細に観察した。さらに、部分溶融反応に関する実験岩石学的なデータと比較することで、部分溶融の条件およびメルトの生成と移動過程について議論を行った。
- 結論と意義:
-
本研究の結果、主帯中部地域の高度変成岩類における部分溶融過程が明らかになり、特に泥質および苦鉄質変成岩中に見られるリューコゾームの形成が、脱水溶融反応による非調和融解によって進行したことが示された。また、IV帯全体で約22.9%のメルトが存在していたことが推定され、このメルトが下部地殻の塑性流動性を促進したと考えられる。これにより、地殻深部での部分溶融メルトの存在が、地質構造の形成や地殻進化に重要な役割を果たしていることが示唆された。
- 今後の展望:
-
今後の研究では、部分溶融度のより精密な解析を行うために、岩石化学組成および同位体組成を詳細に調査する必要がある。また、部分溶融メルトの移動と集積過程、およびそれが地殻構造に与える影響についてさらに詳しく解析することで、地殻進化のメカニズムをより深く理解することが期待される。さらに、他の地域の高度変成岩類との比較研究を行うことで、部分溶融現象の普遍性と地域性を明らかにすることが重要である。
- 背景と目的:
-
大陸や島弧の地殻深部では、高温・高圧の環境によって泥質や苦鉄質の岩石が部分的に溶け、
が作られます。この現象は地質学や岩石学の研究において重要です。日高変成帯は特にこの珪長質マグマ ( 主にシリカを含むマグマで、部分溶融によって生成されます。) 現象がよく研究されている地域であり、今回の研究は日高変成帯の中部地域での部分溶融現象を詳しく調べることを目的としています。部分溶融 ( 岩石が高温・高圧環境で部分的に溶ける現象です。)
- 主要な発見:
-
日高変成帯の中部地域では、泥質と苦鉄質の変成岩が部分的に溶けて
(白っぽい岩)ができることが観察されました。これらのリューコゾームは、ザクロ石や菫青石など特定の鉱物を含み、高温で水分が抜ける反応によって生成されました。また、苦鉄質変成岩でも同様にリューコゾーム ( 部分的に溶けた岩石が冷えて固まったもので、白っぽい色をしていることが多いです。) が進んでいたことが示されました。部分溶融 ( 岩石が高温・高圧環境で部分的に溶ける現象です。)
- 方法論:
-
研究は中部地域での野外観察と岩石の詳しい観察を通じて行われました。具体的には、ナナシノ沢や大河原沢などから採取した試料をもとに、
の産状と構造を観察しました。そして、実験データと比較し、リューコゾーム ( 部分的に溶けた岩石が冷えて固まったもので、白っぽい色をしていることが多いです。) の条件や生成されたマグマの動きを議論しました。部分溶融 ( 岩石が高温・高圧環境で部分的に溶ける現象です。)
- 結論と意義:
-
研究の結果、日高変成帯中部地域の変成岩が部分的に溶けた過程が明らかになりました。この
によって生成されたメルトが地殻の構造や進化に重要な役割を果たしていることが示されました。特に、IV帯全体で約22.9%のメルトが存在し、このメルトが下部地殻の動きを助ける役割を果たしたと考えられます。部分溶融 ( 岩石が高温・高圧環境で部分的に溶ける現象です。)
- 今後の展望:
-
将来的な研究では、より精密な
度の解析やメルトの移動と集積過程を詳しく調査する必要があります。また、他の地域との比較研究を通じて、部分溶融現象の普遍性を明らかにすることが期待されます。部分溶融 ( 岩石が高温・高圧環境で部分的に溶ける現象です。)
- 何のために?:
-
大きな
大陸 や島の深いところでは、岩が暑くて強い力で押 されることがあります。すると、一部の岩が溶 けて特別 な ができます。この研究は、そのマグマ ( 地下で溶 けた岩石のこと。火山の噴火 口から流れ出る溶岩 のもとになる。) 現象 が北海道の日高 という場所でどう起こるかを調べるためのものです。変成 帯 ( 岩が非常 に高い圧力 や温度の影響 を受けて変化 した地域 。地球の深い部分で起こることが多い。)
- 何が分かったの?:
-
日高
の中では、変成 帯 ( 岩が非常 に高い圧力 や温度の影響 を受けて変化 した地域 。地球の深い部分で起こることが多い。) 泥 と鉄が多い岩が少し溶 けて白っぽい岩ができることが分かりました。この白っぽい岩には、特定 の が鉱物 ( 地球内部で生成 される自然 の結晶 で、岩石を構成 する基本的 な成分 。) 含 まれていました。また、鉄が多い岩も部分的 に溶 けていることが分かりました。
- どうやったの?:
-
研究者たちは、日高
の中で岩を集めて変成 帯 ( 岩が非常 に高い圧力 や温度の影響 を受けて変化 した地域 。地球の深い部分で起こることが多い。) 観察 しました。ナナシノ沢 や大河原沢 から岩を取ってきて、その中の白っぽい岩がどうできたかを調べました。そして、実験 結果 と比 べて がどう動いたかを考えました。マグマ ( 地下で溶 けた岩石のこと。火山の噴火 口から流れ出る溶岩 のもとになる。)
