放射抑制シールドを用いた小形アンテナの放射効率測定(<特集>無線システムの進展の基盤となるアンテナ・伝搬技術論文)

近年、無線機器の高機能化と集積化が進む中で、アンテナの特性がその取り付けられた筐体や基板の影響を大きく受けるようになり、アンテナ単独での設計や評価が難しくなってきています。そのため、全立体角にわたってEIRPを面積分した全放射電力（TRP）を評価指標とする方法が提案されており、送信アンテナの放射効率を測定する重要性が増しています。本論文では、Wheeler cap法および改良型Wheeler法による放射効率測定法について、その測定原理と評価式を紹介し、これまでの研究動向や実際の測定例について詳述することを目的としています。

Wheeler cap法では、アンテナを放射抑制シールドで覆うことで放射を抑制し、その際の反射係数を測定して放射効率を評価します。一方、改良型Wheeler法は導波管を用いて測定を行い、より厳密な理論に基づいて放射効率を評価します。これらの方法によって、特定の条件下で効率的にアンテナの放射効率を評価できることが示されています。また、放射抑制シールドの形状や材質が放射効率に与える影響についても多数の研究が行われており、シールド共振の回避方法や反射係数測定の不確かさ軽減方法についても具体的なアプローチが提案されています。

Wheeler cap法は、アンテナを放射抑制シールドで覆うことにより放射を抑制し、シールド内外での反射係数を測定する簡便な方法です。改良型Wheeler法では、導波管を使用し、アンテナを導波管内に設置し、複数の位置での反射係数を測定することで放射効率を算出します。これにより、精度の高い測定が可能になりますが、シールドや導波管の共振による影響を考慮する必要があります。また、モンテカルロ法を用いた不確かさ評価の手法も用いられ、測定の不確かさを定量的に評価することが行われています。

本論文では、Wheeler cap法および改良型Wheeler法の測定原理と評価式について詳細に説明し、これらの方法がアンテナの放射効率を評価するための有効な手段であることを示しました。特に、Wheeler cap法は簡便でありながら、広範な応用が可能であることが強調されています。また、改良型Wheeler法はより厳密な評価が可能ですが、実用上の問題点も指摘されています。これらの方法を適用する際には、共振による放射効率の落ち込みを回避する工夫が必要であり、測定の不確かさを軽減するための具体的な方法も提案されています。

今後の研究として、Wheeler法の適用範囲をさらに広げるための検討が必要です。特に、より複雑なアンテナ構造や広帯域にわたる放射効率測定に対応するための改良が求められます。また、不確かさをさらに軽減するための新たな測定手法や機器の開発も期待されています。さらに、実際の無線機器に応用する際の具体的な課題とその解決策についての研究も重要です。これにより、無線通信技術の発展に寄与することが期待されます。