早期胃癌根治術後患者における骨格筋量及び体重の長期的経時変化

背景と目的：

胃癌は日本において罹患率が高く、その治療として胃切除が一般的である。しかし、胃切除後の患者は消化吸収障害を抱えることが多く、それにより体重減少や栄養障害が問題となる。特に、サルコペニア（骨格筋量と筋力の低下）は、患者の生活の質や予後に大きな影響を及ぼす。胃切除後の早期段階で骨格筋量が減少することは知られているが、長期的な影響については十分に解明されていない。そこで本研究では、早期胃癌を対象に、胃切除後の長期的な骨格筋量と体重の変化およびその危険因子を後方視的に評価することを目的とした。

主要な発見：

本研究において、胃切除後の骨格筋量と体重の変化は以下のように観察された。術後1年目には骨格筋量は約5%減少し、5年目には約10%減少した。一方、体重は術後1年目に約9%減少し、その後はほとんど変化しなかった。骨格筋量と体重減少の危険因子として、術前BMIが22以上であることと上部胃切除術が選択された場合が挙げられた。また、手術時年齢が65歳以上の高齢者は、術後5年目において骨格筋量および体重減少のリスクが高いことが示された。

方法論：

2000年1月から2009年12月の期間に新潟大学医歯学総合病院で胃切除術を受けた早期胃癌患者278例のうち、無再発で少なくとも術後1年目と5年目にCT検査を行った91例を対象とした。CT画像を用いて骨格筋量を評価し、体重の変化とともに経時的に比較した。骨格筋量の指標として第3腰椎下縁での腸腰筋断面積（PMA）を使用し、術前比（%）を算出して分析を行った。統計解析にはSPSSを用い、Mann-Whitney U検定やWilcoxonの符号付順位和検定などを適用した。

結論と意義：

本研究は、胃切除後早期に骨格筋量が大きく減少し、晩期においても改善がみられないことを示した。特に、術前BMIが高いことや上部胃切除術が選択された場合が、術後早期の骨格筋量および体重減少の危険因子であり、晩期においては高齢者がリスクを有することが明らかになった。これらの結果は、胃切除後の患者に対して、骨格筋量の維持を念頭に置いた長期的な栄養管理が必要であることを示唆している。

今後の展望：

今後の研究では、サルコペニアの危険因子を有する患者に対して、どのような栄養管理が最適であるかを明らかにすることが重要である。特に、上部胃切除術や高齢者に対して、長期的な栄養介入がどのように骨格筋量や体重の維持に寄与するかを検討する必要がある。また、骨格筋量減少や体重減少が患者のQOLや生命予後に与える影響についても詳細に調査することが求められる。これにより、胃切除後の患者の予後改善につながる新しい治療法や管理方法の開発が期待される。

背景と目的：

日本では胃がんになる人が多く、その治療法として胃を切る手術が一般的です。しかし、この手術を受けた後、食べ物をうまく消化吸収できないことが多く、体重が減ったり栄養が不足したりする問題があります。特に、サルコペニア(加齢や病気などにより、筋肉量と筋力が低下することを指します。これにより、体の動きが悪くなったり、生活の質が低下したりします。)（筋肉量と筋力が減ること）は患者の生活の質や治療の結果に大きな影響を与えます。手術後の早い段階で筋肉量が減ることは知られていますが、長期間の影響についてはよくわかっていません。そこで、この研究では早期胃がん患者を対象に、手術後の長期間の筋肉量と体重の変化を調べ、その原因を探ることを目的としました。

主要な発見：

この研究では、胃を切る手術を受けた後の筋肉量と体重の変化を観察しました。手術後1年目には筋肉量が約5%減り、5年目には約10%減りました。一方、体重は1年目に約9%減り、その後はほとんど変わりませんでした。筋肉量と体重が減る原因として、手術前のBMI（体格指数）(体重（キログラム）を身長（メートル）の二乗で割った値です。肥満度を示す指標として使われます。)が22以上であることと、上部胃切除術(胃の上部を切り取る手術です。これにより食べ物の消化が難しくなることがあります。)が選ばれた場合が挙げられました。また、手術時の年齢が65歳以上の高齢者は、5年目に筋肉量と体重が減るリスクが高いことがわかりました。

方法論：

2000年1月から2009年12月の期間に新潟大学医歯学総合病院で胃がんの手術を受けた278人のうち、再発がなく、手術後1年目と5年目にCT検査を受けた91人を対象にしました。CT画像を使って筋肉量を評価し、体重の変化と一緒に比較しました。筋肉量の指標として第3腰椎下縁での腸腰筋断面積（PMA）を使用し、手術前の値を基にパーセンテージを計算して分析しました。統計解析にはSPSSというソフトを使い、データの検定を行いました。

結論と意義：

この研究では、胃を切る手術後に筋肉量が大きく減少し、長期間改善しないことを示しました。特に、手術前のBMIが高いことや上部胃を切る手術が選ばれた場合が、術後早期の筋肉量と体重減少の原因であり、長期的には高齢者がリスクを持つことがわかりました。これらの結果は、胃を切る手術を受けた患者に対して、筋肉量を保つための長期的な栄養管理が必要であることを示しています。

今後の展望：

今後の研究では、サルコペニア(加齢や病気などにより、筋肉量と筋力が低下することを指します。これにより、体の動きが悪くなったり、生活の質が低下したりします。)のリスクがある患者に対して、どのような栄養管理が最適かを明らかにすることが重要です。特に、上部胃切除術(胃の上部を切り取る手術です。これにより食べ物の消化が難しくなることがあります。)や高齢者に対して、長期的な栄養管理がどのように筋肉量や体重を保つのに役立つかを調査する必要があります。また、筋肉量減少や体重減少が患者の生活の質や生命の予後に与える影響についても詳しく調べることが求められます。これにより、胃を切る手術を受けた患者の治療結果を改善する新しい方法が期待されます。