- 研究のまとめ:
-
研究の
結果 、日高 の岩が変成 帯 ( 岩が非常 に高い圧力 や温度の影響 を受けて変化 した地域 。地球の深い部分で起こることが多い。) 部分的 に溶 ける過程 が分かりました。この溶 けた が地球のマグマ ( 地下で溶 けた岩石のこと。火山の噴火 口から流れ出る溶岩 のもとになる。) の動きに大切な地殻 ( 地球の最 外層 部分で、岩石からできている。大陸 や海底 を構成 する部分。) 役割 を果 たしていることが分かりました。特 に、IV帯 全体で約 22.9%のマグマがあり、それが地殻 の動きを助けていると考えられます。
- これからどうする?:
-
これからの研究では、もっと
詳 しく部分的 に溶 ける度合いや、 がどう動くかを調べるマグマ ( 地下で溶 けた岩石のこと。火山の噴火 口から流れ出る溶岩 のもとになる。) 必要 があります。また、他の地域 とも比 べて、この現象 がどこでも起こるのかを調べることが期待されます。
- 著者名:
- 小山内 康人, 大和田 正明, 志村 俊昭, 中野 伸彦, 川浪 聖志, 小松 正幸
- 掲載誌名:
- 地質学雑誌
- 巻:
- 112
- 号:
- 11
- ページ:
- 623 - 638
- 発行日:
- 2006-11
- 著者による要約:
- Lower crustal part of the Hidaka Arc (Hidaka metamorphic belt) is composed of the granulite-facies unit (zone IV) and the main anatexis zone. The former can be observed on the surface, while the latter is considered to be existed beneath the Hidaka Main Thrust by the evidence of restitic Gr-Opx granulites as xenoliths included in intrusive anatectic tonalities. In pelitic granulites of zone IV, Bt-dehydration melting took place with forming leucosomes including euhedral Opx, An-rich PI and Crd. Intercalated mafic granulites in zone IV also show the Hbl-dehydration melting and Opx-bearing leucosome formation. A small scale partial melting in zone IV is identified, where the produced melt would be effected to make plastic condition of lower crustal rocks and to form duplex structure in the lower crust of the Hidaka Arc. Partial molten melts derived from the main anatexis zone moved and assembled to form tonalitic magmas with peraluminous S-type and metaluminous I-type signatures, which intruded into the shallower crustal level along the floor-thrust and roof-thrust of duplex structure.
日高変成帯主帯下部地殻は,現在地表に露出しているグラニュライト相変成岩分布域(IV帯)および主要部分溶融帯からなる.後者は現在地表に露出しないが,レスタイトと見なされるザクロ石-斜方輝石グラニュライト(トーナル岩の包有物)などから,その存在が推定される.IV帯の泥質グラニュライトでは,黒雲母の脱水溶融反応が起こり,自形の斜方輝石やAn成分に富む斜長石および菫青石を含む様々なリューコゾームが形成された.互層する苦鉄質グラニュライトでもホルンブレンドの脱水溶融が起こり,生成したメルトはブーダンネックなどへ濃集し,含斜方輝石リューコゾームを形成したと見なされる.IV帯における部分溶融度は比較的小さいが,生成したメルトは地殻下部岩石の塑性流動化とデュープレックス構造の形成に関与した.主要部分溶融帯で生成したメルトは移動・濃集してトーナル岩マグマとして挙動し,シート状岩体を形成した.
- 新潟大学学術リポジトリリンク:
- http://hdl.handle.net/10191/29839